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平成17年度 マルチメディアDAISY図書製作普及事業 総括報告書

【教材を提供している立場から】質疑応答/DAISY事例発表

司会 野村美佐子(財団法人 日本障害者リハビリテーション協会)

○司会
どなたかご質問の方、いらっしゃいませんか?山内さん、いかがですか。

○山内(墨田区立緑図書館) 
2005年から、マルチメディアDAISYと非常に同じような機能を持った、電子版の国語教科書が光村図書より出ているのですが、ご覧になりましたでしょうか。

○中村 
はい、私どもは興味を持って、すぐに見ました。あれは教える先生の為のものだと思います。読みについて、DAISYの場合は区切っていきますが、(光村図書国語デジタル教科書は)スラーッと読まれてしまうと感じたのです、子どもたちの障害に合ったものではない。あれは教師が、例えばそういう障害がある子どもに教えるのにどうしたらいいかというものである、と私どもは理解しました。

○山内
私もそう思いましたが、かなり機能が似通っていますので。例えば、僕は体験版しか見ていませんが、1つの文章が、読んでいる所の文字が濃くなりますね。ただ、それが非常に長いのですね。1センテンスがずっと黒くなっていて、それを読む、それを短くしたりする機能があそこでできれば大分違うのではないかと思います。

○中村 
私も光村さんの努力はすごいものだと思いますが、同じような考えを持っております。

○司会 
他に質問したい方、いらっしゃいますか? それでは、まだ時間がございますので、奈良DAISYの会という所が学習児に対する様々な支援をしており、そのお話をお聞きしたいと思います。
(会場に向かって)濱田さん、いらっしゃいますか?
私どもではいろいろな場所で研修を行ってきました。2001年からですと、大体100人の方に研修をしています。しかし、著作権という問題がありまして、なかなか普及しないという状況があります。その中で、奈良のDAISYの会という所が研修後結成をいたしまして、積極的に普及活動をしております。その辺からお話をいただいてよろしいですか。

○濱田(奈良DAISYの会) 
我々は2003年5月に研修を受けて、グループを結成して、今年の5月で3年目になります。いまメンバーは15人くらいで、保護者、教育関係者、医療関係者、図書館関係者で構成されております。
いままで主に行ってきた活動は、年に1度DAISYの体験会というものを開いて、色々な方にDAISYを知ってもらおうということで実際にパソコンを使ってDAISY図書とはどんなものか見ていただいています。そして、希望者がいらしたら製作講習会に結びつけていくということで、製作講習会も一応、年に1度開いております。その中から、もっと続けたいという方がいらっしゃったら、奈良DAISYの会に入会して活動していただいています。  
去年は学校の先生が3名入会されまして、学校現場でもDAISY図書を使っていただきたいと願って、そちらの方向でうまくいけばいいのにな、と思っているところなのですが、先生方はとても忙しく、DAISY製作の時間がなかなか無いということで、まだ実践には至っていません。
でも、メンバーで製作を支援していこうと、著作権の問題はあまり気にせずに教科書のDAISY化を始めております。例会は毎月1回行って、製作に関する質疑や情報交換を行っています。
奈良県の教育委員会にも大分ご理解をいただいて、DAISYを展示する機会を作っていただいて、いままで主に普及活動をしてきています。

○司会 
ありがとうございます。今日、奈良DAISYの会から、「読みに困難がある人にマルチメディアDAISY図書を提供・支援します」というパンフレットを持って来ていただきました。受付に置いておきますので、興味のある方はお帰りにお取りいただければと思います。  
その奈良DAISYの会には、山本義久さんという方がいらっしゃいます。40代のときに脳出血を起こしまして、その後、失語症ということもあり、DAISYがリハビリに使えるのではないかと、ご本人がDAISYを使い始めました。これから、利用者の声という形で山本先生が作成されたDAISYを皆様にお見せしたいと思います。

