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障害をもつ人のすみよいまちづくりをすすめる「アクセス環境改善評価指針」策定委員会 報告書

II部

ガイドマップの分析報告

1 調査の概要

1.調査の目的

 1973年、日本で初めて「車いすガイドマップ」が発行されて、20年の歳月が過ぎようとしている。この間、1981年には国連の定めた国際障害者年という大きな節目もあり、障害者自身の運動として取り組まれた「福祉のまちづくり」の実践活動が、国の支援事業もあり、各地で自治体を巻き込みながら次第に盛んになっていった。
 障害者や高齢者が積極的に社会に参加し、また安心して生活できるようになるためには、まず社会環境を整備していかなければならない。そこで整備状況がどうなっているかを点検する事から始まり、それらをまとめた「福祉ガイドマップ」を作成・発行するようになっていった。
 1973年から始まったこの活動は、70年代は少しずつ発行数が増えていき、1981年の国際障害者年の前後にひとつのピークをむかえ、全国的な広がりを見せた。そして、90年代に入ると「国連・障害者の10年」の最終年という節目を機に、再び全国各地で取り組まれた。
 この20余年は、調査の体制や方法・内容から、編集や発行の形態にいたるまで、全国各地のグループがそれぞれに模索しながらの歩みであった。それ故に、調査方法や編集方法がバラバラであったり、実際にこれらの「福祉ガイドマップ」がどの程度効果があったのかなどが把握されていないのが現状である。
 そこで、これまで各地で取り組まれてきた「福祉ガイドマップ」作成事業の実態を知り、今後の活動に活かすために、全国各地で発行されている「福祉ガイドマップ」を収集し、その発行形態や、調査・掲載内容の傾向を明らかにするために、この調査・分析を行うことにした。
 この調査は、特に社会福祉協議会に対して、作成に関するアンケートと、作成されたガイドマップを対象としておこなったわけだが、ここでは、以下、「アンケート編」と「福祉ガイドマップ編」と称する。

2.調査の対象

(1)アンケート編
 全国社会福祉協議会の「社会福祉協議会基本調査」で福祉ガイドマップを作成・発行したとの回答を得た486件の社会福祉協議会を対象とした。
(2)福祉ガイドマップ編
 上記の調査対象社会福祉協議会から提供いただいた「福祉ガイドマップ」の中から、単なる福祉の手引きや調査報告書等は除外し、何らかの形で障害者の利用を想定して作成された「福祉ガイドマップ」100件を対象とした。

3.調査実施の時期

 調査の実施期間は、「アンケート編」、「福祉ガイドマップ編」ともに、1994年10月~12月である。

4.調査の方法

(1)アンケート編
 対象となった社会福祉協議会へ「福祉ガイドマップ」の提供のお願いをし、返送の際に添付していただいた「福祉ガイドマップ提出票」にて、いくつかの質問に回答をいただいた。
(2)福祉ガイドマップ編
 対象となった社会福祉協議会に「福祉ガイドマップ」を提出いただき、それらをもとに集計・分析をした。

5.回収の状況

(1)アンケート編
 対象となった社会福祉協議会486件のうち、回答のあったのは118件(24.3%)で、全体の約4分の1であった。(表1-5-1)

表1-5-1:回答状況

回収 未回収
118(24.3%) 368(75.7%)

(2)福祉ガイドマップ編
 回答のあった社会福祉協議会が添付してきた「福祉ガイドマップ」より、該当するもの100件を抽出。都道府県別内訳は次の通り。(表1-5-2)

表1-5-2:「福祉ガイドマップ」の内訳

地方 県名 マップ ブック その他 合計
北海道 北海道 1 2 0 3
北海道合計 1 2 0 3
東北 青森県 0 2 0 2
岩手県 0 3 0 3
宮城県 1 0 0 1
秋田県 1 2 0 3
山形県 0 5 0 5
福島県 0 1 0 1
東北合計 2 13 0 15
関東 茨城県 0 3 0 3
栃木県 1 1 0 2
群馬県 0 2 0 2
埼玉県 0 3 0 3
千葉県 2 0 0 2
東京都 1 4 1 6
神奈川県 0 1 1 2
関東合計 4 14 2 20
中部 新潟県 1 1 0 2
富山県 0 1 0 1
石川県 0 1 0 1
山梨県 0 1 0 1
長野県 1 0 0 1
岐阜県 1 3 0 4
静岡県 1 1 0 2
愛知県 10 10 1 21
中部合計 14 18 1 33
関西 三重県 0 2 0 2
滋賀県 0 2 0 2
京都府 0 3 0 3
大阪府 1 0 0 1
兵庫県 1 1 0 2
和歌山県 1 0 0 1
関西合計 3 8 0 11
中国 広島県 0 1 1 2
山口県 0 2 0 2
中国合計 0 3 1 4
四国 徳島県 1 0 0 1
香川県 0 1 0 1
高知県 0 1 0 1
四国合計 1 2 0 3
九州 福島県 0 2 0 2
佐賀県 0 1 1 2
長崎県 0 2 0 2
熊本県 0 1 0 1
大分県 0 1 0 1
宮崎県 0 1 0 1
沖縄県 2 0 0 2
九州合計 2 8 1 11
合計 27 68 5 100

2. 調査結果の概要

1.アンケート編

 この調査は、回答のあった118件の社会福祉協議会のうち、「福祉ガイドマップ」の添付がなかったもの、「福祉ガイドマップ提出票」の返送がなかったものを除く、80件について行ったものである。

1.発行部数

 この項目では、「福祉ガイドマップ」の発行部数について調べた。(表2-1-1)
 発行部数は、自治体の規模(世帯数)や、作成経費によってかなり違ってくる。また、発行物の形態が、ブック形式とマップ形式でも事情が違う
 1000部未満の25件ではブック形式が、5000部以上の9件ではマップ形式がほとんどで、1000部から5000部までは、ブック形式とマップ形式の比が7:3であった。これは、今回回収した福祉ガイドマップの比と、ほぼ同じである。
 また一番最少が50部、最大が18000部であった。

