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障害のある人への災害支援

2.地方公共団体の防災対策に関する8つのポイント

 国、都道府県および市町村はそれぞれ国民(住民)の生命および財産を災害から保護する使命を有している(災害対策基本法第3条~5条)。このため、国および地方公共団体は、日頃から防災について万全の備えと体制を整えておかなければならない。また、災害が発生した際には、救助・救援対策が機動的かつ機能的に行われなければならない。
 今回の災害において障害のある人への対応をみると、未曾有の大規模災害であったことと救助・救援にあたる地方公共団体そのものが被災したという状況のなかで最大限の努力が払われ、不眠不休の救助・救援活動が行われたことは十分に評価されるが、自宅や避難所の障害のある人など要援護者の被災状況の把握が遅れたこと、福祉事務所等の相談窓口業務が不在がちであったことなどさまざまな問題が指摘された。
 今回の災害の経験や反省点を踏まえ、国、都道府県はじめ、特に、住民に最も身近な市町村においては、障害のある人に配慮した防災対策を講ずる必要がある。

(1)防災知識の普及と啓発

 災害が発生した場合、障害のある人が迅速にまた安全に避難するためには、障
害のある人をはじめ地域住民が日頃から防災についての十分な知識をもつととも
に万全の備えをしておく必要がある。このため、地方公共団体は、防災知識の普
及・啓発とそのための広報活動等を積極的に推進し、防災意識の高揚を図る必要
がある。

1.地域内の障害のある人に対し、防災知識の普及・啓発の徹底を図る。特に、広報等の資料は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、精神障害のある人に対しては、点字、録音によるものやイラストレーションを用いるなどわかりやすいものとする。

2.障害のある人に対し、避難方法、避難後の福祉的・医療的配慮の内容を周知しておく。

・避難方法の周知をしておく。特に、ホームヘルパー、ガイドヘルパー、移動サービスなど介助的サービスを受けている障害のある人に対し、避難方法を周知しておく。
・障害のある人に対し、避難所や福祉避難所(仮称)の設置予定場所を周知しておく。
・介護を要する場合には、社会福祉施設への緊急入所等の福祉的配慮があることを周知しておく
・補装具、日常生活用具等を必要とする障害のある人に対し、災害時における給付等の方法を周知しておく。
・障害のある人に対し、災害時における福祉事務所や社会福祉施設等における相談体制、保健所や医療機関等における医療供給体制および相談体制等を周知しておく。

3.地域住民に対し自主防災組織を通じるなどして、障害のある住民の災害時における支援の方法を周知しておく。

(2)防災訓練の実施と備蓄

今回の災害では、発生直後、倒壊した家屋からの救出や消火にあたって、地域ぐ
るみの活動が大きな役割を果たした。初期の段階では、「自分たちのまちは自分た
ちで守る」という自主的な活動が重要である。このことから、自主防災組織づく
りを進める必要がある。
 また、障害のある人のなかには固有の用具等を必要とする人が多数いるが、今
回の災害では、使用していたものを倒壊した家屋に置いてきたり、紛失、破損し
た人も多い。さらに、避難所での生活にあたり、緊急に必要となった用具等も
あった。避難所や仮設診療所では一部の用具等が配布されたが、供給品の種類や
数量は十分ではなく充足するのに時間を要した。このことから、地方公共団体は、
一定の用具等の備蓄をしておくことが望ましい。また、災害時にこれらの用具等
が円滑に調達できるよう取り扱い業者等との連絡体制を確立しておく必要がある。

★防災訓練の実施

1.市町村は、消防署等と連携を図り、自主防災組織づくりを進めるとともに、防災訓練の方法等の普及に務める。防災訓練にあたっては、障害のある人の参加を呼びかけるとともに、障害のある人を講師として救護方法の訓練をするなどの方法を取り入れることをすすめる。

・障害の特性に応じた救出方法を習得する。
・仮想災害(火災、家屋倒壊、福祉用具の欠損状態など)のもとでの救出訓練をする。

2.防災訓練、障害者週間の行事、学校教育の一環等を利用し、障害のある人などを講師とした障害体験の機会を取り入れる。

・目隠しをして町内等を歩いてみる。
・聴覚障害のある人のコミュニケーション(初歩の手話、筆談)を体験してみる。
・車いすで町内、駅、市町村庁舎等を移動してみる。
・補助具などの重い負荷をつけて歩いてみる。

★備蓄

1.地方公共団体は、福祉事務所、保健所あるいは社会福祉施設等を保管場所として、障害のある人のための一定の用具等の備蓄をしておくことが望ましい。

・用具等:簡易トイレ、収尿器、ストマ装具(パウチ、皮膚保護剤)、紙おむつ、車いす、白杖 など

2.障害のある人のための日常生活用具を迅速に入手するため、品目リストを整備しておくとともに、災害時に円滑に調達できるよう取り扱い業者や他の地方公共団体との連絡体制を確立しておく。

(3)避難所の整備

 今回の災害では、障害のある人のなかには避難所に避難したものの一般避難者と
の共同生活に馴染むことができず、倒壊のおそれがある危険な自宅に戻った事例や、
別の避難所に移らざるを得なかった事例もある。また、避難所が障害のある人に対
応した構造になっていなかったため、避難生活上さまざまな問題点が指摘された。
さらに、多数の被災者が避難する避難所では、障害のある人などの要援護者は、生
活スペースの確保や救援物資の受け取りなどにおいても困難な状況におかれやすい
状況にあり、情報も円滑に伝わらないなど避難所の管理運営面での問題点も多く指
摘された。
 避難所では多くのボランティアによる避難者に対する生活支援が行われたが、福
祉的・医療的なニーズを把握するマンパワーが少なく、十分な対応ができなかった。
 このようなことから、避難所選定や設置にあたっては、障害のある人などのため
に構造、情報の伝達、ニーズの把握、マンパワーの確保および管理運営に配慮する
必要がある。また、福祉避難所(仮称)等の設置を検討する必要がある。

★構造上の配慮

1.あらかじめ車いす用のトイレを設置したり段差解消の措置のできる避難所については、これを推進する。避難所が開設された場合には、車いす利用者に配慮して、障害者用トイレの設置、簡易トイレを用意するとともに、段差の解消の措置を速やかに講ずる。

★ニーズの把握

2.避難所が開設された場合、被災者台帳を早急に整備するとともに障害のある人やその家族の福祉的・医療的ニーズを把握する。その結果、福祉的・医療的サービスの必要な障害のある人については、福祉事務所等と連絡をとり、必要な措置を講じる。このため、あらかじめ福祉事務所、保健所、社会福祉施設等の関係者と連絡方法等を定めておく。

★情報伝達に関する配慮

3.避難所が開設された場合、避難所において障害のある人が情報から遮断されないよう、また、障害のある人からの情報が円滑に伝わるような配慮をする。このため、あらかじめ情報伝達方法を定めておく。

・避難所等にファックス、文字放送テレビ等を設置する。
・掲示板への貼り紙、電光掲示板を活用する。
・避難所等に手話通訳者やボランティアを派遣し情報伝達の徹底を図る。

[障害別のポイント]

○視覚障害のある人のために

・構内放送等の音声情報を複数回繰り返す。
・行政情報等で主に掲示されるものについては、ボランティア等を介して確実に伝わるように配慮する。
・携帯ラジオを配付する。

○聴覚障害のある人のために

・聴覚に障害のある人を速やかに把握し、筆談等による情報伝達に努める。
・手話通訳のできる人を配置する。
・文字放送ラジオを配付する。
・ファックスを設置する。

★マンパワーに関する配慮

4.避難所が,開設された場合には、避難所における障害のある人のニーズを把握したうえで、カウンセラー、手話通訳者、ホームヘルパー等の福祉的・医療的相談に応じることのできる人、介助のできる人の派遣要請をする。このため、あらかじめ福祉事務所、保険所、社会福祉施設等の関係者と連絡方法等を定めておく。
 また、避難所に手話通訳者やボランティアを派遣し、相談窓口とする。

★福祉避難所(仮称)

5.一般の避難所のほかに、社会福祉施設、福祉センター、コミュニティセンター等を福祉避難所(仮称)として設置し、障害のある人やその家族の避難生活が支障なく行われるように配慮する。

★運営管理に関する配慮

6.避難所の運営・管理にあたっては、1~5に関する配慮が行われるようあらかじめ避難所の管理責任者の役割を明確にしておくとともに、そのためのマニュアルを作成しておく。

