音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

第6節 デンマーク

(デンマーク王国)
Kongeriget Danmark

1.障害者介護サービスに関する調査

2.モデルに関する調査

3.障害児に関する調査

添付資料
1/面談リスト
2/在宅ケア 判定質問表

松岡 洋子 (松岡事務所代表/関西学院大学研究科研究員)


●報告書作成にあたって

この報告書は、既存文献を参照にしつつ、現地調査(インタビュー)で得た情報に基づいて作成した。現地で訪問面談を行った先は、以下のとおりである。

  • 障害者権利擁護センター(CLH;Center for Ligebehandling af Handicappede)
  • デンマーク国立社会福祉研究所(SFI;Social Forsknings Instituttet)
  • デンマーク国立統計局
  • オーフス市   社会福祉部(Socialforvaltning)(2日間)[人口:29万人]
  • バレルップ市  社会福祉部(Socialforvaltning)[人口:4.7万人]
  • ドラウア市   [人口:1.2万人]
  • オーフス市   イェルパー制度センター
<凡例>
○デンマーク通貨:1クローネ=20円として換算した。
○訳語はできるだけ原語に忠実に訳した。必要のある部分では、原語を付け加えた。
○1998年に「施設Institutionen」を廃止し、改築・新築含めて「住宅」にふさわしい住まいを提供している。住まいは、スタッフのいない住宅「住宅」も24時間いる住宅「支援型住宅」も統合して「住宅提供Botilbud」としている。この理念と実践に鑑み、「住宅」「住宅提供」「支援型住宅」で統一した。

1.障害者介護サービスに関する調査

(1)障害の定義、範囲、区分(制度別)

A.定義

障害者(児)に関する社会福祉サービスは、「社会サービス法(lov om social service)」で一元的に規定されている。同法律において「障害者(児)」という章立てはなく、その定義を行う条項もない。

自治体でも、具体的な範囲の特定・区分を行っていない。

デンマークでは、障害の公式な定義はないとされている(障害者権利擁護センター、2006)。

そこで、障害者権利擁護センター(Center for Ligebehandling af Handicappede;CLH)発行による「The Danish Disability Council(2006)」での定義と、「社会サービス法」にみられる表現から、デンマークにおける障害の定義を探っていく。

まず、「The Danish Disability Council(2006)」では、デンマークにおける「障害」の定義は、時代とともに変化するダイナミックなものであるので公式のものはないとしながらも、次のように定義している。

「障害がある(Being disabled)とは、人が身体的、精神的、知的な障害(impairment)があるために、他の市民と同じ生活をするうえで保障が必要である、ということを意味する」(CLH、2006、11p、冊子資料)。

CLH(2006)には「障害の源泉」についての明確な記述がないので、「社会サービス法」を探ってみる。社会サービス法の目的を記述した部分「パート5成人 第15章目的 81条」に、「コムーネ1)議会は身体的・精神的機能能力の低下、特別な社会的問題のある成人のために特別な政策を先導しなければならない」という表現がある。この表現は、同法において繰り返し使われていることから、障害の源泉を「身体的・精神的な機能能力の低下(nedsat fysisk eller psykiskfunktionsevne)」ととらえていることが理解できる。

デンマークにおける障害の概念、理念を理解するうえで注意すべきは、国連の定義などで行われていることが、机上の論理ではなく、法と政策に展開され、地方自治体において実践されている点であろう。その理念、理論の特徴は、以下に示す通りである。

  • 障害の定義は、国連定義に拠っている。
  • 環境基盤コンセプトに拠っている。よって、障害(disability)をハンディキャップ(handicap)にしない環境整備(物理的、精神的、知的)が必要である、とする。
  • ICF(国際生活機能分類)を採用している。

参考:国連による障害の定義とデンマーク障害者福祉の理念と理論

また、“国連の定義”(the United Nations Standard Rules on the Equalisation of Opportunities for Disabled Persons)とは、以下の通りである。

「ハンディキャップという用語は、他の人々と同様に地域での生活に参加する機会が失われたり、制限されていることを意味する。これは、障害のある人と環境との間に起こる問題である。この用語の目的は、障害のある人々の参加を妨げるような、環境や社会での活動(情報、コミュニケーション、教育)の不十分さに焦点を当てることである」。

次に、「デンマーク障害者政策の原則(The Principles of Danish Disability Policy)」より、障害者福祉の理念と理論について述べる。

「ここで重要なのは、“ハンディキャップ(handicap)”と“障害(disability)」を区別していることである。つまり、視力障害(impaired vision)、聴力障害(impaired hearing)、精神障害または認知障害(mental or cognitive impairment)は直接に観察できる。しかし、いわゆるハンディキャップは人の外にあるものであり、個人の障害ではない。言い換えれば、ハンディキャップとは社会参加に限界があることである。そしてそれは、社会が障害のある人々のニーズや要求に適応していないからこそ起こる(個人の)障害の一つの結果なのである。

障害とハンディキャップの区別は、環境に基盤を置く障害コンセプトに拠っている。

  • 障害(disability)+バリア(barrier)=ハンディキャップ(handicap)
  • 障害(disability)+保障(compensation)=機会均等(equal opportunities)

環境基盤コンセプトは、障害者福祉における焦点を「個人(障害)」から「社会組織」へと移行させた。障害者政策は、診断やできないことの発見や修正というよりも、保障と環境の適合という問題へとその焦点を変化させている。そうすることによって、障害のある人々により広い可能性が広がるのである。

つまり、アクセスビリティも今日の障害者政策において非常に重要な役割を演じることになるのである。物理的な、知的な、精神的なアクセスビリティのすべての意味において。

よって、障害者福祉の基本理念は、「障害(欠陥のある機能)を補って、同じ社会人として生活できるように保障していく」(CLH談)ということである。

B.範囲

「社会サービス法」では、「コムーネ議会は身体的・精神的機能能力の低下、特別な社会的問題のある成人のために特別な政策を先導しなければならない」と記述されており(パート5成人 第15章目的 81条)、広範な対象設定がなされている。よって、ホームレスやDVを受けた女性なども、原因はどうであれ、普通の市民と同様の生活をするのに困難がある人すべてを対象とし、社会のセーフティネットから落ちこぼれることがないように法設計されている。

ICF(国際生活機能分類)では「その特徴は障害理解の『一般化』である」「誰が障害者で誰が障害者でないかを定義するための閾値が存在しない(欧州委員会、2002、p.27)」とされている。

C.区分

「手帳」の交付もなく、登録もなく、障害の程度による等級表(インペアメントテーブル)の区別も存在しない。

「障害者福祉の基本理念に基づいて、一人ひとりを対象として、今ある能力と何がしたいかという希望によって(ニーズによって)保障の内容を決めていくので、障害の区別はしていない」というのがCLHでの説明であり、訪問した3つのコムーネ(オーフス市、バレルップ市、ドラウア市)でも同様であった。

実際のサービス提供について言えば、24時間在宅ケアは、一般成人・高齢者・障害者に統合的に提供されている。しかし、イェルパー制度2)(詳しくは「(7)給付内容」を参照)は、知的障害者、精神障害者には実際のところ利用できず、同行サービスも精神障害者には利用できないなど、実質的な区別が結果的に存在するのは事実である。一人ひとりのニーズに着目してサービス提供を考えたとき、同様の機能障害を持つ人のニーズは似通っており、似通ったニーズを持つ障害者が、似通ったサービスを利用するのは当然の結果であろう。

また、機能障害の程度によって等級に分ける区分も行っていない。それによって、サービス量が規定されることもない。機能障害(impairment)ではなく、一人ひとりのニーズをアセスメントしてサービス提供を判定しているからである。この点は徹底しており、登録も行っていないので、統計によって数を把握することもできない。社会福祉部で質問しても「統計がないので、わからない」というのが共通した答えであった(障害者年金受給者数で推測することは可能)。

以下に、デンマークにおける障害区分の現状についてまとめる。

  • 法制度としては、1976年に福祉関連7法3)を統合しており、法制度の面からは障害の区別(身体障害、精神障害、知的障害)は行っていない。
  • 「一人ひとりのニーズをアセスメントし、サービス内容・量を決める」という方針である。
  • 障害の種別によってサービス内容は似通ってくるが、それは結果にすぎない。
  • 障害者の登録を行っていないので、実数を把握できる統計がない。

なお参考として、社会サービス法や地方自治体で使われている用語をピックアップし、日本における用語が意味するものと対比してみた(図表1参照)。

図表1 障害の範囲と区別に関連する表現の対比

日本における表現 デンマーク語での表現(社会サービス法・市の規則・市の書類)
身体障害者 Voksne med nedsat fysisk funktionsevne
身体的機能能力の低下がある成人
Fysisk invalidere
身体障害
精神障害者 Voksne med nedsat psykisk funktionsevne
精神的機能能力の低下がある成人
Psykisk invalideret
精神障害
Sindlidelser
精神障害
知的障害者 Udvikling nedsa
発達遅滞
アルコール中毒、麻薬中毒、DVを受けた人、ホースレス、その他 Voksne med salig social problemer
特別な社会的問題をもつ成人

(2)要介護者の定義、範囲、区分(制度別)

日本の介護保険における要介護者が意味するところから、デンマークのそれを類推すると以下のようになる。

社会サービス法では、「コムーネ議会は身体的・精神的機能能力の低下、特別な社会的問題のある成人のために特別な政策を先導しなければならない」と規定されている(パート5成人 第15章目的 81条)。

サービスの開始は、障害(impairment)の存在ではなく、「ニーズがあること」が条件であるので(参考文献:田口、1999)、「身体的・精神的機能能力の低下、特別な社会的問題のあるために、他の市民と同様の生活をするうえで何らかの保障が必要な人々」が要介護者の対象となる。

具体的には、児童・若者4)、高齢者、在宅での長期療養者、身体的機能障害者・精神的機能障害者、麻薬乱用者、アルコール中毒、DVを受けた人、ホームレス、などである。

障害・ニーズの種別・程度による区分は行っていない。「一人ひとりを見てニーズを判定するので、その必要はない」(CLH談)のである。

(3)制度の名称、根拠法

デンマークにおいては、医療・介護は租税によって賄われており、医療保険、介護保険は存在しない。

デンマークに合法的に居住する者を対象として、機能障害・社会的問題が原因で何らかの保障を必要とする人のために、あらゆる社会福祉サービスが「社会サービス法」に統合されている(図表2参照)。

図表2 社会サービス法に統合されている主な給付内容

適用法令 主な給付内容
社会サービス法
(パート5成人)
在宅ケア(83条)
ショートステイ(84条)
在宅生活支援(85条)
リハビリテーション(86条)
イェルパー制度(96条)
同行サービス(97条)
住宅提供(107条、108条)
保護作業所(103条)、社会参加活動(104条)
必要経費保障(100条)
補助器具(パート6、112条)

なお参考として、以下に社会サービス法の構成について記す。9つのパートがあり、パート、章、条となっており、条項はサービス毎に立てられている。障害児・障害者に関する社会サービスは、それぞれ「パート5成人」「パート4児童・若者」に振り分けられている。

社会サービス法(lov om social service)
パート1/導入
パート2/カウンセリング、知識の発展
パート3/ユーザー・デモクラシー
パート4/児童・若者
パート5/成人
パート6/補助器具
パート7/強制執行と自己決定権に関する制限
パート8/行政事務など
パート9/財政、料金、保障など
以上

(4)運営主体

社会サービスについての決定・提供責任は、コムーネ(市町村)にある(社会サービス法第2章3-4条)。

社会サービス法は中央政府がつくる枠組み法であり、これに準拠してコムーネにおいて具体的なサービス内容・質・量を決定し、運営を行う。一部については、コムーネとの協議を持って、広域保健圏域(レギオナ;regioner)が運営にあたることもある(同法5条)。住宅提供など、1つのコムーネでは運営が困難である場合や利用者が広域から集まってくる場合などは、コムーネとの協議のうえでレギオナが運営にあたることもある、ということである。

コムーネには、ニーズに応じた計画書、年次報告書、サービスについてのクォリティ・スタンダードを明らかにすることが義務づけられている。

(5)制度の体系・相互の位置づけ

デンマークに合法的に住むすべての人に対しての社会サービスは、「社会サービス法」に一元化されている。一般成人、高齢者、障害者が統合的に利用する在宅ケア、ショートステイ、リハビリテーション、補助器具、住宅提供、主として障害者が利用することが多いイェルパー制度、同行サービスなどが、社会サービス法に一元化されているということである。

