音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

第4章 取り組み事例「高槻地域生活総合支援センターぷれいすBe」

第3節 考察

(1)ケースに見る支援の流れ

ここまで示した5ケースにもとづき、当事業所の支援フローを第1章の支援フレームに合わせて整理すると次のようになる。

図表4-5 本事業所の支援フロー
枠組み 内容
利用の契機
  • 特別支援学校からの紹介が多い。
  • 合併前施設からの継続利用もある。
生活訓練 個別支援計画
  • 本人(及びその家族)と個別面談を実施し、アセスメントを行い、個別支援計画を策定する。「目標」に関しては、できるだけ本人の言葉で作成するようにしている。そうすることで、何をしなければいけないのかが明確になると考えている。
カンファレンス
  • 2週間に1回の割合で実施している。
モニタリング
  • 原則は6ヶ月に1回のモニタリングを行っている。(特別支援学校の卒業生の場合は、当初1年は3か月毎実施)
  • 面談を通じて、振り返りを行う。
地域資源との接点
  • 「就労したい」との利用者のために、企業での体験実習を行っている。
支援・訓練内容
  • ストレングスモデルによる個別支援計画を重視した支援を実施。本人の「やりたいこと」に着目し、軽作業等の複数の実施事業の中から、やりたいことを見つけていくプロセスを重視している。
  • はじめに軽作業やパソコン関連作業などの作業を一通り実施し、自分のやりたいことを見つける工夫をしている。
地域生活開始に向けた支援
  • 通所事業のため、基本的には実家から通所している。
利用終了後のフォロー
  • 設立から2年が経過していないため、まだ利用終了に至っていない。
地域生活のための相談サポート
  • 設立から2年が経過していないため、まだ利用終了に至っていない。

(2)まとめ

本事業所では、法人が設立された当初から“地域で生きる”という理念の下、利用者主体の支援を行っている。2009年度(平成21年度)の事業開始時より、ストレングスモデル的視点で個別支援を重視し、本人の持つ価値観や可能性を引き出す支援を実践している。そのプログラムの一つとして、社会生活力プログラムも実践している。

事業開始時に経営戦略にもとづいた組織構築を行っている。施設長の下、法人内で行っているサービス単位にチーム編成をし、ライン組織(現場で実際に業務を行う組織のこと)とスタッフ組織(事務処理など現場職員が働きやすいような仕事をする職員)を分け、業務の効率化と体制整備に取り組んでいる。このような組織を構築することで、組織的な支援が行われていると考えられる。ただし、報酬体系の問題等から事業所単位の収支は必ずしも良好とはいえない。

本事業所は2009年(平成21年)に新規に開設された事業所であることもあり、地域の特別支援学校高等部卒業後、直接本事業所の自立訓練を利用する利用者が多い点にその特徴があるといえよう。また本事業所は多機能型事業所であるため、自立訓練に留まらず、生活介護、就労移行支援、就労継続支援B型、短期入所及び相談支援の6事業を実施している。よって、2年間の自立訓練を単独として位置づけるのではなく、2年間の自立訓練及び2年間の就労移行支援を継続的に位置づけ、総合的に4年間のプログラムで支援していこうという方向性で支援していた。

今回調査した5ケースに関しては、長期的目標として、事業開始当初より「『就労』を考えているケース」と、「『社会生活スキルの向上』を考えているケース」とに別れているように見受けられた。その結果、支援開始後6ヶ月は全ケースほぼ同じ目標のもと支援が行われているが、6ヶ月~1年経過する中で、就労を目標としている利用者と社会生活スキルの向上を目標としているケースとではその支援の方向性が分かれてきている。つまり、就労を目標としている利用者は、あくまでも就労を前提とした上で作業活動の強化が行われている。その一方、社会生活スキルの向上を目的とした利用者に関しては、社会生活力プログラムの実践や余暇活動の積極的導入が図られている点にその特徴を見た。

若年層、特に、学校を出たばかりのいわゆる新卒的な利用者が多い中、利用者本人の能力や可能性を出来る限り引き出そうという個別支援を強化し、それまでの学生生活から社会人生活への転換のために何が必要かを身につけてもらう意味で、意義のある支援を行っているといえる。