表2-1-1:発行部数内訳

発行部数 合計
~99
100~499 11
500~999 13
1000~1999 20
2000~2999 16
3000~3999 3
4000~4999 2
5000~9999 6
10000~ 3
不明 5

2.作成の経費とその出所

 この項目では、作成にかかった経費と、その費用の出所を調べた。(表2-1-2-a,表2-1-2-b)
 作成にかかった経費は、10万円から50万円未満、50万円~100万円未満、100万円から200万円の範囲に集中している。
 発行部数やページ数にもよるが、マップ形式のものでは10万円から100万円が、ブック形式のものでは100万円から300万円のものが多い。
 これだけ福祉ガイドマップの発行には費用がかかるのだが、その作成費用をどこから捻出するかが、大きな問題である。
 約半数が自治体からの補助や委託金を利用しているが、それだけでなく、他に社会福祉協議会も予算をつけたり、県の社会福祉協議会等のモデル事業の一環として行うことで、その一部を当てているようである。

表2-1-2a:発行総経費内訳

発行総経費 合計
~99 7
100~499 21
500~999 17
1000~1999 16
2000~2999 5
3000~3999 2
4000~4999 1
5000~ 1
不明 10

(単位:千円)

表2-1-b:経費出所内訳(複数回答)

作成経費出所 合計
社協の独自財源 25
自治体の補助・委託金 47
社協のモデル事業費用 10
公益団体等の助成金 5
その他 3

3.作成の体制

 この項目では、どのような体制で福祉ガイドマップを作成したのかを調べた。(表2-1-3-a)

表2-1-3-a:作成の体制

体制 合計
自治体が主体 10
社協が主体 20
作成実行委員会を組織 37
他団体に委託 7
自主的グループ 6

 「福祉ガイドマップ編」でも述べるが、発行団体としては公的な団体が多いが、自治体や社会福祉協議会などが企画編集から調査までのすべてを手がけているというよりも、実際の企画編集や調査は民間の団体やガイドブック作成実行委員会が行っているものが多いというのがこの調査結果からわかると思う。編集から発行までを民間団体や自治体だけで行うのではなく、行政がガイドマップ作成実行委員会や障害者団体等に委託したり、逆に民間団体が行政に働きかけるなどして、福祉ガイドマップを作りあげているようである。
 また、ガイドマップ作成実行委員会が、どのようなメンバーで構成されたかも調べた。(表2-1-3-b)

表2-1-3-b:作成実行委員会のメンバー構成(複数回答)

メンバー 合計
自治体職員 11
社会福祉協議会職員 18
民生員・相談員・まちづくり推進委員 6
社会福祉施設職員 5
ボランティア(団体・個人) 26
老人クラブ 5
障害者団体 29

 ガイドマップ作成実行委員会を組織した37件のうち、半数以上が社会福祉協議会やボランティア・障害者団体を中心としたメンバー構成であることがわかった。
 また、自治体からの委託の場合などは、自治体の職員や民生委員・相談委員もメンバーに入ることもあった。
 上の表以外では、町会長・観光協会・商工会議所・学識経験者・福祉協力校などがあった。

4.配付先

 この項目では、福祉ガイドマップを作成後、どのような所に配布したのかを調べた。(表2-1-4)

表2-1-4:ガイドマップの配付先

配付先 合計
公共施設 31
調査対象・協力または掲載施設 22
各関係施設 10
他の自治体 15
近隣または県の社会福祉協議会 15
障害者団体 40
ボランティア団体 14
地域住民(全ての世帯) 10
障害者 20
希望者 15

 施設に関して、公共施設や公的機関を中心とした主要施設の他に、調査の対象となった施設または掲載された施設、各関係機関などに配られている。また、他地域の自治体や社会福祉協議会にも配るケースもあった。
 団体に関しては、障害者団体・ボランティア団体などがあるが、障害者団体などは、まとめて数百部渡してそこから配布してもらうケースも含まれている。
 また、個人に関しては、条件の違いはあるが障害者に配布しているのが20件、地域住民すべてに配布しているのが10件、希望者に配布しているのが15件となっている。
 その他には、民生委員・相談員、議員、社協役員、調査に協力してくれた方々などがある。また、身体障害者スポーツ大会やその他行事等で配布している例もある。

5.外部からの評価

 この項目では、作成した福祉ガイドマップが、それぞれの立場でどのような評価を受けているかを調べた。(表2-1-5)

表2-1-5:外部からの評価

外部からの評価 合計
見やすい 11
制度等の情報が載っている 7
内容が充実している 4
自分で判断できる情報が載っている 2
携帯するのに便利 2
行動範囲が広がった 7
施設が改善された 6
意識が変わった 5
施設改善の要望が出てきた 1
他地域でもマップづくりが始まった 1

 よい評価として、ガイドマップ自体に関しては、「地図やイラストを利用していて見やすい」11件、「内容が充実している」4件、「いろいろな制度の情報などが載っていてよかった」7件、「自分で状況を判断するための情報が載っていてよかった」2件、「携帯するのに便利」2件などが、また、ガイドマップの発行の効果として、「福祉環境に対する意識が高揚してきた」5件、「行動範囲が広がった」7件、「使いにくかった施設が改善された」6件、「他地域でもマップづくりが始まった」、「施設改善の要望が出てくるようになった」などがあった。
 逆に、よくなかったとの評価では、「制度の説明に偏りすぎた」、「内容を簡素化して、携帯しやすいものにしてほしい」など内容に関するものや、「作成への参加の呼びかけをもっとしてほしい」、「制度の解説などはよかったが、車いすで外出できるような地域性ではないので、マップは役に立たない」など、企画や体制に関するものもあった。
 また「障害者からは喜ばれているが、行政からはよい評価を受けていない」や、「商店街からはきびしい評価であった」とも回答もあったが、その理由として考えられることは、その施設の問題点が明らかにされてしまったため、その施設の側にとってはあまりいい気がしなかったものと思われる。

6.活用の状況

 この項目では、福祉ガイドマップがどのように活用されているかを調べたが、回答のないものや、状況がつかめていないという回答も多かった。(表2-1-6)

