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「JANNET NEWS LETTER」
(January 2002 第32号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<海外便り>

韓国での連続ピア・カウンセリング講座

ヒューマンケア協会事務局長 中原えみ子

 韓国で初のピア・カウンセリング講座が社会福祉法人韓国小児麻痺協会の正立会館主催で、3回(講座は6回)に分けて開かれた。以前より交流の深いヒューマンケア協会は全面的に協力することとなった。形式としてはピア・カウンセリング集中講座(基礎講座)を昨年の6月4日~6日と8日~10日、8月9日~11日、13日~15日と2泊3日で4回行うこととした。1回の参加者は12名前後、計50名近い人の中から24名を選び、9月20日~22日、25日~27日のピア・カウンセリング養成講座へとつなげていった。リーダーは6月と9月に中原が、8月に塚田が担当することとなった。
ピア・カウンセリングは日本でも1988年にヒューマンケア協会が初の講座を行い、全国に広がっていった経緯があるが、障害者の自立の支援として注目され、1996年には国の施策である市町村障害者生活支援事業の5つの必須事業の中の1つにピア・カウンセリングが取り入れられた動きがある。
ピア・カウンセリングを韓国でも普及させたい、ついてはリーダーとして講座を担当してほしいとの依頼を受けたことから準備が始まった。講座の内容については全て日本側に任せてくれたので、基本から忠実に行うこととした。日本の障害者がそうであったように、韓国の障害者がより自信をもって、自立生活の理念を含め、今後のピア・カウンセリングの普及に努めてくれることを目的に計画を立てた。そのために講座の前日の午後と初日の午前中に「韓国の障害者施策と運動の歴史」「自立生活運動について」の講義があった。
通訳は日本に留学していて、社会福祉を学び、また日本で介助も実際に行っているチョン・ヒギョンさん。ヒギョンさんは韓国から研修生が来るたびに通訳や翻訳を手伝ってくれているので、私にとっては心強いパートナーだった。
参加者は小児麻痺者、脳性麻痺者、頸椎損傷者等であったが、外に出るようになって間もない人、福祉会館で相談員として仕事をしている人、大学生等様々だった。傾聴と対等性の意味を話しながらセッションを重ねていくうちに、参加者の表情は徐々に変わっていった。注目と信頼を得ることでどんなにか人が変わっていくかを目の当たりにした瞬間だった。文化が違い、社会福祉制度も違う国で、1人1人の命の重み、自分から変わっていくことで社会を変えていくことができるというピア・カウンセリングの考え方が、時間と共に受け入れてもらえている手応えを感じた。
6月の講座後、参加者はサポートグループを作り、月1回づつ集まることを決めた。その動きは今は週1回になっている。1人1人が解放され、誰かのために動きたいと思った時、社会を変えていく1歩が始まる。韓国でピア・カウンセラーが生まれるのもそう遠くないはずだ。