その他、障害児の教育については「学校法」、障害者年金については「年金法」、スコーネジョブ、フレックスジョブなどの就業に関しては「労働市場法」が根拠法となっている。

(6)加入対象者、加入者数

デンマークにおいては、社会サービスを租税方式で運営しているため「加入」という概念は存在しない。デンマークに合法的に居住するすべての人が社会サービス法で規定するサービスを利用できる。サービス利用者数は「(13)認定者数」で述べる。

また、障害者の登録とその数についてであるが、デンマークでは、障害者の登録は行われていない。CLH(障害者権利擁護センター)の返答も、コムーネ(市町村)の返答も、統計局での返答も同様であり、「登録はしておらず、そのような統計はない」とのことであった(ソーシャルワーカーは障害者の相談に応じ、記録を持っているのだから、不可能ではないと思うが、返答は同じであった)。

障害者年金受給者数が有力な参考データとなるが、受給者は24万人である(図表18参照)。しかし、65歳を過ぎると国民年金へと移行するので、65歳以上の障害者は含まれていない。

やや古いが、田口(1999、68p)によれば、身体障害者は10万~15万人で、一時的障害者と機能障害を持つ高齢者を含めると25万人とも言われている。知的障害者は1万5,000人、精神障害者は3万人である。

(7)給付内容

「社会サービス法」では、介護・生活支援を必要とする人、障害のある成人に対して次のようなサービスが用意されている(図表3参照)。運営主体はコムーネ(市町村)であり、一部リハビリテーションを除いて、利用者負担はない。全体を図表3にまとめ、主なもの(A~Eのサービス)について順次記述する。

図表3 障害者が利用できる社会福祉サービス一覧

  社会福祉サービス 根拠法(注1) 概要 給付対象 実際に多い対象者(注2)
介護・生活支援 在宅ケア(A)
Hjemplejen
83条 家事支援、身体介護、看護を、24時間体制で居宅に届ける。 一時的・恒久的に身体的・精神的機能能力が低下した人、特別な社会的問題を抱えた人で必要のある人 高齢者
障害者
ショートステイ
Aflastning
84条 介護者レスパイト、本人のためのショートステイ(24時間)。 高齢者
障害者
在宅生活支援(B)
Bostøtte
85条 在宅で介助、同行、トレーニングを通じて、自立生活に向けて生活構築を支援する(24時間)。 知的障害者
精神障害者
トレーニング、リハビリテーション
Genoptraening
86条 病後のリハビリテーションや機能低下を予防するトレーニングを行う。  
イェルパー制度(C)
Hjælperordning
(このサービスがない市もある)
96条 障害者がイェルパーを雇用し、人件費が市から障害者に支払われて、障害者が労務・人件費管理と報告を行う。以上の管理業務ができることが条件。 重度身体障害者
同行サービス(D)
Ledsagordning
97条 外出の付添サービス。市の雇用者が派遣され、月15時間まで。 身体障害者
知的障害者
住宅 高齢者住宅、障害者住宅 公営住宅法 障害者・高齢者の生活、アクセスビリティを配慮した公営賃貸住宅。 (コムーネの判定を受けた人) 高齢者
身体障害者
補助器具 補助器具(E) 112条 補助器具の無料貸与。 恒久的な身体的・精神的障害がある人  
住宅改造(E) 116条 自宅の住宅改造を市役所の専門家が本人と相談して行う。  

(注1)根拠法で法律名の記載のないものは「社会サービス法」である。
(注2)「実際に多い対象者」としたのは、「社会サービス法にも市のガイダンスにも対象についての記載はない」からである。しかし、「結果的にこのような対象グループの利用が中心となる」というものである。
出典;Bekendtgoerelse af lov om social service(LBK nr979 af 01/10/2008 Faeldende)より松岡作成

A.在宅ケア(社会サービス法83条)

在宅24時間ケアは、社会サービス法(83条)に規定された、コムーネ(市町村)に提供義務があるサービスである。

社会サービス法83条

コムーネ議会は、
1)身体介護
2)在宅において必要な家事支援
を提供しなければならない。

2項:1項に言う支援は、一時的あるいは恒久的な、身体あるいは精神の機能の障害、社会的問題によって上述のような活動ができない人に提供される。

3項:1項に言う支援は、79条に言う一般サービスとして提供されるものではない。

サービス内容

家事支援と身体介護、看護があり、以下のようなケアが24時間にわたって提供されている。

なお、2001年より「自由選択(frit valg)」が始まり、市の認可を受けた民間事業者も在宅ケアのサービス提供ができるようになった。利用者が、コムーネか民間事業者のいずれかを選ぶのである。実際には、民間事業者を選ぶのは利用者の15%前後である(松岡、2005)。

【家事援助】

掃除、洗濯、買い物、食事作り。

【身体介護】

上・下半身の清拭、トイレ介助、オムツ交換、ベッドメイキング、ストッキングの着脱、衣服の着脱、食事介助、シャワー介助。

【看護】

投薬管理、カテーテルの交換、注射、傷の手当、ストマの世話、ターミナルケア、精神障害の看護、認知症および糖尿病患者のケア。

B.在宅生活支援(85条)

社会サービス法では、自分の生活管理が困難な障害者に対して、介助、同行、トレーニングを中心としたサービスを保障している。コムーネの社会福祉教育士(Socialpadagogik)の資格を持った専門職がサービス提供にあたる専門性の高いサービスである。現場では「Bosttøt(在宅生活支援)」と称しており、自宅であれ住宅提供(Botilbud)であれ、住む場に関係なくサービスが提供される。

85条に加え、102条において、「どのような法規定においても提供されないサービス(behandling)を市は提供することができる」と規定している。利用者は全国で243人と少ない(図表11参照)。

社会サービス法85条

市議会は、身体または精神の重大な機能障害、特別な社会的問題のある成人に対して、支援とケア、スキル向上のトレーニングを提供しなければならない。

サービス内容

社会サービス法には、具体的な支援の内容は書かれていない。

以下は、コムーネへの面談で得た情報である。下記メニューは部分的に利用することもできるが、連続的に長時間提供される場合もある。自宅はもちろん、職員がつかない住宅提供(Botilbud)に連続的に提供されることもある。住宅提供と在宅生活支援(Bostøtte)を組み合わせれば、自立した生活環境(居住環境・支援環境)を維持しながらも、仲間の近くに住んで施設に近い支援を受けることができる。

目的は、能力維持・トレーニングを通じて自宅で暮らすのと同様の自立生活が維持できるよう支援することである。社会福祉教育士(Socialpadagogik)の資格を持つ、知識・経験ともに豊かな専門職が支援を行う。

【コンタクト、支援など】

コンタクト、投薬確認・金銭管理の支援、介助。

【トレーニング】

毎日の日課づくり、毎日の生活トレーニング、身体衛生の指導、教育・行動プラン(料理が作れるように、など)、公共交通機関の利用・外出のトレーニング。

【投薬確認】

薬を処方どおり飲んでいるかどうかを確認したり、水を入れたり、薬を砕いたりして飲ませること。

【同行】(1人で移動ができない精神障害者・知的障害者)

自宅を拠点とした移動支援・同行、旅行同伴。

C.イェルパー制度(96条)

イェルパー制度は1978年にオーフス市で始まった制度である。障害者が自分で選んだイェルパーを雇用して自分の生活を構築し、市が人件費を障害者に現金給付し、障害者がイェルパーに給料を支払う制度である。利用者には、自ら時間管理、労務管理、人権費管理を行う義務が生じる。

オーフス市は発祥の地であるだけに利用者が210人と多い。しかし、デンマーク全体で1,179人とそれほど多くなく、実施していないコムーネがあるのが実態である。発祥の地オーフスで調査を行ったため盛んに行われているような印象を与えるが、統計はそうではないことを示している(オーフスの人口はデンマーク全人口の5.3%であるのに対して、イェルパー利用者は全国利用者の17.8%である)。この事実は、このサービスを求めて住み移っていることを意味する。

オーフス市には約210人の利用者があり、30~40%が1日24時間の利用者である。なかには1日30時間の利用者もいる。このケースの場合、6時間はイェルパー2人の支援を受けていることになる。時給110クローネとして予算を推計すると、オーフス市における24時間利用者のみで、3億3千万円の保障がなされていることになる。

社会サービス法96条(現金給付として95条、96条が位置づけられている)

コムーネ議会は、身体または精神の重大かつ恒久的な障害があり、特定の支援を必要とする人に対して、介護・見守り・同行の支援を得るための経費を保障しなければならない。

2項:1項に言う保障は、受給者が必要な援助を管理し、仕事に対しての日々の計画に責任を持つなど、支援に対して事務的に管理できる業務に対して支払われなければならない。

サービス内容

社会サービス法では、「イェルパーを雇用する人件費に対する現金給付保障」として規定されており、具体的なサービス内容は書かれていない。以下はコムーネ面談で得た情報である。

イェルパーが行う支援の内容は「介護・見守り・同行の支援」であり、24時間イェルパーともなると、仕事場にも同行して、文字通り24時間支援を行う。イェルパーのリクルートはを自分で行う(新聞広告、インターネット募集など)が、オーフス市などの大都市では、専用の事務所があって手助けしたり、イェルパーの緊急休業に際しては、代替の人を探してくれたりする。

【イェルパーの支援内容】

障害者のそばにいて、介助、家事支援などを行う。自宅に泊まり込み、仕事場にも同行する。レスピレーターなど医療器具の使用(医療的ケア)については研修を受ける。

【イェルパー制度センター】

イェルパーのリクルートを手伝ったり、急にイェルパーが休んだ場合などに代替を派遣する。

【利用する障害者本人の責任・義務】(www.aarhuskommune.dk/

  • 月間ワークレポート、月間給料レポートの提出
  • 決められた時間内で、給料をコントロールする
  • イェルパーの労働環境の健全と安全を守る(危険な設備がないように)
  • 労働環境のアセスメント
  • 必要な器具を使用することで事故を防ぐ(リフトなどの利用)
  • イェルパーが危険なく働けるよう必要な研修とトレーニングを受ける
  • 事故報告書

D.同行サービス(97条、98条)

外出など、移動が困難な障害者(18歳~67歳)は、月15時間の同行サービスを利用できることが97条で決められている。コムーネから派遣されるスタッフが同行するが、利用者の約30%が自分で指定した人に同行してもらっている。利用者が同行者を指定する場合は、コムーネの審査が必要である。

なお、16歳~18歳の若者に対する同様のサービスは、社会サービス法45条(パート4児童・若者)で保障している。

98条では、視覚・聴覚障害者(全盲かつ全聾)に対して、特別コンタクトパーソンという形で必要な支援を保障している(利用者、265人、統計局資料2008)。

社会サービス法97条

コムーネ議会は、身体または精神の重大な恒久的障害のために、1人で移動できない67歳以下の成人に対して、月15時間の同行を提供しなければならない。

サービス内容

次のような内容で、月に15時間までの同行サービスが受けられる。

  • 買い物、散歩
  • 映画、劇場
  • 医者、歯医者、美容院に行く
  • 家族・友人訪問
  • スポーツを含む余暇活動
  • 仕事場への行き来
    (細則)
  • 長期休暇のために使いたい場合は、6ヶ月(15時間×6ヶ月=90時間)まで貯めることができる。6ヶ月以上経過すると、消滅する。
  • 同行者が障害者自宅まで来る時間、帰る時間は同行時間に含まれない。
  • 移動中のバスが遅れるなど、行為時間が延長した場合は15時間にカウントされる。

同行者は、基本的には市から派遣される。もし、自分が雇用者となって同行者を雇いたい場合は、その旨を申請書に記入する。同行者雇用費用を現金の形で受け取る場合には、雇用者としての承認を自治体から得なければならない。

E.補助器具(112条)、住宅改造(116条)

社会サービス法(112条)に規定されており、補助器具貸与サービスがよく整備されている。

  • 補助器具が障害を軽減すると判断されること
  • 補助器具が日常生活の困難を軽減すると認められること
  • 障害者が就労するために補助器具が必要と認められること