表2-1-6:ガイドマップの活用の状況

活用の状況 合計
改善活動に反映した 14
外出の際に情報源(きっかけ)となった 11
啓発になった 11
ボランティア活動や学校の授業の資料 5
観光案内 5
相談事業 2
他地域のガイドマップ作成の参考になった 1

 回答としては、「改善活動に反映された」14件、「外出の際の情報源(きっかけ)となっている」11件、「調査者や対象施設から理解を得啓発になった」11件などが多かったが、他には、「要望活動やボランティア教室・学校での学習の際の資料」、「観光の案内」、「相談活動の資料」や、「他地域の福祉ガイドマップ作成の参考として使われている」などがあった。

7.問題点・要改善点

 最後に、福祉ガイドマップの内容や活用方法の問題点や、今後作成する場合に改善が必要と思われる点を回答してもらったので、まとめて紹介したい。
 まず「変動する情報をいかに伝えるか」また「伝えられるか」ということを指摘しているところが、12件とこの項目の中では一番多い。また一方では、作成するには相当の経費と労力がかかるので、「毎年の発行は無理」という意見も多い。毎年は無理でも数年に1回発行するためには、継続した調査をするための体制を維持しなければならない。しかし財政的にだけでなく、人的にも一部に負担がかかりすぎてしまっては、継続するのは難しい。「人手不足であるが故に十分な調査ができなかったり、予定が遅れてしまったり、それだけでなく編集の段階でのミスも出てしまう」など、体制づくりの難しさもあるようだ。その改善方法として、「最終的な仕上げの段階(レイアウト等)ではプロに任せた方がよい」など、役割分担に関しての記述もあった。また、行政の担当者の参加やもっと多くの人たちに参加してもらった方がよいとの意見もあった。
 内容に関しては、「調査対象や地域を広げたい」や「タウンガイドのようなものにしたい」など、充実させたいという意見もあるが、「全地域・全施設の調査ではなく、テーマ別のものを作りたい」「小エリアのものを作りたい」など対象の施設や地域を限定したものも考えられている。これは、どちらも「内容を充実させたい」と思っているもので、完成版のイメージが違うだけである。「携帯できるものがいい」という希望も多いので、情報を充実させてなおかつ携帯性を持たせようとすると、体裁を小さくまた薄くしなければならないし、表現の方法なども工夫しなければならない。それでも情報量が多ければ、地域またはテーマを絞るしかないのである。
 「見やすく・わかりやすく」は誰もが思うところだが、見やすくする方法として「地図を利用したい」とは思っても、ページ数がかさんだり版権の問題で、資金的に難しいところもあるようだ。ただ、地図の利用方法によっては、「地図が見にくい」と指摘されるものもあるので、充分検討が必要であろう。また、「字を大きくしてほしい」という要望は、高齢化していく中では当然出てくるものであろう。
 見やすくするために最近ではシンボルマークを使用した福祉ガイドマップも増えているが、「全国統一したものが必要」という意見も多い。これに関しては、次の「福祉ガイドマップ編」で各ガイドマップで使用されているシンボルマークを分析しているので、そちらも参照されたい。シンボルマークのデザインや使用する際の基準等、使用方法は現在のところ全国で統一はされてはいないので、「記号化されすぎてわかりにくい」との見方もある。何でもマーク化するのではなく、使用方法も考えていく必要があるようだ。
 その他には、「行政が入りすぎて当事者の声が反映されなかった」や、「旅行等の時などに情報交換できるようなネットワークが必要」、「主要駅に置いて市外の人にも活用できるように」、「行政に反映させていくように」などがあった。

II.福祉ガイドマップ編

 収集した「福祉ガイドマップ」は、マップ形式が27件、ブック形式が68件、その他が5件となっている。その他とは、福祉の手引きや社会福祉協議会の広報誌の一部にガイドマップ等が掲載されているものである。(表2-2-a)

ブック 68.0%
マップ 27.0%
その他 5.0%

表2-2-a:ガイドマップ種別内訳

 また、今回対象となった「福祉ガイドマップ」の地域別の内訳は次のグラフのとおりである。(表2-2-b)
 このグラフは、回答のあったものに関しての内訳であるので、全国各地の発行状況の傾向を示すものではない。

北海道 3.0%
東北 15.0%
関東 20.0%
中部 33.0%
関西 11.0%
中国 4.0%
四国 3.0%
九州 11.0%

表2-2-b:ガイドマップ種別内訳

1.年次別発行状況

 この項目では、年次別の発行状況がどのようになっているかを調べた。発行した年については、表紙や奥付に表記してある年月とした。(表2-2-1)

表2-2-1:年次別発行数の推移

1982年 2
1983年 3
1984年 1
1985年 2
1986年 1
1987年 1
1988年 5
1989年 3
1990年 6
1991年 3
1992年 21
1993年 31
1994年 12

※不明 9

 今回の調査では、1981年以前に発行された福祉ガイドマップを回収することができなかったこともあり、予想を裏付ける十分なデータを得られたとは言いがたい。
 しかし、グラフのように、「国連・障害者の10年」の最終年前後の1992年に21件、1993年に31件という発行数で、1982年以降のひとつのピークになっていることがわかる。
 また、民間の団体で障害者の旅行に関する情報提供をしているグループの旅行のソフト化をすすめる会が、1992年の12月に発行した「障害者や高齢者のためのアクセシブルインフォメーション-航空・船舶・道路交通編-(中間報告)」の、1992年1月から2月に調査した「車いすガイドブック調査報告」によれば、調査対象の249件のうち、国際障害者年前後の1981年に発行されたものが21件、1982年が40件、1983年が15件となっており、年次別の推移を見れば、国際障害者年前後がひとつのピークとなっているという報告もある。

2.発行団体

 この項目では、どのような団体が発行しているかを調べた。発行団体については、表紙や奥付に表記してあるものをカウントしたが、記述がなく不明のものも9件あった。また、自治体と社会福祉協議会など発行元が複数あるものは、ダブルカウントした。(表2-2-2)

表2-2-2:発行団体の種別(複数回答)

