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高齢者の労働と生きがいに関する研究

No.5

3 結果

3 高齢者の働きやすい労働条件

 前節で高齢者の労働状況、労働感の調査結果を述べたが、本節では、高齢者自身が希望する労働条件を要約した(表-6)。

表-6 働きやすい労働条件(問11)

(1)労働日数 (2)1日の労働時間 (3)1日の労働時間帯 (4)通勤距離
設問 件数 比率% 設問 件数 比率% 設問 件数 比率% 設問 件数 比率%
週1日
14
2.8
2時間以内
9
1.8
朝夕のラッシュを外す
87
17.3
徒歩で通える範囲
156
31.0
週2日
53
10.5
2時間以内
58
11.5
朝夕のラッシュを外す
46
9.1
バス・電車30分以内
180
35.7
週3日
173
34.3
5時間以内
265
52.6
午前中だけ
87
17.3
バス・電車1時間以内
73
14.5
週4日
127
25.2
フルタイム
127
25.2
午後だけ
15
3.0
特に制限なし
58
11.5
週5日
97
19.2
自分の都合のよいとき
91
18.1
正規の労働時間帯
133
26.3
無回答
40
8.0
無回答
45
8.9
無回答
45
8.9
無回答
37
7.3
合計
504
100
合計
504
100
合計
504
100
合計
504
100
(1) 労働日数
 60歳代後半層、70歳以上の年齢層とも労働日数に関する希望差が少ない。週3日が34%、週4日が25%、週5日が約19%となっている。週1~2日の短日数労働は希望が少なかった。概ね週の半分程度の就労が望ましい事が窺われる。
(2) 労働時間
 一日3~5時間の勤務希望者が62%を占めた。最も希望の多いのは「5時間以内」で全体の半分以上の53%に達している。「3時間以内」の希望12%を加え、約7割の人が短時間就労を希望しているが「2時間」の希望は殆どない。勤務するからには一定時間以上働きたいとの気持ちが窺える。フルタイムの希望は全体の4分の1の25%で、多いとはいえなかった。
(3) 労働時間帯
 正規の「労働時間帯」で可とするものが全体では26%、60歳代後半層で29%。70歳以上では23%に減少しているが、各年代層で1位を占めている。次いで「自分の都合のよいとき」が18%、「午前中だけ」17%、「朝夕のラッシュを外す」9%と続くが、1位と差が少ない。要約すると、労働時間帯にはあまりこだわらないが、ゆとりのある出勤時間帯を選びたいとの希望が窺える。
(4) 通勤距離
 「徒歩、バスで通える範囲」、「バス電車30分」が各々3分の1を占めている。「通勤時間1時間以内」になると希望が急減し、14%台になる。自宅から10~15キロメートルが希望の範囲といえる。
 高齢者の働きやすい労働条件を労働日数、1日の労働時間、労働時間帯、通勤距離の4点を要約すると次のようになる。
① 長距離通勤でなく、ゆとりのある時間帯に労働時間が1日「5時間以内」で、週の3~4日程度働きたいとの希望である。年代別差異は少ない。基本的にはフルタイム勤務より、短時間労働が好まれているとみられる。
② 希望労働条件の多様化が認められる。高齢者のマンパワーを有効活用するには、事業主が定食メニュー的、画一的な労働条件によらず、個人の希望にマッチした多様な勤務態様を用意する必要が高まっている。
③ 勤務時間帯の希望は「自分の都合によいとき」が18%と、少なくない。これはシルバー人材センター利用者の特徴ともいえるが、今後高齢者にこのような希望者が増えると予想される。フレックスタイム制度を導入する上場企業が4割を越え(図-1)、9割の企業が効果あると考えており、シルバー人材センター会員数の伸びが著しいことから推測できる(図-2)。
「企業規模別のフレックスタイム制度導入の割合」の帯グラフ
図-1 フレックスタイム制度導入状況 
  :日本生産性本部調査 
   日経新聞1993年2月14日
「図-2 シルバー人材センターの会員数と就業実人員推移」の帯グラフ
図-2 シルバー人材センターの会員数と就業実人員推移
労働省職業安定局高齢障害者対策安定部1991
長寿社会と雇用 P.218

主題・副題:
高齢者の労働と生きがいに関する研究 90~91頁