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第13回JANNET研究会報告

テーマ:IT革命は社会をどう変えるか。

講師:日本障害者リハビリテーション協会情報センター長 河村宏

2000年6月5日 於:戸山サンライズ

IT(情報通信技術)革命は、我々にとっていん石が落ちてきたような衝撃である、と表現する人もいる。

郵政省の調査によるとインターネットを使っている人は平成11年12月現在1059万人、この6月では1200万人と推定される。日本で開発された携帯電話のiモードはプロバイダーと契約をせずにインターネットを利用してバンキングやチケットサービスが受けられることから世界中の注目を集めている。しかし、画面に表示されている情報を音声化できないという問題があり、すべての人が利用できるようにする必要がある。

現在、インターネット上では就職情報やニュースなど誰でも便利に活用できるものが増えている。さらに本やコンピュータの販売など、個別のニーズに対応するように流通形態が変わってきた。また、国連のように情報のほとんどをインターネット上で提供するところもある。

これまで情報が得られる人はコンピュータを使える人だけだったのが、アクセシビリティ技術として画面読み上げや音声認識、または瞬きなど随意に動かせる身体機能を利用した操作が可能となり障害をもつ人も情報を得られるようになった。また、認知障害・知的障害や精神障害をもつ人の要求については十分に明確化されてはいないが、障害の最も重い人でも文字・画像・動画など様々なチャンネルをシンクロナイズ(同期化)した技術の中で何れかのチャンネルを使って情報にアクセスできるようにすることが考えられている。そこで、情報発信側は音声や点字に変換できるコンテンツ(情報内容)を作る配慮が必要となった。例えば、マイクロソフト社はBOOKREADER(電子図書の閲覧ソフト)の中にDAISY(デジタル音声情報システム)のモジュールを組み込もうとしているが、これによってユーザーは自身のニーズによってDAISYフォーマットのデータをBOOKREADERでもLPPLAYER(DAISY図書をパソコンで読むためのソフト)でも、PLEXTALK(録音図書読書器)でも再生できるのである。さらに、WCDMAなどインフラの技術が進めば回線のない発展途上国でもインターネットの利用が可能となり、データの圧縮技術やDVD-RAMなどのメディアが発達すれば、情報へのアクセスはより向上するであろう。

このような中で、DIGITAL RIGHT MANAGEMENT(ネット上のデジタル情報の権利の管理方式)などについても大きな問題が生まれている。ネット上でデータを販売することが簡単にできるようになったが、著作権の侵害が起こることに歯止めをかけにくい。このため利益を確保するために情報の鍵をかけたり暗号化などが行われるが、国際的に障害をもつ人のアクセシビリティを確保した情報提供が可能か考えていく必要がある。また、知的財産の共有を考えるとき、回線で繋ぐだけで情報が得られるが発展途上国においては所得に比べてより高い費用負担がかかる。発展途上国にとってその費用が平均賃金の何パーセントになるか、その地域の正当な費用を考える必要がある。障害者の自立を実現するとき、DIGITAL RIGHT MANAGEMENTは、グローバルな視点で格差を是正し、貧困を追放する新しい価格について考える課題を抱えている。

このように情報のアクセスは、DIGITAL DIVIDE(電子情報にアクセスするための手段における先進国と途上国との格差)の危機が進行しており、情報提供や選択に新たな情報リテラシィ(電子情報の読み書き)が求められるようになってきたと言える。

(報告者 日本盲人職能開発センター 井上英子)