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全日本ろうあ連盟の活動


全日本ろうあ連盟 本部事務所長 大槻 芳子


当連盟の国際的な運動は1959年世界ろう連盟(WFD)に加盟したことに遡る。80年代に入り、WFD事務局長、理事長等を日本に招聘したことにより、広く世界に日本のろう者の現状を知らしめるとともに今までの当連盟の運動に対し海外から高い評価を得た。1984年にはWFDからの強い要請によりWFDアジア太平洋地域事務局が日本に設置され、その後、アジア太平洋各国でWFDアジア太平洋地域事務局代表者会議を開催し、アジア太平洋地域のろう団体間に強い信頼関係を築く仲立ちをしてきた。
1991年には東京でアジア太平洋地域初の世界ろう者会議を開催し、8千人(うち外国からの参加者千人)という世界ろう者会議史上最高の参加者を得、成功裡に終了した。この会議では日本からWFD理事が初めて誕生し、また国際手話通訳として国際舞台で活躍する日本のろう者をも生んだ。またこの時、アジア太平洋の国々から30名のろう者を招聘し第4回アジア太平洋地域事務局代表者会議を併せて開催し、各国の抱えている問題について話し合った。国内における指導者不足、それによる組織の弱体化が訴えられ、日本に対して経済的・社会的・人的な協力、特に「ろう指導者研修会」の開催が強く要請された。
これを受け有識者の調査検討委員会を設立し1993年「アジア太平洋障害者の十年」の第1回地域NGOネットワーク(RNN)沖縄会議に、アジア各国のろう団体の担当者を招聘し情報交換会を行い、ニーズにあった研修カリキュラムの内容、実施検討を行った。翌年、この結果にもとづいて「アジアリーダー研修事業」とし、1994年11月3日~21日、タイ・ネパール・韓国の3か国からろう者リーダー3名を招聘し研修会を開催した。
これが今年で4回目を迎える当連盟のアジア太平洋地域支援の柱事業、国際協力事業団との「ろう者のための指導者」研修事業の前身である。この後、この実績を元に厚生省、外務省、国際協力事業団(JICA)との折衝を重ね、アジア太平洋地域事務局加盟国、および国連ESCAPの協力を得て各国政府の障害担当部局に対し協力依頼の文書を出すなど多方面からの働きかけを行った結果、その年の12月には、95年度JICAによる「ろう者のための指導者(アジア・大平洋州諸国)」研修の開催が決定した。
この研修は、アジア大平洋地域のろう者を対象に約1か月半の期間、大阪・東京を中心に行っている。国際手話、日本のろう者福祉、ろう教育、障害者雇用、手話通訳、ろう団体の活動、世界ろう連盟とアジア大平洋地域事務局の役割等を勉強する。現在までに、23名の研修員を受け入れており、そのうち何人かの研修員は帰国後、国のろう団体の代表者になり積極的にろう運動に参加するなど確実にこの研修支援の効果があらわれている。
世界ろう連盟アジア大平洋地域事務局(最高責任者は当連盟副理事長、高田英一)は世界ろう連盟アジア太平洋地域事務局代表者会議を加盟各国持回りで開催している。当連盟ではこの会議の財政支援は勿論のこと、この会議を開催することで開催国のろう団体内の結束強化を促進し、国際的な会議の開催ノウハウを教える等、側面的な支援をしている。代表者会議開催国は会議を開催する事で内外の認知も獲得できると同時に己の自信にも繋がっている。
以上の他に現在、タイでプロジェクト支援を進めようとしている。ろう者にとっての「完全参加と平等」は手話の普及を抜きには考えられないためアジア太平洋地域の中でも組織化が進んでいるタイろう協会の手話のテキスト作成に技術的、財政的な支援を実施することが決定している。今後、このタイの支援を皮切りに他のアジアの国にも連帯の精神に基づき、アジアろう者の地位向上につながる支援をしていきたい。
個人を対象にしたものとして、昨年創立50周年を機に設立した「アジアろう者友好基金」等を活用し、アジア太平洋地域のろう教育への本格的な支援に乗り出していきたいと願っている。
今後の課題としては、アジア太平洋の現状を把握し、その場所、状況に適した支援をすることにある。何が本当に求められている支援なのかを考え、支援をすることで双方が成長できるような支援、また被支援者側が真の自立に目覚め目標に向かって邁進できるようになるきっかけ作りをしていければと願っている。


出典
”JANNET NEWS LETTER” Vol.5 No.1 (通巻17号)

発行者

障害分野NGO連絡会(JANNET)

発行年月

1998年4月

文献に関する問合せ先

(財)日本障害者リハビリテーション協会
162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
Tel 03-5273-0601  Fax 03-5273-1523


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