(4)情報の提供と相談体制

 障害のある人はじめ被災者が必要とする情報は、避難所生活に必要な医療、食
料・水、生活必需物資、罹災証明、応急仮設住宅の申込、保健・医療・福祉サー
ビス、生活支援のための各種の融資・貸付制度、就労対策、応急仮設住宅の申込
方法などさまざまなものがあり、これらの情報は時間が経過するにしたがって
刻々と変化していく。今回の被災地方公共団体では、避難所に文字放送専用テレ
ビを設置し、公共放送を利用し県民向け定時放送を行い、新聞紙面の購入によ
る「震災ニュース」等の情報を提供し、また、「心のケア通信」等のパンフレット
を配布するなど情報の提供に努力が払われた。このように、被災者が安心して生
活できるよう的確な情報の提供は、まず第一に求められることである。特に、障
害のある人に対しては情報伝達の手段を含め一層の配慮をする必要がある。
 また、今回の災害では、被災地方公共団体においては、電話による「介護」、「福
祉施設の利用」、「車いす等の福祉機器」等に関する『被災者福祉何でも相談』の相
談窓口を設置し、また、障害者専用電話やファックスを設置し福祉に関するあら
ゆる相談こ応じた。しかしながら、福祉事務所の職員は、災害直後、救援物資の
集配や遺体の収容等の業務を担当したため、住民の間に急増した保健・福祉ニー
ズに応えることが困難となり、この機能が回復するのにかなりの時間を要した。
 災害による生活上の不安や復興のための生活設計をするうえで、行政機関に
よる情報の提供は最も重要なもののひとつであり、特にコミュニケーションにハ
ンディのある障害のある人に対してはきめ細やかな情報を伝達する必要がある。
また、障害のある人からの情報(相談)を受け止める、相談窓口の設置にも十分
配慮する必要がある。

1.情報提供の徹底を図る。

・防災に関する情報提供の徹底を図る。
・災害時および復興期にかかる福祉・生活に関する情報提供の徹底を図る。

2.情報提供のための手段を工夫する。

・ラジオ・テレビなどの公共放送機関を活用する。
・パソコンネットワークを活用する。
・広報誌等をきめ細やかに配布する。

3.相談窓口を設置する。

・福祉事務所、保健所等による相談窓口を確保する。特に、災害時に、救援物資の集配業務等によって障害のある人など要援護者に対する支援業務が停止しないような体制をとるよう地方公共団体全体の問題として配慮する。
・電話やファックスによる障害のある人のための専用窓口を確保する。
・障害関係団体、福祉関係団体との協力・連携を図り、相談体制、サービス提供体制を確保する。必要な場合には、これらの団体の協力を求め、「被災地障害者支援センター」を設置し、障害者支援の窓口を一本化する。
・避難所および福祉事務所等の窓口等に手話通訳者やボランティアを置く。

(5)救援のためのネットワークづくり

 今回の災害のような大規模災害においては、被災自治体独自では被災者の救護
救援は困難である。障害のある人に対する救護救援をみても、全国社会福祉協議
会の全国身体障害者療護施設協議会等の三団体による「兵庫県南部地震障害者支
援センター」(障害者支援センター)が設置された。このほか、視覚障害者団体に
よる阪神・大震災・視覚障害被災者支援対策本部(HABIE)、全日本ろうあ連
盟全国救援対策本部が設置され、兵庫県・神戸市精神薄弱者愛護協会、兵庫県精
神薄弱者育成会、リウマチ友の会等多くの障害団体が支援にあたり、会員を中心
に被災状況の把握、安否の確認、福祉や生活等の相談、施設等への受け入れ、食
糧、物資の調達と配布、ボランティアの募集・派遣等を行った。また、被災地方
公共団体の障害者名簿をもとに避難所および在宅の障害のある人に対する安否の
確認とニーズの把握を実施した団体もある。
 また、避難所等で生活することが困難な要介護状態にある障害のある人につい
ては、被災地方公共団体の地域内外の社会福祉施設に緊急に受け入れるという対
応を行ったが、このための地方公共団体と施設、施設間同士、施設と障害団体の
人的応援やコーディネートもこの対応を円滑に進めるうえで重要であった。
 さらに、全国のボランティアやボランティアグループによる活動、手話通訳の
できる人の応援活動も重要な役割を果たした。
 このように、災害時には障害団体、ボランティアあるいは他の地方公共団体に
よる応援活動は不可欠のものであり、日頃から救援のためのネットワークづくり
が必要である。

1.障害関係団体、社会福祉協議会、社会福祉施設等と災害時における障害のある人に対する支援に関し、「被災地障害者支援センター」などの設置を含め、災害援助協定を締結するなど協力体制をつくっておく。

2.専門職による「被災地救援チーム」を組織しておく。

3.障害のある人の介助等にあたることができるようボランティアの訓練をしておく。

4.災害時における障害のある人に対する援護に関し、近隣の地方公共団体と災害援助協定を締結しておく。

(6)安否の確認とニーズの把握

 今回の災害において、被災地では避難所で避難生活をする障害のある人など
に対しては、災害発生直後から避難所緊急パトロール隊による安否確認とニー
ズの把握が行われたが、在宅の障害のある人に対する安否の確認にはかなりの
時間を要した。このため、障害のある人の安否確認には、障害関係団体や社会
福祉協議会等によるところが大きかった。しかしながら障害団体等による安否
確認は、各団体に加入する会員以外の障害のある人にまではなかなかおよばな
かった。必要と思われる障害のある人すべてについて、地方公共団体の責任に
よる
 組織的、かつ、迅速な安否確認を行うためには、障害団体や民生委員等に対
し、障害者名簿の提供が必要であったが、プライバシー保護の問題もあり、こ
の開示が行われたのは、たとえば神戸市では1月下旬であった。
 障害のある人のプライバシーを確保しつつも、迅速に安否確認とニーズの把
握を行う必要があることから、地方公共団体は、名簿の開示方法を検討してお
くとともに、日頃から障害関係団体、社会福祉協議会、民生委員協議会等と連
携をとっておくことが必要である。

1.地域に居住する障害のある人の名簿を整理しておく。

・身体障害者手帳、療育手帳等の発行台帳に基づく整理および住民基本台帳等による更新
・補装具・日常生活用具、更生医療、デイサービス等保健・医療・福祉サービスの利用者名簿等による整理

2.災害時における名簿の公開についてその方法を確立しておく。

・障害のある人本人による了解をとっておくなどの必要はないか。
・住所、氏名に限っての開示としたらどうか。
・開示団体等の条件をどうするか。
・名簿公開の時期をどうするか(災害発生時に限るか)。

3.安否確認とニーズの把握の方法を確立しておく。

・緊急を要する場合の対応の仕方
・関係機関との連絡体制

(7)復興期の生活支援

 今回のような大規模で都市型かつ広域にわたる災害の場合、復興も長期にわ
たる。生活の場をみても多くの人が応急仮設住宅の生活を強いられることとな
る。今回の災害の場合、障害のある人にとって応急仮設住宅は、当初、バリア
フリーの措置が講じられておらず、生活上に困難を伴ったことが指摘された。
 このため、障害のある人のために、応急仮設住宅のあり方について十分な配
慮をしておく必要がある。

1.応急仮設住宅への入居募集にあたっては、障害のある人にも周知されるよう広報の方法等を徹底しておく。

2.障害のある人などのいる世帯には、優先的な入居の扱いとする。

3.障害のある人が入居する応急仮設住宅の仕様は、バリアフリーとする。

・玄関、便所、浴室は段差を設けない。手すりをつける。
・車いすが利用できるよう面積を考慮する。玄関にスロープを設ける。
・応急仮設住宅を設置する周辺の道路や通路の段差をなくし、また、車いすが通行できるようアスファルト等にする。

4.応急仮設住宅に居住する障害のある人に対し、福祉等のサービスが提供される体制を考慮する。

5.障害のある人などに配慮し、バリアフリーで福祉等のサービスの伴った地域型仮設住宅を設置する。

(8)福祉のまちづくりの推進

 障害のある人に住みよいまちづくりをすることは、すべての人々にとっての防
災につながるものであることはすでに述べたところである。現在、地方公共団体
においては、「福祉のまちづくり条例」が制定され、あるいは検討されているとこ
ろも多いが、今後、防災対策の視点を含めた「福祉のまちづくり」が望まれる。
 また、福祉のまちづくりにあたっては、大規模な施設等のハード環境面だげで
なく、日常生活レベルにおいて、障害のある人に対する理解や障害のある人々と
のコミュニケーションの方法などソフト環境面にも配慮したまちづくりも重要で
ある。このため、まちづくりの計画策定にあたっては、障害のある人の参画や障
害団体の意見を求めることが求められる。