以上の条件の1つに該当すれば、コムーネより無料で貸与される。

担当は補助器具センターであり、どのような補助器具が必要であり、適しているかについてはOT(作業療法士)が相談に乗り、フィッティングを行って使用法も指導する。各コムーネは補助器具保管庫を持ち、常時数千種の補助器具を保管しているので最適なものがすぐに選べる。体型の変化や、障害の進行によって器具が合わなくなると新しいものに変更でき、古い器具は洗浄してリサイクルされる(松岡、2001)。

(8)障害者のみの付加給付

障害者のみの付加給付は図表4の通りである。全体を図表にまとめ、主なもの(A~Eのサービス)について順次記述する。

図表4 障害者のみの付加給付一覧

  社会福祉サービス 根拠法(注1) 概要 給付対象
住宅提供 住宅提供(A)
Ophold i boformer
108条 スタッフが常駐しない住宅と24時間常駐する住宅(グループホーム形式)がある。高齢者、障害者を一元化。 日常的に生活支援や介護、同行、治療を広範に必要とし、どこにもその解決がない人
一時的住宅
Midlertidigt ophold i
boformer
107条 障害者、高齢者が一時的に住むことができる住宅。 恒久的で重度の身体的・精神的障害、社会的問題があり必要のある人
就業余暇 保護作業所(B)
Beskyttet
beskæftigelse
103条 一般の仕事に就くことが困難な場合、支援員のサポートを受けながら働く場である。商品・作品を作り販売に結びつける場合が多い。 重度の身体的・精神的障害、社会的問題のために就業できない65歳以下の成人
社会参加活動(B)
Aktivitets-og
Samværstilbud
104条 障害者が交流し、普通の生活を維持してその質を高めるための喫茶・余暇・クラブ活動の場。 重度の身体的・精神的障害、社会問題を抱える成人
財政支援 必要経費保障(C)
Merudgift
100条 障害があることが原因で生じる必要経費が保障される。 恒久的な身体的・精神的障害のある18歳~65歳の成人、国民年金受給を遅らせている成人
障害者年金(D)
Førtidspension
年金法 障害があることで就業できない人に支給される年金。2003年より一元化された。 -
労働市場参加 フレックスジョブ(E)
Fleksjob
労働市場法 障害者年金を受給していない障害者を雇用する会社に、国が賃金の一部を補助する制度。 -
スコーネジョッブ(E)
Skaanejob
障害者年金を受給している障害者を雇用する会社に、コムーネが賃金の一部を補助する制度。 -

(注1)根拠法で法律名の記載のないものは「社会サービス法」である。
出典:Bekendtgoerelse af lov om social service、田口・1999、インタビューより松岡作成。

A.住宅提供(社会サービス法107条、108条)

スタッフが常駐しない住宅や常駐する住宅(いわゆる施設)などは、すべて「住宅提供(botilbud)」として、「社会サービス法第20章/住宅提供(botilbud)」にまとめられている。章内の構成は以下のようになり、障害者と関連するのは107条、108条である。

社会サービス法第20章(住宅提供;Botilbud)

(ア)一時的な住宅提供
(イ)恒久的な住宅提供
(ウ)虐待を受けた女性のための一時的な住宅提供
(エ)ホームレスのための一時的な住宅提供
(オ)賃貸法との無関係の規定

社会サービス法108条

コムーネ議会は、身体または精神の重大な障害によって、日々の生活や介護、ケア、治療、他の方法では支援できないような内容について、集中的な支援を必要とする人々に、滞在できる住宅を提供しなければならない。

2項:1項によって住宅提供を受けた人で、他市への居住を望む者は他市での居住が保障される。

3項:2項に言う権利は、障害者と世帯をともにする配偶者、同居者、登録されたパートナーにも保障される。障害者が、配偶者、同居者、登録されたパートナーとの同居を望めば可能である。また、本人が死亡しても残った配偶者・パートナーはその住居への居住継続を保障される。

サービス内容

住宅提供(Botilbud)は、大きく「スタッフなし」のものと「スタッフ常駐」の2種に分けられる。

●オーフス市の障害者向け住宅提供の実際

住宅提供(Botilbud)

  1. グループホームBofællskab
    一人ひとりの住居が集合した共同居住のグループホーム。
    スタッフはおらず、在宅生活支援(Bostøtte)を受けながら生活する。
    自閉症のためのグループホーム
    知的障害者のためのグループホーム
    身体障害者のためのグループホーム
    拒食症のためのグループホーム
    など
  2. スタッフ駐在型住宅Boform(仮に「支援型住宅」と名づける)
    24時間スタッフが配置された住宅である。いわゆる、施設。
*コムーネによって「Bofællskab」「Boform」の用語の使い方が異なるので注意が必要である。
(費用)
平均家賃は、5,000~6,000クローネで、限度額は6,300クローネとされている。障害者年金だけでは不足する場合、住宅手当が支給される。その結果、手元には最低4,000クローネ(約8万円)程度が残るよう、生活が保障されている。

B.保護作業所(103条)と社会参加活動(104条)

一般の仕事に就くことが困難な場合、保護作業所(103条)を利用する。作業所の利用が困難な場合は、活動センター(104条)を利用することとなる。作業所は2006年まではアムト(県)の管轄であったが、2007年(13のアムトが廃止され、5つの広域保健圏域レギオナへ)以降は市の管轄となった。作業所数と活動センターの利用者数は図表16の通りである。

C.必要経費保障(100条)

障害があることが原因で余計な支出をしなければならない費用について、その保障を現金給付の形で行うものである。費用援助(Merudgift)であり、具体的には下記のような支出について使われる。

基本額は月に1,500クローネである。薬代に500クローネ、ヘルパーを雇うのに1,000クローネなど自由に使うことができる。1,000クローネのうち、500クローネは決まった人に支払い、あとの500クローネは隣人に依頼するなど、使い方は自由である。

(使い方の例)

  • 糖尿病の薬代
  • 手紙・新聞を読んでくれるヘルパーを雇用する費用
  • 窓拭きなど、臨時でヘルパーを雇う費用

D.障害者年金(年金法)

障害者のための年金(Førtidspension)は、就労しにくさの程度で3分類されていた。しかし2003年より一元化され、現在は古いものと新しいものが混在している。退職者向けには国民年金(Folkepesion)があるので、65歳を過ぎると国民年金へと移行する。

障害者年金は、26万人が受給している(2004年)。内訳は図表5参照。

障害者年金の種類(旧型)

【最上級障害者年金(højeste førtidspension)】

  • 身体障害、精神障害があり、就労できない状況にある成人が対象。
  • 単身の場合の基本額(年額)は166,740クローネ(333万円)、夫婦の場合は1人141,720クローネ(283万円)である。国民年金では、独身で111,924クローネ(224万円)、夫婦の場合は1人81,984クローネ(164万円)であるので、障害者が65歳になって早期年金から国民年金に移ると受給額が減ることとなる。

【中間障害者年金(Mellemste førtidspension)】

  • 労働能力が3分の2に低下した障害者を対象とした給付。

【増額標準障害者年金(Almindelig og almindelig forhøjet Førtidspension)】

  • 労働能力が3分の1に低下した障害者を対象とした給付。

障害者年金の種類(新型)

【新障害者年金(Ny førtidspension)】

  • 2003年より導入された、上記3種を一元化した障害者年金。

図表5 障害者年金受給者数、財政支出、1人当たり平均額(2004年)

  最上級障害者年金 中間障害者年金 増額標準障害者年金 新障害者年金 合計
受給者数(人) 64,452 118,298 68,563 8,568 259,881
財政支出(百万クローネ) 10,930 8,656 11,677 31,263
財政支出(日本円換算(億円)) 2,186 1,731 2,335 6,252
1人当たり平均(日本円換算:万円) 119.6 252 2,725 240

出典;Statistisk aaborg 2005,184p,table 187

E.就労支援(労働市場法)

コムーネに保護雇用や特別雇用の提供が義務づけられており、国(社会省)は報酬保障の規則をつくらなければならない、とされている。

フレックスジョブ

フレックスジョブ(fleksjob)は、障害者年金を受けていない障害者を雇用する会社に国が賃金の一部を補助する制度である。補助の割合は3分の1、2分の1、3分の2とさまざまである。1998年初期には、その制度を利用して2,700人の障害者が新しく職を得た。

スコーネジョブ

スコーネジョブ(skaanejob)は、障害者年金を受けている障害者を雇用する企業にコムーネが賃金の一部を補助する制度である。補助率は賃金の50%で、これによって1998年に5,000人の新たな障害者雇用が生まれた。

これら2つの制度によって雇用されている障害者のうち56%が公共部門で働き、44%が民間企業で働いている。(田口、1999)

(9)ケアマネジメント

障害者に対して、社会サービス法に一元化された広範なサービスの全体をコーディネートしているのは、社会福祉部のソーシャルワーカーである。

福祉事務所には「ソーシャルワーカー(Social Rådgiver)」の資格を持ったケースワーカー(Sagsbehandler)がおり、コンタクトパーソンとして障害者本人について、「同世代の人と同じような生活ができるよう」障害者自身がサービスのネットワークを構築できるように支援する(サービスをコーディネートしていく)。モニタリングも行う。

図表6に申請から受給までの流れを記す。

図表6 申請からサービス受給までの流れ

流れ図 申請からサービス受給までの流れ拡大図・テキスト

*その時点で使用する行政書類を示す。

障害者本人に自分の生活を構築できる能力が残っていれば、ケースワーカー5)が一貫して行う。社会福祉部に、それぞれのサービス担当者がいるので、本人・ケースワーカー・サービス担当者がともに話し合って、サービス内容を決めていく。

障害が重度で意思を伝えにくい場合などは、自治体のケースワーカーは機能能力の評価は行うが、サービスコーディネーションについては、本人の近くにいて、よく事情を知っているグループホームの長や活動センターの長がコンタクトパーソンとして行う場合が多い。重度障害者に対するこうしたサービスコーディネーションのあり方は、全国的な傾向として広まっている(オーフス市)。

自治体職員(ケースワーカー)によるソーシャルワークによって、障害者本人はサービス受給からもれたり、異なるサービスごとに異なる窓口を単独で訪問したりして、申請書を書いて、提出し…という苦労から逃れることができる。

ケアマネジメントを介護給付(在宅ケア)のみに限定すれば、在宅ケア(83条)の判定を行う判定員(visitator)が、機能能力・ニーズのアセスメント、サービスの種類・量の決定を行っている。

(10)給付対象者

社会サービス法に基づく社会サービスの給付対象者は、ニーズのある機能障害者、社会的問題を抱える者であり、サービスは判定によってニーズを認められた者に給付される。なお、社会サービス法に規定される給付対象は、図表7の通りである。

図表7 社会サービス法に規定される給付対象

サービスの種類 社会サービス法で規定される給付対象 備考
在宅ケア 身体的・精神的な機能障害、社会的問題によって、身体介護・家事ができない人(一時的・恒久的)。年齢制限なし。  
在宅生活支援 身体または精神の重大な機能障害、特別な社会的問題のある成人。年齢制限なし。 知的障害者、精神障害者(オーフス市では725人)が中心
イェルパー制度 身体または精神の重大かつ恒久的な障害があり、特定の支援を必要とする成人。 身体障害者が中心(事務管理責任があるため)
同行サービス 身体または精神の重大で恒久的な障害のために1人で移動できるない67歳以下の成人。(16歳~18歳の若者に対しては、社会サービス法45条を適用) 〔例〕
  • 身体障害を持つ成人(18歳~67歳)⇒オーフス市(16歳~67歳)
  • 全盲、または強度な視覚障害のある大人
  • 知的障害のある成人
  • 脳損傷を持つ成人
〔除外条件〕
  • 精神障害者
  • 社会問題に起因する障害(薬物中毒、アルコール中毒など)
  • イェルパー制度利用者
  • 他の制度を利用している視聴覚障害者(全盲・全聾)
住宅提供 身体または精神の重大な障害によって、日々の生活や介護、ケア、治療、他の方法では支援できないような内容について、集中的な支援を必要とする人々。 精神障害者、知的障害者が80%
保護作業所・社会参加活動 65歳以下で、重度の身体的・精神的障害、社会的問題のために、労働市場において仕事を見つけること、続けることができない成人。社会参加活動には年齢制限なし。  
必要経費保障 恒久的な身体的・精神的障害のある18歳~65歳の成人。
恒久的な身体的・精神的障害があり国民年金受給を遅らせている成人。
 

