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トピック 世界障害NGOサミット―北京宣言を採択

JANNET会長・国際リハビリテーション協会副会長 松井亮輔

去る3月10-12日北京の香港マカオセンターで世界障害者NGOサミットが開催された。同サミットは、中国障害者連合 会が主催したもので、障害者インターナショナル(DPI)、世界ろう連盟(WFD)、世界盲人連合(WBU)、 インクルージョン・インターナショナル(II)、国際リハビリテーション協会(RI)の会長、副会長および事務局長など 約30名が出席。

中国障害者連合会が、国連での障害者権利条約制定をめざしてこの時期に同サミットを計画した背景としては、次のようなこと が考えられる。(1)同連合会が加盟しているRIが、昨年9月ロンドンで開かれた総会で採択した「RI2000年代憲章」で 障害者権利条約の制定を提唱したこと。(2)障害者の機会均等化に関する標準規則の各国での実施状況をモニターしてきた特別 報告者(元スウェーデン社会大臣ベンクト・リンドクビスト氏)の任期が今年8月切れることになっており、それ以降の対応策に ついて本年2月8-17日ニューヨークで開かれた国連社会開発委員会で協議されることになっていたこと。(同委員会では、特 別報告者の任期をさらに2年間延長することが決議され、それを受けて国連経済社会理事会でその延長が承認された。)

同サミットに参加した各団体代表の協同作業でつくられたのが、「新世紀における障害者の権利に関する北京宣言」である。こ の宣言の中心は、「障害者の完全参加と平等達成のための法的な拘束力をもつ権利条約制定」ということで、これは中国サイドの 期待にそう形になっている。

同サミットの成果としてあげうることは、(1)DPI、WFD、WBU、IIおよびRIの5団体代表が一堂に会して協議し、 北京宣言のとりまとめに成功したこと、(2)同宣言をベースに障害者権利条約制定に向けて国際、地域および各国レベルでの協 力活動を実施することに合意したこと等である。

この合意に基づき、各団体は国連社会開発特別総会および2000年フォーラム(ともに6月、ジュネーブ)、ならびに国連新 千年紀総会(9-12月、ニューヨーク)などで同条約制定に向けた共同行動を積極的に展開することになっている。

しかし、国連の仕組みを知る多くの関係者が認めているように、条約制定には5年単位の時間がかかるため、きわめて息の長い 取組みが必要であり、いかにしてそのためのエネルギーを持続するかも各団体にとって大きな課題と云える。。にもかかわらず、 障害者権利条約制定は、2002年で終了するアジア太平洋障害者の10年以降も引き続いて障害者の完全参加と平等実現に向けての 国際的努力の継続が担保されるという意味できわめて大きな意味があると思われる。わが国関係団体としても、日本政府が 同権利条約の共同提案国となるか、少なくともその提案を支持するよう、あらゆる機会を利用して強力に働きかけていく 必要がある。