1.すべての公共施設についてバリアフリーを進める。

2.在宅福祉対策の充実を進め、災害時における障害のある人のみならず、被災した人に対する支援が円滑にできる体制の基盤整備とする。

3.「福祉のまちづくり」にあたっては、障害のある人を参画させるとともに、障害団体や社会福祉協議会の意見を聴取する。

3.社会福祉施設の役割

 今回の災害では、社会福祉施設は、堅固な建物としてつくられているうえに人口密集地に少なかったことが幸いし、大きな被害を受けることなく、地域の救援活動の拠点として有効に活動したところが多い。被災地の福祉施設では、被災した地域住民を受け入れたところも多く、施設の食堂や会議室等を開放するとともに、炊き出し、入浴などの施設機能を提供し、地域住民が安心して避難できる場所となった。
 また、全国社会福祉協議会の各施設種別協議会は、その全国的なネットワークを活用し、被災地とその周辺の社会福祉施設を拠点として、救援物資の集配、介護職員受入れのコーディネート、介護支援チームによる避難所等への巡回等の活動を行った。さらに、福祉事務所や避難所緊急パトロール隊と連携し、避難所では避難生活をすることが困難な介護を要する障害のある人や高齢者などを緊急に受け入れた。
 このように、社会福祉施設は災害に際し、地域の救援活動の拠点として大いに期待されるところであり、このため、施設そのものが機能を維持、存続できるようにしておかなければならないことはもちろん、平常時から地域と防災相互協定を結び、物資の備蓄や福祉サービスの提供体制を確保しておく必要がある。また、地域の防災訓練にあたっては、障害のある人とともに参加し、地域住民の理解を得ることが望まれる。

(1)耐震診断と補強

 昭和56(1981)年6月に施行された「新耐震設計法(新耐法)」においては、
震度5程度の地震では無被害に、震度6以上の大地震でも倒壊しないように配慮
されており、今回の地震でも、新耐法によって建設された建物は、そのほとんど
が無被害か比較的軽微な損傷に留まった。これに反し、今回の災害で全壊や半壊
という大きな被害を受けた建物は、新耐法施行以前のものが多く、特に昭和46
(1971)年の建築基準法改正以前に設計されたものが多いといわれている。
 このことから、社会福祉施設の管理者は、耐震診断等を行い、施設の安全性を
点検しておくことが望ましい。

1.昭和46(1971)年以前に設計された建物については、早急に耐震診断を実施し、必要な場合には、補強することが望ましい。

(2)地域支援体制の確立

 災害時において社会福祉施設は、地域における住民の避難施設としてまた救
援活動の拠点として大いに期待される。また、施設自体が甚大な被害を受けた
場合には、地域住民による救援が第一の頼りとなる。このことから日頃から地
域と相互に支援体制を確立しておくことおよび地域に開かれた施設として理解
を求めておくことが必要である。

1.地域住民(自治会)あるいは近隣施設との防災相互援助協定を締結し、防災活動や災害時の援助活動について相互の協力体制を確立する。

[地域等との防災相互援助協定に盛り込む内容(例示)]

○施設側

・施設設備の提供(被災者の生活の場としての施設機能の利用)
・防災用品の提供
・災害援助物資の備蓄および提供
・その他地域の要請による可能な限りの人的、物的支援

○地域側

・火災時の初期消火活動への協力
・災害時の避難、援助活動への協力
・その他施設の要請による可能な限りの人的、物的支援
(注)指揮系統、災害補償、費用負担等についても盛り込むことが望ましい。

2.社会福祉施設は、地域防災訓練へ職員を参加させ、障害のある人や高齢者などの応急救助、介護の方法を提供するとともに、施設における避難訓練に住民参加を呼びかけ災害時に円滑な支援活動ができるようにしておく。

3.社会福祉施設は、要介護者の緊急受入れ施設(ショートステイ)および福祉避難所(仮称)として機能できるよう体制整備をしておくとともに、デイサービス、入浴サービス 等施設機能の提供ができるよう体制を整備しておく。

4.社会福祉施設は、施設自身が被災した場合、要援護者を緊急に受け入れた場合あるいは避難所等での救援活動に必要な要員確保のため、地方公共団体や他の社会福祉施設等と連携を図っておく。

(3)備蓄

社会福祉施設は、平常時から施設利用者および受け入れをした被災者(障害のあ
る人およびその家族並びに地域住民)の当面の避難生活に対応できるよう、地方
公共団体とも連携を図りながら、必要な物資を備蓄するとともに物資の調達方法
等その確保の体制を整備しておく。今回の災害では、特に「水」について、飲用
のほかトイレ、入浴、清拭等大量に必要であることが再認識されたため、各施設
において確保策を講じておくことが望まれる。

1.社会福祉施設は平常時から食料といった一般的な防災用品のほか、介護に必要な紙おむつなどを地域の要援護者分もある程度含めて備蓄しておくことが望ましい。

2.施設の機能に応じた物資については、若干のものを備蓄しておくことが望ましい。

3.飲料用水、生活用水については、井戸、予備タンク等を設置し確保することが望ましい。

[施設における備蓄規定の具体例]

*出典:「神戸聖隷福祉事業団災害対策規定」第6章防災機材の確保、第7章食料品等の備蓄より

(防災器材の確保と点検)
第13条 地震、台風、火事などによる災害を最小限に防止するために、つぎの別表の防災機材を確保し自主点検によって員数、性能の万全を図ります。

(別表)

区  分 用  途 品 名 数 量 設置場所
必携用具 移  送
 
 
 
 
 
 
車椅子
リアカー
担架
ヘルメット
自動車
オートバイ
自転車
2~3台
1台
各階1台
全員
公用車
職員私有車
1~2台
施設毎に2ヶ所に分散確保
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
個人服薬リスト
照  明
 
 
 
発電機
サーチライト
懐中電灯
ローソク
1台
2~3台
各階2~3個
10ダース
情  報
 
 
 
 
館内放送設備
ラジオ
ハンドスピーカー
携帯電話・FAX
ホットライン
各階にマイク
各階に1~2台
各階に1~2台
各1台
119番へ
医薬品 救急薬品 医務室一式
準備用具 救  出
修  理
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ハシゴ
ロープ3種類
ナタ2種類
カマ2種類
ノコギリ
ツルハシ
スコップ
ハンマー
カナヅチ
バール
クギ
手袋
ベニヤ板12ミリ
大、小各1本
20メートル各1本
大、小各2本
大、小各2本
大、小各2本
大2本
大2本
大2本
大、小各2本
大、小各2本
各種1箱
2ダース
10枚
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
50ミリサイ木
10本
避難生活
 
 
 
 
組み立てテント
フトン
毛布
シート
携帯洗浄器
2セット
2セット
5~10枚
5~10枚
2~4個
 

(食料品の備蓄)
第14条 施設利用者、職員全員の緊急避難に欠かせない食料品、生活用品について別表の5日分程度を備蓄する。賞味期限については適宜交換します。

(別表)

区  分 品名 数 量 保管場所
生活用品
 
 
 
 
 
 
食  器
 
 
 
 
 
 
トイレットペーパー
紙オムツ
ウエットティッシュ
ティッシュ
タオル
寝袋
100ロール
1000枚
24本
20箱
50本
5個
施設毎に2ヶ所に分散確保
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
紙皿
紙コップ
紙お椀

ポリ容器 45立方メートル
〃     20立方メートル
〃     8立方メートル
500枚
500枚
500枚
500ぜん
10個
10個
10個
炊飯器具 卓上コンロ
ガス
固形燃料
マキ

ナベ
 
 
5個
30本
10本
10束
20キロ
大2個
中2個
小5個
暖房具 石油コンロ
灯油 20立方メートル
3~5個
2個
食料品
缶詰
ミルク
かんぱん
クラッカー
ジュース
水(一人3立方メートル平均)
アルファー米
ドライフーズ
パンの缶詰
  一人一日1500円として
60~65万円程度の備蓄
 
 
賞味期限ごとに更新する
 
 
 
 
 

4.障害関係団体と社会福祉協議会の役割

 今回の災害においては、障害のある人へのさまざまな支援活動にあたって、障害関係団体や社会福祉協議会の果たした役割はきわめて大きいものがあった。これらの団体は災害直後から活動を開始したが、5日後には平常時のネットワークを活かし、「兵庫県南部地震障害者支援センター」(障害者支援センター)が設置された。このほかにも、視覚障害者団体による阪神・大震災・視覚障害被災者支援対策本部(HABIE)、全日本ろうあ連盟全国救援対策本部等が設置された。また、精神薄弱者愛護協会、精神薄弱者育成会、リウマチ友の会等多くの障害団体がそれぞれ支援にあたり、会員を中心に被災状況の把握、安否の確認、福祉や生活等の相談、施設等への受入れ、食糧、物資の調達と配布、ボランティアの募集・派遣等を行った。
 災害時に障害の種別を越えた横断的な支援活動を行うためには、平常時から各団体間のネットワークを確立、充実させるとともに社会福祉協議会および行政機関との連携体制をとっておくことが望ましい。

(1)障害団体における防災体制の確立

 各障害団体は、会員への支援等個別的対応と障害種別を越えた相互協力のため
の防災対策を確立しておく必要がある。このため、会員情報に関するデータベー
ス化、災害時における支援活動のマニュアル作成、障害関係団体間のネットワー
クの確立が望ましい。