自治体 37
社協 41
委員会 6
障害者団体 6
その他 11
不明 9

今回の調査結果では、自治体と社会福祉協議会の発行が37件と41件という数であった。それに、自治体や社会福祉協議会から委託されたガイドマップ作成実行委員会が6件で、ここまでが公的な団体の主導で発行されたものである。
 それ以外では、障害者団体やその他ボランティア団体などの民間の団体の発行は、それぞれ6件、11件となっている。
 自治体や社会福祉協議会などの公的な団体と、障害者団体やボランティア団体などの民間の団体との発行比率は、70年代から90年代にかけて徐々に民間の団体から公的な団体へと移ってきている。これは民間団体の動きが少なくなったというよりも、実質的なガイドマップの作成(企画・編集・調査など)は民間の団体またはガイドマップ作成実行委員会が行い、発行は自治体や社会福祉協議会という形態が増えているのが実状と見るべきである。

3.対象とする範囲

 この項目では、福祉ガイドマップが調査の対象としている地域が、どの範囲かを調べた。(表2-2-3)

表2-2-3:調査対象範囲の内訳

全国 0.0%
都道府県 6.0%
市区町村 86.0%
地域の一部 7.0%
その他 1.0%

 今回の調査では、全国を対象としているものは1件もなかった。最も多いのが市区町村のレベルの地域一帯を調べているもので86件であった。発行した自治体を1単位と考えると、都道府県レベルのものの6件を合わせると、これらが9割にもなる。その他に、○○駅周辺・△△地区・商店街などの市区町村の一部を対象としたものが7件、複数の地域を調べて合同で発行したものが1件となっている。
 福祉ガイドマップの対象としている範囲が、市区町村のレベルが多いのは、「まちづくり推進事業」や障害者の街づくり運動との関係もあり、自分たちの生活圏を点検し報告するものが多いからであろう。○○駅周辺など市区の一部を紹介しているものもこの部類に入ると思われる。また都道府県レベルも、各地域社会福祉協議会が調査に協力し、それを県単位でまとめて発行しているものがほとんどである。

4.対象とする障害

 この項目では、調査をする上で、また福祉ガイドマップとして情報を提供していく上で、対象としている障害は何かというのを調べた。これは、企画の段階のことは調べるのが不可能なので、掲載されている内容から判断した。但し、点字ブロックや音声信号機等の情報が掲載されていれば視覚障害、手話やファックス等があれば聴覚障害とカウントした。(表2-2-4)

表2-2-4:調査対象の障害の種別(複数回答)

肢体(車いす) 100
視覚 29
聴覚 14

 この調査では、今回対象とした福祉ガイドマップ100件すべてで、車いす使用者を主とした肢体不自由に関する情報の掲載があった。それに比べ、視覚障害関係が29件、聴覚障害関係が14件と少なかった。
 福祉ガイドマップが対象としている障害の種別は、掲載内容に誘導ブロックや音声信号等の視覚障害関係の情報や、手話通訳やファックス等の聴覚障害関係の情報の記述も見られるものの、やはり車いす使用者を主とした肢体不自由者がほとんどである。
 福祉ガイドマップの調査が、比較的調査しやすい建物や道路等の構造や設備を中心としているということから考えれば、そうならざるを得ないと思われるが、人的対応や情報提供等のソフト面を含めて、肢体不自由(車いす)以外の視覚障害や聴覚障害に関しての情報提供が今後の課題といえるのではないか。

5.調査対象の施設

 この項目では、調査の対象となった施設の種別について調べた。各ガイドマップによって分け方が違うので、分類項目だけを見ずに掲載されている内容によってカウントした。また、種別ごとに1件だけでも掲載されていれば、調査の対象になっているものと判断した。(表2-2-5)

表2-2-5:調査対象施設の種別(複数回答)

官公庁 73
社会福祉 58
医療 64
教育 20
文化 53
集会 64
スポーツ 53
購買 57
飲食 27
交通 54
金融 67
サービス 17
娯楽 8
観光 14
宿泊 40
道路 14
公園 36
その他 10

 公共的施設の中には、官公庁はもちろん交通機関や公園、スポーツ・文化施設、医療施設、社会福祉施設、教育施設などがある。
 官公署は、ほとんどのガイドマップで取り上げられているが、掲載されていないものは、初めから対象施設を限定したガイドマップや、駅周辺や商店街中心のものである。
 医療施設は64件で掲載が見られる。大きな病院は掲載されているものが多いが、小さな診療所や歯科医院などまで掲載されているものは少なかった。
 文化・集会・スポーツ施設はそれぞれ53件、64件、53件と、いずれも半数以上のガイドマップで調査されているが、教育施設は20件と掲載は少なかった。
 教育施設のなかで小・中・高校より大学・専門学校のほうが掲載が多いと予想していたが、どちらもそれほどの差はなく掲載数は少なかった。また、カウントした中には養護学校だけが掲載されていたものも少なくない。
 官公署に次いで多かったのは金融機関の67件で、なかにはCD機にいたるまで調査しているものもあった。日常生活に欠かせないということの現れであろうが、その他サービス機関(NTT等)は17件とあまり多くなかった。
 日常生活に欠かせない購買施設や飲食店については、大型店舗(デパート、スーパー等)を中心に調査したものと、商店街を詳しく調べたものと2タイプあり、57件であった。しかし、飲食店は27件と意外に掲載が少なかった。
 交通関係の施設は、公共交通機関である鉄道の駅舎を中心に54件の掲載があった。なかには福祉タクシーなどの連絡先を掲載しているものもあった。
 宿泊施設は40件のガイドマップで取り上げているが、その地域の人たちにとっての日常生活に必要な情報としては優先度はそれ程高くないと思われ、観光施設も同様である。但し、観光施設は、ガイドマップが観光用ではないため、本来なら観光施設ともいえるものが文化施設としてカウントされているということもあって14件という数になったものと思われる。
 この調査のなかで一番少なかったのが、映画館等の娯楽施設で8件であった。調査をしていないのか掲載の段階で選別されてしまったのかは分からないが、生活上での優先順位からすると理解できない数ではない。
 道路とは、道路の段差や傾斜・点字ブロックの有無の状況を調べたもので、14件あった。

