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「JANNET NEWS LETTER」
(April 2000 第25号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<メンバーズプロジェクト>

日本キリスト教海外医療協力会の派遣事業-障害者コミュニティーセンター
(Community Centre for the Handicapped:CCH)の働きについて

日本キリスト教海外医療協力会派遣
地域生涯プログラムコーディネーター・看護婦 岩本直美

 バングラデシュは北海道の約1.8倍の国土に1億2千万人を超える人口を有し、障害者の人口はそのうち約7~8%と言われている。障害分野のサービス機関は、しかし年に集中し、地方農村部では適切なサービスが受けられないまま過ごしている人が多い。CCHはそうしたバングラデシュ北部マイメンシン県において、1997年より活動を開始する。
CCHのミッションは、同センターを訪れる障害を持つこどもや大人、そして彼等の家族一人ひとりが大切な仲間として迎え入れられ、人間対人間の付き合いを通して個々がかけがえの無い自分自身の価値に気づいていくことにある。従ってプログラムの効率性以上に、一人ひとりとどのように向き合うかという在り方により意識がおかれる。地域におけるコミュニティセンターとしての大切な役割の一つはあらゆる障害に関する情報を人々に伝えることにある。その目的は、障害の予防・早期発見早期介入に留まらず、地域の人々が障害を持つ人々やその家族に対する偏見を解き、それまでの態度を具体的に変えることにある。従ってCCHが障害者のみを対象とした活動を新たに起こすのではなく、既存の様々な地域活動の中に障害者が入り込んでいく、或いは非障害者を巻き込んで行くという活動方法を取る。CCHはまた、ダッカ及び近郊への簡便なアクセスと各障害者専門サービス機関との良好な関係を背景に、同地における紹介センターとしての役割も負っている。
年間活動総予算約200万円のCCHは4か国の2団体4グループから経済支援をうけ、常勤スタッフ9名(内女性2、障害者3、キリスト教徒4、イスラム教徒5名)と約5名のボランティアが県内9郡で活動している。CCH以前に同分野での活動経験を持つ者はなく、CCHのドナー団体でもあるCDD(Center for Disability in Development)が開く各種短期コース(1週間~3ヶ月)で実際的なトレーニングを受けている。障害のタイプや年齢に関し制限は置いていないが、CCHの限界と一人ひとりのニーズの程度、又家族のおかれている状況等を考慮し優先順位が決められる。現在の対象者数約300名(15歳以下約30%、女性20%)程になる。
プライマリセラピーの実施や家族指導は、短期トレーニングを受けた2人の男性スタッフが担当し、学士コースを終えた理学療法士が技術支援を行っている。彼等の活動と連携しながら更に2人のスタッフが特に障害に関する情報が届きにくい1郡を選びCCHへの紹介及び啓蒙教育活動を行っている。学童期の子どもを対象としたプレイグループは、知的障害児童を受け入れている団体との合同プログラムを組む方向にあり、障害児童の就学は、近くの民間団体が広く受け入れている。
障害を持つ男性が指導する絵の教室には障害・非障害の子供たち15名余りが共に学び、地元団体共催の絵画コンテストも行っている。CCHの特徴を現しているオープンハウスは祭りと出会いの場である。「信仰と光」の集まりもユニークと言えるだろう。これはキリスト教を背景に始まった国際的な知的障害児の親達の集まりであるが、2家族のキリスト教徒を含むイスラムとヒンドゥ教徒18家族が、障害を持つ子供を中心に共に支えあっている。
障害を持つ女性たちの集まりも始まる。彼女たちの多くは親兄弟に依存しながらひっそりと生活している。女性の会はそうした女性たちが月1度外の空気に触れ、思う存分におしゃべりするところから始まる。同時に県内で活動する4つの女性開発団体への働きかけも行う。90名近くを有する組合は、障害者メンバーで構成される委員が貯蓄プログラムや収入向上プログラム等に関する意思決定を行っている。同プログラムを担当している障害者スタッフが、ローンの返済を受け取りに行くのは、移動の困難な場合のみで8割のメンバーが各自返済に来る。収入向上を目的にCCHにおいてカーペットやペーパークラフト製品の製作も行っているが、製品の開発や質のコントロールまた市場の開拓等、CCH単独での運営は困難があり、積極的に他団体の支援を頂いている。
小規模かつ専門化を持たないCCHが、マイメンシン県において試行錯誤しながらも機能することが出来ている背景には、必要に応じ支援助言を得られる個人や団体が身近にあり、また各専門機関との効果的な連携があること、さらには地域や組織内外の状況の変化に即してかなり柔軟に活動内容を調整できていることがあげられると思う。
今後求められるのは一つひとつのプログラムの継続性と質の向上である。また女性障害者に関するプログラムの拡大も必要である。彼女達の多くがまだ2重3重のバリアの中にいる。組織としての安定を図ることも今後の大きな課題である。