JDFいわて支援センターの活動について
日本障害フォーラム(JDF)は、2011年9月22日に「JDF被災障がい者支援いわて本部」を設置し、2012年4月17日には「JDFいわて支援センター」を陸前高田市に開設した。
市の行政、市・県内外の関係団体、諸機関、支援事業所などと連携しながら活動を行っている。
1.陸前高田市における障害者訪問調査
日本障害フォーラム(JDF)では、陸前高田市の要請を受け、2012年7月~11月まで、市内の障害者の全件訪問調査を行った。
その第一次報告(速報)を、戸羽太市長に対し、2012年1月11日に、陸前高田市仮庁舎にて行っている。
【調査について】
陸前高田市では、障害者の状況について、2011年7月に保健師の全戸訪問による確認や、2012年1月に障害者手帳所持者の安否確認などを行っている。しかし、所在を含めた現況はなお不明であり、その生活状況と、今後の災害時要援護者への登録希望などを含めた状況把握が求められている。市とJDFが懇談を行う中で、このことを目的とした訪問調査の要請が市から寄せられ、今回の調査を実施することとなった。
(1)目的
被災から1年余が経過した時点での障害者等の実態を把握し、訪問調査の中で把握したニーズを行政や関係機関と共有しながら対応し解決していく。目的は、第一に、緊急のニーズ把握を行う、第二に今後の復興を含めた障害者行政の基礎資料とする、第三に今後の障害者の防災計画作成の基礎資料とすることである。
(2)調査主体 日本障害フォーラム(JDF)
※実施にあたっては、陸前高田市、いわて障がい福祉復興支援センター(気仙圏域センター)等と連携・協力を行った。
(3)調査期間 2012年7月6日~11月12日(予備調査を含む)
(4)調査対象 陸前高田市の障害者手帳所持者と自立支援医療利用者 1,357人
※訪問調査による面談者数 1,021人
(5)調査方法 個別訪問による対面調査
(6)主な調査項目について
調査の視点は、大きく分けて、①震災以降の避難の状況、②現在の生活状況とニーズ、③災害発生時の今後の対応、の3点である。
(7)調査の実施について
全国から派遣されたJDF関係者(調査員)、JDFいわて支援センタースタッフ、いわて障がい福祉復興支援センター(気仙圏域センター)からの協力者で調査チームを編成し、原則として1チーム2名で訪問調査を行っています。1クール1週間の交代制で、調査従事者は、のべ531人(うち、復興支援センター職員105人、JDF調査員426人)。
(8)調査結果の概要(単純集計・速報値)
別紙のとおり。
2.障害者等の生活支援
- 移動支援(通院、通学、買い物等含む)、日中・余暇活動支援、同行介助等の直接的な支援活動を行っている。
- 特に緊急性のあるものや、公的支援でカバーしきれないニーズに対応している。
- 障害者手帳の有無に関わらず、幅広い方を対象としている。(子ども、家族、高齢者等を含む)
- 活動の中で明らかになったニーズを、地域の行政、社協、障害者支援事業所等の社会資源につないでいる。
公共交通の復旧がいまだ十分でないため、移動手段に困り通院もままならない方が数多くいる。陸前高田市では、中心地から離れていてもJRの駅まで移動できれば通院が可能であったが、それもなくなり、通院の大半を占める県立大船渡病院へは、タクシーを使えば1度の通院で往復1万円から1万5千円程かかり、とても年金生活者が支払える金額ではない。
そのため、本人や家族はもとより、近隣の住人や、居宅介護事業所からも多くの支援要請が入る。
しかしながら、センターのスタッフや車両の対応能力には限界があるため、交通費が払えない方や家族などの支援が受けられない方など、緊急性の高い場合に優先的に支援を行っている。
また地域のケアマネージャー等を通じての依頼もあるが、この場合、介護保険を申請中であったり、要支援でヘルパーが使えない方、生活保護世帯や非課税世帯の方への支援を原則としている。
ただし、相談時にその方の置かれた環境が見えない場合も多く、その場合の支援要請はSOSであると考え、いったんお受けすることにしている。そして、初回訪問時に状況を確認し必要な支援につなげることができる場合は、関係機関につなぐことにしている。
現在のところ、生活支援の利用者は1日平均7名14件の利用となっている。限られたスタッフ体制の範囲内で活動を行い、通院等を優先させている状況である。