★会員情報に関するデータベース化

1.名前、住所、連絡先など従来の会員情報に加え災害時に必要となるデータをも含めたデータベースを確立する。

<災害時に必要となるデータの例>

・災害時の連絡先(生活圏と圏外)
・使用している福祉機器、服薬のリスト等
・その他障害特性に応じた個別のデータ

2.データベースはパソコンによる管理を行う。また、定期的にデータの見直し(メンテナンス)を行い最新の情報収集に努める。

3.データ管理にあたっては、個人のプライバシーに十分配慮する。

★支援活動のマニュアル作成

4.会員の災害情報データをもとに、災害発生後の時間経過に応じた安否確認のためのマニュアルを作成しておく。特に、必ず確認しなければならない事項を整理し、誰でも初期のニーズの把握ができるようチェックリストを作成しておく。

★障害団体間のネットワークの確立

5.災害時において障害団体間の支援体制を総合的に行えるよう障害団体間の連絡会議を組織する。

○平常時におけるネットワークの体制

・災害時における緊急会議出席者を決めておく。
・事務局体制を確立しておく。
・災害時における「被災地障害者支援センター」設置体制を決めておく。
・支援プログラムと活動マニュアルを作成しておく。
・全国社会福祉協議会、都道府県社会福祉協議会と定期的に意見・情報交換をしておく。
・「被災地救援チーム」を決めておく。

○災害時の取組み

・緊急会議を開催する。
・災害の規模、被災状況に応じ、現地本部と全国本部を設置する。

(2)障害団体と社会福祉協議会の協力

 災害時において各障害団体は、各障害団体間、行政機関、ボランティア団体等
との連携・連絡体制が必要となる。このためには全国社会福祉協議会、都道府県
及び市区町村における社会福祉協議会(全国社会福祉協議会等)の役割はきわめ
て重要であり、各障害団体は、全国社会福祉協議会等との連携のもとに救援活動
が円滑に行えるよう、平常時から協力体制を確立しておくことが望ましい。

1.全国社会福祉協議会等との連携のもとに「被災地障害者支援センター」を設置し、障害のある人に対する支援活動を行う。

(3)社会福祉協議会の役割

 全国社会福祉協議会、都道府県および市区町村社会福祉協議会(全国社会福祉
協議会等)は、全国的な組織を活用し、災害時には自らの救援活動とともに、障
害関係団体、社会福祉施設、行政機関およびボランティア団体等とのコーディ
ネーターとして機能することが求められる。
 このため、平常時からこれらの団体との協力体制を確立しておくとともに、災
害時における「被災地障害者支援センター」設置のための体制を確立しておく。
また、ボランティアの養成を行う。

1.災害時に備え、障害団体等による連絡会議を組織しておく。

2.災害時に「被災地障害者支援センター」が速やかに設置できるように体制を確立しておく。

<被災地障害者支援センターの設置要綱として盛り込むべき事項>

1.設置体制と設置場所の確保について
 全社協および被災地社協が設置する「災害対策本部」「現地対策本部」内に設置すること。 また、設置場所についても、各本部内に確保し社協が行う救援活動と連携がとれるようにすること。
2.運営主体について
 全社協の「災害対策本部」との連携のもと「連絡会議」が運営主体となること。
3.スタッフ体制について
 本部スタッフ、現地スタッフは、「連絡会議」に参画する障害団体等から派遣する体制を確立しておくこと。
 また、専門スタッフについては、障害団体等と調整し、必要に応じた人材確保を行うこと。
4.活動内容について
1.全国本部、現地本部の活動内容をあげること。
・全国本部-情報収集、行政との連絡調整、広報活動(対マスコミ)、活動資金の確保その他必要な活動
・現地本部-安否確認、実態把握とニーズ調査(避難所、在宅)、ニーズに対応した個別支援、二次避難場所のコーディネート、相談事業、その他必要な活動
2.被災した障害のある人々およびその家族に対して「障害種別を越えた支援を行う」ことを明確にすること。

3.「福祉のまちづくり」を推進し、災害にまちづくりをするために、地方公共団体と連携し、企画段階から障害のある人が参画できるよう支援する。

4.地域における社会福祉協議会の活動を活かし、災害時において、障害のある人に対する安否の確認等の支援活動が機動的に行われるよう、民生委員、児童委員等との協力体制を確立しておく。

5.ホームヘルプサービス等の在宅福祉サービスの事業を行う社会福祉協議会については、地方公共団体と連携を図りつつ、災害時において要援護者のニーズに迅速に対応する。

6.地域福祉センター等の機能を活用し、福祉避難所(仮称)を運営する。

災害時の障害者援護に関する検討委員会委員名簿(順不同)

田中 捷昭(兵庫県立リハビリテーションセンター 次長)

大下 知則(神戸市民生局心身障害福祉室 障害相談課長)

松本 健二(東京都福祉局 障害福祉部計画課長)

篠崎  優(消防庁震災対策指導室 理事官)

植村 英晴(国立身体障害者リハビリテーションセンター 指導部相談判定課主任相談判定専門職)

中島 謙次(厚生省 社会・援護局 更生課課長補佐)

森定 弘次(全国身体障害者施設協議会 常任協議員)

亀井  勝(全国社会就労センター協議会 協議員/中央セルプセンター 副委員長)

牧田 克輔(社会福祉法人日本盲人会連合 参与/情報部長)

川越 利信(社会福祉法人日本ライトハウス 常務理事)

大槻 芳子(財団法人全日本ろうあ連盟 事務局長代理)

民輪 芳昭(財団法人兵庫県身体障害者福祉協会 理事長)

手塚 直樹(社会福祉法人全日本精神薄弱者育成会 常務理事)

麻生 克郎(兵庫県精神保健センター 課長)

十河 美子(社会福祉法人兵庫県社会福祉協議会 施設部長)

丸山 一郎(社会福祉法人全国社会福祉協議会 障害福祉部長)

資料編

1 震災を振り返って
(平成7年兵庫県南部地震神戸市災害対策本部民生部の記録-第4章-より)

2 防災基本計画[中央防災会議]
(障害者援護関係部分抜粋)

3 厚生省防災業務計画
(障害者援護関係部分抜粋)

4 参考文献一覧

1 震災を振り返って

(平成7年兵庫県南部地震神戸市災害対策本部民生部の記録-第4章-より)

項  目 有益だった点 問 題 点
地域防災計画
救助業務の分
担の見直しが
必要
 
 
 
情報
情報収集専任
要員が必要
 
 
 
 
 
 
 
避難所
(1)設置
どこが避難所?!
 
 
(2)管理・運営
臨機応変な
マニュアル作り
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(3)実態把握
同じ所には何
度も行くが
 
 
 
 
救援物資
餅は餅屋
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
食事提供
量の確保から
質の確保へ
 
 
 
仮設住宅
(1)必要戸数
真に必要な数
 
 
 
 
 
 
(2)入居決定
膨大な事務量
 
 
 
 
 
 
 
(3)環境整備
造っただけでは住み
続けにくいもの
 
災害給付
(1)り災証明
再調査が多い
 
 
 
(2)災害援護
資金賃付
 
 
(3)弔慰金
認定は困難
 
(4)義援金
 
 
(5)生活福祉
資金特別貸付
借りる方も貸す
方も早くしたいが・
 
要援護者実態
調査

 
高齢者対策
(1)安否確認
よくもあしくも何度
も確認
 
 
 
 
(2)緊急入所
問題は搬送
手段
 
 
 
 
 
障害者対策
(1)安否確認
まずは手作業
で台帳整理から
 
 
 
 
 
 
 
(2)施設運営
施設の必要性
増加
 
 
 
 
 
 
 
(3)介護用品
備蓄があれば
 
 
 
(4)緊急ケアセンター
陣害者理解が
深まった
 
 
児童
(1)状況把握
 
 
(2)移動児童館
 
 
 
 
保育所運営
ニーズ対応は
柔軟に
 
 
 
 
 
 
児童相談所・
一時保護所

 
民生委員
・児童委員

定数は増えた
けれど
 
 
生活保護
それでも支給
日はやってくる
 
 
遺体安置等
交通渋滞はこ
こでも問題
ノウハウが
あれば
 
 
 
 
 
 
ボランティア
コーディネートがポ
イント
 
 
 
 
企業ボランティア
 
 
 
 
 
 
・各福祉事務所の裁量に任された
 
 
 
 
 
 
・各係ごとに作成したファイルが有
効だった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・管理運営マニュアルもない中、区
と民生局と連絡をとりながら手さぐ
りの状態で管理運営を進めた。
・運営にあたって、教職員・施設職
員の全面的な協力を得た。
 