6.調査の内容

 この項目では、対象施設へのアクセス環境がどのようになっているかを、次の項目について調べた。
 ハード面では、駐車場・出入口の段差や幅、ドアの種類や幅・通路の幅、トイレ、垂直移動設備、公衆電話、点字誘導ブロックについて、ソフト面では介助サービスや手話通訳、盲導犬の入室、車いすの貸し出しについて、情報が掲載されているものをカウントした。(表2-2-6)

表2-2-6:調査内容の項目種別(複数回答)

駐車場 69
出入口 85
ドア 62
通路 15
垂直移動 63
トイレ 96
電話 64
点字ブロック 23
介助 25
手話通訳 12
盲導犬 4
車いす貸し出し 35
その他 19

 駐車場は69件のガイドマップで調査されているが、単に駐車場があるかというものから、障害者用の駐車スペースがあるかを調べているもの、また一般用・障害者用含めて台数まで調べているものまである。一般用の駐車場も使えないわけではないが、車いすを使用している運転者にとっては、駐車スペースに配慮のある駐車場の有無は気になることである。有るか無いか程度なら実地調査でもそれ程手間はかからないが、台数までの調査するかどうかは、どこまで情報提供するかという考え方と調査の体制にもよると思われる。
 出入口が車いすでのアクセスができるかどうかについては、85件で調査されている。これは、その建物が利用できるかどうかを判断するのに重要な要素であることを示している。調査の視点としては大差はないが、段差や階段の有無だけではなく、何センチの段で何段あるかなど、細かく調べているものもある。これも駐車場と同様に、どこまでの情報を提供するかによって違ってくる。細かくすれば調査はたいへんであるが、何センチから段差とするのかや、階段何段からが利用するのが困難か等、基準を明示しない代わりに実際値を情報提供することで、読む人に自分の状況に照らして判断してもらうことができるという長所もある。
 出入口の状況とあわせて、ドアの種類や幅についても調査しているものが62件にものぼる。ドアが自動か手動か、また引き戸か開き戸か開放しているかなどや、その幅がどれくらいかなどを調査している。それと比べると、建物内の通路については、15件と意外と少なかった。
 垂直移動は、対象の施設が複数階の場合に必要な情報である。この調査では63件のガイドマップに掲載されていた。階の移動にどのような設備があるかで、エレベータやエスカレータを想定していると考えられるが、なかには階段に手すりが付いているかなどを調べているものもあった。エレベータでも車いすで操作しやすいかを調べているものもある。また、エレベータがあっても、車いすが乗るだけのスペースが必ずしも無いものもあるので、調査にあたっては注意が必要である。また、エスカレータは車いす対応型だけを調べるのではなく、一般用も調べている。これらは、その幅についての記載がないものがほとんどであるが、幅が広ければ車いすでも利用できる可能性もあるので、調査の際にはその点も、考慮に入れてもらいたい。
 トイレに関しては、96件とほとんどのガイドマップで調査している。車いすの使用者が使えるものというのが前提であろうが、必ずしも車いす用トイレだけではなく、使えそうなもの(一般用のトイレで洋式のものなど)を含めているものもあった。
 電話は64件が調査しているが、ほとんどが車いすで利用できるかということであった。ファックスや音量調節機能などについて調べているものは少なかった。
 点字ブロックを調査しているものは23件と少なかったが、これは道路の状況を調査するというよりも、施設内に関してのことが主であるためであると思われる。
 介助サービスを行っているかについては、25件のガイドマップで調査をしている。介助の内容についての詳細が各ガイドマップ・各施設ごとに不明であるとともに、構造や設備と違って形がないので、調査がしにくいし情報提供がしにくい項目である。また、介助を行う者が介助の知識や技術があるかや、そのために研修等を行っているかについて、十分な調査ができているかは掲載されている情報内容からは、読みとることは難しい。
 手話通訳については、12件と数が少なかった。ここでは手話通訳という表現をしているが、「手話通訳者がいる」や「手話のできる人がいる」「手話のわかる人がいる」等、若干表現が違うのをどのように捉えるかが難しい。手話ができる・わかるというのがどの程度なのか、資格を持った手話通訳者なのか、そのレベルもわかりにくい。
 盲導犬の入室は4件で、この調査の中で一番少なかった。視覚障害者の中でも盲導犬を伴っている人は少ない。まして福祉ガイドマップが車いす使用者を主眼においているものが多いということから考えると、この数は理解できないこともない。しかし、宿泊施設や飲食店で入室を拒否されるなどの問題も各地で後を絶たない現状を考えれば、これこそ調査し、対象施設等に啓発をしていく必要がある項目であると思われる。
 車いすの貸し出しについては、35件のガイドマップで調査している。公官署を中心に、公営の施設や病院には常備しているところが多いと思われる。民間に関しては、宿泊施設や大型店舗に常備しているものもあると考えられる。
 その他には、信号機や点字案内板、呼び出し設備などを調査しているガイドマップもあった。

7.掲載の基準・内容

 この項目では、調査した施設を掲載するにあたっての基準や、どのような内容を掲載しているかについて調べた。(表2-2-7-a)

表2-2-7-a:掲載基準の内訳

調査対象全て 26.0%
調査後施設を選択 20.0%
初めから対象施設を限定 16.0%
不明 38.0%

 ガイドマップに掲載するにあたって、調査対象となった施設のすべてを掲載しているのか、調査後にある基準を設けて選択し掲載したのか、初めから調査施設を限定して掲載したのかは、調査の主旨によるところもあるが、作成の予算にもよると思われる。
 掲載の基準に関しては明確には記述していないガイドマップが多く、有効なデータとなり得るかは疑問であるが、上のグラフのような割合となった。
 調査対象の施設を全て掲載していたのは26件であったが、そのためにはかなりのページ数を必要とするので、数種類の施設に限定して調査・掲載したりと、何らかの方法をとっているものと思われる。
 基準を設けて掲載しているのは20件であったが、「日常よく利用する施設や商店・公共性の高い施設」や、「車いす使用者が出入口に支障がない」「車いす用のトイレが設置してある」「介助人同伴で行ける」という選び方が多かった。
 初めから調査の内容を限定しているものは16件であった。例としては、道路やトイレマップ、飲食店や観光施設などがあげられる。

