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障害をもつ人のすみよいまちづくりをすすめる「アクセス環境改善評価指針」策定委員会 報告書

5 アクセス環境改善評価の進め方

(1)「アクセス環境改善評価委員会」をつくる

委員会の仕事

1.まちづくりウォッチング……調査と評価を行う

 自分たちの住むまちのアクセス環境について、公共建築物や交通機関などハード、ソフト両面から、調査を行い、評価をします。

調査表の作成

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調査対象施設等のリスト作成

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調査ワークグループの形成

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実地調査

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調査結果のまとめと評価

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評価のまとめ

2.まちに対し、アクセス環境改善の提言していく。

 調査と評価にもとづいて得た結果を、まちの行政や施設の管理者、関係機関、関係者に提言を行い、改善を働きかける。

3.継続的にアクセスチェックできる人と組織を作る。

 調査と評価、そして提言は1回行えば済むというものではありません。
 継続的に、繰り返しアクセス環境の改善をチェックし、改善を働きかけていく恒常的組織として定着していくことが求められます。そのために推進していく核となる当事者をはじめとした人材の発掘・養成と、組織づくりが必要です

メンバーの構成

 委員会のメンバーには次のような人たちが考えられます。

  • 評価委員会
    • 1.当事者の参加
      • まちの環境へのアクセスにおいてハンディキャップをもつ当事者が
        参加するハンディを持つ層
        • ●障害者(身体障害者、知的障害者、精神障害者、難病者など)
        • ●高齢者
        • ●外国人など
    • 2.まちづくりや施設の関係者
      • ●行政の福祉、建築、交通、教育等の関係者
      • ●社会福祉協議会の障害者や高齢者担当者
      • ●関係施設の管理者
      • ●関係機関、関係企業など
      • ●建築、福祉、交通等の専門家
    • 3.まちづくりに関心をもつ市民
      • ●地域住民
      • ●ボランティア

 委員会には、さまざまな立場の人が加わり、それぞれからアクセス環境改善の評価をしていくことが望ましいといえましょう。その中でも、アクセス環境にハンディをもっている当事者の方々から直接に評価をしていただけるようハンディをもつ当事者が委員となって参加することは欠かすことができません。
 この場合、ハンディをもつ当事者とは車いすや視覚障害という障害者といわれる方だけでなく、歩行が大変になってきた高齢の方とか、知的なハンディをもつ方とか、日本語がわからない外国人とか、幼児をつれたお母さんとか、何らかのハンディをもつ方々と幅広く考えていくことが必要です。

メンバーに求められるもの

 「アクセス環境改善評価委員会」は、これからのまちづくりの上でたいへん重要な役割を担っています。委員会の調査結果や提言が広く受け入れられ、公式に認められていくには調査や評価が正確な内容や公正な姿勢が求められます。
 これは、委員会に対してと同様に、委員へも求められるものです。

1.まちづくりへの関心と熱意をもっている。
2.実際にまちづくりの活動に関わり、一定の知識や経験を持っている。
3.ハンディをもつ人の立場に立ってチェックできる視点の確かさをもっている。
4.特定の障害や考えに片寄らず、さまざまな立場や考え方を公平に判断できる。
5.地域の当事者や住民とつながっていて、ニードを的確に把握している。

(2)調査の実施

調査に必要なもの

調査票

  • 地図
  • 住宅地図のようになるべく詳しいものがよい。
  • メジャー
  • 2m~5m位のもの
  • 画板
  • 調査票や地図をはさめるもの。
  • 雨対策として、ビニールなどで被えるようなものが必要。
  • 風対策として、紙がめくれたり飛ばされないように、はさむものが必要。
  • 鉛筆・色鉛
  • 筆調査票には鉛筆やボールペン、地図には色鉛筆やマーカーペンが必要。
  • カメラ
  • 良いところ、改善すべきところを写真で記録をとっておく。
  • テープレコーダー
  • 歩きながら記入するのが大変なら、テープレコーダーで録音しておく。
  • 身分証明書・趣意書
  • 評価委員会で調査員の身分証明書を発行しておいた方がよい。また、調査にあたっての趣意書を用意しておいて相手に渡すのも良い。

(3)調査の手順

調査地域を選ぶ

 1班が1日で回れる範囲は、建物なら大きさにもよりますが3、4ヶ所から7、8ヶ所くらいが限度と考えて、計画を立てましょう。
 駅や公共施設を中心とした地域、商業地域、住宅地域など事前に地域の特性を把握しておきましょう。

調査対象を決める

地図を用意して、各調査班ごとに調査する建築物や施設、道路などを決め、地図上に印を記入しておくとよいでしょう。

 また、調査対象の施設から建物の図面をいただければ事前にもらっておいて、調査する箇所や設備を記入しておくとよいでしょう。

 調査の相手先には、事前に調査の件を連絡した方がよいか?

 調査のルールとして、事前に調査相手先に調査目的、方法、結果の扱い方などについて説明し、了解を得ておくことが基本です。できれば施設を管理される方に一緒に回っていただいて施設設備の改善状況や考え方を説明していただくことも大切です。調査を通じて、アクセス環境改善の意味を少しでも理解してもらうようにしましょう。
 ただし、特に調査先の従業員のサービスの仕方などを見たいときには、事前の通知や上司の方が一緒に回ったりすると、その時はいい対応になるというマイナス作用も予想されます。こういう場合は、調査日のみ事前通知せずに調査するなど何らかの方法を考えておく必要があります。
 これまでの例では、店舗などではその場で説明してもさほど抵抗はないようで、その場での対応に大方の施設で応じてくれます。しかし、いつでも求めに応じて、調査の主旨や責任団体の連絡先などを明らかにした趣意書や身分証明書を携帯しておくべきでしょう。

調査日・時間の設定

 調査対象によっては定休日があったり、平日と土日では人の動きがまったく違う場合があります。曜日、時間等に注意しましょう。

 駅やデパートは、混雑しているときがよいか、空いているきがよいか?

 ハード面は時間で変わることはあまりありませんが、ソフト面は違いがあることが考えられます。例えば、駅で人手の多い昼の時間帯の方が少ない夜より介助に応じてくれるだろうと考えられます。しかし、逆にラッシュ時は忙しくて対応がわるくなったりします。時間や状況によっていろいろ違いが出てくるので両方を見れればいいのですが、両方が困難であれば、問題のより多い方を選んだ方がよいのではないでしょうか。

詳しく記録する。

調査は、一度見たことでもしばらく時間が立つと細かな点は忘れてしまいます。ですから、調査中になるべく細かなところまで記録しておくことが大切です。
 記録用紙は、あらかじめ定められたチェックポイントに関する記述だけでなく、気がついたことを自由に記入できるフリースペースを設けておいて記述できるようにしておくと良いでしょう。また、記入が大変な場合には、カセットテープレコーダーを用意して口頭で記録しておく方法もあります。また、言葉では表現しにくいこともありますので、簡単な絵やイラストをつけておくことも大切です。

問題ヶ所はカメラに

 カメラはとっておいた方がよいか

 問題のあるところを、文字だけで表現することはなかなか大変です。また、視覚的な表現の方が理解しやすいといえましょう。その意味で、写真をとっておくことは大切です。
 ただし、写真撮影は調査される側にとってはたいへん刺激的ですので、あらかじめ、調査主旨を伝えて了解をとっておくことが必要です。

6 全国の環境評価をつなげる……今後への提案

 それぞれの地域で、「わがまちのアクセス環境改善」評価をおこなったら、次に、それを全国でどうつなげていったらよいでしょうか。

全国共通のマニュアルを作る

 これまでに、各地の環境整備要綱や指針、まちづくり条例などを受けて、国レベルの集成として建設省の「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」が作られました。守られるべき基準や目標とする基準を細かく数値で表されています。しかし、この法律でカバーされているところはかなり限られています。面積2000平方メートル以上の「特定建築物」であり、建物の共用エリアだけです。これでは、駅のホームやファミリーレストラン、ホテルの部屋などは対象になりません。また、視聴覚障害者のように情報やコミュニケーションの不足がアクセスの障害になっている人たちの問題や、ソフト環境の問題は取り上げられていません。
 ハード面の基準はかなり整備されてきましたが、ソフト面はまったくこれからといってもよいでしょう。
 これら全てを含めてもう一度アクセス環境の改善のための基準と調査・評価リストを作成し、全国レベルの「アクセス環境改善マニュアル」が必要ではないでしょうか。

「全国アクセス委員会」(仮称)

 上記のアクセス環境改善基準とチェックリストを作成し、調査手順をも含めた「アクセス環境改善マニュアル」を策定するために、全国規模の委員会が必要になります。
 この委員会はマニュアル作成だけにとどまらず、マニュアルに基づいて実施した各地でのアクセス環境評価の結果から、アクセス環境改善の提案や勧告を行える「全国アクセス委員会」の性格をもつものにしなければなりません。

「アクセス診断士」養成セミナーの開催

 アクセス環境改善の評価は専門家しかできないというのでなく、誰もが参加できるものでなければなりません。しかし、この調査方法を伝達し、客観的な視点で見ていくことができ、活動をコーディネイトしていける人材は欠かせません。
 こうした人材を仮に「アクセス診断士」あるいは「アクセスコーディネーター」と呼ぶことにして、それを養成する全国的なセミナーの開催が必要です。
 セミナーでは、アクセス環境改善の意義、調査の方法、評価の方法や分析、まとめ、環境改善への提案などを学習し、一定の講習を終了した人を「アクセス診断士」として認定し、各地での環境改善評価にあたっていただくようにします。

シンポジウムの開催

 以上は、アクセス環境改善評価を進めるための手だてですが、アクセス環境改善の風土を広げていくために、一般の人たちを対象にしたシンポジウムなどの啓発のイベントの開催も必要です。

「ベスト・アクセス」の表彰

 また、アクセス環境改善の優れた事例……例えば、個々の建築物の改善、接客におけるコミュニケーションのよい事例、まち全体が優れたアクセス環境にある事例など……を取り上げ、これからの他のモデルとなるよう表彰していくことも環境改善の風土づくりの一助となります。

7 座談会……まとめにかえて

●座談会
出席者 堤 愛子/高橋 玲子/大槻 芳子/丸山 一郎/坪松 真吾
司 会 大須賀 郁夫

1.アクセス調査委員会の趣旨と経緯

★大須賀 この2年間の評価委員会のまとめということで、座談会を始めたいと思います。
 まず、それぞれ自分の障害から、今まちがどういう状況になっているかを語っていただきたいということがひとつです。そして、八王子から横浜まで行った調査の感想をまとめていただきたいと思います。そのあと、環境アクセスとはどういうことかという観点で、評価をどのように考えるか出していただいて、今後の方向性につながる提案をしていきたいと思います。
 では丸山さん、このアクセス調査委員会の趣旨などについて、最初に説明していただけますか。
★丸山 まちづくりをやっていかなければならないということはさかんに言われますが、今のまちのどういうところから直すべきか、どういうふうに直すべきかということの総合的な考え方がないのではないかと思います。
 3年前に一度、日本のなかで理想的なまちづくりが進められているところを探そうとしたことがあるのですが、うまくいきませんでした。もちろん、いいまちもあるのだけれど、みんな“点”でしかなく、まち全体を評価することができなかったのです。各市町村の社会福祉協議会で、たとえば車いすガイドブックや車いすトイレマップ、やさしいまちガイドマップといったマップづくりは結構やっています。しかしそのまちがよくなっているかというと、必ずしもそうではない。まちの現状はわかったけれども、どう改善していくかという視点が欠けています。そこで、とくに障害をもっている人たちはどういうふうにまちを判断しているのかというようなことを、ぜひ研究したいという経緯がありました。
 固い言葉でいえば、まちづくりそのものを評価するということです。このまちは理想的なまちに比べてどの程度のところにあるのか、どこを直さないといけないのか、その優先順位はどうなのか、そういう評価基準をつくることによって、自分たちでまちの現状を改善していくことをより推進できないだろうか、という思いがありました。
 住民にとって、とくに障害のもつ人にとって、本当に住みよいまちなのかどうかの判断を、簡単にわかるようなかたちでつくりたいというのが、そもそものきっかけでした。
 最終的にはその評価基準に基づいて、どこのまちがいいのかというような順番をつけて、よりよいまちづくりを推進できればという思いがありました。そういうねらいがあったのですが、簡単じゃなかったですね。
 このような経過のなかで、結論としては一応、形はつくったということになると思います。

