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特定非営利活動促進(NPO)法成立

ヒューマンケア協会 代表 中西正司

 NPO法が持つ意味
この法案は市民が初めて中心となって法律を作らせたという点で画期的である。実際には「シーズ」を中心に市民団体が立案をし、本格的なロビーングをし、講演会や担当議員を交えてのシンポジウムを多数回開催し、マスコミを効果的に動かす等、これまでの日本の市民団体の行動様式を打ち破る洗練された手法が取られた。状況の変化は時々刻々ファックス送信で会員に伝えられ、署名運動も即刻行われた。会員は、法案が国会で可決成立して10分後には通知を受けていた。その陰には民間NGOでの活動経験をもつ有能な事務局長、松原明氏がいた。
本法の施行は、都道府県の条例ができる来年1月になるという。
以前から、米国では5人集まれば法人ができるというのに、なぜ日本では法人化がこんなにも大変なものかと疑問に思ってきた。NPO法ができてようやく、わが国も先進国の仲間入りができたといえる。
この法律は出来ても何の役にも立たないと言う人もいるが、実は日本の社会構造を根本から変える重大な意味を持つ法律だ、ということにまだ気づいていない人が多い。
従来、国民に対するサービスは、国家ないしその運営する機関、あるいは営利法人が提供するものであって、市民が市民に対して提供するサービスというものは想定されていなかった。しかし、国のサービス、例えばホームヘルパー制度では障害者手帳の等級や年齢により対象者を制限せざるを得ない。一方、営利企業の介助サービスでは、利益にならないことは出来ない。利益にならず、しかも国の対象から外されたものはどうするか、というとNPOが受ける以外にない。NPOは、社会を構成する要素として本来必要不可欠なものである。国、企業、NPOの事業の3つは、これからの社会の3大構成要素となろう。長い目で見れば、国が直営する事業は非効率であり、廃止の方向に向かうことは明かである。そうすると将来的には、NPOと営利企業が等分に社会サービスを提供することになろう。
NPO法人を取りたい団体は
会計規模が1億円を越えると、税務対策上法人格が必要になる。2億円になるとどうしても必要になる。NPO法人を取ろうとしている団体、または取るべきかどうか迷っている団体の多くは、会計規模が5000万円以下と思われる。
会計規模が5000万円以下の団体がNPO法人を取ることによって得られるメリットは、契約行為が団体名で出来ること、行政の委託事業が法制度上取りやすくなることが挙げられる。介護保険制度下で法人格がないと事業委託が取れないが、NPO法人を取れば受託も可能である。
法人を取るときに注意すべきことは、運営委員の3分の1以上が給料を取ってはならないということ、総会を開催すること、ただし規約で「総会は出席者のみで構成する」、とか「代表者で構成する」とか規定すればそれでよい。法人税を年間7万円払うこと。書籍等の売上げ利益が800万円以下だと27%の課税をされるが、執筆経費等の必要経費の計上をキチンとすれば通常利益はそうはあがらないはずである。売上げが3000万円を越えると消費税を支払うこと。複式、簡易簿記いずれかの正規の簿記の形式に則った会計処理を行うこと。事業計画・報告を公開すること。
これまでボランティアとNPO法人の違いは明かではなかった。そのためボランティアは無料でやるべきだという考えは、NPOをも縛ってきた。NPO法人を運営している職員が給料を取るのは当たり前で、これを無料ですることは、継続性と責任を持ち、しかもサービスの質を高めていくという目的に反することである。NPO法人では高給は取れなくても、家族を養っていける程度の給料が取れるというのが理想であろう。
今後都道府県の条例が作られることになるが、基本的には必要書類がそろっていれば3か月以内に法人を認証しなければならないことになっているので、その通りの条例になるよう今後監視して行くことが必要である。
この法律は議員立法によって市民が作ったものであり、従来の公益法人や社会福祉法人の常識は通用しない。あくまでも市民が国家に作らせたものであり、我々が縛られるものではない。使いたいものが使えば良く、使い勝手が悪ければ変えていけばいいものなのである。


出典”JANNET NEWS LETTER” Vol.5 No.2 (通巻18号)

発行者
障害分野NGO連絡会(JANNET)

発行年月
1998年7月

文献に関する問合せ先
(財)日本障害者リハビリテーション協会
162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
Tel 03-5273-0601  Fax 03-5273-1523

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