出典:Bekendtgoerelse af lov om social service,3 市インタビューより松岡作成。

(11)認定主体

コムーネ(市町村)の社会福祉部が中心となって行う。

障害者のニーズアセスメントは「面談リスト」によって社会福祉部(Social Forvatning)のソーシャルワーカーが行い、上部の福祉コンサルタント(特別ソーシャルワーカー)がスーパーバイズにあたり、全体を調整している。

在宅ケア(83条)については、高齢者が中心の制度であり、部署(保健・ケア部)も異なることから、専門の判定員(visitator)が機能能力・ニーズをアセスメントし、要否を判定して、必要な種類のサービスとその量(時間・頻度)を決定する。要介護度の区分は行わない。

しかし在宅生活支援、イェルパー制度、同行サービスについては、基本的には社会福祉部のソーシャルワーカー(ケースワーカー、特別ソーシャルワーカー=コンサルタント)が、医師を含む関係の専門職と協議しながら認定についての責任を担う。

(12)認定基準

要介護認定の基準は、障害(impariment)の程度ではなく、「環境を総合的にとらえて、何ができるか・できないか」「どのような希望があるか」を総合した“ニーズ”である。

「環境を総合的にとらえて、何ができるか・できないか」を判定するとは、環境因子、個人因子を評価に反映するということである。

高齢者領域においては、国際障害分類(ICIDH)ではなく国際生活機能分類(ICF)に依拠した制度設計を行っていることを確認しているが(松岡、2005)、今回の調査を通じて、障害者領域でも、環境因子、個人因子を評価に反映して「障害の源泉ではなく、ニーズによってサービスの要否・内容・量を決めている」ことを確認した。

認定・測定の対象は“ニーズ”であり、標準化された基準や指標はない。この点については「(15)要否判定方法」で各サービスごとに詳述するとして、ここではどのような枠組みでニーズアセスメントが行われるかについて述べる。

障害者のニーズアセスメントにおける各市共通の評価基準として、以下の「7つの領域」が存在している(図表8)。この枠組みは、障害者が社会福祉部(福祉事務所)を訪れたときに、最初に行う「面談リスト(Samtaleskeme)」(添付資料1参照)で具体的に展開されている。そして「環境を総合的にとらえたうえでできるか、できないか」「できないなら、何に困っているのか?」という視点でアセスメントが行われる。情報の形態は、点数や4件法での選択などの定量的なものではなく、面談の結果は定性的なテキストの形で書き込まれる。

面談にあたるのは、ソーシャルワーカーの資格を持ち、アセスメントの経験・知見豊かな専門職である。また、ソーシャルワーカーの上にはコンサルタント(特別ソーシャルワーカー)がいて、判定に偏りがないか、妥当性はあるかなどをチェックしている。

認定結果について不服がある場合は、所定の手続きをとって不服申し立てを行う(社会サービス法第30章)。

図表8 「面談リスト」に見られるニーズアセスメントの枠組み

図 「面談リスト」に見られるニーズアセスメントの枠組み拡大図・テキスト

出典;Samtaleskema I Ballerup Kommune より松岡作成。

(13)認定者数

障害者の数については、登録していないので数の把握が不可能であることを「(6)加入対象者、加入者数」で述べた。ここでは、それぞれのサービス利用者数について記述する。

A.在宅ケア(社会サービス法83条)

在宅ケアは、高齢者、一般、障害者に統合的に提供されており、利用者数の内訳は図表9の通りである。

64歳以下の利用者が障害者であることが推察されるが、65歳以上の中にも障害者は存在し、64歳以下の中にも在宅での短期・長期療養者、ターミナル患者などがいる。よって、正確な利用者数は把握できない。しかしながら、64歳以下の在宅ケア利用者が2万8千人であることは、一つの目安になるであろう。

図表9 在宅ケア利用者数(人)(2008年)

年齢 身体介護のみ 家事支援のみ 両方 合計
0~64歳 4,185 13,732 10,758 28,675
65~66歳 598 1,986 1,699 4,283
67~79歳 6,763 29,547 26,196 62,506
80歳以上 9,170 39,724 62,528 111,422
合計 20,716 84,989 101,181 206,886

出典; デンマーク統計局、www.dst.dk/ VHT1

B.在宅生活支援(85条)

社会サービス法85条と102条の利用者の内訳は、図表10のようになる。また、目的別の利用者数は、図表11のようになる。

図表10 年齢別85条・102条利用者数(人)

利用の目的 85条利用者 102条利用者
30歳以下 3,043 44
30~39歳 3,736 37
40~59歳 6,685 22
60~66歳 1,440 3
67歳以上 555
年齢不詳 233
合計 15,692 243

出典;Statistiske efterretninger;Social forhold,sundhed og retsvaesenm 2008:15 より松岡作成

図表11 利用の目的別85条・102条利用者数(人)

利用の目的 85条利用者 102条利用者
精神障害(統合失調症) 3,440 9
知的障害(発達遅滞、自閉症) 3,226 36
身体障害 586 7
虐待、住宅の早期利用 225 1
その他(就業能力低下、社会的要因) 232 2
合計 15,629 243

出典;Statistiske efterretninger;Social forhold,sundhed og retsvaesenm 2008:15 より松岡作成。

C.イェルパー制度利用者数(96条)

イェルパー制度の利用者は、図表12のようになる。

図表12 イェルパー制度(96条)利用者数(人)

  合計
イェルパー制度利用者 1,179

出典;Statistiske efterretninger;Social forhold,sundhed og retsvaesenm 2008:15 より松岡作成。

D.同行サービスの利用者数(97条)

同行サービスの利用者は、図表13のようになる。

図表13 同行サービス利用者数(人)

  男性 女性 不明 合計
16~17歳(45条) 14 11 25
18歳以上(97条) 2,326 2,687 191 5,204
うち3項適用(注1) (686) (839) (1,525)
うち5項適用(注2) (39) (49) (88)

(注1)3項適用とは、障害者が同行者を指定して、人権費は市から同行者に支払われるもの。
(注2)5項適用とは、障害者が同行者を指定して、人権費は市から障害者に現金(個人予算)で支払われるもの。
出典;Statistiske efterretninger; Social forhold, sundhed og retsvaesenm 2008:15 より松岡作成。

E.住宅提供の利用者数(108条、107条)

障害種別と年齢別の住宅提供の利用者数は、それぞれ図表14図表15のようになる。

図表14 障害の種別別住宅提供(108条、107条)の利用者数(人)

  108条(恒久住宅) 107条(一時住宅)
24時間 デイ 合計 24時間 デイ 合計
身体障害 2,196 113 2,309 452 232 684
精神・知的 8,061 580 8,641 4,016 391 4,407
社会問題 125 22 147 757 67 824
  10,382 715 11,097 5,225 690 5,915

*恒久住宅、一時住宅ともに、24時間利用と日中利用があるのは、住宅に通所施設が併設されているものと推測できる。
出典;Statistiske efterretninger;Social Forhold,sundhed og Retsvaesen,2008:15より松岡作成

図表15 年齢別住宅提供(108条、107条)の利用者数(人)

  108条(恒久住宅) 107条(一時住宅)
24時間 デイ 合計 24時間 デイ 合計
20歳以下 148 10 158 557 29 586
20~29歳 1,320 137 1,457 1,513 158 1,671
30~39歳 1,823 174 1,997 1,044 169 1,213
40~59歳 4,578 291 4,869 1,666 246 1,912
60~66歳 1,127 67 1,194 262 55 317
67~74歳 644 27 671 120 18 138
75~79歳 239 5 244 39   39
80~84歳 242 4 246 17   17
85歳以上 261 0 261 7   7
不明 15 15
合計 10,382 715 11,097 5,225 690 5,915

*恒久住宅、一時住宅ともに、24時間利用と日中利用があるのは、住宅に通所施設が併設されているものと推測できる。
出典;Statistiske efterretninger;Social Forhold,sundhed og Retsvaesen,2008:15より松岡作成)

F.保護作業所(103条)、社会参加活動(104条)の利用者数

それぞれの利用者数は、図表16のようになる。

図表16 保護作業所(103条)、活動センター(104条)の利用者数(人)

  保護作業訓練所(103条) 活動センター(104条)
精神障害者 1,519 6,385
知的障害者(自閉症含む) 5,732 6,708
身体障害者 475 1,495
薬物、アルコール中毒者 34 1,992
その他 316 804
合計 8,076 17,384

出典;Statistiske efterretninger;Social forhold,sundhed og retsvaesenm 2008:15 より松岡作成

G.必要経費保障(100条)の受給者数

必要経費保証の受給者数と給付総額は、図表17のようになる。

図表17 必要経費保障(100条)受給者数と給付総額

  受給者数(人) 年間換算受給者数(人) 給付総額
百万クローネ(円)
障害児(親)への給付 34,696 19,620 915
(183億円)
成人障害者への給付 15,577 11,558 294
(59億円)
障害児の親の休業保障 15,556 5,912 849
(170億円)

出典;Statistiske efterretninger;Social Forhold,sundhed og Retsvaesen,2008:15 より松岡作成。

H.障害者年金受給者数(年金法)

国民年金・障害者年金の受給者数は図表18のようになる。

図表18 年齢別国民年金・障害者年金受給者数(2008年)

  国民年金など 障害者年金(早期年金)(注1)
国民年金 通常早期年金 一時支援金 最高障害者年金 増加型通常障害者年金 中額障害者年金 新型障害者年金(注2)
15~19歳 0 0 0 0 0 0 860
20~29歳 0 0 450 2,554 68 1,178 5,142
30~39歳 0 0 1,131 7,418 1,290 5,822 8,587
40~49歳 0 0 1,519 14,078 6,286 15,893 17,106
50~59歳 0 0 1,716 20,247 14,996 31,685 25,441
60~64歳 0 8 816 12,515 13,025 25,251 10,434
65~66歳 111,602 1 9 143 216 336 52
67~69歳 153,507 1 0 0 1 0 0
70~74歳 210,657 3 0 0 2 3 0
75~79歳 162,402 1 0 2 1 0 0
80~84歳 121,071 1 0 0 1 0 0
85~89歳 72,092 1 0 0 0 0 0
90~94歳 28,212 0 0 0 0 0 0
95歳以上 7,700 0 0 0 0 0 0
合計 867,243 16 5,641 56,957 35,886 80,168 67,622

(注1)最高障害者年金、増加型通常障害者年金、中額障害者年金、新型障害者年金が、障害者のための年金である。
(注2)障害者年金は労働能力に応じて3種に分けられていたが、2003年より「新型障害者年金」に一元化された。
出典;デンマーク統計局statbank.dk

(14)利用手続き、所管窓口

利用手続きの窓口は、社会福祉部(Social Forvaltning)の社会福祉事務所(Social Centre)に一本化されている。ここを訪問すれば、担当のソーシャルワーカー(ケースワーカー)が決められ、サービスをコーディネートしてつないでいく。

在宅生活支援、同行サービス、イェルパー制度、必要経費保障などは、同じ部内の業務であるが、「在宅ケア」は部署が異なり、保健・ケア課(Sundhed og omsorg)が担当していることが多い。就業支援(雇用部)、障害者年金(雇用部)も部署が異なる。しかし、社会福祉部が窓口となって申請書作成を支援し、申請にも同行する。

(15)要否判定方法

「環境を総合的にとらえたうえで、何ができるか・できないか」「希望は何か」といった“ニーズ”を基本として、必要なサービスの種類と量が決定される。

こうした判定についての標準化された基準や指標はない。ニーズの存在・程度の判定・認定は、機能障害(impairment)の認定と異なり、指標化・尺度化(基準の設定)が困難である。ここではそれぞれのサービスメニューでどのように判定されるか記述するが、その前に「基準・根拠なし」で行われる判定がうまく機能している理由について考察を行った。

  • 複数の専門職が診断・認定に関わり、協議している(医師、精神科医、臨床心理士、福祉省の専門相談員(VISO)など)
  • 判定に関わる専門職が同じ仕事を長年続けており、知識・情報・経験が蓄積されている。
  • 平等の概念が異なっている。「より多くを必要とする人に、より多くを提供する」ことを平等と捉えるデンマークの価値観のもとでは、客観的指標は不要である。「障害(impairment)の程度に比例した量を提供することが平等」と捉える日本的文脈とは、指標に求める客観性・科学性の意味が異なる。
  • ICF(国際生活機能分類)を基盤として(共通言語化の作業も進んでいる)個人要因が考慮されており、「閾値が明確でないことは当然」というコンセンサスがある。

