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「JANNET NEWS LETTER」
(October 2000 第27号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<トピック>

社会開発サミット特別総会と障害者問題

アジア・ディスアビリティ・インスティテート
中西由起子

 5年前「社会開発サミット」がデンマークで開かれた時には、世界はこぞってこれを歓迎した。グローバル化によって経済格差が広がる世界の状況に対して、社会開発をもって対処しようとしたのである。コペンハーゲン宣言での社会改善の約束はどの程度果たされているのかを問う「国連社会開発特別総会」が、6月26日-7月1日ジュネーブで開催された。日本政府代表団にNGOを代表して参加する機会を得たので、国内ではあまり報道されることのなかったサミットの内容を紹介したい。
「世界社会開発サミットとその後-グローバル化された世界での万人のための社会開発の構築」と題された会議には35ヶ国の国家主席、4,791人の政府代表、2,045人のNGO代表者が集まった。本会議場では毎日各国政府が自国の5年間での経済・社会発展状況を発表した。同時に3つに分かれたワーキング・グループが特別総会での採択のために準備された報告文書を合意すべく。連日11時、後半には深夜2時まで討議を繰り広げた。報告は「政治宣言」(第1部)、「WSSDの成果の実行の検討と評価」(第2部)、「コペンハーゲンでの1995WSSDでなされた決意実行のためのさらなる活動とイニシャティブ(第3部)に分かれる。
開会式で、デンマークのラムスセン首相は先進国にコペンハーゲン宣言での約束の履行のためさらなる努力をするよう呼びかけた。途上国に対しても問題提起はあった。例えばアナン国連事務総長は、「良い統治(good govemance)」と開発の関係、つまり債務削減や開発援助増加による財源が貧因層の利益となる社会サービスを提供するために使われること、もしくは、兵器購入や特権階級の生活向上に使われないことも訴えた。
「グローバリゼーションは、いかに我々が相互に結び付けられたか、そして我々の挑戦が社会開発においていかに類似しているかにもっと気付かせてくれた」とマレーシア代表が述べたように、各国が社会開発の問題のみを国内のみで処理できなくなり、平行して国際レベルでの経済問題を論じること無しには何の解決も見出せなくなっている。途上国にとって最重要課題は貧因の撲滅である。UNDP(国連開発計画)の貧因報告(Povety Report)によると、途上国の貧しい人たちの数は1998年に12億と見積もられた。それゆえアフリカの後発開発途上国や重債務国はカンボジア代表が述べたように、援助に追加の資金を加えることによって、政府開発援助(ODA)が世界中で全体的減少傾向にあることを非常に懸念した。
そのため障害者問題はあまり論じられなかった。実際本会議場を見回してみても、歩行障害など軽度の障害を持つ政府代表者も混じっていたが、障害分野を代表しているのは中国代表団のデン・プ・ファン(中国障害者連合会会長)と筆者のみであった。最終報告文書の第3部「社会の開発のためのさらなるイニシャティブの提案」でも、障害について以下のたった2項が当てられているにすぎない。
6.1bis.仕事場の環境の整備とデザインを通して障害を持つ人々のために雇用へのアクセスを保証して、そして教育と技能の獲得を強める方策を通し、可能なところならどこでも地域社会でのリハビリテーションや、そして障害のある人々を雇用する企業根の奨励策を含むこともあるほかの直接の方策を通して、彼等の雇用される可能性を向上させること。
会議と平行してNGOが開催したジュネーブ2000フォーラムでは、障害に関する会議は世界応用障害研究・情報ネットワーク(GLADET)が障害者インターナショナル(DPI)と国際リハビリテーション協会(RI)と共同で開催した円卓会議「万人のための完全参加」一つだけであった。活動報告に終始したスピーカーの中でDPIのレイチェル・ハーストのみが冒頭から「障害者の権利が侵害されていない国は世界にどこも無い」、「参加は権利の一部である」と強く聴衆に訴えた。
アフリカ代表の演説には必ずHIV/エイズが入っていて、問題の深刻さを伺わせた。障害問題での世界の関心はHIV/エイズに移っている。障害者運動は、権利援護の中に以下に彼等の問題を包括していくのかが問われていると痛感した。