音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

Member's Report

沖縄コロニーの活動第1回障害者自立支援技術セミナー

沖縄コロニー 新垣 悦子

1はじめに

 社会福祉法人沖縄コロニーでは、平成10年1月15日から2月17日まで「障害者自立支援技術セミナー」を実施した。このセミナーは、国際協力事業団(JICA)が「平成9年度障害者自立支援技術セミナー」として設けた研修コースで当法人に委託されたもの。「アジア・太平洋障害者の十年」のスタートに当たり、93年、沖縄で開かれた「国際NGO会議・障害者の社会参加に関する沖縄会議」においても、域内のNGOリーダー育成の必要性が強調されていた。沖縄は、その会議の発信地としての役割から、OIC(沖縄国際センター)との協力を得て、当地で実施されるよう働きかけてきたところであった。

障害者自立支援技術セミナー

2セミナーの目的

 開発途上国において障害者の自立支援に従事する指導者を対象としてわが国の障害者に関する福祉制度や関連する施設を管理するために必要な知識技術を紹介し、その資質向上に寄与するとともに、参加各国の自立支援状況にかかる比較検討を行い、福祉水準の向上に資することが目的であった。

3研修

1)参加者

 今回は、バングラデシュ、タイ、ラオス、フィリピン、中国から各1名ずつ男性3名、女性2名(うち車イス利用者等障害のある人2名)が参加した。

2)内容

 研修内容は、沖縄の障害者援護をはじめ、当法人の事業展開の歴史、法人傘下施設の現状、授産事業についての講義。各国研修員を含めた関係者との意見交換および当法人はじめ関係機関における授産事業の現場視察と実習。研修員のカントリーレポート発表および討議を中心としたもの。

3)実習

 印刷作業、陶芸作業を6日間という短期間の実習だった。技術習得までにはおよばなかったが、印刷、陶芸全体の作業工程を知ることで障害者が働くのに適した職種であるとの確信を得たようだった。各国には印刷を主体とした授産施設がなく、ただちに取り入れる可能性は薄いものの、将来に備えて大切な目標のもてる研修になると励んでいた。  各自がデザインした名刺、マッキントッシュを使って作成したポスター等は、ユニークな作品であった。陶芸科においては、面獅子コーヒーカップを作成した。陶芸作業は自国での取り組みが可能で帰国後も情報交換を望むなど強い意欲を見せていた。また、知的障害者授産研修では、(1)簡易木工(2)手工芸(3)農園芸の実習コースのうち、手工芸コース(月桃和紙づくり)が最も好評だった。自国では原材料の月桃が豊富で作業工程が取り組みやすい等、授産科目として明るい見通しがあるためと考えられる。このセミナーは、NGOのリーダーとしてのノウハウ習得に重点をおいて実施された。そのために、社会就労センター(セルプ施設)における職業リハビリテーションプログラムとしての「印刷、陶芸、情報企画」「農園芸」のトレーニングシステムのノウハウを精力的に学びとっていただいた。

4)関連施設見学

 中国の建物には点字による説明がほとんどなく、障害者用トイレの実物を初めて見たと熱っぽく話し、公共的な建物に「バリアフリー」の法律が検討中とのタイ国研修員は、沖縄市役所の“人にやさしい設備”の数々をカメラに撮る等積極的に情報収集をしていた。他に県内養護学校、共同作業所、県外関連施設を見学したが、一行は、施設が地域に根ざし、障害者が地域の中で平等に生活をしていることに感動。障害者問題の啓蒙、啓発のため障害者自身が公共の場に積極的に参加することが重要であり、一般の意識も変わることを強く実感したようである。

4評価と反省

 OICによる期待充足度、習得知識技術の適応性、日本(沖縄)に対する理解度、日本(沖縄)印象度等の評価は良好であった。反省点は、体験を深めるための実習期間の延長、参加国の福祉制度についてのより深い討論、そして希望として無認可施設の見学の実施があげられた。

5まとめ

 このセミナーは、当法人にとって初体験だった。文化が比較的似た国々からの研修員たちがすぐに生活環境に順応してくれたことは幸いだった。研修では、重度障害者が生産に参加していることに驚嘆し、“やれば出来る”ということを学んだ。「生産」を通しての職業リハビリテーションへの取り組み。そしてその基盤として、「自立」への可能性を求めていく障害者の積極的な生き方と社会へのインパクトを認識したことと思う。貴重な体験を自国でそれぞれの立場で生かし行動する勇気と決断を期待したい。


出典 ”JANNET NEWS LETTER” Vol.5 No.2 (通巻18号)

発行者 障害分野NGO連絡会(JANNET)

発行年月 1998年7月

文献に関する問合せ先
(財)日本障害者リハビリテーション協会
162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
Tel 03-5273-0601  Fax 03-5273-1523

目次に戻る