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「JANNET NEWS LETTER」
(July 2001 第30号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<トピック>

初めて「障害」が含まれたインド2001年国勢調査

アジア・ディスアビリティ・インスティテート代表 中西 由起子

 インドでの最新の障害者数は、1991年に全国抽出調査団体が行った調査に基づいた推定により人口の5~6%と発表されている。
10年に一度行われるインドの国勢調査では、独立後一度だけ1981年に障害に関する情報も集められたことがあった。1991年にはまったく障害は除外されていた。障害者団体の強力な運動が実を結んで2001年にやっと障害が調査項目に含められることになった。
1999年10月に、新聞報道から国勢調査の準備状況を知った障害者雇用推進全国センターは障害が含まれているか否かの質問状を家庭問題省登録長官に送った。12月の初めに副長官から障害は考慮されていないとの返事が届いた。政府の理由は

  1. 1981年の国勢調査は正確な推定障害者数を出せず不成功であった。国勢調査委員会はこの失敗の責任をとり、以降このような方法を継続しないこととした。
  2. データ処理の際に、障害の種類等に関する調査対象者の情報を抽出することは難しい。
  3. 障害者は自分の障害を隠すか、彼らの家族が情報を提供しないだろう。


 その年の暮れにインドDPIを中心に障害者団体が抗議行動を開始した。2000年3月7日に実施された1000人以上の抗議行動後、大臣たちが態度を変えた。6月11日に政府は2001年の調査に障害を含めると正式に発表した。 調査手順に関する3回連続の訓練も開催され、2百万以上の調査者が受講した。2001年2月に調査は実施され、同年3月1日時点での人口が発表されることになっている。
調査票の15番目の質問は市民の障害状況に関する情報にあてられている。 そして初めて、視覚、聴覚、言語、移動と精神の5障害が調査されることとなった。 1995年障害者法でいう障害者とは、医者によって診断された全盲、弱視、ハンセン病回復者、聴覚障害、運動障害、精神薄弱、精神病により40%以上の機能障害(損失)をもつ人と定義される。しかし調査ではそのような詳細な定義は使われていない。人口調査委員は、人口調査は障害の調査と異なるものであることを強調して、調査のプロセスを容易にするために故意に単純でわかりやすく定義を採用したと言っている。広大で非識字の人をかかえるインドでは、少々の妥協は仕方のないことであり、たとえ障害の定義に問題があってもむしろ調査が実施されたことを前進ととらえた方がよいと思われる。