2.調査を振り返って

★大須賀 丸山さんから、アクセス調査委員会の経過についてお話しいただきました。この2年を振り返ってみて、あるいは自分の住んでいるまちで、アクセスというものをどうとらえたかということ順番にお話ししていただけますか。
★堤 私は車いす使用で、歩くこともできるという立場です。まちづくり調査については、ソフト、ハードの両面があると思います。
 私の住んでいる町田の場合は、福祉環境整備要綱が徹底しているまちです。それなりに段差は削られており、一時は東京の何割かは町田に集中しているといわれたくらい車いす用トイレはたくさんあります。
 しかし、行政がハード面をある程度整えても、そこに住む人の意識でせっかくのハードも生きてこないということがあります。たとえばスロープの部分に自動車が乗り上げていて車いすが通れなかったり、車いす用の駐車場が自転車置き場に化していたり、という光景をよく見かけます。すると車いす用の駐車スペースの確保のためにロープを張ったり三角のポールを置いて自転車の放置を防ぐわけです。車いすの人がひとりでそこへ行くと、わざわざ車から降りてそれをどかすなんてことはできないから、よけい不便になってしまう。そういうイタチごっこみたいなことが繰り返されたりします。
 最近すごく頭にくるのは、近くの郵便局は入口に階段があるので、インターホンが付けてあって、呼び出せば係員が来てくれるということになっているのですが、そのインターホンの前にいつも自転車が止めてあるんです。だから、インターホンまで手が届かない。ポストの前も同じ、自動販売機の前も同じことです。
 つまり、いくらハード面で整備されても、そこに住んでいる人のマナーが悪ければ、それが使えなくなってしまうという問題がひとつあります。これは、マイナスの意味でのソフト面の問題です。
 しかし、ハード面が整っていないから外に出ないかというと、そんなことは全然ないわけです。逆にソフトの面でそうとうカバーされている部分もあります。段差があったって、声をかければ手伝ってもらえる。そう考えると私は、今日本中で出かけられないところはないと思っています。ソフト面の対応もここ数年よくなってきたと感じています。私が車いすを使い始めた5年前は、駅に行っても「今人手がないから」と簡単に断わられました。あるいはタクシーも、車いすを積み込むのがイヤで乗車拒否もよくありましたが、今はタクシーの乗車拒否はまずありません。当たり前のように車いすを積んでくれるし、電車でも、「人手がないから使わないでください」といわれていたような駅が、隣の駅から前もって駅員さんを呼んでおいて階段なども確実に対応してくれるようになってきて、さまざまなシステムのソフト面はずいぶん変わってきたと思います。
 ですから、まちの調査や基準をつくるのがなぜむずかしいのかというと、私たちがまちのなかを移動しているときを考えてみてもわかるのですが、ハード面の基準ということだけではなく、それに対する住民の意識やシステムづくりのソフト面など、いろいろなものが絡み合っているからです。
 もうひとつは、どれだけ経験を積んでいるかとか、人との交渉の仕方とかいった障害者自身のソフト面もあります。ですから、一口に評価の基準をつくるのはむずかしいという気がします。
★大須賀 高橋さんはどうですか。
★高橋 まちを評価する基準として、視覚障害者にとっていちばん重要なのは、移動に危険がないことだと思います。自転車や看板がはみ出して立っていたりしないかとか、歩道と車道がきちんと区別されているか、車止めがつまづいたりぶつかったりすると怪我をしそうな形でつくられていないか、植え込みが出っ張っていたり不規則に置かれたりしていないかなどがチェックのポイントになります。でも、広い視点でまち全体を評価しようという姿勢は、今までの視覚障害者にはあまりなかったように感じます。
 駅のホームに点字ブロックがなかったときはとても危険で、電車を降りた瞬間から誰かの手が必要だったと思うのですが、今は点字ブロックが広く設置されてほとんどの駅が利用しやすくなりました。点字ブロックのような特定のハードにかんしては、解りやすいだけに視覚障害者側からも要望が出しやすいのです。駅でいえば、点字ブロックだけではなく自動改札のところで誘導チャイムを鳴らして欲しいとか、券売機のボタンにも点字をつけて欲しいとか、そういう要望が少しずつ形になってきています。
 ところが、一口に“まち”と言われてしまうと、ホーム上の点字ブロックのような「特定の条件下での一つのハード」の域を越えてしまっていて、何からどう要望していいのかわからないという感じになってしまいます。点字ブロックや音声信号機があるだけでは、そのまちが「安全」とは言えません。たとえば、視覚障害者は点字ブロックの上を歩いている時には安心して気を抜いていることが多いので、ブロックの上に自転車や電柱がやむなく置かれてしまっていたり木の枝が伸びてきてしまっていたりすれば、点字ブロックの存在がかえって大きな危険につながりかねないのです。音声信号機も、周囲の騒音や通りの広さ、道の交叉の仕方等によって音の大きさや鳴らし方がしっかり調整されていなければ、交差点で逆側の信号が青になった時に間違えて渡ってしまうといった危険も出てくると思うのです。騒音の大きさは車の量やその他の状況、たとえば開いている間だけ音楽を鳴らしている店がちかくにあったりとかによって変化するし、音声信号機の音の大きさを決める際には周囲に住んでいる人たちとの関係も無視できません。まちをよくしていきたいと思っても、ハード面で「分かりやすい要 望」を出していくことは、視覚障害者にとって意外に難しいのです。

3.車いす中心ではみえなかったソフトの問題

★高橋 今回、アクセスの基準を考える中で、私にとっては、まち・建物への物理的アクセスよりも情報へのアクセスのほうが大きな問題だということを感じました。点訳や朗読等を介して視覚障害者がさまざまな情報を得るためには、サポートする側も受ける側、つまりサポートを依頼する側も大変な労力を使わなければなりません。情報は常に変化しているわけですから、一度作ってしまえば半永久的に役立つスロープや点字ブロックとは違って、常にサポートの依頼とそれに応えてくださる方の存在が必要であり続けるのです。
 今までの車いす中心のまちづくりには、そういう視点は含まれにくかったように思います。視覚障害ということも含めてまちづくりを考えると、今までとは違った視点が必要なんじゃないでしょうか。人をどう集めるか、制度をどうするかという問題が大きくなるように感じました。
 たとえば、見える人たちが当たり前に見て情報源にしているまちに溢れる広告は視覚障害者には見えないわけです。それはやはりアクセスできていないということだと思うんです。広告内容を提供してくれるシステムが必要だと思いますが、現状ではそういったものはありません。そういう面でアクセス度がチェックしきれない部分がたくさんあるということを、今回の調査を通して感じました。
★丸山 人をどう集めるかということは、制度があっても必要な人数が確保できるかというような意味ですか。
★高橋 まずは制度自体があるかどうかの問題です。地域でひとりで生活できている視覚障害者はたくさんいますが、その人の力量で人を集めているというところが多分にあるのではないでしょうか。ところが、晴眼者で時間を割いてくれるような知り合いが近くにいない人でも、図書館での対面朗読ができてからは、人手が足りずに限られた時間だけかもしれないけれど、とにかく以前よりは自由に本が読んでもらえるようになったわけです。ですから、今の段階ではまずさまざまな情報アクセスを保証する制度ができることが大切だと思います。
★大須賀 大槻さんはいかがですか。
★大槻 聴覚障害者の場合は、たとえばホテルの部屋に入ってしまうと外部との連絡がむずかしいという面があります。また、エレベーターのなかで、非常ボタンを押しても、向うからの声が聞こえないということがあります。
 私は、新宿のセンチュリーハァイアットに泊まったことがありますが、部屋の中にテレビがあって、ボタンを押すと文字でインフォメーションがわかるようになっていました。このように、聴覚障害者でも外との連絡がとれるような設備があるといいと思います。
 堤さんや高橋さんと行った八王子の現地調査で、一緒にバスに乗るという経験をしてみて、車いすでバスに乗るのは大変だなと思いました。運転手は知らん顔をしている。乗り合わせたお客さんも無関心で見ているだけです。助けようともしない姿を見て、私はびっくりしました。
★大須賀 やはり情報面、ソフト面についてご意見が出されましたね。

4.考えられていない聴覚障害者への緊急時の対応

★大槻 たとえば今サリンの事件とかが起きて、途中で電車が止まっても、どうしたのかわからないことがあります。緊急時には文字板でもいいので情報を流すシステムがほしいですね。
★堤 今回ホテルなどを調査して、聴覚障害者への緊急時
の対応がほとんど考えられていないと感じました。
★大槻 そうです。部屋の入口にブザーがありますが、私には聞こえませんので、フラッシュにしてほしいですね。
★堤 大槻さんのご主人がおっしゃっていたのですが、ホテルで人が訪ねてきたら青いランプ、緊急時に赤いランプがつくような装置があればいいな、ということがありました。それから、トイレや洗面所を使用しているときに、そこにいるということがわかるような小窓みたいなものがあればいいという話も出ました。
 もうひとつ印象的だったのは、郡山に行ったときに聴覚障害の人たちが集団で宿泊していても、コンコンとドアを叩いてもお互いにわからないから、ドアに新聞紙かなにか挟んで開けっ放しにしておいて、それがあるときは勝手に入っていいという合図にしているんです。しかし、ホテル側は聴覚障害の人が宿泊したときのマニュアルなんて用意していないから、コンコンと叩くことしかできない。まして緊急時は動転しているだろうから、何も考えつかないと思うんですね。
 郡山の駅で聞いたときも、電車が遅れるときは放送していますと盛んに言うわけです。「だって聴覚障害の人は聞こえないでしょう」といって初めて問題点がわかるというように、さまざまな社会のシステムのなかには、聞こえない人がいるという前提がないのだなと感じましたね。まだまだ一般社会の意識にのぼっていないということですよね。
★丸山 障害をもたない人間のほうがイマジネーションが非常に落ちているんだよね。障害の体験がないというだけでなく、思いやるというのか想像力が欠如している。だから、逆に障害をもった人が、そういう条件のなかでどうして生きているかというところを知らせる必要はあると思いますね。
★堤 そう。視覚障害者の人が道を聞いているのに「あっちよ」と指でさす人が多いというのと似たような問題だと思いますね。
★大槻 社会のなかには聞こえない人も、見えない人も、足の悪い人も必ずいるのだということをまず認識してほしい。

5.今、まちに一番望むこと

★大須賀 問題点はハード、ソフトのことが中心になって出てきたのですが、障害によってアクセスに違いがあるということがわかりました。これをどうまとめようかということですね。
★丸山 たとえば、わがまちの一番の課題は何でしょうかといわれたら、どうですか。
★堤 思いつくままでいいですか。電動車いすのアクセスの問題で、バスにリフトをということと、リフト付のタクシーの普及、あとはドア・ツー・ドアの輸送システムです。
 ハード面では、町田でいうならば、ある程度の建物はなんらかのかたちで車いすが入れるようになっているのですが、その場合アクセスできるところは1ヵ所とか、限定されています。実際に調査したところであるデパートでは、新館は駅まえの1階からは入れなくて、坂をのぼって2階からでなければ入れない。本館のほうは、商店街側から入ろうとすると段があるから、やはり坂をのぼって2階の入口からしか入れない。それから、多くの鉄道の駅では車いすは特別のルートで他の人と違うところを通らないといけないので、待ち合わせをするときは非常に困ります。
★高橋 私個人としては、そのまちのどのお店でも、気持ちよく商品の説明や声かけをしてもらえたらいいなと思います。たとえばパン屋さんで、「ちゃんと説明してくれる人が今日はいないな」とか「今日は込んでいて忙しそうだから、説明してもらわなくても済むいつものパンだけ買っていくか」なんて考えなくてもいいように、どこのお店にいつ行っても、商品説明の仕方が徹底していて、視覚障害者を見たら援助が必要なのだなと気づいてくれる、知らないお店でも安心して楽に買い物ができるまちがいいなと思うんです。そういうことをまちじゅうで徹底してくれたら、私はそのまちに一生住みたいと思います。
 それから、路上の放置自転車をすっきりさせてほしい。たまに、路上駐車には懲役1年くらい科したっていいなと思うこともあります(笑)。たぶん歩道に自転車を止めている人たちは、そのために目の見えない人が怪我をするかもしれないということには気がついていないんだと思います。歩くための歩道には物を置いたり自転車を止めたりしないことの徹底、そんなことを私はまちに望みたいです。
★堤 放置自転車やポストやインターホンの前に置く自転車、自分が気づかずにやっていることがどんな意味をもつのかということを、みんなに知ってほしいですね。どんなにハードを整えても、そんなことがある限り住みやすいまちにならないと思います。タバコのポイ捨てが罰金になるくらいだったら、それこそ放置自転車を罰金の対象にしたっていいんじゃないでしょうか。
★大槻 ろうあは外観からわかりにくい障害です。ですから、自分から行動しないと理解してもらえません。聞こえない人がなにか尋ねるときには、みんなが手話をわかるわけではないから、筆談、掌に書くという方法もあります。なのに、「聞こえないんです」というと、そうですかと行ってしまうことが多いんです。とにかくコミュニケーションができるように、なんでもいいから書いてほしいです。
★丸山 どういうところで書いてくれないのですか。ここだけは書いてほしいというところはありますか。
★大槻 コミュニケーションが必要なときです。
 誰もが、聴覚障害者と接する時、最低限、筆談すれば大丈夫なのだということを知ってほしいですね。
★丸山 じゃあ、おばあさんが外国人に出会ったら逃げてしまうみたいに、コミュニケーションができないからといって逃げてしまうんですか。
★大槻 逃げるということもありますが、困った顔をされることもあります。私は逃げる人を追いかけて行きますけれどね(笑)。
★高橋 みんなが、掌に書けば耳の聞こえない人もコミュニケーションがとれるのだということを最低限知っていれば、たとえば緊急事態が起こってもそういう方法で知らせることができるわけでしょう。それはとても大切なことだと思います。