今後については、陸前高田市と、情報交換ならびに今後のあり方について定期的に協議を行いながら生活支援をしていくことになった。
支援要請でフォーマルなサービスで対応できうるものは関係機関につなぎながら、そこで対応できないインフォーマルな部分を、JDFが支援したデータを基に、今後行政として制度設計を行っていき、当センターでそれらを実証実験的に行いながら、今後につなげるとの協議をしている。
3.今後の展望 - 地域に残る資源づくり
支援センターの活動の目的は、いまなお緊急に必要とされる被災障害者等の支援を行うとともに、支援活動を通じて、地域の障害者団体、支援事業所、関係機関等と連携を行うことで、今後の長期にわたる復興に向け、障害者を支援する社会資源が地域でより豊かに根づくよう貢献することにある。
今後の活動においては、生活支援のデータや調査結果を基に、障害のある方や高齢者が地域で暮らすにはどのようにしたらよいかという点で市と協議を重ね、現行の障がい福祉サービスや介護福祉サービスでは補えない部分を行政とともに作り上げていくことを確認している。
最終的には「支援センター」としての活動が終息したあとにも、これらの連携を通じて構築したネットワークや、サービス、人材等の資源が、地域の方に使いやすい形で残せるような活動を行っていきたいと考えている。
陸前高田市訪問調査結果の概要(単純集計)
■性別
男 | 537 | 52.6% |
---|---|---|
女 | 484 | 47.4% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |
■年齢構成
0~18歳 | 40 | 3.9% |
---|---|---|
19~64歳 | 426 | 41.7% |
65歳以上 | 555 | 54.4% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |
■現住所形態
自宅 | 436 | 42.7% |
---|---|---|
仮設住宅 | 190 | 18.6% |
民間賃貸住宅の借り上げ(みなし住宅) | 26 | 2.5% |
情報なし | 1 | 0.1% |
転居先 | 47 | 4.6% |
その他(死亡・入院・施設入所等) | 55 | 5.4% |
不明 | 266 | 26.1% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |
■障害者手帳種別(複数回答有)
①身障手帳
1 | 256 | 35.4% |
---|---|---|
2 | 114 | 15.8% |
3 | 106 | 14.7% |
4 | 159 | 22.0% |
5 | 46 | 6.4% |
6 | 39 | 5.4% |
不明 | 3 | 0.4% |
合計(人) | 723 | 100.0% |
②療育手帳
A | 64 | 31.1% |
---|---|---|
B | 142 | 68.9% |
合計(人) | 206 | 100.0% |
③精神保健福祉手帳
1 | 36 | 35.0% |
---|---|---|
2 | 50 | 48.5% |
3 | 10 | 9.7% |
不明・紛失 | 7 | 6.8% |
合計(人) | 103 | 100.0% |
複数回答
身障手帳+療育手帳 | 19 |
---|---|
療育手帳+精神保健福祉手帳 | 3 |
■東日本大震災における情報入手について
避難情報の入手経路(複数回答)
1.テレビ | 14 | 1.6% |
---|---|---|
2.ラジオ | 32 | 3.6% |
3.巡回広報車 | 2 | 0.2% |
4.防災行政無線 | 181 | 20.6% |
5.有線放送 | 5 | 0.6% |
6.民生委員 | 4 | 0.5% |
7.保健師 | 0 | 0.0% |
8.行政職員 | 4 | 0.5% |
9.福祉サービス事業者 | 118 | 13.4% |
10.地域防災組織 | 7 | 0.8% |
11.消防・警察 | 26 | 3.0% |
12.近隣住民 | 126 | 14.3% |
13.家族・親戚 | 122 | 13.9% |
14.その他( ) | 238 | 27.1% |
合計(人) | 879 | 100.0% |
避難誘導の支援(複数回答)
1.家族・親戚 | 163 | 21.7% |
---|---|---|
2.近隣住民 | 76 | 10.1% |
