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「JANNET NEWS LETTER」
(October 2001 第31号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<海外便り>

世界理学療法連盟アジア西太平洋地区学術大会(WCPT-AWP Region) 報告

 社団法人 日本理学療法士協会 国際部担当理事 内山 靖

 2001年7月19-23日の間、シンガポール王国において標記の第1回学術大会が行われた。会場となったコンベンション・センターは市内中心部に位置する近代設備を駆使したもので、1階にはお洒落なレストランや有名ブランド店が軒を並べる巨大モールの一角に配されていた。
開会式には、所管大臣が直接参加されてご挨拶されるとともに、その後のレクチャーと懇親会までご一緒された。以前も東南アジアの別の国で開催された学会に大臣が出席しており、各国から集まった参加者に対する敬意を感じた。
学会には同地区に該当する14ヶ国から約300人が参加し、熱心な討議がなされた。学術大会では日頃の臨床の視点が重視され、オーストラリア、中国(香港)、日本、アメリカ合衆国から招待された理学療法士の講演とワークショップが盛況であった。その内容は、痛み、転倒、筋骨格系の障害、物理療法など多岐にわたった。総じて、神経系に関する話題が少ない一方で、骨関節系の治療技術や障害予防に対する関心が高いように感じた。また、一般演題は総数こそ多くはなかったが、シンガポール国内の理学療法養成施設を卒業して海外の大学院に在学中の若い理学療法士が、故郷に錦を飾る形で立派な発表をしていたことに感動を覚えた。彼女らの向学心と母国の保健医療に対する真剣な眼差しは、シンガポール発展の原動力になっているのだろう。東南アジアでは日本に次ぐ高齢者問題を抱えるシンガポールでは、転倒の原因究明と予防に対する取り組みが盛んで、国民に対する啓発活動も模索されていた。また、中国系、マレー系、インド系、その他の民族が集うシンガポールでは、食習慣なども含めた体型や運動機能の違いなども報告されていた。
理学療法士の養成は、国によって、3年制あるいは4年制の専門学校、短期大学、4年制大学、修士・博士課程で行われている。今回、参加国の教育関係者が一堂に会して各国の現状と問題点を話し合う場が設定された。具体的な議論の後には、メーリングリストが作成され、情報交換とともに継続した話し合いをしていくことが確認された。
アジアには、これまで馴染みの深いアジア理学療法連盟(ACPT)がある。今回報告した世界理学療法連盟アジア西太平洋地区学術大会(WCPT-AWP)との統合についてはACPT理事会でも話し合われた。学術的にはWCPTによる一元化の方向であるが、東南アジア諸国に共通した課題や親睦を深める場所を残す意味があるとする意見もある。これについては、平成14年11月にタイのバンコックで開催される第8回ACPTで引き続き話し合われることになった。
理学療法に関連した国際会議は幾つかあるが、平成14年5月には第7回IPC学術大会がオーストラリアで、平成15年6月には第14回WCPTがスペインで、平成17年には第2回WCPT-AWPが韓国で開催予定である。世界に目を向けることは固有の伝統と問題を再認識するよい機会ともなるであろう。