6.ハードが先か、ソフトが先か

★大須賀 実際にまちを歩いてみると、結局はソフト面との絡みが大きくて、ハードだけでは評価しきれないということがわかってきました。そのソフトの部分をどう見ていくかということについてはどうですか。
★事務局 今回現地調査に行って驚いたのは、藤枝に行った際、ハード面のアクセスという意味ではまだよくないまちだったのですが、そこに住んでいる障害をもった方々はみなさん、人が親切だから暮らしやすいとおっしゃるのです。
 予算など手当てできれば、ハード面はある程度変えていくことは簡単だと思いますが、人の心を変えていくのは本当にむずかしいことだと思います。ですから、藤枝のようなまちは、行政が積極的にハード面に力を入れると、本当に暮らしやすいまちになるのではないかという感じをもちました。
★丸山 今の話を極端に言うと、みんなが親切でいつでも快く手伝ってくれるから、スロープをつくる必要はない、という考えができますよね。でもそれがはたして親切でしょうか。スロープやエレベーターを付けることが、まずは親切だと思っていたのですが、必ずしもそうじゃないということになりませんか。
★堤 十数年前の話ですがある大学で、学校側がアクセシブルにするためにエレベーターを付けようかといったとき、そこにいた障害学生たちが拒否をしたという話があります。いろんな障害者がいて、エレベーターのボタンを押せる人なら使えるでしょうが、押せない人もいるわけです。結局あるところで線引きされてしまうから、それならば、エレベーターを付けるというようなことより、誰もが手伝ってくれるようになるほうがいいから、エレベーターはいらない、という主張でした。今はもう付いていますが。
 私も、20年前の運動の過程では、駅のハード整備の前に、みんなが車いすの重さを知ることで、「だからエレベーターは必要なのだ」という思いを社会が共有してからつくるべきではないか、と考えていたことがあります。エレベーターがなぜ必要なのかということが社会に理解される前にハード面が先行してできあがってしまうと、障害者はやはり社会から取り残されていくのではないかという気がしていました。
★丸山 今の話はアメリカ式にいえば全然理解できないね。
★高橋 アメリカでは、「彼は障害者なのにインディペンデントだね、自立しているね」と言うときは、ひとりで何でもできるというイメージがあるんですね。しかし、本当の自立というものは、ひとりで何でもできるということ以上に、自分のできないところは素直に人の力を借りられること、そこで人との関係もうまくつくっていけることが自立じゃないかと思います。
 視覚障害には、どんなにハードが充実しても人の手を借りなければならない部分はとても多くあるように思います。たとえば買物に行って、すべての商品に点字のラベルがついていて、手に触れてわかるようになっていたとしても、パックされている肉のどれが新鮮かを選ぶことは、絶対に人の力を借りないとできません。
 デパートでも、エレベーターに全部点字が付いていて、音声で誘導してくれてひとりでエレベーターに乗れるけれど、まわりの人が無関心なところと、エレベーターには何もないけれど、視覚障害者を見つけたら店員さんがきちんと対応してくれるところと、どちらがいいかといえば、やはりソフト面での徹底がされているほうを私は評価してしまうんです。
★堤 たとえば肢体不自由でどうしても介助が必要という場合、アメリカでは、そのへんにいる人をあてにするよりも有料で専従の介助者を頼むという方向に発展していったでしよう。その考えが今、日本の自立生活センターの運動にも反映されていますが、それで全て解決とはいきませんよね。
 必要なところには介助専門のシステムは当然あるべきですが、その一方で、広く浅くのソフトシステムをどう浸透させるかですよね。その場その場で助けてくれるシステムと、必要なところは集中的に専門の介助者にいてもらうという。だから、アメリカ型の考え方と日本の支え合っていくというような考え方がうまく融和していくと、いいまちづくりになると思います。
★丸山 私も賛成です。完全自立できるように最大限整備するのは当然です。そこがまだ曖昧なので、どうしてもソフトの話にいっちゃうという感じがしますね。たしかにソフトは必要で不可欠なものではありますけど。
 さきほど藤枝の話を皮肉っぽく言ったのは、みんなでいつも快く手伝うということはいいのだけれど、アメリカ式にいえばそれは反対なんですよ。まず障害者が自立できるように最大限ハードを整備することが大事で、そのうえにたってソフトということになると思うんですね。
★高橋 ハードが優先ということですか。
★丸山 ええ、そうですね。ADAの考え方は、障害者も他の人と同じやり方でできるようにするということが原則です。「この階段は抱きかかえてあがればいい」というのではダメで、抱えなくてもいいように整備しろ、というのが基本ですよ。
★高橋 それはコミュニケーション障害ではなく、身体障害の場合の考え方ではないですか。
★丸山 そうではありません。たとえば駅のアナウンスも、必要なアナウンスは最大限する。また、最近は地下鉄などでも、耳の聞こえない人のためにということも考えて、電光表示がありますが、それも最大限付けろということなんですね。放送でも可能な限り多重放送にする、ビデオでも文字を付けるということです。
★高橋 もちろん最大限に対応してほしいということには賛成なんですが……。たとえば視覚障害者は、スーパーマーケットの棚で欲しい商品を探せないわけです。だから、すべての棚に毎日変化する商品の音声案内と価格の案内とをつけるということも可能だと思います。しかし、そうなってくると、それを使わないといけないという感じになってきてしまう。実際には、いちいち立ち止まって耳を傾けながら端から順々に探していくよりも、誰かに「玉子どこですか」と聞いたほうがずっと早いわけですよね。ですから、ハード面で最大限可能に近づけることはできるけれど、アクセスという点でいえばコミュニケーション障害者にとっては、欠落してしまう部分があるような気がします。
 また、こういうハードがあったらいいのではないかと思っても、実際にできてみると、こんなに面倒臭いのだったら人に聞いたほうがいいというようなことが、視覚障害者の場合には多いんです。
★大須賀 考え方は悪くないのに信号機の盲人用の押しボタンや福祉会館の電子白杖など、どこにあるかわからないし、どうやって使うのかということもわからないというようなことがありますね。
★高橋 電子白杖が用意されていても、やはり初めての場所では「人」による案内・介助が受けられる方が安心です。それで、歩くところがそれほど複雑でなければ、1回目は、その建物の人に案内されて電子白杖を使ってみても、次からはわざわざ慣れない電子白杖に持ち変るより使い慣れた自分の白枚で十分事足りてしまう。このように、複雑なハードが効果的に使われない場合が多いのです。
★大槻 私たちも、以前、駅に公衆ファックスを置いてほしいという要求をしたのですが、いざ置かれてみると、壊れっぱなしです。なぜか鍵をつけてあって、駅員さんに頼んでからでないと使えないので、忙しいときには大変です。ですから、やさしそうな人を見つけて、電話をしてもらうほうが早いですね。
 自分でどうしてもできないことは人に助けてもらうというか、協力していただくということが、聴覚障害者も多いと思います。
★大須賀 高橋さんの意見は、ソフトとハードをあまりにも対立的にとらえすぎているような気がするんですが。
★高橋 視覚障害者側からの要求が未整理なために、行政もひとまず設置してみようということで設置するハードを用意してくださるのですが、視覚障害者側からは「そんなものは使えないよ」となってしまうケースが多い。それがハード面を強調するのを私が敬遠する理由です。最大限可能性が達せられるようなハードが整っていくこと自体に反対しているわけではありません。
★堤 好きなほうを選べればいいんじゃないでしょうか。ハード面が最大限あって、でも人に聞いたほうが早いと思ったら、そうすればいい。その選択が、今の社会の意識では、ひとつの設備やシステムができてしまうと、それを利用しないといけないかのように思われがちですよね。
★高橋 そう。せっかくつくったのに使わないじゃないかといわれちゃうんですよ。

7.すべての人のためにハードは最大限整備する

★堤 小田急線では、車いすに対応するために、まず駅員が改札口で声をかけて、エスカレーターで手伝ってくれて、そして、安全のために車掌のいるいちばん後ろの車両へ連れていかれてそこに乗るというシステムができています。それは初めて電車に乗る人にとってはすごく親切なシステムで安心できるんです。ただ、車いすにはすべてそうするというマニュアルができあがっていることが問題だと思います。
 私のように手に力があって自分でエスカレーターに乗れれば、駅員さんを呼ぶより、ひとりで上がったほうが早い。車両だって降車駅のことを考えて自分の好きなところに乗りたいのだけれど、それが許されない。駅員さんが危ないといって追いかけてきて、いちばん後ろへ乗りなさいと無理やり乗せられる。ですから、最大限可能なシステムをつくっておいても柔軟に対応できる、つまり利用する側が好きなほうを選べるようになればよいと思いますね。
★高橋 それは理想的だと思いますが、視覚障害の場合、可能性をとことん追求していろんな設備を整えてしまうと、実際には使われないものがあまりにも多くなってしまうんじゃないかなという気がします。
★大須賀 それはつくり方の問題であって、考え方自体が誤っているとは思いませんが。
 この論議は、ひとつの分かれ目になるような感じもしますね。つまり、アクセシブルというのは、すべての人のためでなければいけないという立場をとるけれども、現実の世の中はそうではないわけでしょう。たとえば、葬祭場はあまり使わないから直さなくていいとか、そういう考え方に近づいてしまう危険性があるんじゃないでしょうか。
★丸山 もちろんバランスはあると思います。北極の果てまでアクセシブルにしておけ、とは言いませんが、アメリカはそれをやったわけでしょう。ウィスコンシン州の住人には車いすを使う人はひとりもいない人口150人のあるまちで、バスにリフトを付けないといけないといったわけです。旅人が来て乗るとき、アクセシブルでなければいけないから、という理由です。
★大須賀 それをどう評価するかですね。というのは、町田は学校に車いす用トイレとスロープを付けたわけです。これは防災ということを意識したわけではないけれども、もし阪神大震災のようなことが起こったら、避難してきた障害者にとってはトイレが使えるという状況を生み出すわけでしょう。ですから、アクセシブル・フォー・オールという考え方を根底においておかないとダメなんじゃないかと思います。
★堤 たしかに旅人が行くという可能性を考えることも必要でしようね。町田の場合、一時期、どの集合ビルにも車いす用トイレを付けたのですが、利用者がいないところは鍵がかかっていたり、物置になっていたりする現状はあるわけです。ある意味では、使う人がいなければ物置になってもいいんですよ。必要なときにはすぐ使えるようであればいいわけですから。防災という意味だけでなく、小中学校は最近では社会教育で市民が夜間学校を使ったりすることもあります。ですから仮に生徒に車いすの子がいなくても、車いす用トイレの設置を最低条件にしておくことは必要ではないかという気はします。
★丸山 でも、車いす用トイレに鍵がかかるという状態は、まだ発展途上だと思います。みんなが理解していないことと悪用するというような問題で鍵をかかるわけでしょう。
 霞が関あたりのビルはほとんど車いす用トイレが設置されていますが、利用する人があまりいない。私が使おうとすると、警備員が飛んできて、「これは車いすの人が使うところです」と言うんです。普通のトイレと同じように使えばいいんですよ。
★堤 車いす専用にしてしまうところが問題なんでしょうね。

8.大切なのは選択できること

★丸山 ハードをどこまでやればいいかという問題で、自治体に要求をしていくと、そこまで配慮しなくてもいいじゃないかという話がよくあります。たとえば都のセンターでも、2階まで上がれるのだから3階はいいじゃないかという発想が常識でした。つまり、3階までいく意味をみんな理解していないんです。じゃあ何階までならいいんだ、というような議論があったわけです。低床のバスも1時間に1台通ればいいというのだけれど、全部低床でないと意味がないわけです。最大限やるべきじゃないのかな。
★高橋 低床バスが1時間に1本ではなく2本のほうがいいに決まっています。2台自動販売機が並んでいたら、1台だけ点字が貼ってあるよりも2台とも貼ってあるほうがいいのは当たり前です。私が言いたいのはそうではなくて、「ここまではハードでやる」と、どんどん上を追求してしまうことによって、かえって不便になってしまうことだって、あるということです。
 うまく表現できないのですが、さきほど、聴覚障害者からはあまり要求が出ていないという話になった時に、大槻さんがまず言ったのは手話のことでした。手話通訳者の派遣が簡単に受けられるのだったら、極端にいえば電光掲示板なんてなくても、ことはすむわけです。手話通訳者なら駅名だけでなく、非常事態が起きた場合でもすべて聴覚障害者に伝えられるけれども、電光掲示板は非常事態が起きたらそこで消えてしまうかもしれない。そういう意味で、ハード面だけでどんどん可能性を追求してそれに頼っていってしまうと、ハードが働かない緊急事態やハードの故障が起きた時、ハードの無い場所に行ってしまった時に、それに変わるソフトの準備がなくなってしまっていてとんでもないことになるという危惧がありますね。
★堤 10年ほど前に障害者のなかで「電動車いすを海に捨てる」という運動がありました。それは、電動車いすが普及しかかったときに、踏切の途中で電動車いすが動かなくなってしまって、それで亡くなった障害者がいたんですね。もし介助者がいればその事態は避けられたわけだから、我々は電動車いすを拒否するというのです。
 でも、現実には電動車いすの便利さのほうがはるかに普及して捨てる運動はストップしたわけです。つまり、それは使う人が便利と感じるかどうかが問題なんです。たとえば手話通訳者がいれば電光掲示板は必要ないといったって、ひとりで行きたいという人もいるかもしれないでしょう。そのあたりがひとつのポイントという気がしますわ。
★丸山 同じような例ですが、重度の肢体不自由の人がいて、その人はリフトを使えば簡単に移動できるけれど、自力ではかなりの時間がかかる。ベッドからトイレまで移動して帰ってくると半日終わってしまうというようなことでは自立とはいえない、せいぜい15分くらいですませるのが自立である、というような議論もあったのだけれど、それはどっちが自立かという問題ではなく、両方あったほうがいいということだよね。
★堤 そのあたりは使いこなす側の問題になりますが、ハードは最大限開発されていて、そのうえで障害者が選んでいける、またコミュニティがもっているトータルな資源のなかで選択していけるということは重要ではないでしょうか。