 掲載している内容については、建物についての設備状況・人的対応・評価、建物以外の団体の問い合わせ先や制度・介助方法の情報にわけてカウントした。(表2-2-7-b)

表2-2-7-b:掲載内容の種別(複数回答)

建物の設備状況 100
利用方法・人的対応 15
評価 5
情報 問い合わせ先 27
制度・要綱 37
介助方法 19

 建物の設備状況については、100件すべてが掲載しているが、その施設が十分な設備がない場合に、どのようにしたら利用できるかや、人的な対応がどうなっているか等の情報を掲載しているものは、15件と少ない。このような情報を設備状況と一緒に掲載することで、できるだけその施設を利用してもらえるように、掲載数を増やしているガイドマップもあるが、一方で現状の報告にとどまっているものも多い。評価の掲載については、次の段で述べる。
 建物の設備状況等の他に、各種団体や施設の問い合わせ先をあわせて掲載しているものは27件ある。これは、例えば小さな診療所などは調査の対象とはなっていないが、住所や電話番号は一覧表で載せているとか、福祉タクシーを運行しているタクシー会社の連絡先を掲載しているなどである。
 また、福祉の各種制度やまちづくりの要綱などを掲載しているものも37件あり、街の情報とあわせて参考にすることができるようになっている。
 その他には、車いすの介助はどのようにすればいいか等の介助の手引きを掲載しているものも19件あったが、これなどは当事者というよりも一般市民に向けた啓発の意味を込めていると思われる。

8.評価の掲載

 この項目では、ガイドマップのなかに対象の施設に対する評価を載せているかどうかを調べた。
 掲載内容の項目でも評価を掲載しているものは5件と、ほとんどの場合が評価は載せていない。その施設の現状を紹介する、または現状でどのように使えるかという案内を含めて紹介するものとなっている。これは、いかに「評価をする」ということが難しいかを示していると思われる。
 評価をするということは、段差は何センチならいいのか、幅は何センチが適当かなど、基準を決めなくてはならないし、また、その基準で判断するためには必要なデータを調査段階で収集しておかなければならない。
 基準を考えるのは作成委員会等の企画編集団体であろうが、誰が基準を決めたのか、誰が評価をしたのかなどは、当事者がどれだけ関わっているかが問題である。しかし、それでも必ずしも全ての人の状況に合う基準を作れるとは限らない。
 誰が見ても納得できる、全国共通の基準となるものがあるのが一番よいが、現段階では、客観的な数値情報を提供して読者がそれぞれ判断するということも必要なことかもしれない。

9.掲載・分類・表現の方法

 この項目では、情報の掲載方法がどのような形になっているのか、どのように分類して掲載しているのか、表現方法はどのような形をとっているのかについて調べた。
 これらについては、複数の方法をとっているものも多いので、そのような場合はダブルカウントしている。

表2-2-9-a:掲載方法の種別(複数回答)

一覧表 55
1施設ごと 39
地図イラスト 83

 掲載の方法について、住宅地図やイラスト地図を使用しているものが、83件とかなり多いのが特徴としてでているのがわかる。ほとんどの場合が、これらの地図と一覧表などを組み合わせて掲載している。地図に対象施設を示す番号をふり、詳細をマップ形式では一覧表、ブック形式では1施設ごとに掲載しているものが多かった。(表2-2-9-a)

表2-2-9-b:分類方法の種別(複数回答)

地区ごと 43
施設ごと 45
内容ごと 2

 次の分類の方法についても、併用しているものが多いが、地区ごとにわけているものが43件、施設の種別にわけているのが45件と、この2つに集約されるようである。地域が広範囲にわたる場合には地区ごとに分類する場合が多いが、町村レベルでは施設の種別ごとの分類が多くなる。(表2-2-9-b)

表2-2-9-c:表現方法の種別(複数回答)

文字 45
記号 5
シンボルマーク 66
その他 7

 情報の表現方法については、文字を主とするものが45件、記号を主とするものが5件、シンボルマークを主とするものが66件、その他写真や配置図等が7件となっている。
 一部重複するものもあるが、大別すると文字中心の表現と、シンボルマーク中心の表現とに分かれる。199年以降は、文字よりもシンボルマークが多く使われるようになってきている。
(表2-2-9-c)

10.シンボルマークの使用

 この項目では、対象施設へのアクセス環境がどのようになっているかの情報をシンボルマークで表示しているものについて、次にあげる項目がそれぞれどのようなシンボルマークを使用しているのかを調べた。
 ハード面では、駐車場・出入口の段差や幅、ドアの種類や幅・通路の幅、トイレ、垂直移動設備、公衆電話、点字誘導ブロックについて、ソフト面では介助サービスや手話通訳、盲導犬の入室、車いすの貸し出しについて、シンボルマークが使用されているものをカウントした。(表2-2-10)

表2-2-10:シンボルマーク使用の項目種別(複数回答)

駐車場 44
出入口 53
ドア 44
通路 5
垂直移動 43
トイレ 57
電話 46
点字ブロック 17
介助 22
手話通訳 11
盲導犬 4
車いす貸し出し 33
その他 16

 情報を詳細にまたは見やすくするために、各ガイドマップが文字情報だけではなく、さまざまな表現方法を考えている。そのひとつとして最近はシンボルマークによる表現方法が増えてきている。しかし、各ガイドマップごとに、同じ状況を示すシンボルマークのデザインや使われ方が違っているのが現状である。これは、読む側にとっては混乱の原因となる。
 今後のシンボルマークの使用の問題点を明らかにするために、ここで詳しく取り上げたいと思う。

(1)駐車場

 駐車場の状況を示すマークには、次の表のようなものが使われいる。大別すると、A:車いすマークと[P]を組み合わせたものと、B:[P]のみで表すものの2つとなる。(図2-2-10-a,表2-2-10-a)
 Bは、一般用と車いす用を配色で使い分けているが、ガイドマップを見比べると、同じ状況を示すマークが異なる配色になるなど、マークの使用方法が不統一であった。
 また、ガイドマップによっては、台数も表示しているものもあった。

