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第58回全国ろうあ者大会(於島根)を終えて

(財)全日本ろうあ連盟
第58回全国ろうあ者大会
実行委員長 広戸 勉

全国ろうあ者大会は、全国47都道府県に傘下団体を擁する全国唯一のろう者の当事者団体である財団法人全日本ろうあ連盟が主催となり、毎年6月、各県持ち回りで開催しております。全国各地から2,000~3,000名が参加し、ろう者の社会的自立・地位の向上及び社会福祉の増進を目指して研鑽と交流を深めることを目的としております。1948年(昭和23年)に第1回全国ろうあ者大会が京都で開かれ、今回の島根で58回目を迎えました。 今年の6月2日から6日までの5日間にわたって島根県松江市にて開催された第58回全国ろうあ者大会は全国から2,000名以上の参加者が集いました。聴覚障害者写真コンテスト、松江ろう学校や浜田ろう学校の生徒作品やろう者の工芸作品の「展示」から始まり、「評議員会」「聴覚障害者に関わる分科会」「前夜祭」「特別企画」等が催されました。 評議員会では、全国各地から約300名の評議員が集まり活発な議論が繰り広げられました。昨年の政権交代により、「10.30全国大フォーラム」に参加した長妻厚生労働大臣が障害者自立支援法の廃止を明言、翌年1月には内閣府に「障がい者制度改革推進会議」が設置されましたが、6月国会に上程された「障害者自立支援法一部改正案」 には審議内容が反映されておらず、私たちは島根に於いて、「障害者自立支援法一部改正案」に反対を表明する緊急決議を掲げました。「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」と緊急国会要請行動・大集会の開催など全国的に取り組もう、と結束を固めました。その結果、忘れもしない2010年6月16日、障害者自立支援法一部改正案の廃案に繋げることができ、未来を共に切り拓いていく仲間たちの存在を心強く思いました。

聴覚障害者問題に関わる研究分科会では、「ろう運動」「手話」「国際と女性」「教育」「労働」の5つに分かれ、どの分科会も熱心に討議が交わされました。特に関心が高かった教育分科会では松江ろう学校を創設した福田ヨシ先生や、その教え子で初代の全日本ろうあ連盟の連盟長になられた藤本敏文さんの足跡を辿ることができ、ろう教育の原点について考えさせられたという多くの声が寄せられています。 また、労働分科会では企業の担当者などパネラー4名が意見交換を交わし、企業における手話通訳設置など、コミュニケーション支援の大切さを訴えました。従業員約3,000人中、聴覚障害者15人を採用した出雲村田製作所は、朝礼の時にプロジェクターを使うなど筆談によるコミュニケーションを主としていますが、今後は手話ができる人を増やすと具体的な目標を挙げていました。
イベントの中で一番人気の高かった「高齢者の集い」は定員の倍の参加者となりましたが、松江城周辺の観光地を中心とした散策を満喫して頂くことができました。笑顔いっぱいの参加者に私たち実行委員も元気をもらいました。
最終日の「大会式典」は、参加者が2,000名を超え、大ホールだけでは収容できず、中ホールでモニターによる式典の模様を映し出しました。午後からのアトラクションでは、松江ろう学校の生徒が和太鼓を披露しました。ドンドンド~ンと会場全体に力強く響き渡り、感動と拍手が沸き起こりました。最後の目玉である松江市聴覚障害者協会・手話サークル共同による劇・スライドでは「私立松江盲唖学校の誕生、そこから見えてくるもの」が力演されました。創立者の福田ヨシ氏の兄福田平治氏の孫である福田良子氏のご協力のもと、メンバーたちが練習に打ち込んでいた姿が甦りました。

当初は昨年3,000人以上集めた茨城大会のスケールの大きさに、島根県とのレベルの違いを感じましたが、全国の皆さんから"頑張れ"と励ましの言葉を頂き、実行委員一同、心を一つにして大会の成功を誓い合いました。不安を抱えながら準備を開始したものの、毎日、大会の運営資金のことが頭から離れませんでした。昨年10月から地元の商店街や企業などへの広告依頼を始め、方々を歩き回りましたが、協力頂けるところが少なく大変苦労しました。大会が迫ってきても、人材の確保、資金の確保の調整や確認などで、文字通り連日連夜の会議が続きました。
成功のうちに幕を閉じることができた今、何だが気が抜けてしまいながらも「ああすればよかった」「こうやればよかった」と反省が沸き出てくる毎日です。 最後になりますが、大会テーマに「くにびきの島根で全国の仲間と縁(えにし)を結ぼう!」を掲げ、全国から集まった2,000名を越える仲間たちに素敵な出会いが生まれ「島根の良さ」を感じて頂けた大会でもありました。二度と経験できない大きな大会に関わることができて嬉しく思います。
少ない人材と、少ない予算の中で、毎日抱え続けてきたプレッシャー・不安は大きかったですが、小さな島根で大きな大会を成功させることができたのは多くの人たちに支えられたからこそであり、皆さまに感謝するとともに人と人が心の触れ合うことの大切さを学びました。この大会で経験したことを、県ろうあ連盟の会員、手話通訳者、関係者の方々が今後のろうあ運動に活かして頂けることを心から期待しています。


財団法人全日本ろうあ連盟 http://www.jfd.or.jp/

第58回全国ろうあ者大会in島根 http://www.jfd.or.jp/2010/06/18/pid1811