次に、サービスごとになされている要否判定(判定の基準)、判定の結果形態について述べる。

A.在宅ケア(社会サービス法83条)

a)判定と基準

コムーネ(市町村)の専業の判定員(Visitator)が申請者の機能能力評価をして、サービスの種類・量(時間)を決定する。判定員は看護師や作業療法士の専門職バックグランドを持ち、この分野での経験が長い。

機能能力評価には「判定質問表(Visitationsskeme)」を用いる(添付資料2参照)。評価内容は7領域からなり、各市でおおむね共通していて専門的評価がなされる。「できる/できない」の2件法、詳細な4件法などの違いや、各領域内で質問事項をどこまで細分化するかなどの違いがあるが、おおむね各市共通している(松岡、2005、166-183pp)。

  1. 身体介護(身体衛生・入浴、着脱衣、トイレ・オムツ、ベッドメイク)
  2. 食事(調理、食事、皿洗い)
  3. 日常生活(買い物、掃除、洗濯)
  4. 活動(趣味活動など)
  5. 社会生活(家族・友人などのソーシャルネットワーク)
  6. 精神面(一般、特殊)
  7. 移動(室内での歩行、一人外出、階段昇降、バランス、椅子からの立ち上がり、椅子からベッドへの移乗)
  8. その他(住宅の状況)

判定員は利用者の自宅を訪問して面談し、以上の項目について、「できる/できない」を評価する。さらに、医師の診断、生活歴、親族からの援助の可能性、住宅の状況などを踏まえながら、サービス内容と量を決めていく(機能レベルとサービスレベルを結びつける)。不明点があれば、家庭医やケースワーカー、家族に相談し、結論を出す。

「できる/できない」のチェック結果を点数化して(4件法のコムーネもある)、利用時間の目安につなげる自治体もある。が、少数であるとの感触を持っている(調査者・松岡の専門である高齢者領域でも同じスキームの中で判定されるので、これまでの蓄積によってわかる)。

b)判定結果

サービスの種類(項目)と量(時間・頻度)についての決定書に判定員がサインをし、本人に送る。この後、サービスが始まる。

サービス内容については、各市で「クォリティ・スタンダード」を明確化することが社会サービス法で義務づけられている(第25章)。パンフレットにして発行されており、インターネットでも見ることができる。よって「毎日の掃除」「フレキシブルな掃除」という用語がどのような掃除の内容を示すのかは明確に決められている。同時に、サービスメニューごとに所要時間が決められている。よって、利用するサービスの時間を加算すれば、週間の利用時間が自動的に計算できる。

結果は、判定員がサインをして本人に手紙で通知する。

【判定結果の例(高齢者の場合)】

  • 毎日の掃除:2週に1回(サービス提供:バトラー社6)
  • フレキシブルな掃除:2週に1回(サービス提供:バトラー社)

B.在宅生活支援(85条)

a)判定と基準

申請書に記入して、社会福祉事務所に提出する。記入にあたっては、家族やケースワーカーが手助けする。

機能能力評価は、あらゆる領域にわたって行われる。ケースワーカーは医師の診断書の発行を依頼することも多く、多くの専門職が評価と判定に関わる。

b)判定結果

サービスの内容と頻度、時間(長さ)が決定される。

C.イェルパー制度(96条)

a)判定と基準

申請書は、社会福祉事務所のケースワーカーに提出する。1日、1週間の行動計画を立て、それに基づいてイェルパーを雇用するので、申請の時点でこの計画を明らかにしなければならない。ケースワーカーとの協働作業で作られることもある。

ケースワーカーと在宅ケア課の判定員が申請者の自宅を訪問して、機能能力を評価し、ニーズの判定を行う。

「障害(impaiment)ではなく、ニーズによって判定を行う。ニーズは一人ひとり異なるので標準ルール(基準)はない。」という点は、各コムーネで共通して強調された点である。

判定には次の人々が参加し、判定会議で認められる。(www.aarhuskommune.dk/

  • 申請者(障害者)本人
  • 本人が選んだ人(一人、複数。イェルパーを選ぶ人もいる)
  • 本人のケースワーカー
  • 判定チーム
    社会福祉部(福祉事務所)の成人障害者課の長
    成人障害者運営課の長
    保健・ケア部のコンサルタント(在宅ケア部門)
    その他必要と認められる人

判定会議は次のような内容で進められる。

  • 第一部
    参加者(上記)の紹介
    問題の紹介
    自宅内外における申請者の支援ニーズの説明
    参加者よりその他の情報
  • 第二部
    判定チームより細部についての質問
    可能性についての討議
    申請者より「最後の言葉」
  • 第三部
    判定チームの決定

b)判定結果

1日当たりの利用時間と週当たりの利用時間が、決定書(イェルパー決定書)に記載される。縦に1日の時間、横に曜日を配した表に利用できる時間を記載し、具体的な形で結果を出す。(利用者にはイェルパーの人件費が支給されるが、判定結果は金銭の形では表現されない。デンマークにおける平均的な時間給である1時間100クローネが基準となる)

最終決定は、特別ソーシャルワーカー(ケースワーカーの調整・管理部門)がサインをして申請者に文書にして送る。申請者は内容を確認し、決定書にサインをして利用が始まる。決定書のコピーを社会福祉部と利用者が持つ。

D.同行サービス(97条)

a)判定と基準

申請書(同行サービス申請書)には、以下の点を記入する。

  • 申請の理由
  • 希望する同行の内容
  • 同行者を自分で雇いたい旨

ほとんどの利用者が15時間以下の利用者である。必要だからと15時間以上になることはない(オーフス市)。

バレラップ市では、4週間以内の返事を約束している。拒否の場合は、手紙で知らせる。

b)判定結果

同行の内容と時間が決定され知らされる。

E.住宅提供(107条、108条)

a)判定と基準

申請書(住宅提供申請書)に記入して、福祉事務所に提出する。

判定は、判定委員会にかけられる。バレラップ市の場合、以下の5名からなる委員会で話し合い、合否を判定する。月1回開かれている。人口4万8千人のバレラップ市の場合、月に4、5人の新しい入居を認可し、精神障害者は年間10人くらいであるとのことであった。

●住宅提供の判定審査委員会メンバー
  • ケースワーカー(福祉事務所)のチームリーダー
  • 身体障害者向けケア付き住宅の代表
  • 知的障害者向けケア付き住宅の代表
  • 精神障害者向けケア付き住宅の代表
  • 市の福祉コンサルタント(全体統括者、組織上層部)

オーフス市の場合、入居を希望する障害者が多く、長い待機リストがある。これは、バレラップ市でも同様で、障害者の住宅に関する判定会議では、緊急度の高い人に優先して入居が許可されることがたびたびある。「知的障害者で身体が大きく、母と2人住まいで家が狭い」場合などは、優先される。

b)判定結果

本人に文書の形で、知らされる。

(16)利用者負担

以上述べた社会サービスを利用するにあたって、サービスに対する利用者負担は原則としてない。しかし、以下のような例外がある。

【例外】

住宅提供、障害者住宅の家賃は居住者が負担する。

急性期リハビリテーション、回復期リハビリテーションは無料であるが、予防型の通所リハビリテーションなどについては、一部料金を徴収するコムーネ(市町村)がある。グラデサクセ市では、月185クローネ(約3,700円)を支払って、週2、3回、3ヶ月まで利用できる制度があった(松岡、2001、119)。

イェルパー制度におけるイェルパーの交通費などは障害者が払う。しかし、この費用は必要経費保障(Merudgift)として払い戻しされる。

同行サービスにおける本人・同行者の入場料・交通費は障害者本人が払う。

1.障害者介護サービスに関する調査 脚注

1)コムーネはデンマークの基礎自治体のことで、日本の市町村に相当する。

2)イェルパー制度は、1978年にオーフス市で始まった。障害者が自分で選んだイェルパーを雇用して自分の生活を構築し、市が人件費を障害者に現金給付し、障害者がイェルパーに給料を支払う制度である。利用者には、自ら時間管理、労務管理、人権費管理を行う義務が生じる。在宅ケアのホームヘルパーと区別するために「イェルパー」と表記する。スウェーデンのパーソナルアシスタントに該当すると推測される。

3)統合された7つの法律は、以下の通り。

  • 簡易宿泊所および労働ホームその他の監督に関する法律
  • 母子援護施設法
  • リハビリテーション法
  • 公的扶助法
  • 児童および青少年保護法
  • 障害年金受給者および国民年金受給者の養護法
  • 主婦の負担軽減およびホームヘルプに関する法律

4)社会サービス法では、18歳までの若者について記述しているパート4は「Afsnit IV Børn og unge」と表記されている。日本の児童福祉法では、満18歳に満たない者を「児童」とし、そのうち、満1歳に満たない者を「乳児」、小学校入学の始期に達するまでの者を「幼児」、それ以上で満18歳に達するまでの者を「少年」としている。日本の「児童福祉法」との関連では、「Børn og unge」の訳語として「児童」でよいと考えられるが、この用語は一般的には学童期の者というニュアンスを持つ。そこで、「児童・若者」という用語をあてることとした。

5)オーフス市の場合、障害児を担当するケースワーカーは25人、障害者を担当するケースワーカーは30人いる(オーフス市の人口29万人)。

6)デンマークの在宅ケアでは公共による独占が長く続いたが、2001年より「自由選択(Firt Valg)」が始められた。家事支援に限って、サービス提供者を公共以外の民間登録業者からも選べるようになった。しかし、高齢者領域の場合、民間を選ぶ人は少なく、85%がコムーネからの提供による(松岡、2005)。

2.モデルに関する調査

これまで、デンマークにおける社会福祉サービスの内容について述べてきたが、与えられた4モデルについて実際のサービス提供について記述する。

社会サービス法は「枠組み法」であり、サービスの質・内容・量については、コムーネ(市町村)に任せられている。コムーネによって異なるので、人口規模の異なる3市でインタビューした。以下、オーフス市(29万人)、バレラップ市(4.8万人)、ドラウア市(1.2万人)のインタビュー結果に基づき、おおむね各市で共通する部分を中心にまとめて、特に異なる部分については<補足事項>として記述した。

(1)モデル1/全盲(45歳)

A.申請手続き

糖尿病による失明は徐々に進んでいくものであるから、45歳の段階ですでに病院と家庭医のコンタクトがあったはずである。よって、視力があるうちに病院の勧めにより、自分で市の福祉事務所(Social forvatning)にコンタクトしているはずである。担当のケースワーカー(sagshandler)が決められて、手続きが進められる。

B.機能能力評価

面談リスト(Samtaleskema/添付資料1参照)の内容に沿って本人とケースワーカーが話し合い、本人の全体像を把握していく。面談リストは、本人とケースワーカーが面談しながら書き込むものであり、面談当日に向けて準備ができるよう事前に本人にこのリストを送っておき、当日話し合いながらケースワーカーが書き込む。この話し合いには、1時間半くらいかけられる。

面談リストの概要は以下の通りであり、その目的は「あなたの機能能力(funktionevne)をトータルに描き出すことである」と面談リストに書かれている。現地インタビューでも、目的は「どのような助けを必要としているか?何を望んでいるか?」であって、どのような障害(impaiment)を持っているかということではないと強調された。

具体的には、以下のような各項目に対して、どのような状況であり、何ができ、何に困っているか、という視点で聞き取り(面談)がなされる。イエス・ノーでチェックしたり、量的尺度に置き換えたりすることなく、文章で書き込む。点数化はなされない。話し合いの結果、ケースワーカーが面談リストを完成し、本人に送り承認を得る。OKした時点で、サービス利用の申請手続きに入る。全体像を把握することで、どのような社会サービスが必要かを検討していく。

面談リスト(ICF のカテゴリーに準拠)項目(添付資料1参照)
  • 基本情報(氏名、住所、電話番号、家庭医、家族構成、背景、機能障害)
  • 日常生活
  • 社会生活(家族・その他との関係)
  • 余暇、仕事、教育
  • コミュニケーション
  • 住宅
  • 移動
  • その他