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私のDAISY活用。
山本義久、マツネン診療所、山本内科小児科。  
私は平成14年3月9日、左脳内出血、左被殻出血で倒れた内科医です。
現在、右片麻痺、失語症が残りましたが、徐々に改善しており、2年前より現場に復帰しております。 DAISYに出会ったのは2年前です。
そのとき、私自身のリハビリテーションを記述した『山本義久 人生の第二のステージ』を書き終えていましたが、文章表現と自分の声での表現の間に大きな落差があり、考えていることを自分の声で表現する上でもどかしさを感じていました。自分が書いたものを自分の声で表現する方法があることを知った私は『山本義久 人生の第二のステージ』をDAISY化することにしました。
これを使って、現在、社会貢献の一環として、月1回程度の講演活動を続けています。講演対象は、患者さん、直接失語症患者さんに関わる医療従事者、その他一般の方です。
患者さんには、あせらずゆっくりと頑張ってくれと、徐々に改善していくというメッセージを自分の声で発信しています。その場で話すと、失語症の関係で冗長になるので、事前にDAISYに声を入れて、患者さんに理解しやすくなるように編集しています。
話の内容は、DAISYで画面に表記し、話している所を反転表示させます。また、場合によって、ルビを振った画面表示を使っています。画像、字、音のマルチメディアで情報を提供することにより、耳の聞こえにくい方、目の見えにくい方などにも理解しやすくなるようにしています。
直接失語症患者さんに関わる医療従事者には、私自身の声の講演を通じて、失語症患者さんに関する理解を深めることができていると思います。一般の方には、健康の自己管理がいかに重要か、脳卒中を経験した内科医の立場で訴えています。
私にとってDAISYとの出会いは、コミュミケーションの手段の獲得であるとともに、リハビリテーションの方法の獲得でもありました。右利きで右片麻痺の私にとって、手書きよりもキーボード入力の方法が正確で容易です。書いた文章を読むときも、手書きよりはコンピューターの画面上のほうが容易です。失語症の私にとって、間違えず、連続して読める文章の量は限られています。DAISYでは、連続して読み上げなければならない文章の長さを自由に調整できます。私も失語症の改善の程度に合わせて、連続して読み上げる長さを変えていきました。講演で聴衆からよい反応が得られると、
次回の講演でさらによい反応が得られるように、ブラッシュアップする他のリハビリテーションも受けておりますが、DAISYも失語症の改善に寄与したのではないかと考えております。2000年に障害を理由とする医者の欠格条項が撤廃されており、耳の聞こえにくい、目の見えにくい医者や高次脳機能障害を持つ医者に対する医療情報の提供が問題となっておりますが、その方法としてDAISYが採用されることを希望します。
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○司会 
このセミナーのために、どうしてもDAISYを作ってくださいというお願いをして、自分自身のことをDAISY化しておっしゃっていただきました、このような使い方もあるのですね。この山本先生の事例について河村さんより何かコメントがあればお願いしたいと思います。こういった使い方は初めてだったと思いますが、いかがでしょうか。

○河村(国立身体障害者リハビリテーションセンター) 
私はDAISYの講習には随分出させていただいて、いろいろな方との出会いがあったのですが、山本さんとは、確か、奈良女子大学を会場にしたDAISYの製作の講習で初めてお会いしました。ご自身がDAISYの製作方法を身につけたいということで参加しておられました。そのときに初めてお聞きして、この通りのお話で、こういう使い方もあるのだと、思いを新たにしたことを記憶しています。

最初にDAISYを開発したときに想像していた以上の使われ方が、実は今、色々な所でどんどん出てきております。例えば仕事の上で、それから病院で患者さんと問答をする時にも使われています。
いちばん典型的なのは、胃の検査をやるときに、「上を向いて」とか「笑って」とかずっとレントゲン技師の方と問答をしながらではないと検査できませんね。これは、動作が不自由な方はもちろん大変です。 コミュニケーションができない方もどうしたらそれを保障できるのか、ということが問題になります。
それから、先ほど、山本さんのDAISYの中でご指摘のあった医師法です。まず、きちんと医師になるための研修をする病院で、カルテへのアクセスとか、あらゆる所での情報アクセスということがありまして、それと同時に患者さんも同じような情報にアクセスしなければいけない。
つまり、医療、保険、そういった仕組み全体が変わっていかなければいけない。そういう意味の情報のアクセスがあらゆる場面で要求されていまして、1つの典型的なDAISYの開発を要求されるものが、ここに紹介されたと思います。  

いま皆さんが手にしておられるDAISYは、技術的にはまだ全てのものに対応できることにはなっておりません。従いまして、動画への対応であるとか、さらに改善しなければならないことが色々あるわけですが、ただ、いちばん重要なのは、それが国際的な標準となってきちんと積み重ねられていくものであるという保障があること、というのがもう1つのDAISYの特長だと思います。  
その意味で、みんながそれぞれ工夫するときの共通のプラットホームをきちんと維持しながら発展させていくと、さらにもっと、あらゆる生活の場面で、必要なニーズにどう答えていくのか、という課題が出てくる、それを典型的に示してくださったのがこの山本さんのケースではないかと、私自身考えております。

○司会 
ありがとうございました。