富山県小矢部市
障害者が取り組む安全で安心なまちづくり
嶋田 幸恵
小矢部市障害者団体連絡協議会会長
小矢部市身体障害者協会会長
小矢部市議会議員
障害者が参加する防災訓練 - 県の訓練をきっかけに
平成28年度の富山県防災訓練が行われることになり、富山県内の市町村の中で小矢部市が防災訓練地として選ばれ、市はそれを受け総務課が担当することとなった。
「障害のある人の人権を尊重し県民皆が共にいきいきと輝く富山県づくり条例」が平成26年12月に成立し、平成28年4月1日に施行されたのを機に、富山障害フォーラム(TDF)より話しがあり、防災訓練に障害者自らが参加できるかについて会合を開き、市の総務課と話し合いをした。小矢部市身体障害者協会の副会長(高田洋信)が、富山県身体障害者福祉協会会長、富山障害フォーラム会長であったことが、この訓練計画を強く進めることにつながったと思う。また、私たちは、平成27年4月に小矢部市障害者団体連絡協議会を、身体・視覚・聴覚・知的・精神・発達障害の6団体で設立していたので、身体障害者協会が中心となり他の団体に声をかけ、障害者団体が取り組む訓練実施に向けて協議を重ねていった。自治体側は福祉課・総務課が担当してくれた。
第1回は県の防災訓練ということで、県の障害福祉課の課長や、手話通訳、市の消防の女性分団が関わった。この防災訓練を終え、これからは毎年防災訓練を実施しようとの会員からの思いもあり、議会質問も含めて働きかけを行い、市の防災訓練に障害者が参加していくことの確約を取り、担当課の協力、予算の獲得に努めた。
小矢部市独自の訓練として - 継続的な実施により内容の充実を
平成29年に行われた2回目の防災訓練で重点を置いたことは、障害者の特徴や救助の仕方を健常者に知ってもらい、誘導の仕方を経験してもらうことだった。そのために、自分たちと何かと接点のある民生委員や地域の福祉委員に声をかけ参加してもらうようにし、車いすでの移動支援や、視覚障害者の誘導をしてもらった。障害者にどのように対応し誘導したらよいか、障害者別にマニュアルをつくり説明をしながら進めていった。
平成30年、3回目の防災訓練の実施にあたっては、各々の障害者から反省点、意見を聞いた。例えば、視覚障害者の方からは、段差があるといってもどれだけ続くのか、段差の高さはどのくらいか、などの質問があり、それらを踏まえて、自分たちに合った誘導の仕方の一連の流れを作るとともに、さらにスムーズにその訓練が実施できるよう、リハーサルを実施した。リハーサルでは、ピンマイクをつけ誘導の仕方を覚え、安心感を与えて誘導を行った。障害者同士がお互いの障害や誘導の仕方を実際に理解できる良い機会になるとともに、データを取り防災訓練の内容を充実していった。

実施日はリハーサルが功を成し、よりスムーズにできるようになり、参加者も増えた。知的障害者、発達障害者は親子で参加した。仕事に就いていて、いざという時そばにいてやれないので、理解してもらおうと参加したとのこと。大きな声を出さずに、パニックを起こさないように、待って! ではなく、きちんと時間を告げてほしいと、自ら誘導時の注意事項を言われていた。また防災訓練では、市民の訓練参加の様子が報道されることから、リハーサル時に報道関係に来ていただき、障害者の防災訓練を広く知っていただくよう情報発信の機会とした。

このように繰り返し続けていくことによって、確認事項も把握でき、新しい課題を見つけることもでき、会合の準備期間や話し合いの時間も、計画的に進められるようになった。
今後に向けて
平成31年度は4回目の防災訓練となる。市の防災訓練の中には障害者の訓練が明記され、会合も計画的に組み込まれるようになっている。
私たち障害者は、まず、お互いの障害を理解すること、そして、防災訓練に呼ばれない、参加できないと待っているばかりではなく、障害者自らが都合の悪いこと、改善してほしい環境を整備していくために、声をあげ、市や他の団体と連携を取っていくことに努めている。“継続は力なり。” これからも自分たちでしっかりと研修し、連携を深め、健常者と障害者が力を合わせて元気な共生社会を築き、いつ何が起こるかわからない災害多発の昨今、いざという時に、私たちが実施している防災訓練が役立つことを確信し、今後もしっかり実施していきたいと思っている。
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