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研究要旨

1.目的

我が国では障害者基本法、障害者自立支援法に基づいて「障害者が地域で普通に暮らせる地域づくり」を進めるとともに、市町村を中心に3障害に一元的な福祉サービスの充実が図られている。また、福祉サービスの対象となる障害の範囲が広がるとともに、高齢化の進展等に伴って障害者数も着実の増加してきている。さらに、家族の機能や地域社会の変化に伴って福祉サービスに対するニーズも多様化してきている。一方、増大する福祉サービス需要に対する財源の確保や障害の状況、ニーズ等に応じて適正にサービスを提供する仕組み作りも求められている。

本報告書は、障害者が日常生活の利便を図るために利用する介護サービスをはじめとする福祉サービスのサービスメニューや利用の仕組みについて諸外国のデータを収集整理し、現状や課題を比較分析することにより、わが国の障害福祉サービスの利用に係る仕組み作り検討のための情報を提供することを目的としている。

2.方法

調査対象国の研究を行っている研究者またはそれぞれの国に滞在し障害者福祉やリハビリテーションの専門家として働いている人に調査を依頼した。また、必要に応じて現地ヒアリング調査を行い、各国についての障害者福祉サービスの利用の仕組みに関する報告書の執筆を依頼した。

調査対象国は、ドイツ、オランダ、イギリス、スウェーデン、アメリカ(カリフォルニア州)、デンマーク、フランスの7カ国とした。

3.結果の概要

障害者に対する介護サービスを提供する法制度
社会サービス法、社会保障法、社会福祉・家族法典として包括的理念を定めた基本法があり、この法律の下に障害者の介護サービス等が規定されている。なお、多くの国では同一の法の下に障害者と高齢者を分けることなく介護サービス等を提供する仕組みになっていた。

障害の定義、範囲、区分
障害の定義や範囲は、国によって、また、福祉サービスの対象者、各種手当や年金の給付対象者、特別支援教育や雇用就労施策の対象者によって定義、範囲、区分が異なっていた。なお、ドイツとフランスにおいては、身体障害、知的障害、精神障害等をそれぞれ10点刻みで点数化し、50点以上を重度障害者として各種の障害給付、住宅サービスの対象とする。また、40点以上を特別支援教育の対象とするなど汎用性のある障害認定方法をとっていた。さらに、ドイツとフランスは、重度障害者に障害があることを証明するカードを発行し、日本の障害者手帳とほぼ同様な制度をとっていた。

介護サービス等の運営主体
基本的には基礎自治体である市町村が運営主体であった。しかし、ドイツやオランダは、独立した団体である介護金庫等が、フランスでは障害者分野のみ県が運営上の責任を持っていた。

介護サービス等の給付の認定主体
介護サービス等の給付の認定主体は、多くの場合は市町村であった。しかし、ドイツやオランダなど介護保険制度を導入しているところは、介護金庫等の保険者が認定していた。さらに、フランスの場合は、県の障害者センターが支給の要否決定を行っていた。

介護サービス等の認定基準
多くの国では全国的なガイドラインを示し、各市町村で具体的な基準を作成していた。したがって、市町村の財政状況等により基準に差が見られるのが一般的であった。

介護サービス等の要否の判定方法
ドイツやオランダのように介護保険制度を導入している国では、保険者である介護金庫が行うが、その他の多くの国では市町村が実施していた。具体的には、市町村のソーシャルワーカーが医師の診断書などを参照しながら要否の判定を行い、判定結果を障害者に説明を行っていた。

介護サービス等の給付内容
各国によって名称は異なるがホームヘルプ、デイサービス、ショートステイ、訪問看護、福祉機器貸与、住宅改造などニーズに応じた多様なサービスが給付されている。しかし、多くの場合はニーズアセスメントにより、給付内容は決定されている。

ケアマネジメントの実施
多くの国で地方自治体のソーシャルワーカー等を中心にケアマネジメントを実施していた。しかし、フランスでは障害者本人の主体性を尊重するために自分で生活計画を作り、専門家チームと協議する体制がとられていた。

利用者負担
多くの国で利用者の一部負担を求めたり、支給に上限を設けたりしていた。しかし、いずれの国でも所得に応じた減免措置を執っていた。