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「JANNET NEWS LETTER」
(October 2001 第31号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<図書紹介>

「学び・未来・NGO-NGOに携わるとは何か」
若井晋・三好亜矢子・生江明・池住義憲 編
新評論  定価3,200円
中西由起子訳 明石書店 1999年

1990年代に入ってからNGO(非政府組織)やボランティアといった言葉がマスメディアや人々の関心を呼ぶようになった。しかし、NGOの存在意義・現状・将来への課題など、NGOに深く携わる人々のなかからこうした問いを深く掘り下げて論じたものはなかった。

一方、90年代はあらゆる側面で「グローバル化」が急速に進行した10年であり、NGOへの期待も大きくふくらむ画期ともなった。とくに「経済のグローバル化」は世界的規模で貧富の格差を広げた。「グローバル化」の最大の問題は上からの、強者からのそれであって、止まらない歯車のように世界を動かしている。一握りの金持ちや大国が今も地球規模で経済的・政治的支配を拡大させている。まさにそのような状況のもとでNGOの存在とその将来像を問い直そうとするのが本書である。

非政府(Non-Governmental)の「非」が意味するものは何なのか。政府組織に「あらず」という時、それは具体的に何を意味するのか。NGOは何のために、誰の側にたって、何処へ向かって歩むのか。本書はこうした問いに正面から取り組む。

執筆陣は国内外のNGOで10年、20年と関わってきた人、研究機関やJICA(国際協力事業団)、助成団体でNGOとの連携をすすめてきた人など多岐にわたり、総勢19名に及んでいる。このなかにはJANNET会員団体でもあるアジア保健研修所(AHI)の佐藤光さんがNGOのアカウンタビリティ(説明し社会的責任を担うこと。通常、「説明責任」などと訳されている)について書いている。NGO組織運営のあり方を考える上で実に示唆にとんだ問題提起である。

自らの経験を問いつつ、これからNGOに関わろうとする新世代の人たちへ発信するメッセージの書である。一読をお薦めする。

国際民衆保健協議会(IPHC)日本連絡事務所代表 池住義憲