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第4章 取り組み事例「高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe」

第1節 事業所概要

(1)設立

ぷれいすBeの母体である社会福祉法人北摂杉の子会は、1993年(平成5年)に高槻市を中心とした地域にて知的障害児の親たちが結成した組織が母体となって、1998年(平成10年)に社会福祉法人としての認可を受けて設立された。

「高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe」はそれまで高槻市内に設置されていた2か所の通所施設が閉園し、新たに障害者自立支援法にもとづいて多機能型事業所として設置された。「高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe」は高槻市立であり、新施設の運営に当たる民間社会福祉法人の公募が行われ、審査の結果、社会福祉法人北摂杉の子会が事業を受託した。

(2)設置・概要

調査対象の設置と概要を示すと以下のとおりである(図表4-1)。自立訓練(生活訓練)通所型事業のみで運用しているということではなく、「高槻地域生活総合支援センター」として、一体的に支援を行っている。

図表4-1 設置・概要
法人名 社会福祉法人北摂杉の子会
事業所名 高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe 自立訓練(生活訓練)通所型
所在地 大阪府高槻市常北町1丁目6-6
法人内関連事業所
  • 児童デイサービス 自閉症療育センター
  • 発達障がい者支援センター 大阪自閉症支援センター
  • 就労移行支援、生活介護、就労継続支援B型
  • 大阪府発達障がい者日中活動・就労準備支援モデル事業
  • 施設入所支援、生活介護 短期入所、日中一時支援
  • ケアホーム、高槻地域生活総合支援センター(ぷれいすBe)
  • 地域生活支援事業
地域の関連社会資源 社会福祉協議会、ボランティアセンター、特別支援学校、地域の小学校・中学校・高等学校(福祉科)の学生、地域住民

(3)利用者と職員の状況

自立訓練(生活訓練)通所型事業の定員は10名であり、それに対応する職員は兼務、非常勤も含めて5名となっている。ただし、日中活動支援やその他の支援と一体的に支援を行っているため、自立訓練(生活訓練)通所型事業に係る職員はこれより多い。なお、法人全体では64名の正職員、24名の嘱託職員、153名のパート職員がいる。また、高槻地域生活総合支援センターでは13名の正職員、6名の嘱託職員、32名のパート職員がいる。

図表4-2 実施事業利用者の状況
実施事業 利用者定員
生活介護 30名
自立訓練(生活訓練)通所型 10名
就労移行支援 10名
就労継続支援B型 10名
短期入所(日中一時支援) 合計10名
相談支援

(4)自立訓練(生活訓練)事業の位置づけ

当法人は、大阪府全体を対象とした広域特化事業と高槻市及び近隣を中心とした地域一般事業を実施しているが、ぷれいすBeは地域一般事業の一部として位置づけられている。

当事業所は、多機能型事業所であるが、就労の前段階の社会生活スキルの習得を目指している方が利用することを目的としており、生活訓練の2年間と就労継続支援等と組み合わせ4年間での支援体制を位置づけ、その後、就労や就労継続支援B型へと移行することを支援の方向性として考えている。

なお、当事業所の主たる利用者像は、これまで家庭で家族と共に生活をしながら特別支援学校あるいは校区の学校の特別支援学級で教育をうけてきた18歳~22歳くらいまでの若年層を対象としている。

(5)支援の特徴

①社会生活力プログラムによる支援

当事業所では日々のプログラムは軽作業を中心に行っており、「生活の基礎をつくる」「自分の生活をつくる」「自分らしく生きる」という課題を主たるアプローチとしている。月に2回は、社会生活力プログラムにもとづいて支援を行っている。本事業所で実施している「社会生活力プログラム」は、『自立を支援する社会生活力プログラム・マニュアル』(中央法規)や『実践から学ぶ「社会生活力」支援』(中央法規)などを参考にして、「調理」「そうじ・洗濯」「身だしなみ」「金銭管理・使用」などの簡潔なプログラムを作成し、参加希望者を対象に、隔週1回、半年を1セッションとして実施している。

なお、支援の特徴としては、「ストレングスモデル18」の視点で支援を行っている点が挙げられる。すなわち、本人が望むことを中心にプログラムを組み、“できるようになったこと”“可能になったこと”を評価することを大事にしている。

②コミュニケーション意思カードと身だしなみチェックシート

また、具体的な支援展開において、様々な工夫をしている点が挙げられる。たとえば、コミュニケーションが困難な利用者に対してはコミュニケーション意思カードを、身だしなみのスキル習得・向上のために身だしなみチェックシートを使用している。さらに作業プロセスにおいては様々な補助ツールを独自に開発し、利用者が作業をしやすい支援体制を構築している。

コミュニケーション意思カードとは、コミュニケーションをとることが困難な利用者がコミュニケーションをとるために創作されたカードのことをいう。具体的には、「今はやめて下さい」「あとにして下さい」「いいです」「帰ります」などと記載されたカードを用い、意思を相手に伝えることができるよう工夫されている。これにより、相手の気持ちをくみ取ることが苦手な利用者にも相手の気持ちがわかりやすく、また、断ること等が苦手な利用者も意思表示しやすく、対人関係を習得していく補助ツールとして有効活用されている。

身だしなみチェックシートは、身だしなみができたかどうかをチェックするよう工夫されたシートのことをいう。たとえば、髭剃りが必要な利用者の場合、事業所に出勤前に髭剃りをしたかどうかをチェックし、個別の日誌と一緒に提出している。また、事業所の作業開始前にもグループ全員で、身だしなみチェックリストを用いて、髪の毛、シャツ、ズボン、つめ、くつ等についてチェックして、身だしなみに対する意識を高めるためのさまざまな工夫を行っている。

③TEACCHによるアプローチ

利用者それぞれが作業を行いやすいように、パーティションを利用した個別の作業空間作り、刺激が少ない小部屋での少人数での作業、作業の流れを各利用者にわかりやすいように簡易図等で示したメモを個別の作業台の正面に貼るなど、あらゆる方法で各利用者にあわせた作業環境を整えている。また、部屋表示や作業道具、保管場所なども図示して、視覚でわかりやすい環境作りを行っている。


18利用者本人の能力や意欲に着目しアプローチする中で、本人の好みや抱負といったことを引き出し伸ばしていくアプローチのことをさす。