3.地域防災組織 | 5 | 0.7% |
4.消防・警察 | 25 | 3.3% |
5.福祉サービス事業者 | 121 | 16.1% |
6.行政職員 | 4 | 0.5% |
7.保健師 | 0 | 0.0% |
8.民生委員 | 3 | 0.4% |
9.その他 | 74 | 9.8% |
10.支援なし | 281 | 37.4% |
合計(人) | 752 | 100.0% |
■避難経験の有無について
避難経験
有 | 533 | 52.2% |
---|---|---|
無 | 404 | 39.6% |
死亡・入院・施設入所等 | 41 | 4.0% |
不明 | 43 | 4.2% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |
避難なしの理由
必要なし | 364 | 90.1% |
---|---|---|
出来なかった | 11 | 2.7% |
不明 | 29 | 7.2% |
合計(人) | 404 | 100.0% |
■震災から現在までの避難状況
避難先①
家族宅・親戚宅 | 97 | 18.9% |
---|---|---|
避難所 | 176 | 34.2% |
その他 | 241 | 46.9% |
合計(人) | 514 | 100.0% |
避難先②
家族宅・親戚宅 | 116 | 38.7% |
---|---|---|
避難所 | 73 | 24.3% |
その他 | 111 | 37.0% |
合計(人) | 300 | 100.0% |
避難先③
家族宅・親戚宅 | 38 | 25.2% |
---|---|---|
避難所 | 20 | 13.2% |
その他 | 93 | 61.6% |
合計(人) | 151 | 100.0% |
現在の生活面や医療面での支援について
緊急支援必要 | 14 | 1.4% |
---|---|---|
支援必要 | 146 | 14.3% |
支援不要 | 335 | 32.8% |
死亡・入院・施設入所等 | 52 | 5.1% |
不明 | 474 | 46.4% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |
■災害発生時の今後の対応
緊急避難の場合の支援や条件(複数回答)
①緊急避難(移動)の際の支援
必要なし | 355 | 33.6% |
---|---|---|
車両の支援(一般車両) | 346 | 32.7% |
車両の支援(救急車) | 15 | 1.4% |
車両の支援(福祉車両) | 74 | 7.0% |
介助等人的支援 | 242 | 22.9% |
その他 | 25 | 2.4% |
合計(人) | 1057 | 100.0% |
②避難所・避難場所での配慮など
必要なし | 162 | 9.7% |
---|---|---|
生活面の配慮 | 431 | 25.8% |
移動面の配慮 | 279 | 16.7% |
集団生活や周囲への配慮 | 258 | 15.5% |
医療的な配慮 | 490 | 29.4% |
その他 | 48 | 2.9% |
合計(人) | 1668 | 100.0% |
避難時の要支援度
避難時・避難先の支援や配慮が必要 | 445 | 43.6% |
---|---|---|
避難時の支援のみ必要 | 55 | 5.4% |
避難先の配慮のみ必要 | 215 | 21.1% |
不要 | 170 | 16.7% |
死亡・入院・施設入所等 | 49 | 4.8% |
不明 | 87 | 8.5% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |
要援護者名簿への登録
承諾 | 697 | 68.3% |
---|---|---|
不承諾 | 171 | 16.7% |
死亡・入院・施設入所等 | 44 | 4.3% |
不明 | 109 | 10.7% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |
緊急時の情報開示
承諾 | 725 | 71.0% |
---|---|---|
不承諾 | 142 | 13.9% |
死亡・入院・施設入所等 | 44 | 4.3% |
不明 | 110 | 10.8% |
合計(人) | 1021 | 100.0% |