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「JANNET NEWS LETTER」
(October 2001 第31号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<トピック>

カンボディアおよびバングラデシュにおける理学療法および作業療法の実践と教育に関する報告

日本作業療法士協会 前国際交流委員長 長谷龍太郎

 医療技術協力に関するフォローアップ調査が平成13年2月11日~18日迄の8日間国際医療技術交流財団によって行われた。今回の報告は理学療法と作業療法の実践と教育に関する部分を抜粋したものである。


I. カンボディア

  1. 療法士の養成について
    カンボディアで養成されているのは理学療法士であり作業療法士は養成されていない。国立の専門学校でフランス語による3年間の専門教育が行われ、学生は卒業試験に合格すると、理学療法士の資格を取得する。
  2. 視察病院
    a)カルメット病院リハビリテーションプロジェクト
    NGOが運営するリハビリテーション施設を見学する。この施設は地雷による下肢切断者に対するリハビリテーションを行っており、米国人理学療法士や日本人義肢装具士が参加していた。理学療法士の主たる対象疾患は、下肢切断者であるが、内戦が終結し、地雷の撤去技術が進み、下肢切断者は減少傾向にある。
    b)カンボディア国立医療技術学校
    理学療法の教育施設であり、専任教員4名とベルギー人作業療法士による教育が行われていた。教育期間は3年間で3150時間におよぶ。1989年から現在までに136名を養成している。理学療法士協会のHay Sundy氏は、内戦後教育は安定してきたが、外国人教師の確保や技術の向上、生涯教育の充実が大きな問題であると述べた。
    c)社会福祉省のリハビリテーション部
    社会福祉省は2004年までに国内に19のリハビリテーションセンターを展開する計画を持っている。しかし、公務員の待遇に起因する職業意識の低さや施設建設の遅れなど、社会的なインフラストラクチャーの不十分さが障害となっている。
  3. 研修のニーズ
    理学療法士の教育や臨床活動は行われているが、脳性麻痺や脳血管障害等の中枢神経性疾患が増加しており、十分な研修や技能の習得が求められている。また、理学療法士がCBRで働く環境が十分ではなく、今後の経済復興や政治的安定が求められる。理学療法に対する技術と教育の国際的支援が切実な問題である。
  4. 今後の課題
    下肢切断に対する理学療法が主であったが、今後は多様な障害に対する技術研修や人材の育成が必要となる。障害者に対する理学療法の貢献をこの国のシステムで展開できる人材の育成が重要であり、国際的な教育や指導が求められている。

II. バングラデシュ

  1. 療法士の養成について
    バングラデシュでは理学療法と作業療法が英国系NGOによって養成されている。4年間の講義と1年間の臨床実習が英語とベンガル語によって行われ、教員はバングラデシュ人と外国人教員である。養成が開始されたのは1995年であり、卒業試験に合格すると、理学療法士あるいは作業療法士の資格を取得する。
  2. 視察病院
    ゼネストと安息日が重なった為に、現地視察は困難であったが、保健省の人材開発局長の連絡でリハビリテーションセンターと学校の見学が可能となった。施設はダッカ郊外に位置し、脊髄損傷患者や脳性麻痺児の治療とリハビリテーションを行なっている。治療部門である病院とリハビリテーション施設、遠方からの患者居住施設、理学療法士および作業療法士の養成施設と寄宿舎を備えている。
  3. 研修のニーズ
    バングラデシュの理学療法士・作業療法士は若い専門職集団であるが臨床的技術や知識に対する積極的な学習意欲をもっており、今後の技術的支援と交流が期待される。現在は、海外の作業療法士が教員と臨床で指導的な役割を果たしており、教員確保が重要な問題となる。
  4. 今後の課題
    理学療法と作業療法の歴史は短く、NGOによる臨床と教育が行われている。今後は国立病院に理学療法や作業療法が定着し、障害者サービスをこの国の文化や社会システムに応じた形で展開する為に人材の育成が重要であり、国際的な教育と技術指導が求められている。