図2-2-10-a:駐車場マーク内訳

図2-2-10-a:駐車場マーク内訳

表2-2-10-a:駐車場マーク内訳

75.0%
25.0%

(2)出入口

 出入口の状況を示すマークは、次の表のように4つに分けられるが、そのほとんどがAのパターンである。(図2-2-10-b,表2-2-10-b)
 Aのなかでも、無段差とスロープの設置を別々のマークで表示するか、同じマークにするかまた、段差や階段しかない場合に、その状況をマーク表示するかしないか等で、表示方法に違いがあった。また、ガイドマップによっては、段差の高さや階段の段数を表示しているものもあった。

図2-2-10-b:出入口マーク内訳

図2-2-10-b:出入口マーク内訳

表2-2-10-b:出入口マーク内訳

84.9%
9.4%
3.8%
1.9%

(3)ドア

 入口のドアに関する情報を示すマークをグループ分けすると、次のようになった。(図2-2-10-c,表2-2-10-c)
 ドアが自動か手動かを調べているガイドマップが多く、その表示の半数以上が、A:ドアと左右の矢印(三角形)の組み合わせであった。

図2-2-10-c:ドアマーク内訳

図2-2-10-c:ドアマーク内訳

表2-2-10-c:ドアマーク内訳

63.6%
13.6%
11.4%
9.1%
2.3%

(4)通路

 施設内の通路の状況を示すマークは、次の通りであった。(図2-2-10-d)

図2-2-10-d:通路マーク内訳

図2-2-10-d:通路マーク内訳

(5)垂直移動

1.エレベータ

 施設内の上下階への移動で、エレベータの設置を示すマークには、次のようなものがあった。(図2-2-10-e、表2-2-10-e)
 A:上下の矢印(三角形)と、B:車いすマークと[EV]の組み合わせで、3分の2を占める。
 いずれも、車いすで利用可能なものを基準としているのか、単にエレベータがあるものにマークしているのかが、バラバラであった。
 またBは、駐車場と同様にガイドマップごとに使用方法を見比べると、同じ状況なのに異なるマーク表示になっているものもあった。

図2-2-10-e:エレベータマーク内訳

図2-2-10-e:エレベータマーク内訳

表2-2-10-e:エレベータマーク内訳

35.7%
33.3%
19.0%
7.1%
その他 4.8%

2.エスカレータ

 エスカレータの設置のマークは、多少のデザインや配色の違いはあるが、ほとんどがAのタイプであった。(図2-2-10-f,表2-2-10-f)

図2-2-10-f:エスカレータマーク内訳

図2-2-10-f:エスカレータマーク内訳

表2-2-10-f:エスカレータマーク内訳

95.8%
4.2%

3.その他

 その他の垂直移動に関するマークは、次の通りである。(図2-2-10-g)

図2-2-10-g:その他の昇降装置

図2-2-10-g:その他の昇降装置

(6)トイレ

 車いす用のトイレが設置されていることを示すマークは、次のように数種類あるが、約3分の2がA:車いすマークと[WC]の組み合わせであった。(図2-2-10-h,表2-2-10-h) Bの車いすマークを使用しているものは、何に関しての情報なのかがわかりにくくなってしまっているし、その他の6つのマークは、洋式の便器のデザインであろうが、車いす用のトイレであることが、イメージしにくくなってしまっている。

図2-2-10-h:トイレマーク内訳

図2-2-10-h:トイレマーク内訳

表2-2-10-h:トイレマーク内訳

75.4%
5.3%
3.5%
3.5%
1.8%
その他 10.5%

(7)電話とファックス

1.電話

 車いすでも利用できる電話が設置してあるというマークは、次の数種類のパターンがある。(図2-2-10-i,表2-2-10-i)
A:車いすマークと受話器の組み合わせと、B:車いすマークと電話機の組み合わせとで、約3分の2となり、D:車いすマークと[TEL]の組み合わせも含めて、ほとんどがこれらのマークを使用していると考えられる。
CやE・Fは、車いすで利用できるかが、イメージしにくい。

図2-2-10-i:電話マーク内訳

図2-2-10-i:電話マーク内訳

表2-2-10-i:電話マーク内訳

33.3%
31.1%
22.2%
6.7%
4.4%
2.2%

2.ファックス

 ファックスの設置に関しては、Aのように絵で表すか、Bのように文字で表すかとなっている。(図2-2-10-j、表2-2-10-j)
Cのマークは、一般の電話との区別がつきにくい。

図2-2-10-j:ファックスマーク内訳

図2-2-10-j:ファックスマーク内訳

表2-2-10-j:ファックスマーク内訳

40.0%
40.0%
20.0%

(8)点字ブロック

 点字ブロックを敷設してあるというマークは、次の表のように点字ブロックをデザインしているものがほとんどである。(図2-2-10-k,表2-2-10-k)
 点字ブロックを上から見たイメージが一般的なようだが、その点の数にいくつかのパターンが見られる。

図2-2-10-k:点字ブロックマーク内訳

図2-2-10-k:点字ブロックマーク内訳

表2-2-10-k:点字ブロックマーク内訳

35.3%
23.5%
17.6%
11.8%
5.9%
5.9%

(9)介助

 施設内で介助の必要に応じているというマークは次の通りで、約4分の3がA:車いすマークと[介助]の組み合わせである。(図2-2-10-l,表2-2-10-l)
 このマークは、「車いす」と明記してあるものもあるし、特に記述がないものもある。介助が必要なのは、車いす使用者ばかりではないが、限定するために車いすマークが使われているのかの判断に迷う。
 BやCは、特に「車いす」と明記してあるガイドマップはなかったが、Bのマークは次項でも述べる[手話]のマークと間違える可能性もある。
 また、同じ[手]のマークでも、ガイドマップによっては「介助が必要である」という意味で使われているものもあり、どちらの意味で使用するのかを統一しないと、混乱の原因になると思われる。