C.サービス内容、申請、判定

サービス内容は一人ひとりと話し合い、本人の希望を中心にケースワーカーとの話し合いによって決められ、そのサービスの担当部門に申請が行われる。申請後のサービス量の決定(判定)は、そのサービスを提供している部門で行われるので、サービス項目(給付内容)ごとに記述する。

糖尿病による視力低下(全盲)の場合、一般的に、以下のようなサービスが利用される。

【必要経費保障(Merudgift)】(社会サービス法100条)

障害があることが原因で生じる必要経費について、その保障を現金給付の形で行うもの。

基本額は月に1,500クローネであるが、糖尿病性網膜症による失明(全盲)の場合は、申請によって、以下のような軽費が認められる。

  • 糖尿病の薬代(例:500クローネ)
  • 手紙・新聞を読んでくれるヘルパーを雇用する費用(例:1,000クローネ)
  • 窓拭きなど自分でできない作業について、臨時でヘルパーを雇う費用

(申請)

本人が、福祉事務所に申し込む。ケースワーカーが助けてくれる。

(判定)

薬代の額面は、医師の処方箋が根拠となる。

新聞を読んでもらうのに1日20分=月10時間。時間給100クローネ(専門性を伴わないデンマークの平均的時間給)で1,000クローネとなる。1,000クローネのうち、500クローネは決まった人に支払い、あとの500クローネは隣の人への新聞購読依頼など、自由に使える。

【補助器具】⇒保健・ケア部(Soundhed & Omsorg)の担当

補助器具は、無料で貸与される。

(申請・判定)

補助器具センターに申請して、理学療法士・作業療法士などの専門職が判定する。

全盲の場合、以下のような補助器具を無料貸与することが多い。

  • PC(音声対応)
  • 盲導犬

【同行サービス(ledsagerdining】(97条)

月に15時間までのサービスが受けられる。サービス内容は、以下の通りである。

  • 買い物、散歩
  • 映画、劇場
  • 医者、歯科者、美容院に行く
  • 家族・友人訪問
  • スポーツを含む余暇活動
  • 仕事場への行き来

(申請)

前章で記述した通りである。

(判定)

このケースの場合、通い慣れた道は自分で移動できるので、両親に会いに行くのは1人で行けるだろう。よって、映画・劇場に行くのに集中して利用するかもしれない。例えば、以下のような形で15時間の申請ができる。

  • 映画に月2回行って食事する=8時間
  • オペラに3ヶ月に1回行く=3時間(1ヶ月で1時間となる)
  • スキーに行くのに貯める=6時間
    買い物に同行してほしいと思うなら、買い物に集中して申請することもできる。

【住宅提供】

これまで住んでいた住宅でよいだろう。

【就業支援⇒雇用課】

ケース説明書には「職業なし」との記述があるが、デンマークではこうしたケースの場合「働くべき」と考える(障害者年金は最後の手段である)。

ケースワーカーが中心となり、雇用事務所(job centre)と協力して可能性を模索する。特に事務職をしていた人なら、秘書を雇って仕事を続けることができる。もしこのケースが、バスドライバーのように視力を必要とする仕事についていた人なら、可能性を探り高等教育を受ける機会をつくって労働市場に出られるように支援する。このケースの場合、視力低下は徐々に進んでいくので、能力に合わせた支援を受けながら働いているはずである。

<補足>

*バレラップでの返答:もし、自分で金銭管理をできない場合は、在宅生活支援のサービスを申請できる(85条)。

(2)モデル2/頚髄損傷

A.申請手続き

このケースの場合、障害の原因となる事故に遭遇して入院し、その後退院してリハビリテーションを受けることとなる。このケースの場合、約6ヶ月のリハビリを受けるだろう。

病院退院時には、病院(レギオナ管轄)からコムーネ(市町村)の社会福祉部(SocialFovaltning)に連絡が入り、社会福祉センター(福祉事務所)のソーシャルワーカー(ケースワーカー)が中心となって在宅復帰の準備を始める(退院2ヶ月前に病院から連絡が入るのが基本)。

B.機能能力評価

病院にいる時点から市(福祉事務所)のソーシャルワーカーが病院を訪ね、「どのようなサービスが必要か、受けたいか」の話し合いが本人との間で始まる。

面談リスト(添付資料1参照)を用いて機能能力を明らかにするが、イェルパー制度利用の可能性もあるので在宅ケアの判定員とともに、退院後生活する住宅を訪問するなどして評価を行う。

さらに、労働能力メソッド(arbejdsevnemetode)によって労働可能性を探っていく。「障害者年金は最後の手段」と考える。

【評価からサービスコーディネートへ】

機能能力評価を終えて全体像を把握すると、次は、福祉事務所のソーシャルワーカーがサービスコーディネートを行い、「社会保障のネットワークを形成していく」(オーフス市)。それぞれのサービスによって担当課が異なるので、ケースワーカーは申請書作りや提出作業を助ける(図表1参照)。

図表1 各サービスと提供している担当課

福祉事務所
Social Forvaltningen
雇用センター(雇用課)
job centre
保健・ケア部
Soundhed & Omsorg
必要経費保障
イェルパー制度
同行サービス
就業支援
障害者年金
15,000クローネ/月
住宅改造・補助器具貸与(補助器具センター)
24時間在宅ケア

C.サービス内容、申請、判定

本人がどのような生活を望むか(自宅か他の住宅か、イェルパー制度か在宅ケアか)で、提供されるサービス内容は異なる。このケースのように体幹麻痺がある場合は、次のような福祉サービスが一般的である。

  • 在宅で補助器具を活用(自宅改造でも不可能な場合、バリアフリー住宅への引っ越しも検討)し、
  • イェルパー制度を利用し、
  • 必要経費保障を受けて、
  • 働き続ける。

しかし、次のように24時間在宅ケアを望む人もいる。

自宅で暮らしたい ⇒イェルパー制度(96条)hjaelperordining
⇒(または)24時間在宅ケア(83条)Hjemeplejen
(または)住宅提供 ⇒Botilbud

【イェルパー制度】(96条)

このケースの場合、時間管理・金銭管理ができるので、イェルパー制度が利用できる。

イェルパーは24時間365日障害者について、呼吸器の世話、身体介護、家事支援、仕事場での補佐などを行う。24時間のイェルパー利用が認められている場合、4人のイェルパーを自分で雇用しシフトを組む(オーフス市では210人がイェルパー制度を利用しており、30~40%が24時間の利用者である。30時間の利用者もいる)。

(申請)

申請書類には、

  • 自分の希望を明確にして、
  • 支援計画などを記入する

ことが重要。福祉事務所に提出する。

(判定)

3人の判定員による判定会議が開かれる。基準については明確な返答なし。

  • 福祉事務所所属のイェルパー制度の判定員
  • 高齢者領域の判定員(在宅ケア)
  • 障害者領域の判定員(在宅ケア)

判定において重視されるのは「どのような生活がしたいと望んでいるのか? そのために、どれほどの支援が必要か?」という点である。「判定会議に本人とイェルパーが参加して、自らの希望を言うことが大事」だとのこと。

以下の内容で決定がなされ、文書で通知される。申請書はサインをして返送し、サービスが始まる。

  • イェルパーを持てるかどうか?
  • 何時間雇用できるか?

【(または)24時間在宅ケア(Hjempleje)】(83条)

本人が、24時間在宅ケアを選ぶ可能性もある(バレラップ市)。

ドラウア市の場合イェルパー制度がない。よって、在宅で暮らしたいなら、24時間在宅ケアを利用することとなる、とのことであった。

これらの場合、手続きは在宅ケア(Hjemplejen)の手続きにのっとって行われる。

(申請)

申請をすると、判定員が自宅にやって来て、判定質問表を用いて機能能力評価を行う。

(判定)

判定員が判定を行う。

(判定結果)

次のような内容で、判定結果が通知される。

  • 朝の身支度/毎日
  • 朝食準備・介助/毎日
  • 午前のトイレ介助/毎日
  • 昼食準備・介助/毎日
  • 午後のトイレ介助/毎日
  • 夕食準備・介助/毎日
  • 就寝介助、トイレ介助/毎日
  • シャワー/週2回
  • 掃除、洗濯/週1回
  • 緊急コールの利用

など

このようなケア内容だと、週25時間以上の利用となる。この時間は、ほぼマックス(上限)に近い。

【必要経費保障(Merudgift)】(100条)

イェルパーの同行に伴う交通費などが請求できる。

【補助器具】(112条)

次のような補助器具の貸与があるだろう。

  • 上下式電動車椅子
  • 在宅での移乗のためのリフト
  • 特殊コンピュータ

など

【同行サービス】(97条)

イェルパー制度を使わない場合、同行サービスが受けられる。

【住宅提供】(107条、108条)

24時間在宅ケアのサービスでも十分でなくなると、イェルパー制度に変更するか、スタッフが常駐する住宅(Botilbud)への入居が申請できる。

イェルパー制度を利用して、仕事をしていれば「閉じこもり」も起きないが、在宅で24時間在宅ケアを利用する場合、家の中に閉じこもりがちである。ケースワーカーの勧めで、ケア付き住宅への入居が検討されることもある。

<補足>

ドラウア市の場合、イェルパー制度がなく、若い障害者へのサービスが少ない。本人が「自宅に住みたい」ということであれば、リフトを付けたりして住宅改造が行われる。また、障害者にやさしい住宅の提供もある。

そして、24時間在宅ケアが提供される。その際の判定は、高齢者と同様の質問紙が使われる。実際に24時間在宅ケアを提供しても、限界のある場合が多いものである。あくまでも本人の意思を尊重しつつ、プライエム(プライエボーリ)への入居が検討されるかもしれない。

【就業】(労働市場法)

働きたいという意思があるなら、ケースワーカーは雇用課に連絡して、本人との面談を設定し、適切な職場を見つける。

しかし、実際には…職場復帰するが、6ヶ月であきらめて障害者年金をもらうようになる。1年すると再び勤労意欲が湧いてきて、再度職場復帰する、というパターンが多い(オーフス市談)。

(3)モデル3/知的障害(21歳)

A.申請

知的障害者は児童のときに発見され、障害児から障害者へのサービス移行も18歳の時点で終了しているので、市のケースワーカーとは継続的に連絡をとっているはずである(「3.障害児に関する調査」の項を参照)。

デンマークには療育手帳はなく、知的障害の程度による区分をしていない。保健師による乳児への自宅訪問が徹底しているので、比較的早い時点で発見される。よって、医師の所見などの基礎資料も蓄積されている。ケースワーカーとの相談の中で計画された各サービスについて申請が行われる。

B.判定、サービス

20歳前後のこうしたケースの場合、「もう少し自宅にいたい」という希望が強いのが一般的である。このケースも自宅にいるようであるが、デンマークにおいては、将来的には自分で生活できるように、その基盤となる住宅についての検討へと導いていく。具体的には、将来住むとよいと考えられる住宅への「ならし居住」を始める。

  • 障害者年金を受けながら、
  • 住宅(Botilbud)に住み、
  • 作業所・活動センターに通って、できるだけ自立して生活する。

というのが、一般的である。

【支援型住宅】(107条、108条)

オーフス市では、障害者向けの住宅を「Botilbud」と総称している。グループホーム(スタッフ駐在なし)と素ふぁっ津駐在型住宅の2種類が用意されている。

家賃を支払って居住する、公営の賃貸住宅である。

●オーフス市の障害者向け住宅提供の実際(再掲)
住宅提供(Botilbud)
  1. グループホームBofællskab
    一人ひとりの住居が集合した共同居住のグループホーム。
    スタッフはおらず、在宅生活支援(Bostøtte)を受けながら生活する。
    自閉症のためのグループホーム
    知的障害者のためのグループホーム
    身体障害者のためのグループホーム
    拒食症のためのグループホーム
    など
  2. スタッフ駐在型住宅Boform(仮に「支援型住宅」と名づける)
    24時間スタッフが配置された住宅である。いわゆる、施設。
*コムーネによって「Bofællskab」「Boform」の用語の使い方が異なるので注意が必要である。
(費用)
平均家賃は、5,000~6,000クローネで、限度額は6,300クローネとされている。障害者年金だけでは不足する場合、住宅手当が支給される。その結果、手元には最低4,000クローネ(約8万円)程度が残るよう、生活が保障されている。
オーフス市の場合、入居を希望する障害者が多く、長い待機リストがあるのが現状である。これは、バレラップ市にも当てはまり、障害者の住宅に関する判定会議では、緊急度の高い人に優先して入居が許可されることもたびたびある。

