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平成17年度 マルチメディアDAISY図書製作普及事業 総括報告書

【教材を提供している立場から】DAISYの利用者の声

NPOデジタル編集協議会ひなぎく 中村芬

こんにちは。名古屋から来ました、デジタル編集協議会ひなぎくの中村と申します。私どもは、DAISYがスタートしたときから、視覚障害者のために音声に変換してきました。マルチメディアが導入されてからは、視覚障害者の中でも弱視の方がまず最初だったわけです。

弱視の方にマルチメディアのものを変換して提供していたのですが、そのうちに、この場で先ほどから出ておりますように、ディスレクシアやLDといった障害を持たれた方が教科書の変換を依頼しに見えました。最初は中学生の方だったのですが、お一人で少ない方で5タイトル、多い方ですと数学を除いたものがすべて依頼されてきます。私どもは、本当に試行錯誤でまいりましたが、個々の方に対応するわけですから、このように改良してほしいということがあれば、その方に対応した作り方をしております。教科書を変換するわけですが、教科書というのは4月に一斉に子どもの手に渡るといいますか、3月末から4月に渡されて、すぐにスタートしてしまうわけですね。そうしますと間に合いません。

お一人で5、6タイトル出されますと、1冊のものを仕上げるのに1カ月ぐらいはかかるわけですから、夏休みまでにここまで先生が進む予定だという予定を立てて、お互いに理解をし合いながら作製していきます。そんな中で、私はどのように使われているのかがすごく不思議だったのです。

基本的に読みに障害があるわけですから、先ほどの先生のお話ではないですが、音を聞いて書かれていることが何かという理解のところから入っていくようなのです。初めのうちは、学校では、先生が読まれたり周りの生徒さんが読まれても、いまどこを読んでいるのかわからないで、ただ1日座って帰ってくるという状態です。それが、DAISYで事前に音を聞いて、どこを読んでいるのかがわかるようにしてから授業に出ていかれるわけです。初めのうちは無理なのですが、だんだんにここを読んでいるということがわかるようになって、それまで学習意欲がなかったものが大きく変わってくるとお聞きしております。教科書は、私たちも好きで開く人はあまりいないと思うのです。

ですが、DAISYにしたものはパソコンを開いて自分1人でできるというメリットがあるようなので、小学生のときや低学年のときに親の手を借りて区切りをつけてもらって、なおかつ理解ができなかったものが、自分の力でできるということで、高学年から中学生の人に自分に自信をつけるというおまけまで付いてくると、ご両親からお話を伺っております。また、中学生になっても基本的なことがわかっていないために、中学の先生が、この子は小学校の1年生からやり直しをしようと、小学生の国語を依頼してきましたが、3カ月ぐらいで1年生を上げられました。
もう1人の子どもさんは同じ中学1年生でしたが、この子は5年生ぐらいまでは理解しているようだということで、1年下げて4年生ぐらいから始めました。先生がどこでどのように見分けているのかわからないのですが、割と理解をしているというのが自信になってきて。

先ほど分かち書きとおっしゃいましたが、小学校1年生の教科書は単語の単位で分けてあるわけです。「きょうは うみへ」という感じで1つ1つに分けてあるものですから、これが何だと理解をするところから入っていきます。私たちは何気なく言葉を覚えていくようですが、理解の仕方はいちばん最初に戻ってやったほうが早いのだということを、逆に教えられたような気がします。

こんな中で、親御さんがいちばん多いのですが、学校の先生や養護学校の先生がこのDAISYというものに着目して依頼をしていらっしゃいます。ですから、いまは学校でも特別支援対策ということで、先生が就かれることはありますが、それは学校という場にあって初めて成立することです。家庭内ではやはり親御さんしか、もちろん家庭教師というのもあると思いますけれど、そういったものでしか進めることができません。しかし、先ほど言いましたように、自分でできるというところに大きなものがあるのではないかと思います。

では、どんな成果があるかというのは、私どもも始めてまだ3年ぐらいですので、実際には、よかったねというところまでは至りませんが、学習意欲が出てきた、このような本が読めるようになったということがメールで来たり、お手紙や電話をいただいたりしています。少しずつ進歩しているのだなということで、これで、私たちのやっていることは少しは力になっているか、というような理解をしております。
私どもは図書や教科書を個人的に変換いたしております。これは著作権の問題が大きいものです。

では、どうしているかと言うと、小中学校はもちろん義務教育ですので、教科書はもちろん無料配付というのがありますが、配付されたものではなくて、新たに教科書や図書を買っていただいて、この子がこの本を読めないから、この教科書では理解ができないからということで変換しています。教科書会社や出版社の方が聞かれると、えっと思われるかもしれないのですが、マルチメディアDAISYでいちばん大きなものは、著作権の問題ではないかと思います。この著作権問題を云々する前に、文科省は教科書を活字だけではなくて、他のメディアで配付してくださいと、私は再度申し上げたいと思います。以上です。