図2-2-10-l:介助マーク内訳

図2-2-10-l:介助マーク内訳

表2-2-10-l:介助マーク内訳

77.3%
18.2%
4.5%

(10)手話

 手話のできる人がいるというマークは、次の表のように、すべて手をデザインしている。(図2-2-10-m,表2-2-10-m)
 しかし、先にも述べたように、Aのマークは「介助」のマークと間違えやすいデザインである。
 Dの手のデザインが手話の表現では[手話]を表すので、一番適していると思われる。但し、ここに例示したものは、正しい手の形ではない。

図2-2-10-m:手話マーク内訳

図2-2-10-m:手話マーク内訳

表2-2-10-m:手話マーク内訳

36.4%
27.3%
18.2%
18.2%

(11)盲導犬

 盲導犬を伴って施設内に入れるというマークは、次の4つが使われていた。(図2-2-10-n)
 一番右のデザインが、日本盲導犬協会が制作したものであるので、このなかでは一番適していると思われる。

図2-2-10-n:盲導犬マーク

図2-2-10-n:盲導犬マーク

(12)車いす貸し出し

 貸し出し用の車いすを常備している場合に使用するマークは、次の4種類であった。(図2-2-10-o,表2-2-10-o)
 すべて車いすを使ってデザインされているが、A:車いすマークと[常備]の組み合わせが一番多い。D:車いすマークと[有]の組み合わせとともに、比較的にわかりやすい。
 Bの車いすマークだけの表現は、トイレの項目でも述べたように、具体的にイメージしにくいので、使用しない方がいいと思われる。

図2-2-10-o:常備車いすマーク内訳

図2-2-10-o:常備車いすマーク内訳

表2-2-10-o:常備車いすマーク内訳

57.6%
30.3%
9.1%
3.0%

(13)その他●(設備)

 その他設備に使用されていたマークは、次の通りである。(図2-2-10-p)

図2-2-10-p:その他のマーク

図2-2-10-p:その他のマーク

(14)その他●(評価)

 また、評価を示すマークは、次の通りである。(図2-2-10-q)

図2-2-10-q:その他のマーク

図2-2-10-q:その他のマーク

11.地図・イラストの使用

 この項目では、地図等を使用しているものに関して、どのようなものが使われているのかを調べた。(表2-2-11)
 最近のガイドブックは以前のものに比べて、カラーのイラストなどを載せて親しみやすくなるように工夫しているものもあるし、地図会社の協力を得てガイドマップを作成しているものも増えている。

表2-2-11:地図・イラスト使用の種別(複数回答)

住宅地図 6
国土地図 10
イラスト 78
見取り図 13

 住宅地図を使用しているものは6件、国土地図を使用しているものは10件という数値になっている。これらは民間の団体だけでは難しいところもあるので、ガイドマップの作成に自治体や社会福祉協議会等の公的団体が絡んでいる場合が多いと思われる。
 また、イラスト地図を使用しているものは78件となっているが、この中には初めから手書きのものも、地図会社の国土地図等を元に書き直しているものも入っている。これらを厳密にわけるのは、今回はできなかった。
 その他には、施設内の見取り図を掲載しているものが13件あった。

住宅地図の例

国土地図の例

イラストの例

見取り図の例

12.調査方法・内容・体制の記述

 この項目では、ガイドマップを作成するにあたって、どのような内容の調査をしたのか、どのような方法で調査したのか、どのような体制で調査したのかなどについての、記述があるかどうかを調べた。(表2-2-12)
 ガイドマップは、調査結果に関しての情報提供が目的であるため、調査活動に関しての詳しい記述はないのが普通で、あっても編集に関わった人たちの感想等の掲載が多いと思われる。感想等では調査活動の概略を知ることができないので、今回はカウントしなかった。

あいさつ 2.0%
利用にあたって 8.0%
調査概要 3.0%
なし 87.0%

表2-2-12:調査概要等の記述状況内訳

 調査活動に関して、挨拶文や利用にあたっての文章等、巻頭の文章に含めて掲載しているものが、それぞれ2件、8件となっている。ここに書かれているものはそれほど詳しいものではない。巻末に調査活動の概要を掲載しているものは、3件で、これらは調査の内容や体制、チェック用紙等まで紹介されていた。これら以外の87件には記述がなかった。
 ガイドマップを利用する人にはあまり必要のないこの情報が、今回のガイドマップ調査の分析をしているものにとっては、一番興味があるものであった。形の見えるものだけでなく、調査のノウハウなどがもっと普及し、研究されてもいいのではないだろうか。

13.改訂版(続編)の発行

 この項目では、ガイドマップの改訂作業や続編の作成など、継続的な活動をしているかどうかを調べた。
 対象のガイドマップが改訂版であれば改訂版に、続編の発行が確認できれば続編にカウントした。(表2-2-13)

改訂版 8.0%
続編 4.0%
なし 88.0%

表2-2-13:改訂版または続編の発行状況

 今回の調査で、改訂版が8件、続編の発行をしているものが4件であった。続編の例としては、公園編・官公庁編など施設ごとにわけているものや、○○地区など地域ごとにわけているがあった。
 ガイドマップの作成がまちづくり活動の一貫であるならば、その活動は目的が達成されるまで継続していく必要がある。
 ガイドマップの作成が目的の作成実行委員会は、ひとつのガイドマップが発行し終えると委員会もなくなってしまう。次のガイドマップを作るときに結成される作成委員会は、同じメンバーとは限らないので、ノウハウの蓄積ができず、また一からの出発になってしまうことも予想される。
 ガイドマップの作成はもちろん、まちづくり活動の体制をどう維持していくかが、これからの課題となるであろう。


主題:
●障害をもつ人の住みよいまちづくりをすすめる 「アクセス環境改善評価指針」策定委員会 報告書 NO.4
103頁~130頁

発行者:
社会福祉法人 全国社会福祉協議会
 

発行年月:
1995年03月
 

文献に関する問い合わせ先:
社会福祉法人 全国社会福祉協議会
〒100 東京都千代田区霞が関3-3-2新霞が関ビル
TEL.03(3581)4655 FAX.03(3581)7858(地域福祉部)
TEL.03(3581)6502 FAX.03(3581)2428(障害福祉部)