 
・2月10日から要援護者の実態把握
を行い、緊急入所等を行った。
・ポータブルトイレ・車椅子等必要な用具を
提供し生活状況の改善を図った。
 
 
 
・被災者の生の声を聞いて、日常業
務に貴重な示唆を与えられた。
 
 
 
 
 
 
・運送専門業者を活用してから、物
資がスムーズに流れるようになった。
 
 
 
 
 
 
 
 
・児童館を救援物資の配付拠点とする
際、地域住民の全面協力があった
地域との結びつきが強まった。
 
 
・当面の食料は確保できた。
・ボランティアが有効に活動してく
れた。
 
 
 
・用地確保については全市的な協力
体制が得られた。
 
 
 
 
 
 
・事務処理に民生局を始めとする全
市的な応援体制を得た。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
・他都市からの職員派遣を受けた。
 
 
 
 
・国の許可を得て、被災者の自立時
期に合わせ、申請受け付けの再開が
できた。
 
 
 
 
 
 
 
・全国社会福祉協議会のよびかけで
都道府県・指定都市社会福祉協議会
からベテラン職員の派遣を受けた。
 
 
・関係機関の積極的な協力が得られ
た。
 
 
・ヘルパーが自主的に安否確認にま
わり情報収集するとともに指示を求めて
くるなど日頃の経験を生かした
行動がとれた。
・民生委員の協力のもと、早期から
地域での援助体制を整えられた。
 
・国・県・市から受入指示があった
・遠隔地の施設からの迎え・自衛隊
による輸送が得られた。
・高齢者のスムーズな緊急避難につ
ながった。
 
 
 
 
・障害者団体自身が会員の安否確認
を行い情報提供してくれた。
・ボランティアによる状況把握・支
援活動が実施された。
・保育所保母福祉情報誌発行、調査
準備、訪問活動など保母の協力体制
が有効であった。
 
 
 
・被災した在宅障害者を受入枠をこ
えてショートステイで受け入れるこ
とができた。
・他都市施設職員の応援を受け、円
滑な施設運営を行った。
・ライフライン復旧までの間、水や
食料等を施設に供給した。
・入所者・通所者の安否・状況確認
を行った。
 
・指定都市に依頼し、必要な用具の
確保が出来た。
 
 
 
・福祉事務所等他機関との連絡を十
分取りながら運営できた。
・障害者との接し方等障害者理解を
深めることができた。
 
 
 
 
 
・区をこえた児童館活動の協力体制
がとれた。
・地域に出ていくという新たな活動
の可能性が広がった。
 
 
・迅速かつ柔軟にニーズ把握を行い
緊急時に手続きを簡略化し入所措置
を行った。
・臨時保育室を設置し定員を超えて
設置した。
・児童館を借用して保育ニーズに対
応した。
 
 
 
 
・仮設住宅地域を中心に定数増を図
った。
 
 
 
 
・保護事務の移管を行い、1ケース
の見直し、2問題点の発見、3ケース
審査の眼を養う訓練、4移管先との
協力関係を深めることが出来た。
 
・近隣都市の協力援助が得られた。
・区・保健所等関係機関との協力体
制が得られた。
・ボランティアの協力があった。
 
 
 
 
 
 
 
・多数のボランティア団体・個人が
救援活動に活躍した。
 
 
 
 
 
・視覚障害者に対してボランティアグループが
避難所・在宅を訪問し情報提供した
・避難所にFAX・文字放送テレビを
設置した。
・県聴覚障害者協会との連携により
手話通訳による情報提供を行った。
 
・経常業務と災害救助業務の分担がス
ムーズにいかなかった。
・災害時の業務分担を始め、指揮・命
令系統、非常時の組織のあり方の見直
しが必要。
・災害時の事務所確保が必要。
 
・当初通信機器が不通になり緊急の連絡
ができなかった。
・情報連絡網の再点検と2次的・3次
的情報連絡手段の確立が必要。
・オンラインのストップ等コンピュータ処理の
弱点対策を強化する必要がある。
・本部で広範・詳細な情報を十分に収集
できなかった。
・秘密保持の問題があり、情報の共有
化が遅れた。
 
・計画外の避難所が多く、明確な基準
がないため、避難所と認定するまでに
時間がかかる場合もあった。
 
・避難所の管理責任者を区だけで派遣
することは人数・体制から無理があり
当初は教職員や施設職員に負うところ
が多かった。
・設備内容について明確な基準がない
上、災害救助法上の補助に制約がある
中、臨機応変な対応が求められた。
・障害者対応ができていない施設が多
い上、多数の市民が避難したため、配
慮も不十分であった。避難所へ行くこ
とが困難な障害者もいた。
・要援護者が気兼ねなく避難できる特
定の場を設定する必要がある。
 
・統一的な調査は3月10目まで実施で
きなかった。
 
・統一的調査以前に、大学・団体等多
数の調査が重複し、市民の苦情・不満
が多かった。
 
 
・職員が配送に携わったため、本来業務
が遅滞した。
具体的な配送システムがなかった。
・電話連絡がスムーズにいかず、ファックス パソ
コン等視覚による伝達が必要だった。
老人ホーム等で緊急時(3日程度)に
対応できる物資の備蓄が必要。
・物資の過不足を調整できるよう情報
管理とコントロールステーションが必要。
 
・児童館再開の遅れの一因ともなった
 
 
 
 
・市内弁当業者の供給能力が低下し、
全国的大手パン業者に委託せざるを得ず
栄養バランス等に偏りがあり、改善が
進まなかった。
 
 
・被害が大きく、避難所解消に必要な
戸数を決定するのに時間がかかった。
・設置主体が県のため調整に時間を要
した。
・用地確保が困難であった。
・早期大量に建設するために、当初は
2Kタイプしか認められなかった。
 
・重複申込み等のチェック、抽選・発
表及び入居審査・契約等事務量が膨大
なため、長期間にわたった応援と施設
借り上げが必要になった。
・優先順位により高齢者・障害者等が
集中入居する一方、コミュニティ形成
に力をもつ壮年層が少なくなり、孤独
死等に早期に有効な手をうてなかった
 
・責任体制及び財源措置が不明確なため、
工事等の決定・着工が遅れ、早期
整備ができなかった。
 
 
・外観調査のため判定をめぐってトラ
ブルが多発し、り災証明再発行の件数
が多かったため、後の事務に支障をき
たした。
 
・生活上必要な貸付金であるため被災
者からの問い合わせが殺到した上、処
理数の限界以上の申し込みがあった。
 
・支給対象者調査が困難な上、震災関
連死の判定も困難であった。
 
・交付対象者及び交付額についての意
見が多くよせられた。
 
・準備が整わない中で実施せざるを得
なかったため、貸付事務が混乱した。
 
 
 
・調査する方も被災者であり、台帳整理等
に手間取った。
 
 
・各サービス機関がそれぞれの利用者
に対し行ったため、重複が多かった。
福祉事務所等がキーになった一元的指示
・情報集約が必要である。
 
 
 
・交通渋滞により速やかな搬送ができ
なかった。
・搬送手段の確保に時間がかかった。
・日頃から満床状態が続く中、受入施設
の交渉が難航した。
・普段から関連施設と特定協力関係を
構築しておくべきである。
 
 
・障害者台帳がシステム化されておらず
整理が手作業になった。
・実態と台帳にずれがあった。
・民生委員・児童委員等の活動の中に
在宅障害者の状況把握が位置づけられ
ていない等のため地域での支援活動に
支障があった。
・平時から障害者の参加による福祉
コミュニティづくりが必要。
 
・ライフライン復旧までの間、入所者の
生活に支障が生じた。
・施設が被災あるいは避難所になった
ため、通常の施設運営ができないとこ
ろもあった。
・緊急ショートステイがスムーズに行
えるシステムづくりが必要。
 
 
 
・多くの方が震災により、補装用具を
紛失したり、破損したりしたが、備蓄
がなく即時対応が困難だった。
・福祉事務所でのストックが必要
 
・ボランティア・職員の配慮が毎日変
わり十分に利用者の状況を把握できな
かったため、窓口一本化が必要だった
 
 
 
・在宅児童の日常の状況把握がないた
め、被災状況の把握が難しい。
 
・必要な地域ほど被災のため、活動で
きる場所の確保が困難だった。
・本来の児童館運営との調整に苦労し
た。
 
 
・震災当初保育所を休所したため、看
護婦等災害業務に従事する者のニーズ
に応えられなかった。
・保育所休所時の保母職員の処遇。
 
 
 
 
・緊急時、児童相談所と県の一時保護
所との連携がとれていなかった。
 
・委員も被災者で活動に支障があった
・欠員が生じている。
・震災初期は福祉事務所が救助活動に
追われ、活動支援・情報提供ができな
かった。
 
・1月17日支払いの追給に困難を究め
た。
 
 
 
