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「JANNET NEWS LETTER」
(January 2001 第28号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<巻頭言>

盲目の意味するものを変えていこう!

日本点字図書館 田中徹二

2000年11月20日から24日まで、オーストラリアのメルボルンで第5回世界盲人連合(World Blind Union)の大会(テーマは表題)が開かれた。世界115か国(加盟数は158か国)から国家代表320人、オブザーバーを含めると600人以上が、会場のタウンホールに集合した。私が宿泊したホテルにも、南米やアフリカなどの発展途上国の代表がたくさん泊まっていたが、朝食や夕食はみんな食券をもらっていて、ホテルのレストランですませていた。往復の航空料金を含めて主催国オーストラリアなどの財政的負担は大きなものがあったと思う。
しかし、4年前のトロント大会に比べると、準備体制がしっかりしていて、大会運営は非常に整然と行われていた。途上国の代表をはじめ、単独で参加する視覚障害者が非常に多いのもこの大会の特色だが、大勢のボランティアが配置されていて、単独歩行の人を見付けるとすぐ手引きする様子があちこちで見られた。ただ、それは見かけだけでなく、議事の運営、特に役員選挙でトラブルが起きなかったことにも表われていた。
あまりに整然としているので不思議に感じたほどだったが、テクノロジーのテーマセクションを聞いていて、Eメールの影響ではないかとふと思った。私が知っているアジアのリーダーたちも、最近ではほとんどみんなメールを活用している。視覚障害者にとって、手紙はもちろん、ファックスを送るにも人の手を借りなければならないし、ましてや読んでもらわなければならない。長電話は料金がかさむ。その点、メールは合成音声を聞きながら、全盲でもだれの手を借りず完璧に操作することができる。出発直前まで情報を交換し合い、相互の意見を闘わせることもできるのである。実際に顔を合わせたときは、握手するだけで意志が通じていることになる。4年前には、とても考えられなかった情景であろう。
北欧諸国の後押しもあって、多くの途上国では視覚障害者団体の組織化が進行している。それが加盟国数の増加につながっているわけだが、かつての先進国でもそうであったように、それらの国々では団体が力をつけることで、視覚障害者の地位を向上させる状況が生まれつつある。
今大会のテーマのように、視覚障害者が自己改革することにより、盲目が差別や憐憫の対象から、対等な一市民としての人間関係において、支障にはならないようにすることが求められている。今回は、世界の視覚障害者がそれをしっかり確認した大会であったと思う。