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「JANNET NEWS LETTER」
(January 2001 第28号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<海外便り>

RIの21世紀への取り組み―リオ総会を中心に―

RI副会長 松井 亮輔

   20世紀最後の、また中南米地域でははじめての国際リハビリテーション協会(RI)世界会議(2000年8月25日~29日)に先立って、役員会(8月21日~22日)および総会(8月23日~24日)がリオ・デ・ジャネイロで開かれた。


新会長の選出
今回の総会のハイライトは、役員、とりわけ会長の選挙であった。会長には、北米地域担当副会長レックス・フリーデン氏と元教育委員会委員長で、昨年のロンドン総会で役員推薦委員会委員長に任命されながら、その任期途中で辞任したサイモン・ハスケル氏の二人が立候補した。フリーデン氏は、学生時代事故による頚椎損傷で四肢まひとなるが、その後ヒューストンを中心に自立生活運動を展開し、その第一人者となる。現在は、介助者の支援を受けながらヒューストンの総合医学リハビリテーションセンター・リハビリテーション研究所(TIRR)の上席副会長を務める。彼は、ブッシュ大統領時代、全米障害者協議会常務理事として1990年の「障害を持つアメリカ人法」の草案づくりに直接参画している。
一方、ハスケル氏は、ロンドン大学およびオーストラリアのディーキン大学でながく教鞭をとるほか、ユネスコ、ユニセフおよび国連開発計画などでもコンサルタントを務める障害児教育の世界的権威の一人。現在は、チューリッヒ大学客員教授として、スイスをベースに国際的に活躍。
いずれも会長候補として申し分のない経歴の持ち主と思われるが、8月24日に行われた選挙では、フリーデン氏が圧倒的な支持を得て、新会長に選ばれた。
同氏は、1992~96年会長を務めた故ジョン・ストット氏(脊髄損傷による両下肢まひ)に次いで二人目の障害をもつ会長となる。新会長のリーダーシップのもとに、RIはこれまで以上に他の国際障害団体と密接な連携を図っていくものと思われる。
同氏は、会長就任にあたって達成したい目標として、1.国連障害者権利条約の制定、2.RIへの障害者の参加機会の拡大、3.貧しい途上国などからの加盟団体を増やすことにより、RI基盤の拡大と多様化の推進など、を掲げている。 


障害者権利条約制定への動き
障害者権利条約制定は、1999年9月のロンドン総会で採択されたRI2000年代憲章および翌2000年3月北京での世界障害NGOサミットで採択された「新世紀における障害者の権利に関する北京宣言」に盛り込まれ、アーサー・オレイリー前会長などが中心となって、2000年4月ジュネーブで開かれた国連人権委員会や各国政府などへの働きかけが行われてきた。こうした経緯を踏まえ、フリーデン新会長は、オレイリー前会長に同条約制定を実現するための戦略をつくり、遂行する作業委員会委員長への就任を要請することで、新旧両会長が一体的に取り組むことになる。


RI新戦略プランづくり
RIは、21世紀に向けて組織とその運営のあり方を全面的に見直すとともに、今後優先的に取り組むべく課題について提言としてまとめるため、戦略計画作業員会設置を1998年のエルサレム総会で決定。当初1999年ロンドン総会でその素案を検討し、修正のうえ最終案をリオ総会に諮ることが予定されていたが、素案作成途中に委員長が交代するなどのハプニングが生じたため、結局この戦略プランづくりは、1年遅れの展開となった。同プランづくりとも関連したRIにとって最大の課題のひとつは、会費問題である。RI現行規約では、2年間会費を滞納した加盟団体で、会費納入期限までにその猶予または減免などについて事務局に申し出がなかったものは、除名されることになっている。
2000年8月現在のRI加盟国84カ国の地域別内訳は、北米2、中南米10、アフリカ16、アラブ10、アジア太平洋19、欧州27で、そのうち会費未納国が最も多いのはアフリカである。何らかの措置が講じられない限りは、貧困や旱魃などによる栄養不良、飢餓、エイズおよび紛争などによる障害発生率がきわめて高く、障害予防やリハビリテーションニーズが最も高い、アフリカからの加盟国が激減しかねない状況である。RIがあらゆるリハビリテーション分野をカバーする国際専門団体としてグローバルな役割を果たし続けうるためにも、これは放置できない深刻な問題といえよう。
役員会では、現在国際通貨基金(IMF)や世界銀行などを中心に検討されている最貧国の借款減免措置などを参考に、これらの国が引き続き会員としてとどまりうるよう、たとえば、会費を名目的な額にまで減額するなどの救済措置を講ずべく具体案をまとめ、2001年9月のベイルート総会に提案できるよう準備をすすめている。


2002年RI地域会議等の日本開催決定
オーストラリアで予定されていた2002年のRI総会およびアジア太平洋地域会議が、同国の国内事情で開催できないことがリオ総会直前に判明した。そこで総会中急遽アジア太平洋地域委員会役員会をひらき、協議したところ、アジア太平洋障害者の十年推進キャンペーン会議(大阪)およびDPI世界会議(札幌)の開催がすでに決まっている日本で、それらの会議とリンクさせての開催要請が決議された。その決議を受け、総会では満場一致で同地域会議および2002年総会の日本(大阪)での開催を決定。
したがって、アジア太平洋障害者の十年最終年にあたる2002年には、これらの国際会議が時を同じくしてわが国で開かれることになったわけである。