・市本部との連絡が欠けていた。
・ドライアイス・安置場所の確保が困
難であった。
・活動できる蔡葬業者がなかった。
・火葬場が不足した。
・交通渋滞のため個人での遺体搬送手
段が確保できず、搬送に時間がかかっ
た。
・業務のノウハウがなく、要望・苦情
に十分対応できなかった。
 
・独自活動のため、情報が錯綜し混乱
が生じた。
・ボランティア受入体制の整備。
・活動のコーディネートについて、ニ
ーズ把握、情報収集・伝達システムが
必要だった。
 
・ボランティアに依存的であった。
・FAX・文字放送テレビは数量的に十
分とは言えなかった。
 
 
 
 

2 防災基本計画(障害者援護関係部分の抜粋)

平成7年14目
中央防災会議

第1編 総則

第1章 本計画の目的と構成

○災害基本法に基づくこの計画は、震度7を記録し5千5百人を数える死者・行方不明者をもたらした阪神・淡路大震災など近年経験した大規模な災害の経験を礎に、近年の防災をめぐる社会構造の変化等を踏まえ、わが国において防災上必要と思料される諸施策の基本を、国、公共機関、地方公共団体、住民それぞれの役割を明らかにしながら定めるとともに、防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項の指針を示すことにより、わが国の災害に対処する能力の増強を図ることを目的とする。

第2章 防災の基本方針

○防災には、時間の経過とともに災害予防、災害応急対策、災害復旧・復興の3段階があり、それぞれの段階において国、公共機関、地方公共団体、住民等が一体となって最善の対策をとることが被害の軽減につながる。各段階における基本方針は以下の通りである。
○周到かつ十分な災害予防
・災害に強い国づくり、まちづくりを実現するための、主要交通・通信機能の強化、国土保全事業及び市街地開発事業等による災害に強い国土とまちの形成、並びに構造物・施設、ライフライン機能の安全性の確保等
・災害時の応急対策、その後の災害復旧・復興を迅速かつ円滑に行うための事前の体制整備、施設・設備・資機材等の整備・充実、食料・飲料水等の備蓄、防災訓練の実施等
・国民の防災活動を促進するための住民への防災思想・防災知識の普及、防災訓練の実施、並びに自主防災組織等の育成強化、ボランティア活動の環境整備、企業防災の促進等
○迅速かつ円滑な災害応急対策
・災害発生の兆候が把握された際の警報等の伝達、住民の避難誘導及び災害未然防止活動
・発災直後の被害規模の早期把握、災害に関する情報の迅速なる収集及び伝達、並びにそのための通信手段の確保
・災害応急対策を総合的、効果的に行うための関係機関の活動体制の確立、並びに他機関との連携による応援体制の確立
・災害発生中にその拡大を防止するための消火・水防等の災害防止活動
・被災者に対する救助・救急活動と負傷者に対する迅速かつ適切な医療活動
・被災者の安全な避難場所への誘導、避難場所の適切な運営管理、応急仮設住宅等の提供等避難収容活動
・被災者の生活維持に必要な食料・飲料水及び生活必需品等の調達、供給
・被災者の健康状態の把握、並びに必要に応じた救護所の開設、仮設トイレの設置、廃棄物処理等の保健衛生活動、防疫活動、並びに迅速な遺体の処理等
・被災者の生活確保に資するライフライン、交通施設等の施設・設備の応急復旧
・二次災害の危険性の見極め及び必要に応じ住民の避難、応急対策の実施
・ボランティア、義援物資・義援金、海外からの支援の適切な受入れ
○適切かつ速やかな災害復旧・復興
・被災地域の復旧・復興の基本方向の早急な決定と事業の計画的推進
・被災施設の迅速な復旧
・再度災害の防止とより快適な都市環境を目指した防災まちづくり
・被災者に対する資金援助、住宅確保、雇用確保等による自立的生活再建の支援
○国、公共機関及び地方公共団体は、互いに連携をとりつつ、これら災害対策の基本的事項について推進を図るものとする。

第3章 防災をめぐる社会構造の変化と対応

○近年の都市化、高齢化、国際化、情報化等社会構造の変化により災害脆弱性の高まりがみられるが、国、公共機関及び地方公共団体は、これらの変化に十分配慮しつつ防災対策を推進するものとする。とりわけ、次ぎに掲げるような変化については、十分な対応を図ることとする。
・高齢者(とりわけ独居老人)、障害者、外国人等いわゆる災害弱者の増加が見られる。これについては、防災知識の普及、災害時の情報提供、避難誘導、救護・救済対策等防災の様々な場面において、災害弱者に配慮したきめ細かな施策を、他の福祉施策との連携の下に行う必要がある。この一環として、災害弱者関連施設の災害に対する安全性の向上を図る必要がある。
・住民意識及び生活環境の変化として、近隣扶助の意識の低下がみられる。このため、コミュニティ、自主防災組織等の強化とともに、多くの住民参加による定期的防災訓練、防災思想の徹底等を図る必要がある。

第2編 震災対策編

第1章 災害予防

 第2節 迅速かつ円滑な災害応急対策、災害復旧・復興への備え
 5 避難収容活動関係
 (1)避難誘導
 ○地方公共団体は、高齢者、障害者その他いわゆる災害弱者を適切に避難誘導するため、地域住民、自主防災組織等の協力を得ながら、平常時よりこれらの者に係る避難誘導体制の整備に努めるものとする。
第3節 国民の防災活動の促進
 2 防災知識の普及、訓練
 (4)防災知識の普及、訓練における災害弱者への配慮
 ○防災知識の普及、訓練を実施する際、高齢者、障害者、外国人、乳幼児等災害弱者に十分配慮し、地域において災害弱者を支援する体制が整備されるよう努めるものとする。

第2章 災害応急対策

第5節 避難収容活動
4 災害弱者への配慮
○避難誘導、避難場所での生活環境、応急仮設住宅への収容に当たっては高齢者、障害者等災害弱者に十分配慮すること。特に高齢者、障害者の避難場所での健康状態の把握、応急仮設住宅への優先入居、高齢者、障害者向け応急仮設住宅の設置等に努めるものとする。また、災害弱者に向けた情報の提供についても十分配慮するものとする。
第7節保健衛生、防疫、遺体の処理等に関する活動
1保健行生
○厚生省及び地方公共団体は、被災地、特に避難場所においては、生活環境の激変に伴い被災者が心身双方の健康に不調を来す可能性が高いため、常に良好な衛生状態を保つように努めるとともに、健康状態を十分把握し、必要に応じ救護所等を設けるものとする。
○特に、高齢者、障害者等災害弱者の心身双方の健康状態には特段の配慮を行い、必要に応じ福祉施設等への入所、ホームヘルパーの派遣、車椅子等の手配等を福祉事業者、ボランティア団体等の協力を得つつ、計画的に実施するものとする。
○地方公共団体は、保健婦等による巡回健康相談等を実施するものとする。
○厚生省は、必要に応じ、又は被災地方公共団体の要請に基づき、保健婦等の派遣計画の作成など保健活動の調整を行うものとする。
○地方公共団体は、避難場所の生活環境を確保するため、必要に応じ、仮設トイレを早期こ設置するとともに、被災地の衛生状態の保持のため、清掃、し尿処理、生活ごみ収集処理等についても必要な措置を講ずるものとする。
○厚生省は、必要に応じ又は被災地方公共団体の要請に基づき、他の地方公共団体から協力確保等必要な調整を講ずるものとする。
第10節被災者等への的確な情報伝達活動
(1)被災者への的確な情報伝達活動
○非常本部等、指定行政機関等及び地方公共団体は、被災者のニーズを十分把握し、地震の被害、余震の状況、二次災害の危険性に関する情報、安否情報、ライフラインや交通施設等の公共施設等の復旧状況、医療機関などの生活関連情報、それぞれの機関が講じている施策に関する情報、交通規制等被災者等に役立つ正確かつきめ細やかな情報を適切に提供するものとする。なお、その際、高齢者、障害者、外国人等災害弱者に配慮した伝達を行うこと。
○情報伝達に当たっては、掲示板、広報誌、広報車等によるほか、放送事業者、通信社、新聞社等の報道機関の協力を得るものとする。また、安否情報、交通情報、各種問い合わせ先等を随時入手したいというニーズに応えるため、パソコンネットワーク・サービス会社等の協力を求めて、的確な情報を提供できるよう努めるものとする。また、国は放送事業者と協力して、緊急放送時に、テレビ、ラジオが自動的に作動するシステムの普及を図るものとする。

第3編 風水害対策編
(第2編と共通の記述のため略)

第4編 火山災害対策編
(第2編と共通の記述のため略)

第5編 その他の災害対策
(第2編と共通の記述のため略)

第6編 防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項
防災業務計画及び地域防災計画において重点をおくべき事項は、おおむね次のとおりとする。