(申請)

申請は申請書によってなされ、判定委員会にかけられて決定される。

【(または)在宅生活支援(Bostøtte)】(社会サービス法85条)

自宅、あるいは職員がいない「住宅提供」で暮らす場合には、Bosttøt(生活サポート)が受けられる。

Bostøtteは、下記のメニューが連続的に提供されて生活の全体を支える場合もあるが、毎日の生活トレーニングを集中的に提供するなど、部分的に利用される場合もある。

<Bostøtteの具体的内容:再掲>

  • 毎日の日課づくり
  • 毎日の生活トレーニング
  • 投薬確認
  • 身体衛生の指導
  • 公共交通機関の利用・外出のトレーニング
  • 教育・行動プラン(料理が作れるように、など)

*イェルパー制度においては、利用者が雇用者となって労務管理・金銭管理をしなければならないので、精神障害者・知的障害者は利用できない。よって、生活支援にあたっては、Bosttøtを利用する。

*知的障害者は、同行サービスを利用できる。

【同行サービス】(97条)

同行サービスを利用できる。

【就業支援、作業所】(労働市場法、社会サービス法103条)

スコーネジョブで就業できるように支援するが、実際は作業所で作業することが多い。グループホームで自分の生活を構築し、作業所に通う。また、作業所での就業が困難な場合には、活動センターで社会参加する。

【社会参加活動】(104条)

活動センターも利用する。夜のクラブ、ネットカフェなど多用な活動センターがある。

(4)モデル4/精神障害

A.申請手続き

オーフス市、バレラップ市ともに、「このケースの支援は非常に難しい」とのことであった。

基本的には、市の社会福祉部が中心となり、ソーシャルワーカーがついてサービスをコーディネートしていく。長く精神科クリニックに通っていると推察できるので、すでに福祉事務所と連絡もついているであろう。

B.機能能力評価

このケースの場合、かなり重度であるので面談リストは使わない。「使えない」という判断である(オーフス市)。

精神障害の程度については、オーフス市では回復原理理論によるキャンバーウェル・ニーズ・アセスメント(Camberwell Asssement of need)を使用している。統合失調症の人を対象に、「何を必要としているか?」をチェックするものである。

  • 当人がどのように回復したいかを希望し、
  • 精神科医がどのようにサポートすればよいかを考えるもの。

C.サービス内容、判定

統合失調症の場合、「自宅で暮らしたい」という希望が強いのが一般的である。本人の希望を重視して、在宅生活を支えるためのサービスを整えていく。以下の社会サービスが中心となるであろう。

  • 24時間在宅ケア(配食、シャワー など)
  • Bostøtte(在宅生活支援)による生活トレーニングなど(精神障害者は、イェルパー制度、同行サービスが使えない)
  • 障害者年金
  • 就労意欲があれば、保護作業所、ジョブトレーニング

など

【24時間在宅ケア】(社会サービス法83条)

本人ができない家事に対して、次のようなサービスが提供される。高齢者に提供される在宅ケア(Hjempleje)と同じスキームの中で届けられる。しかし、ヘルパーとコミュニケーションがとれない場合は、生活サポートに重点が置かれる。

(申請、判定)

高齢者に対して使うのと同様の書式「判定質問表(Visitationskema)」が使われる。専門の判定員(看護師、作業療法士・理学療法士)が自宅を訪ねて、判定を行う。このケースの場合、ケースワーカーが本人の事情をよく知っているので同席するであろう。判定員の判定によって、例えば、サービス内容は以下のようになる。

  • ガスが使えないので温かい食事がとれない⇒配食サービスの提供(夕食)+電子レンジを使い自分で温める。できない場合、ホームヘルパーがやってくる。
  • (昼食はサンドイッチを、自分で作れるだろう)
  • シャワーが使えない⇒ホームヘルパーによるシャワー/週2回
  • 洗濯ものが干せない⇒洗濯/週1回

など

【在宅生活支援(Bostøtte)】(85条)

「どのような生活をするか」についての目標を本人とケースワーカーが相談して決め、支援内容が決定される。このケースの場合、次のような支援が考えられる。

  • 投薬の確認(週2回)
  • 身体衛生の指導
  • 食事を温めるトレーニング
  • 皿洗いのトレーニング
  • 全体の見守り

など

【その他】

病状が不安定であることから、入院する可能性もあるだろう。退院後は、家庭医の処方で薬をもらいながら、地域の精神科クリニックと社会福祉事務所が連携をとりながら、見守ることになる。

職員付き住宅(Boform)に入る可能性があるかもしれない(デンマークにおいては、各住戸はかなり独立している。1 LDKの住戸は外界とつながっているタイプもある。近すぎる人間関係がストレスの原因にならないような住宅を選ぶことは、ある程度可能である)。

バレラップ市では、こうした重度の精神障害者が病院から退院して地域に戻ってくるときに、いかに地域で受け皿を作るか、非常に難しい課題であり、必ずしもうまくいっているとは言えない、とのことであった。「大きな穴に落ち込んでいくような心配がある」と表現していた(バレラップ市福祉コンサルタント談)。

3.障害児に関する調査

(1)障害児に対する福祉サービスの準拠法、定義

「社会サービス法 パート4」が児童・若者に関する条項であり、次のような構成になっている。障害児へのサービスはこの中に記述されている。

障害児の定義に関して特別な記載はないが、繰り返し使われる表現として、「身体的または精神的機能の重大な障害、または重篤で慢性あるいは長期の疾病を患う18歳以下の児童」という表現が用いられている。社会サービス法における「身体的または精神的機能の重大な障害、または重篤で慢性あるいは長期の疾病」とは、以下の通りである。

●社会サービス法 パート4児童・若者
  • 6章 一般条項(19条)
  • 7章 児童のためのデイケア施設(20条~32条)
  • 8章 クラブ、他の社会・教育・余暇施設(33条~36条)
  • 9章 財政支援(37条~43条)
  • 10章 在宅ケアと同行(44条~45条)
  • 11章 児童と若者への特別支援(46条~75条)
  • 12章 18歳~22歳の若者への支援(76条)
  • 13章 公的助成のない民間の児童ケア施設(77条~78条)
●社会サービス法41条
コムーネ議会は、身体的または精神的機能の障害、または慢性病・長期疾病をもつ18歳以下の児童が在宅生活をするために、余計にかかる費用をカバーしなければならない。余計なコストが、機能障害が原因で起こるものであることが条件である。
2-3項 略

「身体的または精神的機能の障害、または慢性病・長期疾病をもつ18歳以下の児童(41条)」の具体例(社会サービス法では具体的記述なし)

慢性病/ガン/胃腸病/ダウン症/自閉症/身体障害/脳性マヒ/言語障害/先天的に片手がない/パラダー・ウィリー症候群(Prader Willi syndrome)

(2)障害児に対する社会サービスの申請・判定

A.発見から診断

デンマークでは、すべての新生児に対して保健師の家庭訪問が1歳まで続けられる。よって、障害児は保健師によって発見されるケースが多い。保健師が疑問を持った場合は、訪問が1年以上続けられる。自閉症の場合は2歳~3歳で明確になる場合が多く、保育園の保育士が気づき、福祉事務所に手紙で知らせてくる。

その後、自治体の小児科医が派遣されて診断される。オーフス市の場合、「児童・若者課(児童・家庭課)」に15人の小児科医がおり、担当(保育園・学校)が決められている。

B.診断、判定

福祉事務所に連絡が入ると、ケースワーカーは次のような点についてアセスメントを行う。文章で記入していく。社会サービス法50条に明記されている。

アセスメントのポイント

  • 1人でいるとき、どのような行動をするか
  • 他の子供・大人とともにいるとき、どのように行動するか(発達と行動)
  • 家庭ではどのような状態か
  • 保育園・学校ではどのような状態か
  • 余暇活動はどうか

など

カンファレンスメンバー

次のようなメンバーでカンファレンスが持たれる。

  • 保育士
  • 小児科医
  • 市の児童福祉コンサルタント(上層部)
  • 保健師(新生児のときに家庭訪問していた保健師)

カンファレンス内容

次のような討議内容でカンファレンスが持たれる。

  • 社会サービス法41条に該当する児童であるかどうか
  • さらなるテスト(児童精神科)の必要性
  • トレーニング、セラピーの必要性
  • どの保育園に行くのがよいか

(3)障害児に対するサービス提供、施設

社会福祉部の福祉事務所が窓口となり、家族(親)にケースワーカーがついてサービスをコーディネートしていく。

A.保育園(デイケア施設)、学校

社会福祉部の「児童・若者課」にいる教育コンサルタント(Pædagogiskkonsullent)と親が相談して、どのような保育園が適切かを保育時間(6時間がいいのかどうか)とともに決める。

オーフス市には400ヶ所の保育園があり、うち100ヶ所が障害児の受け入れ体制が整っている。デンマークでは、未就学児童に対して次のような保育園が用意されている。(「デイケア施設=保育園」という捉え方をしている)

  • 乳児保育園(0歳~2歳)Vuggestue
  • 幼児保育園(3歳~6歳)Boornehave
  • 年齢統合保育園(0歳~6歳)Integrerede institution
  • 学童保育園(6歳~9歳)Fritidshjem

B.学校

デンマークでは、「国民学校(1年~9年)」で日本の小学校と中学校の学童期にあたる教育を一貫して行う。障害児のためには、特別学校(養護学校)、国民学校(7歳~17歳)の特別クラスがある。

バレラップ市(人口4万7千人)には2つの特別学校があり、1つは自閉症の児童のみを受け入れている。

C.さまざまなショートステイ

週末などに、親のレスパイトを目的として利用することができる。さまざまなタイプがある。

施設でのショートステイ

  • AD/HDのためのショートステイ
  • 身体障害児のためのショートステイ
  • 知的障害児のためのショートステイ

介護ファミリーでのショートステイ

一般家庭が市の研修を受けて、「介護ファミリー(plejefamilie)」として登録し、障害児を預かるサービスである。市民が介護ファミリーに応募し、市の講習を受けて市から給料をもらう。介護ファミリーセンターが、募集・教育・コーディネート業務を行う。

自宅に来てもらうショートステイ(Aflastningsordning,Barnepigeordning)

自宅に人が来てくれて、障害児の親が休養したり外出できるレスパイトサービスがある。障害児が0歳~11歳であれば、自宅で育児(幼稚園)サービスを受けることができる。

D.24時間型住宅提供(施設)

家族とともに自宅で暮らすことが困難な児童に対しては、「24時間住める住宅提供」がある。「親元で暮らす」ことを勧めているので数は少なく、重度障害児が対象である。虐待を受けた児童など、社会的問題を抱える児童も対象となっている。

「施設」概念についての補足:
デンマークにおいては、「施設」の概念を否定し(1998年)、「どこにいても自宅と同じ」環境を提供することに努めている。よって、「ケア付き」「ケアなし」に関わらず、「住宅提供Botilbud」という概念をとっている(Botilbudは、障害者領域特有の表現)。障害児の場合でも実質的な居住型施設を、「Ophold og botilbud(滞在場所と住宅提供)」「Døgnbotilbud for born(児童のための24時間型の住宅提供)」という言葉で表現している。

オーフス市の場合(人口29万人)

12歳~14歳の児童、7歳~14歳の児童、14歳~18歳の社会的・情緒的・行動的に問題のある児童を住まわせ、「児童がここでの生活に積極的に参加することで、社会生活への興味を持ち、スキルを発展させることができる」ように、生活をともにしている。

重度の介護を必要とする障害児のためには、2ヶ所あり、合計10人が生活している。

バレラップ市の場合(人口4万7千人)

バレラップ市でも、昔は病院での療養を余儀なくされていた児童たちが「24時間住める住宅提供(Døgnbotilbud)」で生活している。週末には親元に帰ることが多い。

デンマークでは「Institution(施設)」という言葉も、行政の用語にも出てこない。また、24時間型住宅では、各自個室を持って(あるものは2部屋の住戸)生活している。「施設」という言葉を使うことによる日本独特のイメージを回避するためにも、使用しない。