9.どのようにしてモデルをつくるか

★大須賀 私も各地に調査に行ってみて、地元のことしか知らないと、そのなかで自分たちにとっていいとか、悪いといっているだけで、他の地域と比べてみて「まだこの程度しか進んでいない」というような話にはなりにくい。まちづくりの評価を出すということはむずかしかったのですが、モデルを出すということは大事なことではないかと思うのですが、そのあたりについてはどうでしようか。
★堤 この間調査のあとで、視覚障害者、聴覚障害者、車いすの人にとって、ある程度環境が整っているモデル的な建物はどこかという話になって、出た答えは障害者のスポーツセンターでした。
 他のところは、車いす対応はある程度配慮されていても、聴覚障害者の避難誘導、あるいは視覚障害者の点字サービスや案内表示などが抜けているところがすこく多かったんです。
★高橋 スポーツセンターでびっくりしたのは、一つ一つの部屋の名前やロッカー・キー番号が点字で表示されていることに加えて、ジュースやアイスクリームの自動販売機にまでちゃんと点字がつけられていたことです。自動販売機は中身が変わると貼り替えないといけないから、ソフト面もすごく充実しているなと感じましたね。
★大須賀 自動販売機は大変みたいですね。貼るのはいいけれど、どんどん変わっていくから。
★堤 なぜ充実しているのかというと、その建物、あるいはその組織のなかに障害当事者がいるかということが大きなポイントだという話があったんです。町田の図書館があれだけいろんな配慮がされているのは、視覚障害と肢体不自由のダブルハンディをもった人が職員としているからではないか。障害者スポーツセンターのスタッフにも車いすの人と聴覚障害の人がいます。視覚障害者だけいないという話だったんですよね。でも、かなり配慮はしてある。もちろん、障害をもった利用者も多いわけですが。
★高橋 利用者が多いということも、配慮がどこまで進むかの決め手のひとつだと思いますね。

10.コミュニケーション障害という視点をどう組み入れるか

★堤 私たちがどういう視点で評価基準をつくるかということは、そこにあるわけですよね。ハードだけに比重をおいた評価基準をつくってはまずいということでしょうね。
★丸山 だから、たとえば市役所で、視覚障害者が来たとき全部歩けるように点字ブロックが整備されていたとしても、職員にガイドする姿勢がないとダメ、聴覚障害者が来たときに表示がすべてあったとしても、通訳を呼ぶ姿勢がなかったらダメと、そういうことでしょうね。
 今までは、とくにコミュニケーション障害という視点は、まちづくりといわれる範疇に入っていませんでした。今回の評価基準には、コミュニケーション障害の人たちの評価も入れて、ハードにプラスして、そういうソフトの部分がなければダメだということです。
★大須賀 そう思います。どこの整備条例やまちづくり条例を見ても、みんなハードばかりでソフト面についてはほとんど書かれていません。そこが誤解をつくりだしている気がするんですよね。町田市の建設部か何かにソフト課をつくって、これからはハードのチェックだけでなく、ソフトのチェックもするというんでしょう。
★堤 ええ、整備要綱の段階では、ソフト面の対応は福祉事務所の管轄だったらしいんですが、それを建築のほうに移行するようです。どういう動きになるのか、楽しみです。
★丸山 ADAはかなりソフト面について言及しています。つまり、通常のやり方でやらなければならない、ということを強調しています。たとえばレストランであればメニューは点字になっているか、メニューを読む人がいるかということです。かなりソフトが入っているんです。
 それは、そこに障害者が来ないということは差別だという考え方です。日本の場合に、葬祭場などで段差があって上がれないようなところがあるのは、ADAでいえば完全に差別になります。特別なかたちでしか来られないということが、差別と考えられます。

11.未確立の情報アクセスという概念

★大須賀 ハードとソフトのほうは少し出てきましたが、心理的アクセスについては議論されていませんでしたよね。アクセスとは何かということで、今もってよくわからないのですが、ハード面、ソフト面以外に心理的アクセスがあるという話がありましたよね。そこに住みやすさみたいなものをどうみるかということでしょうか。阪神大震災であったように、お互いが助け合うような環境というのが、ハード、ソフトだけで解決するのかということも、まだちょっとわからない。
 環境アクセスの面はいろいろ出てきましたが、情報的な意味、あるいはコミュニケーション、人的な意味、ソフト的なアクセス、そのあたりがこれから提案されなければならないという感じがしますが。
★丸山 言葉尻ですが、1981年の国際障害者年のテーマは「完全参加と平等」といわれるでしょう。それは聴覚障害者が言い出したのだけれど、参加と平等というけれども、参加していないのだと。とくにコミュニケーション問題をとらえて「フル」(完全)がついたんです。そうすると、今いっているのは、なにか参加はしているけれど、まだ完全な参加というかたちにはなっていないという、それに近い感じです。車いすのレベルでもそうでしょう。本当の意味でのすべて選択ができるという参加ではなくて、選択の余地のない参加というレベルでしかない。
★堤 まだ提案の段階だということでしょう。情報アクセスという概念がまだなくて、いわゆるハード面からの、車いすからのアクセスは提案されているけれど、それでは十分ではないはずです。情報アクセスというのも、著作権や対面朗読という問題では、一定程度社会に問題提起はされているのだろうけれど、車いすに対応したまちづくりというものと同じレベル上にあるアクセスの問題なのだというところでは、共通基盤としては提案されてこなかった。むしろバラバラのものとしてとらえられてきていたので、それを社会参加するための同じアクセス問題なのだという提案が必要なのではないか、ということじゃないかな。
 車いすのことはわりとわかりやすいでしょう。だけど、聴覚の人にとってのアクセスとは何か、視覚障害者の人にとってのアクセスとは何かということについて、この委員会で提案するところまでいきたいと思いますね。
★丸山 たしかに受け取る側の社会にとっても、またわかりにくい問題ですね。
★堤 私たちは意識しなくても、電柱に貼られた広告や電車の吊り広告を見ることで得られる情報がありますが、そういう情報は視覚障害者には全然入ってこない。音の情報ということでも、聞くともなしに耳に入ってくる情報もたくさんあるわけですが、それは聴覚障害者には届かない。そういう無意識のうちに得ている情報について、それがハンディになっているということは一般的にはほとんど理解されていないことではないかという気もします。そういったことをこれからどうやって社会に提案していくのかですね。

12.どのように評価基準をつくるか

★高橋 評価をするときに、たとえば「すべてのバスにリフトが付いている」という項目であれば、バスを見ればわかるけれども、聴覚障害者や視覚障害者が評価する場合はたぶん、そのまちのことを広く知っている人に「このまちでは、こういう場合はどうなんですか」と質問してそれを参考にするのでないと評価基準はつくれないように思えます。
★丸山 だから、そこで典型的な質問を用意できればいいんです。大槻さんの話を聞いていて思ったのは、「まちのホテルの聴覚障害者が来たときには、知らせることができるようになっているか」とかね。アメリカではそのような場合、キットを渡して、その部屋にフラッシュが付くようになるシステムがあります。それがADAで決められていることです。日本の普通のホテルで、聴覚障害者が泊まるとき、その用意ができているかどうかで評価してみたらどうだろうか。
★高橋 それは評価基準のひとつにはなるけれど、それがあるからといってアクセス環境が整っているまちとはいえないのではないですか。
★丸山 そこまでやっているまちなら、かなり進んでいるんじゃないかという意味です。
★高橋 私は今回の調査で郡山の郵便局に行きました。まち自体は点字ブロックも少なく、まったく配慮されていないといっても過言ではない状態だったのですが、郵便局のなかはATMも点字対応だし、切手の自動販売機にさえ丁寧な点字表示がついていて素晴らしかったんです。点字の読める全盲者にとって、郵便局のなかは完全アクセスといっていいくらいでしたよ。それはなぜかというと、郵便局は郵政省の管轄で、指導が行き届いているからだと思うんです。
 そのまちのホテルといっても、いろいろとあると思うんです。ホテルの支配人が障害者に理解の深い人で、そういうフィロソフィのもとにつくられたホテルかもしれない。もしかしたら全国にチェーンをもつホテルかもしれない。すすんでいるホテルがあるからといって、そのまちがいとは評価できないのではないでしようか。
 だから、ひとつの建物からそのまち全体の考え方を評価するというようなことは、日本のまちではできないんじゃないかという気がします。
★丸山 すると、最も多くの人が利用する場所、郵便局とかパン屋とかをいくつか選んで、そこを評価してみてそこからまち全体を評価できるような典型をつくるというのはどうだろうか。たとえばフラッシュライトについても、ホテルだけでなく、公会堂などの聴覚障害者が来ることが当然考えられるところに、配慮がされているのかということを評価の対象とする。
★大須賀 ホテルならフラッシュライトがあるかどうか、商店なら手を引いて案内してくれるかどうか、そういうものならつくっていけそうですね。
★丸山 そうすると、今何が優先かというと、すべての場所で声をかけてくれることになりますか。
★大須賀 なぜ評価をしたいかというと、ここを直せということをいいたいわけでしょう。だから、現状からいえば、フラッシュライトが付いているというのは理想的な対応でしよう。そういうことで項目をつくっていってもいいのではないでしょうか。こういうまちがモデルタウンで、それから比べたらわがまちはどれくらいなのか、というところですよね。
★丸山 そして全社協としては、こういうまちづくり評価をしてほしいと提案したいわけです。また、いろんなところでやった評価を持ちよって、チェックするというようなセミナーもやりたいですね。
★堤 交通機関や町の問題点を提起していく、障害者のアクセスリーダーも養成したほうがいいですね。
★丸山 ソフト、ハード含めて、どういう人が評価するかということもあります。どういう人が調べて判断するのかということです。「このまちをみるとここが問題がある」と診断ができるまちづくり診断士とか、まちづくり点検士とかいったものをつくっていくことの検討も必要です。

(調査報告)各地区調査の概要と報告

1甲府市内の調査報告

★調査日時
平成7年3月10日(金)~11日(土)
★調査メンバー
○アクセス委員会
大須賀委員長、坪松(事務局)
○地元協力者
飯島 祥子(聴覚障害)、持手木 真由美(手話通訳者:3月10日)、小林 忠義(手話通訳者:3月11日)、河西一郎(車いす利用者)、中川知子(介護者)、瀬下浩美(車いす利用者)、木村寛(介護者)、日原一郎(電動車いす利用者)、池谷喜久子(視覚障害者)、武井(ガイドヘルパー)、埜村和美(視覚障害者)、荒井恵子(ガイドヘルパー)

★スケジュール
【3月10日】

  1. 喫茶店A
  2. 県立美術館
  3. パチンコD店(甲府市内唯一の車いすで入れるパチンコ店)
  4. 甲府市役所

【3月11日】

  1. 山梨県ボランティア協会前~甲府駅
  2. 甲府駅前派出所
  3. 甲府駅
  4. ホテルD
  5. P飲食店
  6. F映画館

★調査結果
【3月10日】

  • 1.A喫茶店(県立美術館の近隣)
  • ◆車いす、歩行障害の立場から

    • 入口に低い段差(人によっては単独でクリアできない)
    • 店内を車椅子で移動するのは不可。ただしすばやく椅子等を移動させ、スペースをつくる対応あり。
  • ◆視覚・聴覚障害の立場から