第2章 災害応急対策に関する事項

28 災害時における高齢者、障害者等の福祉に確保に関する事項
 援助を必要とする高齢者、障害者等の居所等の状況についての情報の把握、生活環境に配慮した避難場所の確保、必要な福祉サービスの提供に関する計画

3 厚生省防災業務計画(障害者援護関係部分の抜粋)

平成8年1月10日厚生省総第2号

この計画の目的
この計画は、災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第36条第1項及び大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)第6条第1項の規定に基づき、厚生省の所掌事務について、防災に関しとるべき措置及び地域防災計画の作成の基準となるべき事項等を定め、もって防災行政事務の総合的かつ計画的な遂行に資することを目的とする。

この計画の効果的な推進
 厚生省は、災害対策基本法第36条第1項の趣旨を踏まえ、毎年1月を目途にこの計画の措置状況について取りまとめるとともに、その効果的な推進についての検討を加えるものとする。

第1編 災害予防対策

第4章 福祉に係る災害予防対策

第1節 市町村民生部局の防災体制の整備

1 市町村民生部局は、避難所及び応急仮設住宅の管理運営から災害を契機に新たに要援護者となる者に対する衛生部局と連携をとった保健福祉のサービスの提供等に至るまで、非常災害に際しては膨大な業務量を処理することとなるため、以下の点に留意しつつ、可能な限り災害時の業務処理をルール化すること等により、防災体制の整備に努める。

(1)災害時の業務増を踏まえた十分なシュミレーションを行い、災害の発生により新規に発生する業務が適切に行われるよう、職員の確保や業務分担の確認を行うこと。

(2)福祉事務所等の相談機関や管下の保健福祉サービス事業者との連絡・連携体制を整備すること。

(3)必要に応じ、災害時における市町村民生行政に係る協力体制のあり方を含んだ市町村間災害援助協定を締結すること等により、相互協力体制を確立すること。

(4)住民のプライバシーについて十分な配慮を行いつつ、在宅の要援護者の状況を把握すること。

2 都道府県は、管下の市町村民生部局が行う防災体制の整備に関し、必要な指導・助言その他の支援に努める。

3 厚生省社会・援護局、老人保健福祉局、児童家庭局その他の関係部局は、災害時における市町村民生行政の確保に関するマニュアル作成のためのガイドラインを示すこと等により、必要な支援を行う。

第2節 保健福祉サービス事業者の災害に対する安全性の確保

1 厚生省社会・援護局、老人保健福祉局、児童家庭局その他の関係部局、都道府県及び市町村は、保健福祉サービスの災害に対する安全性を確保するため、保健福祉サービス事業者が実施する以下の事項に関し、必要に応じ、指導・助言その他の支援を行う。

(1)国庫補助制度の積極的な活用等により、社会福祉施設等における耐震性その他の安全性を確保すること。

(2)社会福祉施設等の職員及び利用者に対し、災害対策に関する啓発を行うこと。

(3)社会福祉施設等の職員及び利用者に対し、避難訓練を実施すること。

(4)発災時において、既にサービスの提供を受けている者に対し、継続してサービスの提供を行うことができるようにするとともに、災害を契機に新たに要援護者となる者に対し、社会福祉施設等への緊急受入れその他のサービス提供を可能な限り実施していくため、入所者サービスに必要な物資の備蓄、施設の余剰スペースの把握、サービス事業者間における災害援助協定の締結等に努めること。

2 厚生省社会・援護局、老人保健福祉局、児童家庭局その他の関係部局、都道府県及び市町村は、保健福祉サービス事業者に対して、社会福祉施設等における消火器具、警報器、避難用具等の整備保全及び電気器具、石油その他の危険物の適切な管理について指導する。

3 厚生省社会・援護局、老人保健福祉局、児童家庭局その他の関係部局は、保健福祉サービス事業者に対して、災害時における保健福祉サービスの提供に関するマニュアル作成のためのガイドラインを示すこと等により、必要な支援を行う。

第2編 災害応急対策

第1章 総則

第4節 非常災害の特性や時間の経過に応じた適切な災害応急対策の実施
 非常災害が発生した場合の災害応急対策は、被災状況等を踏まえた迅速かつ適切な対策が、時間の経過とともに変化する状況に対応し、継続的に講じられるべきであることを踏まえ、厚生省災害対策本部及び厚生省関係部局は、下表を参考としつつ、発生した非常災害の特性に応じた適切な災害応急対策を講ずるものとする。

(表)阪神・淡路大震災の経験をふまえた厚生行政に係る災害応急対策の重点事項

時  点 重  点  事  項 主な担当部局
発災後24時間以内 (医療)
・日本赤十字社及び国立病院等による救
護班の派遣
・搬送先の確保の支援、医薬品等の確保
の支援及び医薬品等の管理等のための
マンパワーの確保の支援
(避難所等)
・避難所及び救護所等の設置
・避難所等の被災者に対する水、食料そ
の他生活必需品の供給水道環境部
・医療施設、社会福祉施設等への水、食
料その他生活必需品の供給
水道環境部
(要援護者)
・人工透析患者等緊急の対応を要する要
援護者の安否確認、支援
 
健康政策局
国立病院部
健康政策局
薬務局
 
 
社会・援護局
社会・援護局
 
水道環境部
施設所管各局
社会・援護局
 
保健医療局等
 
発災後72時間以内 (避難所)
・避難所への医薬品等の供給の支援及び
日常生活援助物資の供給
(要援護者)
・在宅寝たきり老人、障害者、遺児・孤
児、難病患者等の要援護者の発見、安
否確認、支援
(ボランティア)
・ボランティアへの情報提供
 
薬務局
社会・援護局
 
関係部局
 
 
 
社会・援護局
発災後1週間以内 (全般)
・医療施設、社会福祉施設等の施設設備
の被災状況の把握
(要援護者)
・要援護者に対する組織的な応急保健福
祉サービス供給体制の準備
 
関係部局
 
 
関係部局
 

第4章 福祉に係る対策

第1節 市町村民生部局の体制

1 非常災害の発生に際しては、発災直後の遺体の取扱い、避難所の設置管理、食事・物資の提供等の災害救助関係業務のほか、被災市町村の民生関係業務として、生活福祉資金の貸付、応急仮設住宅等における衛生部局と連携をとった保健福祉サービスの実施、り災証明の発行等、非常災害の発生により新たに発生する業務を含め、膨大な種類と量の業務が発生することから、被災市町村においては、災害の規模及び被災市町村における行政機能状況等を勘案し、以下の点に留意しながら、福祉に係る災害応急対策を実施する。

(1)災害発生により新たに発生する食事・物資の分配業務、遺体の取扱業務等の災害救助関係業務と並行して、障害者及び高齢者に対する福祉サービス等の福祉関係業務の増大にも対応できるよう、業務処理体制の確保に努めること。

(2)近隣市町村民生部局と災害援助協定を締結している場合にあっては、速やかに応援を要請すること。

(3)被災都道府県を通じ、厚生省社会・援護局に対し、他都道府県の市町村民生部局職員の応援を要請すること。

(4)応急仮設住宅における保健福祉サービスの実施に代表されるように、災害発生後一定の期間経過後に開始されるべき業務が数多く存在することから、時間の経過とともに変化する状況に対応した組織と人員の投入に留意しつつ対策を講ずること。

2 被災都道府県及び厚生省社会・援護局、老人保健福祉局、児童家庭局その他の関係部局は、被災市町村が実施する前項の措置に関し、他の都道府県・市町村への協力要請等必要な支援を行う。

第2節 要援護者に係る対策

1 非常災害の発生に際しては、平常時より在宅保健福祉サービス等の提供を受けている者に加え、災害を契機に新たに要援護者となる者が発生することからこれら要援護者に対し、時間の 経過に沿って、各段階におけるニーズに合わせ的確なサービスの提供等を行っていくことが重要であることに鑑み、被災市町村は、以下の点に留意しながら、要援護者対策を実施する。

(1)在宅保健福祉サービス利用者、独り暮らし老人、障害者、難病患者等の名簿を利用する等により、居宅に取り残された要援護者の迅速な発見に努めること。

(2)要援護者を発見した場合には、当該要援護者の同意を得て、必要に応じ、以下の措置を採ること。

1 避難所へ移動すること。
2 社会福祉施設等への緊急入所を行うこと。
3 居宅における生活が可能な場合にあっては、在宅保健福祉ニーズの把握を行うこと。

(3)要援護者に対する保健福祉サービスの提供を、遅くとも発災1週間後を目途に組織的・継続的に開始できるようにするため、発災後2~3日目から、すべての避難所を対象として、要援護者の把握調査を開始すること。

2 被災都道府県及び厚生省社会・援護局、老人保健福祉局、児童家庭局その他の関係部局は、被災市町村が実施する前項の措置に関し、他の都道府県・市町村への協力要請等必要な支援を行う。

