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「JANNET NEWS LETTER」
(January 2002 第32号)
障害分野NGO連絡会(JANNET)発行

<メンバーズプロジェクト>

日本作業療法士協会の国際協力の取り組み

社団法人 日本作業療法士協会 日本国際交流委員会委員長 佐藤善久

 1965年の「理学療法士および作業療法士法」に基づき我が国の作業療法士が誕生し、35年余りが経過した。その萌芽期の作業療法士の養成には、海外の作業療法士の支援が大きな原動力となった。特にWHO(世界保健機構)の派遣で多くの米国作業療法士が来日し、当時の養成校で作業療法教育に携わったことは、日本の作業療法の基盤作りに大きく貢献した。また、国内の多くの作療法士が海外で学び、資格や学位を取得し、その経験を基に作業療法士の教育に携わった。つまり、日本の作業療法は、国際交流の中で日本文化や医療・保健・福祉制度と融合しながら成長してきたと言える。
21世紀の今、日本作業療法士協会はこうした欧米から受けた支援を生かし、構築された作業療法の知識と技術を発展途上国の作業療法士の支援に生かして行くことが指命と考えている。また、海外の作業療法士との交流を通し(特にアジア地域)、相互に作業療法の理念や知識・技術について研鑽し続けることが相互の発展のために必要不可欠である。現在、作業療法士協会の国際交流活動(支援)として海外への作業療法士の派遣と海外作業療法士の日本国内での研修を支援することの2点を考えている。
派遣事業への取り組みとして、国際協力事業団JICAによる青年海外協力隊の派遣支援がある。1975年にマレーシアへ作業療法士を派遣して以来、2000年までの25年間で87名の作業療法士が青年海外協力隊員としてアジア、中東、中南米、アフリカなどの国々に派遣された(表参照)。隊員達は、日本の臨床現場とは大きく異なる国々で現地のニーズや地域特性、文化を考慮しながら、よりよいサービスを提供するために苦闘する日々を送りつつ、その意義の大きさを強く感じている。異文化を通して自国の作業療法の展開を考えることや国際的視点を持つこと、国際貢献することの意義を再認識している。また、隊員達の実践的な技術提供が現地から高い評価を受け、継続的な支援を要請されることも大きな活力となっている。現在、派遣要請が増加する中で応募者数が追いつかない実情もあり、日本作業療法士協会として支援体制を強化することが課題となっている。
また、派遣事業として本年度、来日経験のあるケニアの作業療法士の要請に答える形で、作業療法の育成のために小児領域の作業療法士をケニアに派遣したほか、新規に作業療法士の養成校を計画する国々からの教員派遣の要請も増えつつある。
発展途上国の作業療法士に対する日本国内での研修支援として、国際医療技術交流財団(JIMTEF)の個別研修プロジェクトへの支援がある。本プロジェクトは、発展途上国の医療技術の向上に寄与しうる人材の育成を目的としたもので、研修生個人のニーズを考慮し、国内のリハ施設等で約11週間研修するものである。平成11年度よりインドネシア、ケニア、韓国、スリランカから計7名の研修生を受け入れ、本年度は、昨年9月より11月まで札幌、兵庫の施設で熱傷や脳卒中、脊髄損傷などの身体障害領域及び発達障害領域の作業療法や福祉用具、CBRなどの研修機会を提供した。また、研修生は休日に開催された地元の学会に参加し、日本の作業療法士との交流機会も得た(写真は本年度の研修生2名)。継続的な支援のために、研修参加者のニーズとコミュニケーションの問題をクリアできる施設の確保が現在の課題となっている。
また、平成13年度に新設されたJICAの「医療技術スタッフ修練コース(診療放射線、リハビリテーション)」が、発展途上国の医療技術者の支援を目的に2002年1月より3ヶ月間集団研修として実施される。本年度は、各国からのリハビリテーション領域の医療技術者の研修への応募者は多かったものの作業療法士の応募はなかったが、日本理学療法士協会及び放射線技師国際協力協会との協力体制の基に支援していきたいと考えている。今後は、海外の作業療法士に対してこうした機会の国際的な啓蒙活動も重要な役割と考える。
これらの国内外の支援体制に加え、日本作業療法士協会では、作業療法士の国際情報の集約と提供システムの確立が重要と考えている。近年、海外の作業療法士からの日本国内での就労に関する問い合わせや日本の作業療法士の海外での就労・修学に関する情報の提供の要望が増えている実情にあわせ、情報の整備とホームページなど情報の提供のあり方について検討している。

表=年度・地区別作業療法士の青年海外協力隊員数の推移(作業療法白書2000より引用)

アジア オセ
アニア
アフリカ 中近東 中南米 合 計
1975-1980 4 0 1 0 0 5
1981-1985 2 0 1 0 0 3
1986-1990 6 1 11 0 3 21
1991-1995 10 1 3 4 6 24
1996-2000 11 0 6 4 13 34
小計 33 2 22 8 22 87