    • 盲導犬の受入れは客の入り状況次第。
    • 声以外で店員を呼べる設備(鈴等)がほしい(聴覚)。~視覚障害者には設備のある場所がわからない。
  • ◆その他
    • 公共建築物の近くにある建築物には障害者へのアクセスを考慮してほしい。
  • 2.県立美術館
  • ◆車椅子、歩行障害の立場から
    • 一般駐車場に障害者用のスペースがあるが建物まで遠いので、雨の時には困る。
    • 建物脇にも身障者用駐車場はあるが、初めての来訪者にはわからない場所にある。
    • 入口前は広く、2段の段差がある、一番遠い端にスロープがあるが広いので他に何ヵ所か、あるいはスロープを広くとってほしい。
    • トイレ、エレベーターの使い勝手は良いが、場所が分かりにくく、「身障者用」と使用者を限定した標示があるのは、差別的な感じがする。
    • 絵画や彫刻品の説明ボードの位置が車いすでは読みにくい(ライトの照らし方等も一考必要)。
    • 展示場を含め、館内は広々としており車いすでの移動が容易。
  • ◆視覚障害の立場から
    • 歩道から美術館入口まで点字ブロックの敷設なく、視覚障害者がひとりでアクセスするのは困難である。
    • 階段に踏み切る場所には「上り」、「下り」のわかる標示がほしい。
    • 入口までの階段の幅が広く、リズムをとって上り下りできない(高齢者には" 優しい階段")。
    • 「手洗い」の水が飲料禁止なので、点字での案内標示も必要。
    • 館内や展示品について説明・案内をするボランティアがいて、視覚障害者等に同行するサービスがある。(説明により中途失明者には絵のイメージが沸いてくる)。
    • 代表的な絵画について、点字による情景説明がついた触れる絵画「点字ガイドボード」が用意されている。
    • 触れる彫刻品があるが、ほこりっぽく、彫刻は本来手で触るものではない気がした。
    • 展示品について音声ガイド(テープ貸出)を希望する。
  • ◆聴覚障害の立場から
    • 館内で展示品等を説明するビデオが上映されていたが、字幕スーパーによる案内が必要。
    • 手話のできる職員やボランティアがいてもいい。
  • 3.パチンコD店(甲府市内唯一の車いすで入れるパチンコ店)
  • ◆車椅子、歩行障害の立場から
    • 身障者用の駐車スペースが設けられている。(1か所)
    • 入口は重い開き戸になっていて、開閉が困難。
    • いすが固定されていないため、車いすでの利用が可能となっている。
    • 店外に車いすでも使えるトイレがあるが、子どもが「閉開ボタン」などで遊ぶため、自由に使うことができない。(両替所の人が管理している)表示が車いす専用でなく、「身障者にもお使いいただけます」となってる。
    • 店員は車いすでも使えるトイレの場所を知らない。
  • ◆視覚障害の立場から
    • 騒音が耐えられない。(視覚障害者にとって「パチンコ店」や「ゲームセンター」等騒音のする場所は聴覚も奪われるため大変怖い場である)
  • ◆その他
    • 経営者が障害者への理解ある人であると両替所の人が言っていた。
  • 4.市役所
  • ◆車椅子、歩行障害の立場から
    • 駐車場に身障者用スペース無く、また、駐車場自体が狭いため、車から下りることが出来ない。
    • 駐車場係が駐車の際にまったく配慮しない。(車いす利用者であることがわからなかったのでは)
    • 一般入口(開き戸)と別に車いす用入口(自動ドア)がある。
    • 別館の入口は階段のため、スロープが設置されているが、急なつくりになっている。
    • 住民課に車いす用ライティングデスクが設置されている。
    • 車いす用トイレは地下の隅のわかりづらい場所にある。
  • ◆視覚障害の立場から
    • 入口までさえ誘導ブロック未設置。
    • エレベーターでの音声案内無し。
    • 館内が薄暗く、弱視者がひとりで移動することは困難。
  • ◆聴覚障害の立場から
    • 受付での案内は筆談で対応するが、館内の案内図が分かりにくいため、筆談での対応は限界がある。
  • ◆その他
    • 建物自体が旧いため、車いすへの配慮は多少あるが、その他の障害への配慮は殆ど無い。

【3月11日】
※駅を中心に甲府市内を歩き、各障害毎に気づいた点等をチェックしていく。また、途中で個々の建物についても多少チェックする。

  • 1.道路(山梨県ボランティア協会前~甲府駅)
  • ◆車椅子、歩行障害の立場から
    • 商店の入口は歩道から殆ど段差があってひとりでの入店は不可である.
    • リフト付きバスが最近運行されているが、昇降できるバス停が限定されている。
  • ◆視覚障害の立場から
    • ボランティア協会前の誘導点字ブロックは警告用が敷設されている。
    • 点字ブロックの色が様々で、弱視者には分かりにくい。
    • 駅前の点字ブロック上に自転車等が乱雑に駐輪されているため、点字ブロックが使えない状態になっている。(駐輪禁止の標示は一応あるにもかかわらず)
  • ◆聴覚障害の立場から
    • 行き先、地図、金額を視覚的に示してくれるバス停が必要。
    • バスの中にも次のバス停を知らせる電光掲示板が必要。
  • 2.駅前交番
  • ◆車椅子、歩行障害の立場から
    • 入口にスロープが設置されている。
  • ◆聴覚障害の立場から
    • 警察学校で最近手話を教えており、駅前の交番には配属されていないが、手話の出来る若い警官もいる。
  • 3.甲府駅
  • ◆車椅子、歩行障害の立場から
    • 東口は、正面入口が階段のため、2階改札へは駅ビルのエレベーターを利用して上がる。改札からホームまでは階段のみ。
      車いす利用者は交番脇から入る車いす専用通路を通って、直接ホームに入る。
    • 使用者を身障者に限定する標示をした車いす用トイレがある。
    • 西口にはスロープが設置されているが、やたらと長く、下りはともかく上りは介助者必要。
    • 西口外のトイレは不衛生で、使用不可の状態で放置されている。
  • ◆視覚障害の立場から
    • 駅ビルのエレベーターには、階数の音声案内はあるが、点字標示はついていない。
    • 構内は、点字ブロックが敷設されているが、ブロック付近に売店の商品等陳列があり、危険である。
    • 駅から東口への階段が無彩色(グレー)のため、段差が分かりにくく、弱視者には危険な階段。
  • ◆聴覚障害の立場から
    • 電車の遅れ等緊急的な情報は音声のみのため、視覚的に伝える配慮がほしい。
    • 公衆FAXが設置されているが、送信シートは自分で用意する。また、送信機能のみで、着信機能はついていない
  • 4.ホテルD
  • ◆車椅子、歩行障害の立場から
    • バスタブの位置高く、バスルームへの入口狭い。
    • 身障者の意見を聞いて設計した部屋ではない。
    • パブリックスペースに身障者用トイレが無い。
  • ◆視覚障害、聴覚障害の立場から
    • 緊急時の通報システムの配慮がハード的になにもない
  • 5.P飲食店
    • 入口にディスプレイがあり、車いすの入店を困難にしている。
    • 障害をもつ人への接客対応良い。
    • 6.映画館
    • ◆車イスの立場から
      • 正面からの入館は不可。非常口からの入館。
    • ◆その他
      • 視覚障害者は、言葉のわかる邦画に、聴覚障害者は字幕のつく洋画を見に来られる。車いすの人もまとまって来ることがあると、支配人さんの話

    ★まとめ
     1993年に「障害者幸住条例」が施行され、県レベルで福祉のまちづくりに取り組んでいる山梨県。その中心地の甲府市では、甲府駅周辺の環境整備は進みつつあるようだ。
     例えば、歩道のフラット化や点字ブロックの連続敷設・音声信号機・リフト付バスの運行など出来たての設備が目を引く。
     反面、急すぎるスロープの設置や路面と識別出来ない点字ブロック、壊れた公衆FAXなど、折角の整備が生かされていない状況もある。
     また、ハード面の環境だけではなく、点字ブロック上への自転車放置や自動車駐車など、環境整備の意味が住民に伝わっていないなど、ソフト面の課題がうかがえる。
     必要としている人たちが使えない整備状況は、条例による環境整備の本来の意味を失ってしまう。この条例を生かすためにも、環境整備に関わる者が観念的に整備を進めるのではなく、障害を持つ人の意見を十分に吸い上げることから始める必要がある。
     優良な環境ストックは、単に障害をもつ人ばかりではなく、すべての人の為になる。例えば、東口の階段にエスカレータを設置すれば、高齢者や妊婦、子供、重い荷物を持った人にも大いに役にたつのではないだろうか。
     また、地域住民の十分な理解を促す具体的努力が必要があると思われる。

    II 郡山市内の調査報告

    ★日時:1995年3月14日(火)~15日(水)
    ★参加:大須賀、堤、村上(車椅子)、白石、七海(電動車椅子)、菊地、渡辺(聴覚障害)、高橋(視覚障害)、坪松、鈴木、楡(介助者)、厚海(介助者)、橋本(手話通訳者)、村山(手話通訳者)

    ★調査のねらい:二日間にわたって郡山駅周辺や娯楽施設のアクセス環境を調査した。
    1日目は、主に多数の人が利用すると思われる施設(病院・旅館・郵便局・市役所等)で、建物の構造的配慮やそこでの人的対応(サービス)について調べた。2日目は、商店街を移動しながら小売店等を回り、道路の使いやすさや個々のお店へのアクセス度を中心に調査した。

    ★スケジュール

    • 3月14日
    • A班(堤・白石・菊地・坪松・鈴木・橋本)
      1. 郡山市役所
      2. Y保養施設
      3. 旅館I
      4. K保養センター
    • B班(大須賀・村上・七海・高橋・楡・厚海)
      1. スーパーマーケットI
      2. O病院
      3. 郡山市保健センター
      4. 郵便局
    • 3月15日
    • A班(堤・白石・菊地・渡辺・坪松・鈴木・橋本・村山)
      1. 駅までの道
      2. 郡山駅
      3. 駅ビルS
      4. 映画館
      5. 本屋
    • B班(大須賀・村上・七海・高橋・楡・厚海)
      1. D銀行
      2. NTT支店
      3. 駅までの道
      4. S百貨店

    ★調査結果(1日目)
    A班

    • 1.郡山市役所
    • ※旧庁舎と新庁舎とに分かれていて、比較的配慮の整った新庁舎を調査。
    • ◆車いすの立場から
      • トイレは、中に補助イスがあり使いやすい。扉が自動ならなお良いが。緊急ボタンがテープで固定されているので、緊急時に役に立たない。
      • ロビーは広々していて車いすでの移動が楽。
      • 車いす用カウンターがある。
      • 4機のエレベーターは車いす対応で、一度に2台の乗り入れが可能。
      • 議会傍聴席に車椅子専用エレベーターがある。車椅子専用スペースからは正面の議長席が見にくい。車椅子スペースと一般席とのあいだに低い袖壁があって、一般席の方に行くのに邪魔。通り抜けるのにぎりぎり。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 誘導用点字ブロックがあるが、地面とのコントラストが悪く弱視の人には見にくい。
      • エレベーターにはボタンの点字表示と到着階を知らせる音声表示がついている。
      • 盲導犬使用者の立ち入りを正式に許可している。
      • 代筆はOK。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 受け付け等で手話が必要な場合には、福祉課から職員を派遣して対応している。
      • エレベーターには電光標示が付いている。
      • 議会傍聴席に聴覚障害者のための音声拡大のイヤホンがある。手話通訳が必要な場合には、自分で派遣依頼をしなければならない。
    • 2.Y保養施設
    • ※温泉を中心とした保養施設で、休憩室等がある。
    • ◆車いすの立場から
      • 入口までの敷石がデコボコで移動しづらい。
      • トイレは男女別に車イス用があった。
      • レストランにスロープがあるが、角度が急なため介助が必要。人的対応が悪い。
      • 温泉は、休憩室まではアクセスがいいが、更衣室以降に段差がある。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 入口までの敷石がデコボコで、白杖では辿りにくい。
      • エレベーターのボタンに点字表示はないが、到着階を知らせる音声表示が付いているので、さほど不安なく使える。
      • 必要な際には代筆OK。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 見やすく分かりやすい館内案内が必要。
    • 3.旅館I
    • ※障害者ルームがあり配慮が整っていることで知られているホテル。
    • ◆車いすの立場から
      • 入口までの斜面がきつい。
      • 1階に車いす用トイレが一つある。
      • ハンディキャップルーム(1年前改装)の入口は自動ドアだが、すぐに閉まるので危険。部屋のお風呂は、広いが浴槽が高すぎて使いにくい。お茶、コップの設置場所が高すぎる。
      • 公衆浴場は使用困難。男性用は中2階にある。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 盲導犬使用者の宿泊が可能(特に規定がない)。
    • ◆その他
      • 障害をもった客が宿泊している時は、職員の間で申し送りする。
    • 4.K保養センター
    • ※養護学校の同窓会等でも使用されている保養施設。
    • ◆車いすの立場から
      • 1階では、階段のある場所にスロープが設置されている。
      • 車椅子用トイレがある。
      • 客室の室内は狭く、車いすでの回転は不可能。
      • 係員は車椅子使用者への対応に慣れているという感じ。
    • ◆視覚障害の立場から
      • エレベーターのボタンに点字表示がある。到着階の音声表示が欲しい。
    • ◆その他
      • 障害をもった客が宿泊している時は、職員の間で申し送りする。

