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トピックス

ICIDH-2について

日本社会事業大学 佐藤 久夫

 1980年にWHO(世界保健機関)によって試案として発行された「国際障害分類」(ICIDH:International Classification of Impairments, Disabilities, and Handicaps)は、すでに発行から18年を経た。2000年の改正版(ICIDH-2)発行にむけて1997年には改正案が示され、現在国際的な検討作業が進められている。
表に主なポイントを比較した。ここに見るように、障害を3つの次元で理解しようという点では1980年版も改正案も同じである。医学的・生物学的なレベルの障害、人間の活動・能力のレベルの障害、そして社会的不利益である。ただし、概念モデル図で、新たに環境や個人の性別・年齢などからなる背景因子を含めたこと、否定的な用語ではなく中立的・肯定的な用語を使うこと、参加分類を詳しくし、環境のリストも取り込んだこと、利用しやすいように各分類項目には定義をつけたこと、などが主要改正点である。用語の変更は、デイスアビリテイではなく活動、ハンディキャップではなく参加ということで、否定的側面は活動の制約、参加の制限などと表す。ただしインペアメントに代わる適当な言葉はまだ考案されていない。

表 国際障害分類とその改正案の比較

 各レベルの大分類を見ると、機能障害分類はまず機能面と構造面に区分され、精神機能、消化機能、運動機能など、活動分類では、見ること、聞くこと、認識すること、学習、コミュニケーション活動、運動活動、移動、日常生活活動、家事、対人行動など、参加分類では、身辺維持への参加、移動への参加、情報交換への参加、社会関係への参加、教育・仕事・余暇及び精神活動への参加、経済生活への参加、市民生活・共同体的生活への参加など、環境分類では、製品・用具・消耗品、対人支援・援助、社会的・経済的・政治的制度、社会文化的構造・規範・規則、人工の物理的環境、自然環境となっている。
去る3月下旬、WHO主催のICIDH改正会議がはじめてアジア(東京・戸山サンライズ)で開かれた。参加者は、オーストラリア、カナダ、フランス、日本、オランダ、スウェーデン、イギリス、アメリカ、中国、香港、インドネシア、イラン、韓国、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、スイスの18か国、および関連国際機関からの約70人であった。この会議は改正案のテストの中間段階の打合会であり、内容面の決定は今年末までのテストの結果を踏まえて来年4月に行うこととなった。
これまですべて西洋社会で開催されてきた会議が東洋で行われ、世界の障害者の6割を占めるアジア諸国の参加がおそまきながら実現した。実際、日本を除く9つのアジア諸国は、この東京会議が初めての参加であった。現在、アジアからの参加者たちはICIDH-2案の翻訳や検討を始めている。国際的な障害の概念、定義、名称、分類といった重要事項の論議にアジアからの参加をさらに継続的に強めることと、実際にICIDH-2の活用を進める活動とがますます重要になってきている。
なお、改正案日本語仮訳はhttp://www.dinf.ne.jpまたはhttp://plaza6.mbn.or.jp/-jlmr/、WHOのICIDHサイトはhttp://www.who.ch/icidh、日本社会事業大学佐藤久夫のFAXは0424-92-6816(大学)ですので問い合わせ等にご利用ください。


出典 ”JANNET NEWS LETTER” Vol.5 No.2 (通巻18号)

発行者 障害分野NGO連絡会(JANNET)

発行年月 1998年7月

文献に関する問合せ先
(財)日本障害者リハビリテーション協会
162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
Tel 03-5273-0601  Fax 03-5273-1523

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