【リレバンスゴー(Lillevangsgård)】(児童・若者向け24時間型住宅)

  • 14歳~17歳
  • (機能障害)怒り、うつ、摂食障害、怒り
  • (社会的問題)内的行為障害、社会交流障害、自傷行為、両親の状況に起因する問題、性的虐待、虐待(暴力)

【バレラップ若者ペンション(Ballerup Ungdomspension)】(児童・若者向け24時間提供)

  • 14歳~17歳、18歳~23歳
  • (機能障害)身体介護が必要な障害児
  • (社会的問題)内的行為障害、外的行為障害、社会交流障害、両親の問題

【バレラップ市家族ケア】(児童・若者向け24時間型住宅)

  • 0歳~17歳
  • (機能障害)怒り、うつ、転換性障害、人格障害、摂食障害、ADHD、自閉症
  • (社会的問題)内的攻撃行為、自傷行為、両親の状況に起因する問題、性的虐待、虐待(暴力)

【CD財団ハウス(Fonden Carpte Diem Huset)】(児童・若者向け24時間型住宅)

  • 3歳~17歳
  • (機能障害)ADHD、自閉症

E.必要経費保障(Merudgift)(41条)

「身体的または精神的機能の障害、または慢性病・長期疾病をもつ18歳以下の児童が在宅生活をするために余計にかかる費用」が、親に対して支払われる。受給者数は図表1の通り。

障害が原因で起こる必要経費への保障であるが、例えば次のような項目に対して支払われる(18歳を過ぎると、必要経費保障は100条適用となる)。

  • オムツ代
  • 薬代
  • 車のガソリン代(障害児の主たる長距離移動手段が車である場合など)
  • 補助器具に特殊な装置を付加する場合(市によって異なる)
  • 短時間労働について雇用者の同意が得られない場合、送り迎えの人を雇用する費用。

図表1 障害児に関する必要経費保障・受給の実態

  2006年 2007年
受給者数(人) 32,383 34,696
1年換算の受給者数(人)(注1) 19,001 19,620
総額/百万クローネ
(日本円:憶円)(注2)
751
(150)
915
(183)

(注1)6ヶ月の利用が2名なら1年換算では1名と数える。
(注2)近年の平均をとり、1クローネ=20円として換算(2008年金融危機以降の円高のため、2008年時点で1クローネ=16円であるが、それまでは22円であった)
出典;Statiske Efterretninger:Sociale forhold,sundhed og retsven 2008:14より松岡作成。

F.親の給料減額保障(Tabt arbejdsfortjeneste)(42条)

障害児(18歳以下)を自宅で養育するにあたって、親が就業できない場合は給料が保障される。受給者数は図表2の通り。

図表2 障害児に関する親への給料保障・受給の実態

  2006年 2007年
受給者数(人) 16,395 15,556
1年換算の受給者数(人)(注1) 7,198 5,912
総額/百万クローネ
(日本円:憶円)(注2)
907
(180)
849
(170)

(注1)6ヶ月の利用が2名なら1年換算では1名と数える。
(注2)近年の平均をとり、1クローネ=20円として換算(2008年金融危機以降の円高のため、2008年時点で1クローネ=16円であるが、それまでは22円であった)
出典:Statiske Efterretninger:Sociale forhold,sundhed og retsven 2008:14より松岡作成。

G.補助器具、住宅改造

補助器具が、市の補助器具センターから無料貸与される。補助器具センターの作業療法士が必要な補助器具を選定し、判定する。成長にしたがって、器具のサイズや機能が変化するが、前のものを変換して新しいものに交換してもらう。古いものは洗浄されて、次の利用者に使用される。

車椅子を自宅で利用できるようにするなど、住宅改造も申請できる。大きな市では、補助器具センターに「子供チーム」があって、自宅を訪問して判定する。

H.その他

親への教育

18歳になる前に、サービス移行(「パート4児童・若者」から「パート5成人」へ)についての情報提供・教育を行う。

例えば、障害児を対象としたサービスは18歳で停止される。その後、社会サービス法100条が適応される。41条は比較的ゆるいが、100条は厳しい。そのため親の準備が必要となるので、時間をかけて情報提供し教育していく。

(4)予算

児童福祉の予算を、オーフス市を例にとって示すと以下のようである(図表3参照)。児童・若者・家族が統合されているので「児童福祉」のみの実額は把握できない。

図表3 オーフス市の社会福祉予算(2008年) 全体:486.8億円

  予算額(億円) (%)
児童・若者・家族 183.7 37.7
成人障害者 167 34.3
精神障害者 61.7 12.7
特別な社会問題 39.4 8.1
事務 31.1 6.4
その他 3.9 0.8
合計 486.8 100.0

出典:VIRKSOMHEDSPLAN’08-’09,Århus Kommune

参考引用文献・資料

【一般文献】

Bengtoson,S.(2008),Danish Disability Plicy,Lecture for Central Ostrobothnia Culture Institute
(Presented in Power-point material)

Danmarks Statisitk(2008),Statistiske efterretninger;Social forhold,sundhed og retsvaesenm 2008:14

Danmarks Statisitk(2008),Statistiske efterretninger;Social forhold,sundhed og retsvaesenm 2008:15

松岡洋子(2001)『老人ホームを超えて:21世紀高齢者福祉レポート』かもがわ出版

松岡洋子(2005)『デンマークの高齢者福祉と地域居住:最期まで住み切る住宅力・ケア力・地域力』新評論

松岡洋子(2007)「デンマークの地域居住に学ぶもの:認知症ケアと居住の側面から」『老年精神医学雑誌』18-2
(2007.2)、国立社会保障・人口問題研究所、178-185

松岡洋子(2008)「デンマークの高齢者住宅とケア政策」『海外社会保障研究』164、2008Autumn、54-64

長崎和則(2007)「障害程度区分の在り方:ICFの視点から考える」『精神障害とリハビリテーション』11(2)、20007.11、122-126

OECD(2007)Health at glance 2007,OECD

大阪外国語大学デンマーク語・スウェーデン語研究室(2001)『スウェーデン・デンマーク福祉用語小事典』創元社

下垣 光(2006)「デンマークにおける障害者・高齢者福祉と地方自治体の行政改革」『海外社会保障研究』154、2006 Spring、60-69

田口繁夫(1999)「障害者福祉」、中村優一・一番ケ瀬康子編『世界の社会福祉 6:デンマーク、ノルウェー』旬報社、62-83pp

財務省(2005)『平成17年社会保障統計年鑑』

Århus Kommune,”SS96 Hjælperhåndbogern”

http://www.aarhuskommune.dk/portal/borger/handicap_psykiatri/handicap/hjaelper_og_ledsager/hjaelper

【国の広報冊子】

The Danish Disability Council(2006),The Principle of Danish Disability Policy,

【市の広報冊子】

Århus Kommune(2008),VIRKSOMHEDSPLAN

■添付資料

1/面談リスト Samtaleskema

日付:  
名前: Cpr 番号:

1.基本情報(すべて記入してください)

市民の名前
日付:
Cpr 番号:
結婚・同居者:はい・いいえ
同居の子供:はい・いいえ
年齢:
申請の背景は何ですか?
どのような種類の機能障害がありますか?
その他には?

2.日常生活

日常生活を自分でするにあたって、問題はありますか?



もし問題がなければ、3番(家族・その他との交流)に進んでください。
身体介護をするにあたって、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:身体を洗う、入浴する、トイレに行く、衣服の着脱、ベッドでの起き上がりなど)
食事に関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:食事づくり、配膳、食べる・飲む、薬の管理、後片付けなど)
買物に関して、問題はありますか?どんな問題ですか?(移動ではない)
(例:計画、家事関連品・食べ物・衣服・大きなものを買う、支払い、コインや紙幣を使う、レシートを確認するなど)
経済に関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:銀行口座を維持し、請求書を払う)
毎日の生活の計画を自分自身で立てていくことに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:作業に集中する、行動目標をつくる、一度に二つ以上のことをする)
安心して毎日の生活を送る上で、問題はありますか?
(例:一人でいること、病気であること、暗闇の中にいることに対して)
その他には?

3.家族・他人との交流

家族やその他の人と一緒にいることに関して、問題はありますか?



もし問題がなければ、4番(余暇、仕事)に進んでください。
子供・孫・同居人・パートナーの世話に関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:入浴、着脱衣、食事作りの世話など。遊び、リラックス、コーチング。保育園、医院、町に一緒に行くなど。)
世話をしてもらうことに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:パートナー、子供、他の家族メンバー、友人、隣人など、毎日の生活を他人に援助やサポートをしてもらうことはできますか?その時、防御したり、受け入れを示したりしますか?)
他人と接触することに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:能力を使ったり、他人と一緒にいたり、家族と生活をともにする可能性)
その他には?

4.余暇、仕事、トレーニング

余暇、仕事、トレーニングに関して、問題はありますか?



もし問題がなければ、5番(コミュニケーション)に進んでください。
余暇活動に参加することに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:可能性、限界、将来の希望)
活動には興味がありますか?それとも、難しく可能性は低いですか?
(例:国内、国外で休暇をとるなど)
仕事をすることやトレーニングをすることに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:可能性、限界、将来の希望)
ボランティア活動に参加することに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:組織するような仕事、政策にかかわるような仕事)
その他には?

5.コミュニケーション

コミュニケーションに問題はありますか?



もし問題がなければ、6番(住宅)に進んでください。
一緒に話すこと(面談)に関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:話す、聞く、他人が言ったことを理解する、言われたことに注意を払うなど)
読み書きに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:読む、書く、読んだことを理解し注意を払うなど)
情報機器を使うことに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:電話、eメール、コンピュータ、ラジオ、テレビなど)
その他には?

6.住宅

住宅の状態について問題はありますか?



もし問題がなければ、7番(移動)に進んでください。
家の中で動き回るのに問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:各部屋のドア、庭、から出る・入る、すべての部屋に行ける、台所・風呂・寝室が使えるなど)
家の維持管理に関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:きれいに保つ、掃除をする、しつらいをする、修理をする、庭やペットの世話をする)
家で活動することに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:趣味活動、余暇活動、社会的交流)
その他には?

7.移動

移動の状態について問題はありますか?



もし問題がなければ、この質問を飛ばしても良い。
移動の手段に関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:自動車、公共交通、自転車)
戸外で動き回ることに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:近所、家族が住んでいるところ、森、散歩)
室内で動き回ることに関して、問題はありますか?どんな問題ですか?
(例:家族・友人とともに、公共の建物で)
その他には?

機能能力の要約

1.基本情報
2.日常生活
3.家族・他人とともにいる
4.余暇、仕事、トレーニング
5.コミュニケーション
6.住宅
7.移動
8.その他

2/在宅ケア 判定質問表

A:利用者の毎日の生活

  できるか?できないか? その人にとっての意義? 注意事項
利用者はどのように次の活動・操作ができますか?   利用者が述べたことを詳しく書く
自分でできる 部分的にできる 自分でできない 適切でない 制限が生じない 制限が生じる
仕事              
家族・友人へのコンタクト              
興味・趣味              
雇用              
身体の衛生              
毎日の家事              
住宅や庭の手入れ              
買物              
散歩              
希望と優先順位  
他に注意すること  

B1:専門的アセスメント

活動 機能レベル 適切でない メモ-注意事項
食べる 0 1 2 3 4  
飲む 0 1 2 3 4  
入浴する 0 1 2 3 4  
身体を洗う 0 1 2 3 4  
身体介護 0 1 2 3 4  
衣服を着る、脱ぐ 0 1 2 3 4  
トイレに行く 0 1 2 3 4  
家の中で移動する(歩き回る) 0 1 2 3 4    
日々の買物 0 1 2 3 4    
食事を作る 0 1 2 3 4    
清掃する 0 1 2 3 4    
衣服・リネンの洗濯 0 1 2 3 4    
外出(戸外に出かける) 0 1 2 3 4    
公共交通を利用する 0 1 2 3 4    
移動する 0 1 2 3 4  
機能能力において病気の悪化を予防する 0 1 2 3 4    
毎日の活動を確かに行う 0 1 2 3 4  

B2:精神的・身体的機能--利用者に、毎日の生活に制限を及ぼすような心理的・精神的機能障害がありますか?

精神的機能障害 はい   いいえ    
身体的機能障害 はい   いいえ