    B班

    • 1.スーパーマーケットI
    • ※地元の障害者が比較的多く利用している量販店。
    • ◆車いすの立場から
      • 駐車場には車椅子スペースが2台分ある。障害者用の場所がタクシー用駐車場に逆走して入らなければならない位置にあるのが問題。道路からの案内標示がほしい。そこから出入口がすぐ近くにある点は良い。駐車スペースに赤い三角ポールを置いて、一般車が止められないようにしてある。しかし、これでは車いす使用車はポールをどけてからもう一度車を動かして駐車しなければならず不便。
      • 車いす用トイレは女性トイレの入り口の方にあって男性には行きづらい。扉は自動だが鍵が連動して閉まらず、手で閉めるようになっている。
      • レジの幅は広い。袋詰めしてくれる店員さんが多い。
      • 駐車棟(立体)と店舗の連絡通路はスロープになっているが、急でかなり腕力がないと上がれない。
      • エレベーターの中の客は、車いすが入ろうとしてもよけてくれない。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 出入り口には点字ブロック表示も音声表示もない。比較的騒音がひどくアプローチが広いので、入口のドアが見つけにくい。
      • エレベーターに点字表示はないが、扱いやすいボタン式で、到着階の音声案内があるので不安なく使える。
      • エスカレーターの注意放送「エスカレーターにお乗りの際は中央にお乗りになり……」が小さく、少し離れてしまうと聞こえない。また、放送スピーカーの位置もやや不正確で、その真下に行ってもエスカレーターがない。この放送はエスカレーターを見つける際に重要な手がかりになるので、音はやや大きめに、またスピーカーは正確な位置に配置して欲しい。
      • キャッシュコーナーの現金自動預入支払機・ATM(銀行系)は点字対応なし。ボタン式なので使用が全く不可能ではないがプライベートな事なので不安。
      • 盲導犬の入店は正式にOK。
    • [体験調査]高橋(全盲、白杖携帯)が一人でフィルムを買いに行く。
      高橘 1階サービスカウンターへ行き「フィルムが欲しいんですが……」。
      店員さん (バイトらしい女性)包装作業に夢中でめんどうくさそうに「はあ?」。
      高橋 「フイルムが欲しいんですが……」。
      店員さん (社員らしい男性)「4階です」。
      高橋 「エスカレーターはどちらですか?」。
      店員さん 「あっちです」と指さす。
      高橋 「あっちですか?」と指さす。
      店員さん 「そうです」
      高橋 エスカレーターの注意放送を頼りに示された方向へ探しに行くが見つからない。最後にやっと店員さんが出てきて乗り口を教えてくれた。店内のお客さんたちは見ているが声をかけない。4階では店員さんが親切で、順調にフィルムを買うことができた。
      ○調査終了後にサービスカウンターに障害者への対応を聞くと「サービスカウンターへ来ていただければ必ず誘導しております」と自信を持って言われてしまった。ただし、「そうだよな」と周囲のバイトらしき人たちにその店員さんが同意を求めても、はっきりした反応がなく歯切れが悪い。サービスをしたいという気持ちはあっても徹底ができていないと感じた。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 手話の講習(15日間)を受けた店員さんが男性3人、女性7人いる。
    • ◆その他
      • レストランのウェイトレスの対応が無愛想。
    • 2.O病院
    • ※地元の人がもっとも多く利用する、入院病棟もある私立の総合病院。
    • ◆車いすの立場から
      • 駐車場は自動清算機で、車からコインの投入などがしにくい。
      • 受け付けカウンターが車いすには高すぎる。
      • 外来前の廊下は、両側にベンチがあり車いすで通りにくい。
      • 身障用トイレは外来に1ヶ所あり、中は使いやすい。
      • エレベーターは車いす対応だが、出入りの時に後ろが見えるようにするための鏡はない。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 入り口に点字ブロックやチャイムがなく、比較的騒音の多い場所なので、建物の入口が見つけにくい。
      • 院内薬局では順番を電光掲示しているだけなので、自分の順番が来てもわからない。
      • エレベーターのボタンに点字表示がある。何階に着いたかを知らせる音声表示もほしい。
      • 古いほうのエレベーターにはボタンの点字表示もなく、通常使用するボタンと同じ並びに緊急ボタンがあるのでまちがいそう。
      • 院内のキャッシュコーナーでは、郵便貯金のATMが点字対応なのに対して、各種銀行のものはタッチ式で使えない。病院側よりも銀行の問題。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • フラッシュライト等の設備がないので、受け付けで呼ばれた時に見落とす可能性がある。
    • ◆その他
      • 福祉相談コーナーがある。ケースワーカーが常時いて、相談に対応。
      • トイレの男女マークが子供のマークになっていてかわいい。
    • 3.郡山市保健センター
    • ※比較的最近できた、保健所と市民センターを合わせたような施設。
    • ◆車いすの立場から
      • 入り口には小さなスロープが付いている。
      • 車いす用エレベーター、車いす用トイレあり。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 点字ブロックの近くに移動不可能な鉄の柱がある。ブロックに沿って歩くと体の幅にかかってしまって非常に危険。点字ブロックに沿って歩く時、視覚障害者は比較的安心していて障害物に対しても無防備。
      • エレベーターには配慮がなく、タッチ式ボタンなのでちょっとさわるとついてしまう。単独での利用は非常に困難。
      • 装飾用と思われる角張った柱がたくさんあり、建物の中は非常に歩きにくい。
      • 人気(ひとけ)がなく、館内案内等の援助がどのように受けられるのか不安。
    • ◆その他
      • 新しい建物のわりに、ほとんど配慮がない。
      • 健康診断を受けに行ったが、障害者だという理由で断られたことがある。
      • 何のための建物かよく分からない。
    • 4.郵便局
    • ※比較的大きな郵便局。
    • ◆車いすの立場から
      • 入り口はスロープ。
      • 記入台は、一般用の丈の高いものと車いすで使用できる低いものがセットになっている。
      • 車椅子でも使えるトイレが裏に1箇所あるが場所はわかりにくい。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 入口の位置は点字ブロックで表示されているが、地面とのコントラストが悪く、弱視の人には見にくい。入口表示は弱視者にも全盲者にも便利で点字ブロックが見つけられなくても聞くことのできる音声表示(誘導チャイムなど)が良い。
      • ボタンに値段や枚数の点字表示がついた切手の自動販売機がある。表示も親切で、全盲者には非常に使いやすい。
      • 点字対応ATM(現金自動預入支払機)がある。全国の郵便局にあるはず。郵政省の威力!ただし、拡大文字の配慮がないので弱視者には使いにくい。
      • 受け付けで整理券をもらうが、見えない人には番号がわからないので不便。名前で呼んで欲しい。
      • 順番が来た時に「××番までおこしください」と呼ばれるが、どの窓口が何番なのかわからないし、マイクで放送されるので、呼んだ人の声の位置で窓口を見つけることも不可能。それほど騒音のひどいところではないので、肉声で呼んで欲しい。
      • 点字で通帳の内容を知らせてくれるサービスや、ATMを点字対応で使うための特別なキャッシュカードを発行するサービスを全国の郵便局で行っているが、局の職員はそのことを知らなかった。視覚障害者の側がそれらのサービスに関する情報を持っていなければ、せっかくのサービスも永遠に利用できないことになってしまう。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • フラッシュライト等の設備がなく、窓口で呼ばれた時に気づけない可能性がある。

    ★調査結果(2日目)
    A班

    • 1.道路
    • ◆車いすの立場から
      • 駅までの道は途中から段差になってしまって裏切られた感じ。
      • 駅から出る道は、ガタガタだがスロープが2ヵ所付いている。
      • 段差を削っているが、それでも10センチ近く段差のあるところが多くて、デコボコして大変。
    • 2.郡山駅
    • ◆車いすの立場から
      • 西口のトイレは、可動式手すりがきちんと固定されず、つかまると開いてしまって不安定。
      • 車イス用の公衆電話があるが、メモ台が膝につかえて、受話器をとりにくい。
      • 車イス用のタッチドアがあるがさわるところ高すぎる。
      • ホームへのエレベーターは3機。
      • ホームから電車までの段差は30センチくらい。
      • 車椅子で駅を使用する場合は事前に連絡がほしいと、やたら強調。ただし、事前連絡がなくとも乗車拒否はしないとのこと。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 券売機には親切な点字表示が付いている。
      • 点字の料金表がある。点字ブロックでその位置を示しているが見つけやすいとは言えない。せっかくの料金表なので、「料金表の存在」自体を見ることのできない視覚障害者にとって見つけやすい工夫(音声、チャイム音を定期的に流すなど)があればと思う。
      • 構内放送は正確で、はっきりしている。
      • 階段の手すりにホーム番号や改札名を示す点字表示がある。
      • ホームにはしっかり点字ブロックが敷かれている。
      • ホームヘのエレベータの緊急ボタンにのみ点字シールが張ってあった。使い道は不明。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 電車が遅れるときなど、電光表示が欲しい。いまは音声アナウンスのみ。駅員さんは、放送の聞こえない人がいることに関して全く意識がなかった。
      • 公衆ファックスがあるが紙がないので使えない。有料でもいいから紙が出てくるといいと思う。
    • 3.駅ビルS
    • ※郡山駅の駅ビル。
    • ◆車いすの立場から
      • クッキー店の前には段差が2段あり、店内には入れない。せっかく店の前にテーブルと椅子があるのに、そこへ買った物を運んでもらうわけには行かないとのこと。
    • 4.映画館
    • ◆車いすの立場から
      • 中には4段の段差があり、男子トイレは地下にある。
      • 係員はおばさん二人だけ。電動車椅子では手伝いは困難かも。
      • もう一つの映画館は、裏にスロープがある。ただしスロープの場所はわかりにくい。やはり中は段差だが、係員が手伝ってくれるとのこと。
    • 5.本屋
    • ◆車いすの立場から
      • 入り口は外に開く戸で、スロープの上なのでちょっと開けづらい。
      • 中は狭い。車いす1台は動けるが、他の客がいると大変。電動車椅子では回転が難しい。
    • ◆その他
      • 店員さんは親切。

    B班

    • 1.D銀行
    • ※郡山では比較的大きな銀行。
    • ◆視覚障害の立場から
      • ATMがすべてタッチパネル式で、独力では使えない。プライベートなことなので独力で扱えるATM(少なくともボタン式の物)を一つは置いて欲しい。
      • 視覚障害者に対する点字関連等のサービスは一切行っていない様子。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 手話のできる従業員がいる。1年ほど勉強した人。障害者対応に関しては積極的。
      • 「いらっしゃいませ」「お待ちください」等、簡単な手話を知っている。
      • 整理券の番号が電光表示されるので良い。
    • ◆その他
      • 今後の配慮の要請をするが、係員の人の対応が不誠実な感じ。
    • 2.NTT支店
    • ◆車いすの立場から
      • 女性用トイレはとても広い。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 点字の電話帳が常備されている。
      • 点字の料金表を送ってくれるサービスがあり、店長さんらしい人がそのことを知っていた。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 手話のできる人が常時いる。
      • FAXサービスは市の福祉課が担当しているのでやっていない。
      • 電話をかけて欲しいときに健聴者に頼みやすくする手帳を作っている。
    • ◆その他
      • NTTの障害者向けサービスは、ミーティング等で社内に周知徹底させるようにしてしいる。
      • 係りの人が問題意識を持ち、熱心そうな感じ。
    • 3.駅までの道
    • ◆車いすの立場から
      • 新しくきれいにしたらしい歩道だが、見た目はよくても歩道は敷石ががたがたする。横断歩
        道も雨水を流すためにU字型になっていて車イスで渡りにくい。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 横断歩道と歩道を区切る点字ブロックがある。
      • あちこちに高さ50センチ位の車止め用の鉄棒がある。白杖では感知しきれず、躓くと顔や腹を打つなどしてたいへん危険。車止めには弾力性のある柔らかな材質を使って欲しい。
      • 歩道に水が流れている小さな池のようなところがあって、棚が全くないので見えないと落ちる危険がある。
      • 音声信号機があるが押しボタン式。ボタンの位置がわからなければ押せないので、自動式にして欲しい。もともとは自動式だったが、音楽がうるさいという近所の住民の声で押しボタン式になったとのこと。
    • ◆その他
      • 郡山は、「見た目」を重視した作りになっているような気がする。
    • 4.S百貨店
    • ※百貨店の出入口と地下の食品売場を調査。
    • ◆車いすの立場から
      • 出入口のドアが手動で重い。
      • エレベーターは車いす対応なし。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 盲導犬使用者の入店を正式に許可している。盲導犬のシンボルマークがドアにはってある。
      • エレベーターはボタン式で点字が付いていたが、到着階の音声表示はなし。

    ★まとめ
     つい最近できた建物(保健センター)が、外観やドアの見た目の良さに比べて、障害に対する配慮が不十分であることに落差を痛感した。
     スーパーマーケットや駅、郵便局などは、まちの考え方よりも会社や国のお役所の考え方に従って障害者への対応を行っているはず。したがって、これらの施設は、多くの人に利用される施設ではあるが、「市の姿勢」を判断する基準とはなり得ないのではないか。
     また、障害者への良い対応を行おうと考えてはいても、そこで働く人たちすべてにその意向が伝わっていないために対応が不十分になってしまうケースが多々あるようだ。社内ミーティング、アルバイトや新入社員の研修等で、障害者への対応も一般のお客さんへの対応と同じようにきちんと指導するようなシステムを採って欲しい。その際、ほんとうに障害者の実状を知っている人(自力で出歩いている各種障害者等)から指導を受けることが大切である。
     障害者側から行政や個々のお店や施設に対して要望を常に出していくことも重要だと感じた。特に視覚障害者・聴覚障害者は、効果的な要望や意見がなかなか出せないでいる。日常生活のなかで不便さはたくさんあるのに、それを説得力のある言葉にする力や、その不便さを解決するための良い代替案に乏しいと感じた。

    III 横浜市内の調査報告

    ★日 時:1995年3月19日(月)
    ★参加者:大須賀(車イス)、堤(車イス)、高橋(視覚障害)、大槻(聴覚障害)、坪松、藤沢(手話通訳者)、米山(手話通訳者)、蒲池(カメラマン)
    ★調査のねらい:横浜駅、新横浜駅を中心に、近隣の建築物などの状況をフリーで調査した。
    ★調査結果

