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「JANNET NEWS LETTER」
(January 2002 第32号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<巻頭言>

JANNETに望むこと

プノンペンの会 北川泰弘

 私たち電気通信業界のOBが、カンボジアの地雷被害者に義肢を贈ろうと「プノンペンの会」を設立して今年は10年目である。先ず、国立身障者リハ・センターの初山泰弘総長(当時)に義肢援助について貴重なご教示を受けた。義肢援助は、打ち上げ花火のような援助ではなく、製作し寄贈した義肢のアフター・ケアー、カンボジア人義肢装具士の育成を含む息の長い援助でなければ意味がないと教えられた。その結果、1993年から2年づつの任期で、田澤英二氏ご推薦の若い義肢装具士の方々を英国のNGO「カンボジア・トラスト」の義肢センターにボランティア・ベースで長期派遣し、義肢の製造をして頂く事を始めた。1996年から実質的な義肢援助の業務を「希みの会・HOPE」に引き取って頂いた。派遣された多くの義肢装具士の方々の義肢援助のご活躍が実を結び、技術移転が進み、義肢の製作の業務が現地の義肢装具士の手に移りつつある。
私たちは、この援助を始めた事により、日本人義肢装具士が国際社会で活躍する道を開いたと自負している。しかしながら、義肢援助を、民間の援助から政府援助(ODA)に肩代わりして拡大して貰うという、当初の目標が実現しなかった事を残念に思っている。政府のODAによる地雷被災国への援助額を見ると、1998年から2000年までの3年間に約39億円の援助が行なわれ、その約90%が地雷除去で、被災者援助は10%以下であった。政府は義肢援助のみならず、被災者援助全体に熱意がないのである。除去援助費の大部分は国連を通じて、湾岸戦争やフォークランド戦争で地雷の知識を得て、復員後、地雷除去を職業とする欧米の元軍人の給料や、地雷除去機を納入する日本や欧米のメーカーの売り上げとなり、地雷被災国に行く金額はほんの僅かである。
それにも関わらず、日本政府はアフガニスタン復興援助費も地雷除去に向けようとしている。私は、日本の地雷援助費は被災者自身の役に立つ、医療、義肢装具、身体的・精神的リハビリ、社会復帰訓練、地域の復興・開発に充てられるべきと思う。地雷の除去はこれまで地雷で儲け、豊富な知識・経験をもつ欧米に任せればよい。日本政府の地雷被災国に対する援助が被災者に向かうよう軌道修正をさせなければならない。それには、個々の援助団体では無力である。JANNETがその力を発揮すべきではないだろうか? JANNETの10周年を機に、日本政府がODA予算の単年度主義にとらわれないで、息の長い、現地への技術移転を目標とした地雷被災者援助を行なうよう、JANNETが日本政府の政策アドバイザーとしての役目を果たされるよう、望んで止まない。