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「JANNET NEWS LETTER」
(July 2001 第30号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<海外だより>

ヨーロッパ障害者フォーラムとその動き

JANNET会長 松井 亮輔

 今年2月14日欧州議会で、ヨーロッパ連合(EU)内のあらゆる短距離および長距離バスを障害者が利用可能なものにしなければならないという決議案が、296票対224票の賛成多数で可決されたことが、ヨーロッパのマスコミで大きく取り上げられた。この決議案を提案したのは、ヨーロッパ障害者フォーラム(EDF)の支援を受けている議員集団「欧州議会障害インターグループ」である。EDFは、2003年を「ヨーロッパ障害者年」とすることを提唱するなど、障害者の人権およびアクセス確立に向けて指導的な役割を果たすなど、その動向が最近米国をはじめ、ヨーロッパ以外の国でも注目されるようになってきている。以下では、EDFのホームページ(http://www.edf-feph.orgc)などで公開されている資料等に基づいて、その概要を紹介することとする。
EDFは、現在、障害分野のヨーロッパの代表的なNGO71団体およびEU加盟国の17の全国障害者協議会から構成されている。その年次総会等には、EU未加盟のヨーロッパ各国の全国障害者協議会やソーシャルパートナー(労使団体等)などもオブザーバーとして参加している。


EFDの目的および役割
EDFは、EUの障害者問題に積極的に取り組むため、障害当事者団体および障害関係団体により1996年5月に結成され、翌1997年1月から活動を開始している。その目的は、非差別の原則に基づき、EUのすべての関係機関および国際団体等において障害者の人権を前進させることである。その主要な役割の1つは、障害が機会均等の視点から見られること、つまり、障害者をケアやチャリティの受動的な受け手という見方から、自立、エンパワメントおよび平等モデルへの転換をはかるべく政治的環境をつくり出すことである。
こうした目的を達成するため、EDFはEU内のあらゆるレベルの組織活動に参加するとともに、外部のパートナー、とくにEUの諸機関および加盟国政府と密接に連携して活動を展開している。しかし、EDFは、直接具体的な事業を実施するわけではなく(それは、個々の加盟団体の役割である)、全体の、あるいは過半数の加盟団体にとって共通の活動やイニシアチブに焦点を当てることで、加盟団体の事業を補足することを意図している。
EDFはまた、適当なNGOが一定の地域で個別の、または共同の事業を実施するのを支援するため、補足的な道案内やネットワーキングの役割も果たしている。


EDFの当面の課題
EDFの2000年度予算約9千万円の約85%が欧州委員会からの補助金で、加盟団体の会費は予算総額の約3%にすぎないということにも象徴されるように、EDFの人的、財政的資源はきわめて限られている。したがって、EDFは、もっぱら加盟団体の資源に依存しながら、EUおよび加盟団体等に対して有用なサービスを効果的に提供していく必要がある。
EDFは、当面の取組み課題として、1.差別禁止法制の肯定的な側面と限界について明確に把握するため、そうした法制を持つEU加盟国および外部の国(とくに米国の「障害を持つアメリカ人法」)におけるそのインパクトを評価すること、2.直接、またはヨーロッパ社会NGOプラットフォーム(Platform of European Social NGOs:社会問題に関わるNGOの連絡協議会)に積極的に参加することを通して、欧州議会で現在検討されているヨーロッパ社会憲章改正に障害問題が十分配慮されるよう強力に働きかけていくこと等、を掲げている。