    • 1.JR新横浜駅(新幹線駅)
    • ※東海道新幹線と横浜線の駅が交差している。新幹線駅には、障害者の対策がそなわっているが、横浜線駅は不充分で、アンバランスである。
    • ◆車イスの立場から
      • 新幹線ホームへの移動は、駅ビル内の「みどりの窓口」付近にあるエレベーターを利用するが、案内表示がない。在来線ホームへは階段しかない、乗換えも階段を移動するしかない。
      • エレベーターはホームの端にあるため、移動に時間がかかる。
      • エレベーターは鍵が付いていて、車イスで利用するときには連絡が必要
      • 車イス用トイレは、駅舎に隣接する駅ビルの1階に1ヶ所あるが、改札口の内側にはトイレがない。
      • 駅ビル内の通路は広々としており、車イスでの移動が容易。
      • ほとんどのテナント入り口は段差がなく入店できる。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 駅舎構内には点字ブロックが敷設されているが、場所によって「黄色」であったり、「灰色」(床と同色)であったりと、色の連続性がなく、弱視者には使いにくい。
      • 改札口から新幹線ホームに向かう階段の手すりには、「行き先(方面)」、「上り下り」を示す点字表示板を付ける配慮がある。
      • ホームには自動開閉の棚が有り、安全性は高い。
      • トイレの案内を点字表示しているが、そこへ向かう点字ブロックの足元に消火器が置かれ、邪魔している。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 改札口の頭上に列車時間を知らせる電光表示板があるが、構内アナウンスの内容程度を伝えるレベルの表示が望まれる。
      • 新幹線の駅にはFAX設置が必要。
    • 2.新横浜Pホテル
    • ◆車イスの立場から
      • 総合案内のカウンターは低い机を使用しており、車イス利用者には使いやすい。
      • 身障者用の部屋は1/1000室
      • 一般の部屋は狭く、トイレ、バス室の入り口には段があるため、車イスでの利用は不可。
      • 部屋の入り口にあるベルボタンは、車イスでも楽に押せる高さにある。
    • ◆視覚障害の立場から
      • チェックイン時には部屋まで案内が付く。
      • 視覚障害者が宿泊していることを職員間に申し送りする。
      • エレベーターは視覚障害者への配慮(音声案内、点字テープ添付)が全くなく、いったん乗ると、何階にいるのかわからなくなる。
      • エレベーターが近づくと、パッと光るサインのデザインであるので、聴覚障害者にわかりにくい。階数表示のあるものにしてほしい。
      • ルームキーはカード式で、テレホンカードと同様に凹をつける配慮がある。(職員のアイデアではじめた視覚障害者への配慮とのこと)
      • 部屋は設備的配慮がまったくない
      • 視覚障害者が一人で宿泊したケースはないとのこと。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 聴覚障害者用の目覚まし時計、震動による呼出ベル(音を光と震動にする機器)を1セット用意してある。
      • 入口ドアは完全密閉のため、メモもはさめず、密室になってしまう。
    • ◆その他
      • 緊急時(災害など)の障害を持つ人への特別な配慮はなく、人海戦術で対応するとのこと。
    • 3.市営地下鉄・新横浜駅
    • ◆車イスの立場から
      • 地下への移動のために、エレベーターが2基あり、1基が車イス利用者専用になっている。
      • 路線駅全てにエレベーターが設置されているわけではない。
    • ◆視覚障害の立場から
      • ホーム上の警告用点字ブロックと合わせて、電車のドアの位置を伝えるブロックが敷設されている。
    • 4.JR横浜駅
    • ◆車イスの立場から・地下通路に「車イス通行案内図」が掲示されている。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 連続した点字誘導ブロックが敷設されているにも関わらず、ブロック上に広告用の看板が置かれ、進路を阻んでいる。

    IV 町田市内の調査報告

    ★日 時:1995年3月21日(火)
    ★参加者:大須賀、堤、坪松、高橋、大槻、藤沢(手話通訳者)、米山(手話通訳者)今福、山川(介助者)、鎌地(カメラ)

    ★まちの概要:東京都町田市は、人口は約36万人。団地の多い、典型的なベッドタウンである。市政スローガンに「みどりと車いすで歩けるまちづくり」を掲げ、1973年には全国に先駆けて「福祉環境整備要綱」を制定、また94年には「要綱」をべースに新たに条例化を行うなど、行政をあげての活発なまちづくりを行っている。

    ★調査のねらい:今回の調査では、駅前再開発地域を中心に、前半は、ハード面を中心に、後半は、新しい試みとして、個別に商店などにアタックして、人的対応などのソフト面をみていく。

    • ★スケジュール
    • 11:00 市役所分室市民サロン集合、打合せ
    • 11:30 出発、調査(全員)
      1. Tビル(喫茶店、和風レストランなどのある集合ビル)
      2. 映画館R~駅構内を通ってペディストリアンデッキヘ(道路)
      3. 昇降リフト(バスセンター)
      4. ハンバーガーショップのまえ+画廊(スロープ・点字ブロック)~JR前からTデパート横の坂を通り、商店街へ(道路、商店街)
      5. ホテルE
    • 14:00 昼食(ホテルE)
    • 15:00 班別調査(体験調査を含む)
      • A班 大槻、通訳者2人
        1. 市立中央図書館(B班とともに。係員の対応、障害者サービス室等)
        2. Hデパート(手作り用品、アウトドアグッズなどを中心とした、若者向けデパート。係員の対応等をみる)
      • B班 高橋、坪松
        1. 市立中央図書館(A班とともに。視覚障害者誘導装置、係員の対応、障害者サービス室等)
        2. Jデパート(カジュアル用品、アクセサリー、本、小物など、若い女性向けのテナントが入った集合ビル。係員の対応等をみる)
      • C班 大須賀、今福、介助者
        1. Tデパート(本館地下1階食料品売り場から、新館に入るための車イス対応エスカレーターを試乗すること)
        2. Pビル(雑居ビル、車イス用トイレを探してください)
    • 17:00 市民サロン集合、話し合い(感想)

    ★調査結果(その1、全員でのまち歩き)

    • 1.Tビル
    • ※ここは、地下1階に喫茶店、レストランなどがあり、ビルの側面側にエレベーターがある。地下1階には車いす用トイレも設置されている。
    • ◆車いすの立場から
      • エレベーターのある入り口が分かりにくい。バス通りに面した正面は階段のみなので、何らかの表示がほしい。
      • 車いす用トイレは、入り口の前の壁がじゃまで入りづらい。
      • エレベーターのある入り口のシャッターが閉まるのが、レストラン街の営業時間より早いので、車いすの場合、守衛に頼んでシャッターを開けてもらわねばならないのが不便。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 周囲の騒音が大きく、入口を示す点字ブロックや音声表示がなしいので、建物の入口が見つけにくしい。
      • エレベーターのボタンに点字表示がなく、到着階を知らせる音声案内もないので、自分がどこにいるのかわからず、単独での利用は不安。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • エレベーターは、電光表示が欲しい。今どこに入るのか分からなくて心配になる。
    • ◆その他
      • 壁の突起が危険。
    • 2.映画館R
    • ※市内では比較的古い、小さな映画館。入場券売り場は道路に面したところだが、映画館は地下。
      入場券売り場のすぐ脇にエレベーターがあるが、狭くて車いすでは使用不可能。結局隣のビルのエレベーターを利用する。車いす用トイレはない。なお最近できた新しい映画館には、エレベーター、車いす用トイレ、車いす用の観覧席などが設けられている。
    • ◆車いすの立場から
      • 車いす用のトイレがないのが不便。
      • 入場券売り場の脇のエレベーターは新しくできたのに、車椅子が乗れないのが残念。
      • エレベーターを利用するにはとなりのビルにはいるのだが、そのまえの歩道がガタガタで危険。
    • 3.昇降リフト(バスセンター)
    • ※駅前のペディストリアンデッキと、地上のバスセンターを結ぶ昇降リフト。ブザーを押すと、係員(高齢者事業団に委託)がきて操作する。現状ではバスにリフトがついていないため、車いすのままでバスを利用する人は少ないが、「たとえ今はバスを使えなくても、駅前再開発に伴い、市の責任でバス停までは最大限アクセス可能にする」という市の姿勢を象徴するもの。
    • ◆車いすの立場から
      • このリフトは人を呼ばないと使えないのが使いにくい。
      • バス(神奈川中央交通)は、前部の入り口が開くとステップが1段出てくる。
      • 係員が操作するリモコンがない(以前はあったはずだが)ので、自分のように手が使えない場合、介助者が乗らないと使用できないが、介助者の乗るスペースがない。また、車いすのテーブルがリフトの棚に引っ掛かって困った。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 周囲の騒音が激しいので、リフトの横にある上りエスカレーターの入口がみつけにくい。大きめの音声(誘導チャイム等)で位置を示してくれれば利用しやすくなると思う。
      • バスセンターの点字ブロック上に、鉄柱など移動不可能なものがあるので、たいへん危険。
      • バス停が密集していて音声案内がないので、自分の意図すバス停を見つけるのがたいへん。
      • ※町田市民は、バスセンター全体の音声案内を行うペンダントが市役所からもらえるが、市外の人は使えないので問題。
    • ◆その他
      • 昇降リフトは、動きが遅い。(エスカレーターは25秒なのに、リフトは乗り降りも含めて2分かかる)。
      • サイドの操作方法が分からないので、文字の表示が欲しい。係員がわざわざ来なくても、監視装置のようなものがあればいい。
      • スペースも狭い。
      • 重量制限150キロというのはびっくりした。大きい人には無理。(90キロの人が60キロの電動車椅子を使用したらもうアウト)
    • 4.ハンバーガーショップの前+画廊
    • ※ここもベディストリアンデッキの一部。狭いところに無理にスロープをつけたため、非常に急でくねくねとしている。
    • ◆車いすの立場から
      • こまめにスロープがあるのがよい。
    • ◆視覚障害の立場から
      • ハンバーガーショップのまえは、通路と平行して3段ほどの段になっているが、それを知らせる点字ブロックがないので危険。またハンバーガーショップのまえのスロープは複雑。画廊のまえの点字ブロックは、分岐点になるとブロックの模様が変わるのでわかりやすい。デッキのうえで、点字ブロックの上に店を出している人がいた。点字ブロックの意味が理解されていないようで問題。
    • 5.ホテルE
    • ※このホテルは、5年ほど前にできた13階建ての市内では比較的新しいホテルで、8階から13階は客室、4階から6階は市立中央図書館という変わった作り(その他の階は、宴会場とレストランである)だ。
      客室は、とくに「ハンディキャップ用」というのはなく、シングルもツインも部屋全体がゆったりしている。
      車いす用トイレは地階と2階、そして客室用として8階にも車いす用のバス・トイレが用意されている。
    • ◆車いすの立場から
      • 「障害者ルーム」がなくてどの部屋も使えるようになっているのは、いかにも町田らしい。
      • 8階の障害者用のトイレ・浴室はつかいにくい。トイレと浴室が一緒なので、誰かが入浴しているとトイレが使えない。脱衣スペースがないし、狭い。
      • 非常時の障害者に対する心構えが全くない。
      • 車いす用の浴室は、床も、よくない。床ずれになる。
      • 客室のトイレに入るのに、段差がないのはよかった。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 入り口に音声案内(誘導チャイム等)がないので、外から建物の入口が見つけにくい。
      • フロントで障害者滞在についての申し送りがあるのがいい。
      • 部屋番号の表示がフラットなので部屋を見つけるのが困難。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • ベッドサイドに明かりがぱっぱと付くような装置が欲しい。入り口に人が来たら青、緊急時は赤というような。これは新しいアイデアです。
      • トイレのドアに明かりが分かるような小窓があるといい。人がいることがわかる。
      • テレビは文字放送用アダプタがほしい。全部でなくてもいいから。
      • ドアが重い。ストッパーもない。出入り口で手話で話すときには大変。

    6.その他、町を歩いての感想

    • 駅の横の通りがつるつる滑るので、車椅子にとっては危ない。
    • 線路沿いの道は車が多くて危ない。
    • 「福祉のまち」にしては、視覚障害者への配慮が少なく、移動不可能な障害物が点字ブロック上に配置されたままになっていたりする。視覚障害者はあまり行政に対して要望を出したり、できあがった施設に対しで使い手としてのフィード・バックをしていないのではと思った。
    • 道路の自転車が危ない。手話で話しているときは危険。
    • パチンコ屋の旗はぶつかって危ない。

    ★調査結果(その2、班別行動)

    A班 大槻、通訳者2人

    1.市立中央図書館(B班とともに。係員の対応、障害者サービス室等)

    • 図書館の対応はよい。メモも用意してくれたし、探してくれた。手話通訳の分かる人がいると言い、係の人が3階まで連れていってくれた。手話のできる人はひとりだけいるようだった。

    2.Hデパート(係員の対応等)

    • 受付の人は手話は分からないのでメモで教えてくれた。(アルバム売り場を探す)口で言われるだけでは分からない。案内板がない。フロアーの地図がない。受付には手話のできる人がいるといい。

    B班 高橋、坪松

    1.市立中央図書館(A班と共に。視覚障害者誘導装置、係員の対応、障害者サービス室等)

