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「JANNET NEWS LETTER」
(April 2001 第29号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<図書紹介>

「国際的障害者運動の誕生 - 障害者インターナショナル・DPI -」

ダイアン・ドリージャー著/長瀬 修 編訳
中西由起子訳 明石書店 1999年

  来年の2002年、札幌でDPI(障害者インターナショナル)世界会議が開催されるが、本書はDPI誕生の背景と歴史について、DPI誕生の大きな役割を担った一人であるダイアン・ドリージャーさん(カナダ)が書いている。原題は「最後の公民権運動-障害者インターナショナル」(The Last Civil Rights Movement : Disabled Peoples' International)として1989年に出版されているが、日本語版として長瀬修さん(障害・コミュニケーション研究所代表)が編訳したものである。
この本の発行は、DPI世界会議札幌大会を来年に控え、あらためてDPIを体系的に知るうえでは非常に喜ばしいし、役に立つ本である。
巻頭にはDPI日本会議国際部長の中西由起子さんがアジア太平洋の障害者運動とDPIについて書いているが、同じアジアの一員として、また本文内容を補完する意味でも非常に興味深い。
筆者のダイアンさんが、序文に寄せている言葉がある意味では本書の全てを言い尽くしているようにも思う。「この本は障害者がどのようにして世界70カ国以上で組織を作り、自分たちの権利のために声をあげたかという物語である。骨を折らずに出来上がった本ではない」と書いているし、「障害者にとって自分たちの過去の戦いを振り返り、未来の戦略を練るために役立つことを願う」とある。
DPIは、いわゆる福祉や医療の専門家たちが中心となるRI(国際リハビリテーション協会)に対立するところから始まった。そうして誕生したDPIも当初は混沌としていたが、世界各国にいる賢明なリーダーたちによって国際的な障害者運動になったといえる。まさに自立したのだ。本書にも多くのリーダーたちが登場しているし、これらリーダーたちの「声」は、当初の反発から共感、そして連帯へと少なからず既存の団体にも影響も与えた。
この本は、まさしく今だからこそ必要な本なのだ。現在の我々の運動は、過去に「声」をあげて行動する先駆者がいたからこそあるものだが、さらに我々が今後どのような「声」をあげるべきなのか、導いてくれるバイブルでもある。障害者運動は我々が勝ち取る最後の公民権運動である。

2002年第6回DPI世界会議札幌大会組織委員会 事務局長 西村正樹