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「JANNET NEWS LETTER」
(April 2001 第29号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<研修会報告>

CBRキャパシティ・ビルディング・セミナーに参加して

ベトナムの子ども達を支援する会 ボバース記念病院
古澤 正道(理学療法士)

 1月28日、JANNET主催による「CBRキャパシティ・ビルディング・セミナー」の研修会が、日本理学療法士会館で開催された。当日の出席者は33名であり、理学療法士、作業療法士、知的障害者部門のスタッフ、ODA関係者等々、多彩な職種やNGOの会員であった。
午前中は「日本CBRネットワーク」の渡邊雅行氏によるCBR(Community-based Rehabilitation、地域参加型リハビリテーション、地域に根ざしたリハビリテーション)の開設やネパールのCBRの実情についての講演があった。
午後は4グループに分かれての演習だった。渡邊氏は2歳の障害児を提示し、開発途上国では専門家が少ないゆえにこの障害児と接するボランティアのCBRワーカーを、外国人NGOとしてどのように援助するかを討議するよう勧めた。各班がこの児童の障害像をつくり、CBRワーカーが社会資源の動員や地域社会への融合を進めることへの援助方法について討議し報告しあった。参加者の多数がすでにCBRを実際に支援していたり、これから関わる予定をもつ多彩な職種のメンバーだったので、白熱した討議となった。
今回の研修会はCBRやCBRワーカーを援助するNGOスタッフ向けの組織的なトレーニングの場としては、我国で初めての機会であったといえる。事前に「アジア・ディスアビリティ・インスティテート」の中西由起子氏の編集によるテキストが配送された。開発途上国でのCBRの歴史や必然性、タイ・ベトナム・フィリピン・マレーシアなどのCBRの現状と課題が諸氏により執筆され、準備の情報として有用なものであった。
私は「ベトナムの子ども達を支援する会」を通じて、ベトナム南部メコンデルタのベンチェ省で1995年よりCBRの援助に参加している。この研修会後の2月上旬に、再びベンチェ省で援助活動を行ってきた(写真)。年収300米ドルのベンチェ省では159村中52村(32.7%)にCBRが普及し、主に農村婦人から528名のCBRワーカーが組織的に養成されてきた。省のCBR委員会は2005年までの5ヵ年プロジェクトとして、112村(70.4%)へのCBRの普及を計画している。
この2月の訪問では脳性麻痺を主とする肢体不自由児のみでなく、知的障害や聴覚障害をもつ子ども達とも多く接した。年長のポリオ児の進学や就職への相談も、CBRワーカーとともにした。肢体不自由以外の障害児への援助を社会参加に関する援助について、深く考えさせられた。集落から離れた家に住む知的障害児の融合に向けて、CBRワーカーが近隣の子ども達と接するため祭りや学校などの行事を利用しよう、市場へ連れて行こう、徐々にカフェー(村の喫茶店)へも連れていってみる、などの討議が村の診療所でされた。最後にCBRワーカーや診療所の職員から、このような意義のある話し合いは初めてだということばをいただいた。
JANNET主催の研修会は、私にとりベトナムでの障害児(者)の社会参加をみすえた援助をするのに有益であったと実感している。今後もこの種のセミナーをJANNETが企画してくださることを期待する。