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「JANNET NEWS LETTER」
(October 2000 第27号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<巻頭言>

国際技術協力を考える

(社)日本盲人職能開発センター 井上英子

 本年、政府は九州・沖縄サミットにおいて発展途上国へのIT技術支援を表明し、国際的な情報格差(デジタル・ディバイド)の問題を先取りして、今後5年間に総額150億ドルの包括的協力策を用意すると発表した。
情報格差は情報技術を使える人と使えない人との間、先進国と途上国といった国際間の他、年齢や所得、さらに身体的障害によることから生じる。
日本盲人職能開発センターでは、コンピュータ以前のタイプライターの時代から日韓タイピングコンテストの両国相互開催、さらに韓国や香港からの盲人留学生の受入を行ってきた。これは視覚障害者が経済的自立を行うために技術と知識の裏付けが必要という考えからであった。その後、1981年の「国際障害者年」を契機に、アジア・太平洋諸国の視覚障害者自身と指導員等の関係者と技術交流するために、毎年「国際視覚障害者支援技術セミナー」を開催し、さらに1996年からはJICA委託集団特設「視覚障害者支援技術コース」によって視覚障害者のコンピュータ利用を中心とした技術協力を行ってきた。
ITは福祉教育や医療等の分野で新しい可能性を秘めており、特に途上国の障害者にはデジタル・オポチュニティーという観点を重視していく必要がある。まず、障害者のために教育や就労の機会を保障し、ITを導入・活用するための技術者、さらにIT普及に資する政策の立案、ITを取り込んだ開発プランの策定を行う担当者の養成も不可欠である。
視覚障害者は、コンピュータを利用しやすいように特別に開発したソフト(音声、点字、あるいは拡大文字)の支援によって利用することが可能であるが、その反面、バリアーフリーを考慮しないホームページが多く見られインターネットの情報から隔絶されかねない状況にある。また、ラッピング(注)された情報へのアクセス権など課題が山積している。
障害者支援技術は、知的や感覚、身体的障害をもつ人々のニーズを初めから組み込み、その国の情報通信基盤や各地域間のネットワーク化の事情や言語によってカスタマイズできる国際的な標準化、そして経済性を伴いながら万人が利益を享受できるような技術が必要である。それはコンピュータに文字読み上げや文字拡大表示、音声入力ソフトが、テレビに字幕スーパーが標準装備されるように、また、障害者にとって必要性が高い携帯電話仕様の改良などが望まれている。障害が重度化、多様化、さらに高齢化する中で、IT分野は障害者がともに生きる21世紀に向け経済や社会に活力をもたらす鍵を握っている。