    • 図書館 館内の点字ブロックが電子白杖用で、ただの「鋲」のようで、知らない人には点字ブロックとはわかりにくい。電子白杖は電池切れだった。
    • 音声案内板と地図があるが、その存在事態を見つけることのできない視覚障害者からは永遠に気づかれない。定期的に音声表示をする、前を通過したらそれを感知して音を出す等の、見えない人にも見つけられる工夫が必要だと感じた。
    • 障害者サービスルームは、日曜のため職員が3人しかいなかった。電子白杖は、毎日チェックしているが、子どものいたずらなどもありメンテナンスが大変とのこと。ここで行っている体面朗読は、すべてボランティアによるもの。ボランティアは2時間交代だが、利用者は制限して、1週間前に予約をする。拡大読書機は1台ある。蔵書が40万冊、点字は800。非常時の訓練は、利用者がいるときには利用者を交えて行うが、まだまだ不十分とのこと。
    • エレベーターのボタンには、点字表示が付いている。到着階を知らせる音声案内があると、なおいいと思う。
    • 男子トイレの中に車いすトイレがあった。

    2.Jデパート(係員の対応等)

    • Jデパートは入り口、階段は配慮なし。商品の並べかたはすっきりしていた。
    • JデパートのなかのCD店で、カウンターに向かって歩いていたら、若い男の店員が「カウンター、こっちだよ」と教えてくれた。彼はそのあとも、曲目などを読んで説明してくれるなど、CDを探すのをいろいろ手伝ってくれた。

    C班 大須賀、今福、介助者

    1.Tデパート(本館地下1階食料品売り場から、新館に入るための車イス対応エスカレーターを試乗すること)

    • 新館と本館を結ぶ車いす対応のエスカレーターは、本館からはエレベーターのわきに通路の案内があったから分かりやすかった。インターフォンで呼んでから警備のひとが来るまで4分くらいかかった。その人が、操作しながら「マニュアルには書いてあります」とか言うのは不安になる。
    • 坂の下(1階)の玄関は段差があって入れず、2階からしか入れない。あれは腹が立つ。

    2.Pビル(雑居ビル、車イス用トイレを探してください)

    • Pビルの車いす用トイレは、1階のラーメン屋で聞いたら、そこのご主人に「ここにはありません、駅まで行ってください」と笑顔で言われた。エレベーター前の案内には、ちゃんと3階と書いてあった。古本屋の奥でちょっと使いづらい。

    ★Kさんのお話
     調査の最中、町でばったりKさんと出会った。Kさんは、車いすの市役所職員として、町田のまちづくり行政に長いあいだ関っている方である。彼に、夕方の市民サロンでの調査報告会に、飛び入り参加していただいた。
     以下は、その時のKさんの話である。

     阪神大震災以来、非常時の対応ということが最近言われているが、以前はそういう発想がなかった。でも町田の小中学校はすべて、車いすの人にとっての避難所としてつかえる。それは非常時という視点ではなく、「車いすでも使える」という視点でまちづくりを進めてきたことの結果である。
     ハンバーガーショップのまえの小さなスロープは、「歩道が狭くなるので人の流れが変わってしまう。それは店の売上に影響を及ぼす」ということで反対され、説得に6か月かかった。
     図書館の対応がいいのは、職員に視覚・肢体のダブルハンディの人がいるから。障害者が職員として行政の中に入っていくことは重要と思う。
     Pビルは、もともとは3階の通路の前に車いす用トイレがあった。ところが、テナントがつぶれてしまい、後から本屋さんが入ったので、現在のような配置になった。
     また、改装は市の許可が要らないから、商店によっては最初はスロープにしたところを後から改装して段差にしてしまうこともある。
     まちづくりというのは、単に使う側にとってのアクセス面だけでなく、商店にとっての経済性とかさまざまな側面を持っていることを知らされたね。

    ★まとめ
     町田の場合、駅周辺はそれなりに車いすにとってはアクセス可能に改善されている。
     私自身、町田の住人であり、車いす用トイレはどこにあり、またデパートの入り口はどこからなら入れるかということなどを知っている。問題は、よその地域から来た人にとって、この町がアクセス可能かということであり、この調査でもそれをねらいのひとつとした。今回気がついたことを列挙してみる。

    • バスセンターの昇降リフトは、係員が操作するためのリモコンも用意されているはずだが、なぜか今回の調査では使用されず、ボランティアが非常に苦しい姿勢で同乗して、操作した。
    • 雑居ビルの車いす用トイレは、テナントの人がその存在を知らず、「駅まで行ってください」といったそうだ。せっかく設備があっても、それが周知徹底されなければ、初めて来た人にとってはないのも同じだ。
    • バスセンターの視覚障害者用の音声案内ペンダントも、市内の人なら支給されるが、よそから来た人にとっては使用できないので、やはり考慮の必要がある。
    • ホテルでは、ハード面で視聴覚障害者に対する配慮がまったくないことに驚いた。また、緊急時の避難体制については、車いす障害者も含め、まったく対策が講じられていないことに不安を感じた。
    • デパート・商店・図書館などの障害者に対する対応は、わりと親切で好評だった。これは市民のひとりとしても嬉しいことだった。

    今後に向けては、
    1 車いす用トイレやスロープなど、アクセス可能な設備の表示、案内の徹底を図ること
    2 視聴覚障害者自身の声を聞いて、よりよいアクセス環境の改善を図ることの2点が、大きな課題ではないかと思われる。

    V 藤枝市内の調査報告

    ★日 時 1995年3月24日(金)~25日(土)
    ★参加者:大須賀郁夫、井出一史(車いす)、今福義明、立川克彦、鈴木豊治(電動車いす)高橋玲子、水上康夫、曽根学(視覚障害)、富山春江(聴覚障害)坪松真吾(事務局)、鈴木渡(藤枝社協)
    運転ボランティア1名、手話通訳2名、介助者1名

    ★まちの概要
    藤枝市は、甲府、郡山、町田等と比較して市の規模が一回り小さい。しかしその程度の規模が国内の市の大多数であろうと思われる。旧東海道の宿場町から発展した旧市街地区(行政機関や商店街がある)と、東海道線藤枝駅を中心に近年発展してきた新市街地区の2極からなる。まちとしては、静岡市等のベットタウン化してきている。
    福祉の取り組みは昭和50年代に環境整備要綱が策定され、比較的早い時期からまちづくりの取り組みがあった。

    ★スケジュール
    1日目 14:00~15:30 オリエンテーション(藤枝市福祉センター)
    15:30~18:00 まちの点検(スーパー)
    2日目 9:30~11:00 まちの点検(駅、地下道)

    ★調査結果

    • 1.スーパーA
    • ※3階建ての大きなスーパーマーケットで、1Fは食料品、2Fは日用品や衣類など、3Fは駐車場となっている。
    • ◆車いすの立場から
      • 出入口、店内通路とも広くとってあるが、混雑時にはそれでも狭くなるだろうと思われる。レジも通行可能。
      • 通路を塞ぐ、はみ出し陳列物がいくつかあり車いすで通行できない売り場があった。
      • 衣服売り場は通路が狭くなる。
      • 店員は概ね親切で、高いところのものを取ってくれたり、レジでは品物を袋にいれてくれた。
      • どんな商品がどのコーナーにあるかの表示(上から釣り下がっている)が少ない。
      • 3F駐車場のエレベータの近くに障害者用駐車スペースが2台分確保されているが、一般車が駐車していた。
      • 車いす用トイレがあるが、固定手すりが入り口と便器の間を塞いでしまい、車いすが便器に近づきにくくなっている。
    • ◆視覚障害の立場から
      • スーパーは、商品がどこにあるかわからず、店員もどこにいるかわからないので、小さな商店の方が利用しやすい。
      • 弱視と全盲の人が店員に商品の場所をたずねてみたところ、親切に教えてくれていたが、指で方向を指示するなど適切でないところがあった。(後で聞いたところ、弱視の人を全盲の人の付き添いと思っていたようだ)
      • トイレと階段が近く、階段に点字ブロックの警告がないので危険。
      • トイレの男女表示の区別がつかない。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • スーパーは、いちいち店員に聞いたり、話したりしないで済むので利用しやすい。
      • 同じ商品でも、いろいろな種類がある時、その違いを聞くことができないので、いつも同じものを買ってしまう。
      • 計り売りのものは、話さなければならないので敬遠してあまり買わない。
    • 2.藤枝駅
    • ※藤枝駅はJR東海道線が入っている。改札や切符売り場は橋上にある。ホームは2つで一つはふだん使わず、使われているホームは島状になっている。車いすでは北口側から車いす用のルートで使われていないホームの入り、ホーム端のスロープを降り、線路を渡って島状ホームにスロープで上がる。南口側からは階段で利用できない。
    • ◆車いすの立場から
      • 切符の購入ができない
      • 車いす用の出入口は、外からわかりやすい表示がなく、利用した者でないとわかりずらい。
      • 車いす用出入口には、インターフォンがついている。駅員の対応は良かった。
      • 一方のホーム端のスロープはかなり急で一人では上がれないし、後ろに人がつかないと転倒する。
      • 屋根が一部だけなので、スロープを回ると濡れてしまう。
      • ホームと車両との段差のために、木製のスロープが用意されている。(静岡駅でも)
      • 北口と南口の連絡通路は階段のため利用できず、大きく迂回しなければならない。
    • ◆聴覚障害の立場から
      • 電車の遅れや事故の情報はどう伝えられるか駅員に聞いたところ、放送でという答で、聴覚障害者のケースは念頭になかったようだ。
    • 3.駅前広場
    • ※バス乗り場とタクシー乗り場がある。歩道は駅に向かって一部がスロープ状、一部が3段の段差がある。路線バスは普通のタイプで車いすでは乗れない。タクシーを利用することが多く、地元の人の話ではタクシーの対応はとても良いとのことである。電動車いすの移動は社会福祉協議会で運行するリフト付きワゴン車があるのみで利用頻度が高い。
    • ◆車いすの立場から
      • 車いすトイレがあるが、内部が汚れていて使用困難。
      • 自動販売機は、缶の取り出しが困難。
    • ◆視覚障害の立場から
      • トイレの入り口の壁にトイレの配置を示す点字板がある。そこまでの誘導ブロックがある。
    • 4.道路(福祉センター~藤枝駅~地下道~スーパーB~福祉センター)
    • ◆車いすの立場から
      • 歩道はブロックの敷石でやや凸凹している。
      • (南口側は新たに開けてきたので、歩道が広く、段差の切り下げがゆっくりと傾斜しているので車いすには歩行しやすい。)
      • メインの通りでないところの歩道は狭いところがある。その上、歩道が車道側に大きく傾斜しているところがあり、車いすでは危険で通行できない。地元の人は歩道を通らず車道を通っている。
      • 上記の歩道の下水構の蓋は格子の目が広く、キャスターや白杖が落ちてしまう。別の通りでは蓋の格子目が細かく落ちる心配がない。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 駅前の銀行の前に自転車が道路の両側に並んでいて通行しにくい。
      • その他、路上には、看板、旗、商品、植栽などがあってぶつかりやすい。
      • 点字ブロックは横断歩道の手前に警告用ブロックがあるのみ。
    • 5.地下道
    • ※JRの南北を結ぶ地下道。2本あり、1つは古くて狭い。新しい方は階段。
    • (古い地下道)
    • ※駅より100mくらい西寄りにある。入り口は両側ともスロープ。トンネルの幅は2m弱で側溝もあり車いす同士のすれ違いは困難。ただし。中央部にふくらみがありそこですれ違い可能。全体が薄暗く夜間の通行は恐いのではないかと思われる。前日の雨のため路面に水たまりがある。自転車やバイクの通行が多い。
    • ◆車いすの立場から
      • スロープが急で一人では上がれない。電動車いすでは上がれるが、恐く感じる。
      • 路面が濡れてて汚れやすい。
      • 自転車が勢いよく下りてくるのであぶない。
    • ◆視覚障害の立場から
      • 暗いので通りにくい。
      • 自転車が勢いよく下りてくるのであぶない。
      • 入り口にポールが立っているが、下は固定されているが、上はぶつかっても折れ曲がるようになっているので、あたっても危険が少なくて良い。
    • (新しい地下道)
    • ※古い地下道よりさらに100mくらい西寄りにある。入り口は階段。幅は5mくらいある。階段部の両端は自転車の通行のため幅40cmほどのスロープになっている。
    • ◆車いすの立場から
      • 階段のため、通行不可。
        どちらの地下道も通行できないか困難なため、車いすはさらに西寄りの線路の上を跨ぐ道路を通行するか、駅の東よりにある狭い踏切(歩道がなく、車の通行が多く危険)を通る以外にない。
      • 自転車用のスロープは利用不可。狭いため乳母車も片側の車輪が脱輪してしまう。
    • ◆歩行障害の立場から
      • 階段の1段の高さが10cmくらいで下りやすいが、手すりがまったくないため危険。

    主題:
    ●障害をもつ人の住みよいまちづくりをすすめる 「アクセス環境改善評価指針」策定委員会 報告書 NO.3
    56頁~99頁

    発行者:
    社会福祉法人 全国社会福祉協議会

    発行年月:
    1995年03月

    文献に関する問い合わせ先:
    社会福祉法人 全国社会福祉協議会
    〒100 東京都千代田区霞が関3-3-2新霞が関ビル
    TEL.03(3581)4655 FAX.03(3581)7858(地域福祉部)
    TEL.03(3581)6502 FAX.03(3581)2428(障害福祉部)