高齢者の労働と生きがいに関する研究
No.7
4 考察と結論
1 労働感について
- (1) 労働と生きがい
- 高齢者はできるだけ長く仕事をすることを望み、仕事が生きがいにつながっている。当初65歳以後は仕事を離れ、仕事以外の活動の活発化を予想していたが、70歳前半層まで仕事の継続希望が延引してきていることが顕著な傾向であった。回答者の前職の企業規模や退職前の備蓄の相違などにより仕事の継続希望に差が生ずるのは当然であるが、調査結果では60歳代後半以前に経済的に安定している層が多く、「労働による生活費の確保」より「社会との繋がり」を求めて就労を希望していることが窺える。
- 労働を生きがいと感ずることは日本の国民性として無視しえない事実であり、50歳以上の有職者で仕事以外に生きがいを持っているのは二割に満たない(図-3)。高齢者のための職務の充実と拡大、高齢者の職業訓練の拡充は21世紀の高齢化時代に国の活力維持のため重要であり、官民協力して進めるべき公共的性格を帯びている。
図-3 仕事と生きがい
日経新聞1993年11月14日「生活」 P17
国民生活白書1993年
- 60歳定年制の完全定着と企業の義務化(現在は努力義務)、65歳までの希望者全員再雇用制度の努力義務化を国は進めているが、将来は70歳程度までへの再雇用の拡大と補助金措置を要望したい。
- (2) 働くゆとりの確保
- 労働条件については概ね満足しているが、基本的には短時間労働を軸とした多様な勤務態様を期待している。今後、若年層減少にともない、高齢者の職場改善、労働条件の整備を事業所は急ぎ、国はその支援をはかる必要があり、若者のように時間を追いかけるような仕事ぶりは高齢者には不適切であろう。
2 ボランティアについて
- 高齢者のボランティア労働参加状況を注視する必要がある。一人暮らしになったとき、「子供との同居可能者」は4割に過ぎない。「無理と思う」、「わからない」、「無回答」が6割を占める。就中、「無回答」が27%で回答の第二位を占める(表-9)ことは、核家族化社会における一人暮らし高齢者の生活不安を感じさせる。
- 「ボランティア預託制度」利用希望者が4割強を占め、「医療・介護施設入居希望者」が33%を占めるのも、老後のケアーサービスに対する不安の証左といえよう。この不安が解消されなければ、日常生活の生きがい保持に影を落とすことになる。「ボランティア預託制度」の実施により、「社会福祉活動参加者が増える」期待を6割弱の人が期待をしている。世代同志の助け合い意識の醸成により、自分の老後に介護サービスが受けられる安心感が得られれば、前期高齢者の参加が増加するであろう。
- こうした面から考察して、本研究は個々の高齢者のニーズの把握のための測定によって何が求められているかを明らかにしたうえ、そうした需要に応ずる社会的福祉サービスの質と量を向上、充実させる政策が緊急の課題であることを示唆していると推定、判断させた。
主題・副題:
高齢者の労働と生きがいに関する研究 97~98頁
著者名:
森 二三男、平山 明
掲載雑誌名:
高齢者問題研究
発行者・出版社:
北海道高齢者問題研究協会
巻数・頁数:
No.10巻 81~98頁
発行月日:
西暦 1994年
登録する文献の種類:
(1)研究論文(雑誌掲載)
情報の分野:
(1)社会福祉
キーワード:
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