音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「JANNET NEWS LETTER」
(April 2001 第29号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<研究会報告>

研究会「開発と評価」概要

日本理学療法士協会 JANNET研修・研究委員長  田口 順子

 JANNETにとって新世紀最初の事業となった恒例の研究会は2001年1月9日(火)25名の参加者のもと、戸山サンライズにおいて行われた。
今回のテーマは「開発と評価」で、この分野で実績のある国際コンサルタントであり、アーユス仏教国際協力ネットワーク専門委員でもある源由理子氏を講師として招くことができた。リソースパーソンとして同ネットワークの枝木美香氏も同席いただいた。源氏は基本的な評価について事例を交えながら国際協力、開発活動評価の方法について説明された。概要は次の通り


  1. 評価とは
    プロジェクト実施前と実施後の変化を把握する活動で、自分達の事業を見直してさらに効果の上がる事業にしていくことを目標としている。次の活動を展開する段階で活用するためのフィードバックであり、マネジメントをしていくための過程。
  2. 何故評価するのか
    プロジェクトには一定の期間、目標、資源の枠がある。限られた資源の中でプロジェクトを進め改善するために評価する。新規類似プロジェクトへの教訓、提言となる。資金提供者への報告義務(アカウンタビリティ)を行い、支援を得る。
  3. 援助と評価
    評価をすることが目的ではなく、評価をすることによってどのように事業を進めるかが目的であり、本当に相手の役に立っているか、援助する側とされる側の関係、外部からの介入を明らかにしておくことが重要となる。
  4. 誰が評価を行うのか
    内部関係者による評価は内部の事情に詳しい反面、客観性に欠けることもある。外部第三者による評価は客観性は確保しやすいが、情報が得にくい面もある。受益者による参加型評価は学習過程としての評価である。また、混合チームによる評価もある。
  5. いつ評価するのか
    事前評価は診断的評価としてプロジェクト立案に反映させていく。中間評価は形式的評価をして実施中のプロジェクトの軌道修正へ反映させる。終了時評価は総括的評価として、援助継続・終了の判断、援助方針の見直し、類似プロジェクトへの反映に用いる。
  6. どこで評価を行うのか
    プロジェクトの内容、対象社会の情報が入手できる限り理論的にはどこでも可能。評価の目的、実施主体、実施予算等によって場所が異なる。
  7. 評価で何を何で見るのか。
    プロジェクト活動の阻害・貢献要因、運営能力、財政的要員、政策・制度的、社会的要因、実施プロセスの妥当性等を、効率性、計画の妥当性、効果、波及効果・影響、持続性等でみる。
  8. どのような評価手法があるか
    PCM(Project Cycle Management)法
    FASIDで開発。目的指向型。プロジェクト立案手法で援助プロジェクトを実施する側の視点に立ったマネジメント手法の意味合いが強い。
    RRA(Rapid Rural Appraisal)法 
    基本的には援助する側が情報を得るための調査手法。情報を使う主体は農村外部者による迅速簡易農村調査法。
    PRA(Participatory Rural Appraisal/Participatory Rapid Appraisal)法 
    住民による村の調査を住民による住民のための開発を実現するための手法で、調査の結果よりも調査のプロセス、調査を通しての教育効果が重視される。
  9. 評価実施上の留意点
    成績表ではないこと、意思決定のプロセスが明確であること、人びとの態度・行動変容のプロセスを評価することが重要。評価プロセスの中でのエンパワメントを諮り、受益者の抱えている問題、ニーズ等の認識共有が必要。


以上の説明に加えてシェア(国際保健協力市民の会)が1994年から1998年にかけてタイ東北部で実施したHIV感染の拡大防止を目標とするエイズプロジェクトの活動が紹介された。