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平成17年度 マルチメディアDAISY図書製作普及事業 総括報告書

モニタリング調査結果 DAISYのモニター事例

藤澤和子(京都府立向日丘養護学校)

Aさん 小学4年生(B養護学校在籍) 障害名は知的障害.

1.Aさんの読書に関する状態

Aさんは,発達年齢4歳半程度の児童である.ひらがなの1文字ずつの拾い読みがゆっくりできる児童であるが,読み間違いをしたり,単語をひとかたまりとして読むことができないため,自分で読もうという意欲が乏しい.間違えたり詰まると音読を拒否することが多い.5,6歳用の絵本であれば,読み聞かせをしてもらうと内容を理解することができる.

2.DAISY「はなさかじい」のモニター  

初回は,DAISYを終わりまで通して聞かせた.Aさんは最後まで集中して聞いた.「おもしろかった」と感想を述べた.2回目は,1ページずつ止めてみた.
すると,自分から自発的に表示される文字を読もうとし始めた.そこで,黄色で表示される文の1箇所ずつで止めてみると,朗読された直後の短い文なので,模倣するようにして,拾い読みよりも分かち読みに近く読むことができた.聴覚的な短期記憶に残っているので,読みやすいのではないかと思われた.このようにして黄色の表示の区切りに従って,続けて音読をすることができた.

3.DAISYの効果  

DAISYは,文字が全く読めない知的障害の人からある程度読める人まで,その人の知的発達の程度によって,利用する目的や楽しみ方は異なると考えられる.
Aさんは,ようやく拾い読みができる段階にさしかかった児童であったため,文字と音声と絵が表示されるDAISYを通して,文字が読みたいという本人の気持ちを素直に表現することができたという点で,効果があったのではないかと思われた.
活字の本であれば,詰まらずには読めない自分がいやになって途中で投げ出すAさんであったが,2で記述したように,短く区切られた朗読の音声と黄色の表示に助けられることによって,読むことができたという達成感を持つことができた様子であった.2回しか与える機会がなかったので,読みの能力を向上させる効果があるかどうかまではわからないが,読もうという意欲を持てたことは確かであった.また,コンピューターを使った学習スタイルであったことも,集中を高め,物語への興味を持たせることに影響を与えたと感じられた.