第3節 社会福祉施設等に係る対策

1 被災社会福祉施設等は、あらかじめ定めた避難誘導方法等に従い、速やかに入所者の安全を確保する。

2 被災地に隣接する地域の社会福祉施設等は、施設機能を低下させない範囲内で援護の必要性の高い被災者を優先し、施設への受入れに努める。

3 被災社会福祉施設等は、水、食料品等の日常生活用品及びマンパワーの不足数について把握し、近隣施設、都道府県・市町村等に支援を要請する。

4 被災都道府県・市町村は、以下の点に重点を置いて社会福祉施設等の支援を行う。

(1)ライフラインの復旧について、優先的な対応が行われるように事業者へ要請すること。

(2)復旧までの間、水、食料品等の必須の日常生活用品の確保のための措置を講ずること。

(3)ボランティアへの情報提供などを含めマンパワーを確保すること。

5 厚生省社会・援護局その他の関係部局は、物資及びマンパワーの広域的支援に関し、他の都道府県等からの応援体制の確保等の支援を行うほか、措置決定を弾力的に行うことなどを指導することを含め、上記対策全般について、被災都道府県等の支援を行う。

第4節 障害者及び高齢者に係る対策

1 被災都道府県・市町村は、避難所や在宅における一般の要援護者対策に加え以下の点に留意しながら障害者及び高齢者に係る対策を実施する。

(1)被災した障害者及び高齢者の迅速な把握に努めること。

(2)掲示板、広報誌、パソコン、ファクシミリ等を活用し、また、報道機関との協力のもとに、新聞、ラジオ、文字放送、手話つきテレビ放送等を利用することにより、被災した障害者及び高齢者に対して、生活必需品や利用可能な施設及びサービスに関する情報等の提供を行うこと。

(3)避難所等において、被災した障害者及び高齢者の生活に必要な車椅子、障害者用携帯便器、おむつ等の物資やガイドヘルパー、手話通訳者等のニーズを把握するため相談体制を整備すること。

(4)被災した障害者及び高齢者の生活確保に必要な車椅子、障害者用携帯便器おむつ等の物資やガイドヘルパー、手話通訳者等の人材について迅速に調達を行うこと。

(5)関係業界、関係団体、関係施設を通じ、供出への協力要請を行う等当該物資の確保をと図ること。

(6)避難所や在宅における障害者及び高齢者に対するニーズ調査を行い、ホームヘルパーの派遣や施設への緊急入所等必要な措置を講ずること。

2 厚生省社会・援護局、老人保健福祉局及び児童家庭局は、前項に掲げる措置に関し、他の都道府県・市町村への協力要請、関係団体との調整等必要な支援を行う。

第6節 ボランティア活動の支援

第1 ボランティア活動に関する情報提供

1 被災都道府県・市町村は、被災者の様々なニーズの把握に努めるとともに、近隣都道府県・市町村や報道機関を通じて、求められるボランティア活動の内容、必要人員、活動拠点等について情報提供を行う。

2 厚生省社会・援護局は、ボランティア活動が円滑に行われるよう、必要な指導・助言その他の支援を行う。

第2 被災地におげるボランティア支援体制の確立

1 被災地の都道府県・市町村、社会福祉協議会、全国社会福祉協議会、日本赤十字社等は、速やかに現地本部及び救援本部を設置し、行政機関等関係団体との連携を密にしながら、以下により、ボランティアによる支援体制を確立する。

(1)現地本部における対応
被災地の社会福祉協議会は、ボランティア活動の第一線の拠点として現地本部を設置し、被災者ニーズの把握、具体的活動内容の指示、活動に必要な物資の提供等を行うこと。

(2)救援本部における対応
被災地周辺であって通信・交通アクセスが良い等適切な地域の社会福祉協議会等は、救援本部を設置し、ボランティアの登録、派遣等のコーディネート、物資の調達等を行い現地本部を支援すること。

2 厚生省社会・援護局は、全国社会福祉協議会、日本赤十字社等関係団体と必要な調整を行う。

4 参考文献(資料)一覧(準不同)

・「ノーマライゼーション」1996年1月号
・「阪神大震災被災地における視覚障害者避難調査報告書」日本盲人福祉委員会
・「災害とメンタルヘルス」日本精神保健連盟
・「ジョイフル・ビギン」(No.4)現代書館
・「季刊 福祉労働」(No.67)(No.96)現代書館
・「精神医学ソーシャル・ワーク」(No.35)日本ソーシャルワーカー協会
・「アエラ」95年11月27日号 朝日新聞社
・「震災と闘った親と子 100人の証言」兵庫県精神薄弱者育成会
・「リハビリテーション」No.376
・「両親の集い」第472号(95.10)全国重症心身障害児(者)を守る会
・「福祉〈真〉時代」No.89(95.9) (聴覚関係)
・「しんせい」No.68~69 身体障害者療護施設・真生園
・「日本聴力障害新聞」95年8月1日号
・「むすばる新聞」No.105~117(95.1~11)むすばる運動事務局
・「なまず新聞」すばる福祉会
・「シャンティ」号外No.31・34合併号、No.35、曹洞宗国際ボランティア会
・「社会の福祉」No.535(95.9)兵庫県社会福祉協議会
・「社会福祉復興本部ニュース」第6号~10号 兵庫県社会福祉協議会
・「足立区災害弱者防災行動マニュアル」足立区
・「阪神・淡路大震災-障害者支援活動のまとめ」兵庫県南部地震障害者支援センター合同対策本部
・「応急仮設住宅改造技術資料」兵庫県福祉部長寿社会政策局福祉企画室
・「アシステック通信」第5号(93.3)兵庫県福祉のまちづくり工学研究所
・「阪神・淡路大震災 記録・提言集」兵庫県阪神・淡路大震災復興本部総括部計画課
・「平成7年度障害者白書」総理府編
・「災害ストレス-心をやわらげるヒント」法研
・「盲老人援助マニュアル」全国盲老人福祉施設連絡協議会
・「都市型大震災に備えて」法研
・「兵庫ルネッサンス計画」六甲出版
・「新版 ベテラン相談員が教える福祉用具選定のポイント」環境新聞社
・「福祉用具の明日を拓く」環境新聞社
・「追補版 テクニカルエイド」三輪書店
・「高齢者のための介護機器等マニュアル ベッド・車いす編」長寿社会開発センター
・「高齢者のための介護機器等マニュアル 排泄・入浴・移動・自助具・その他関連機器編」長寿社会開発センター
・「災害救援」岩波新書(野田正彰)
・「神戸発阪神大震災以降」岩波新書(酒井道雄)
・「阪神・淡路大震災から1年」(1996.2)厚生
・「阪神・神戸大地震 兵庫県巡回リハビリテーションチーム阪神地区報告書」(平成7年6月1日)(兵庫県巡回リハ阪神地区担当)
・「厚生福祉」 (H8.1.20号)
・「仮設住宅の問題点」東神戸病院リハビリテーション科 樋口雄一
・「阪神・淡路大震災における作業療法対象疾患について~アンケート調査より~」神戸大学医学部附属病院 OT 伊藤智永子
・「神戸市災害対策本部民生部の記録」
・「KSKQ 障害者救援本部通信」(兵庫県南部地震障害者救援本都)
・「障害者による復活・救援活動」(被災地障害者センター)
・「すべての人にやさしいまちづくりを目指して~福祉のまちづくり策定の手引~」(H8.3建設省、厚生省)
・「オストメイトはその時……-大震災・その証言と教訓-」社団法人日本オストミー協会兵庫県センター編
・「災害時における施設の役割」西宮市社会福祉協議会「青葉園」清水明彦(総合リハビリテーション研究会資料)
・「あの人の声が聞こえる」全障研兵庫「阪神・淡路大震災障害者実態調査」委員会
 
(委員関係資料)
・心身障害者・児への援護マニュアル(神戸市)
・市町村地域防災計画(震災対策編)検討委員会報告(案)(丸山委員)
・厚生省防災業務計画
・阪神・淡路大震災における精神科の救援活動(麻生委員)
・<災害とこころのケア>ロサンゼルス視察研修報告書(同)
・障害者・法外施設再考(亀井委員)
・「地震-そのときのために」視覚障害者の避難マニュアル(案)(目本盲人福祉委員会)

この事業は、社会福祉・医療事業団(長寿社会福祉募金)の
助成金の交付により行ったものです。

主題:
障害のある人への災害支援
災害時の障害者援護に関する検討委員会 報告書

発行者:
社会福祉法人 全国社会福祉協議会

発行年月:
1996年03月

  文献に関する問い合わせ先:
社会福祉法人 全国社会福祉協議会
〒100東京都千代田区霞が関3-3-2
新霞が関ビル