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第5章 取り組み事例「自立生活支援センター・ウイリー」

第3節 考察

(1)ケースに見る支援の流れ

ここまで示した5ケースにもとづき、当事業所の支援フローを第1章の支援フレームに合わせて整理すると次のようになる。

図表5-5 本事業所の支援フロー
枠組み 内容
利用の契機
  • レインボーネットの地域移行ニーズのデータベースから、優先順位に基づいて対象者を選定し「地域生活支援調整会議」で決定
  • 退院促進支援事業等を活用した病院の長期入院患者
  • 長期入院に至らなくても、病状が不安定となっている方
生活訓練 個別支援計画
  • レインボーネットにおいて、ケア会議をふまえた個別支援計画を作成
  • 当事業所(ウイリー)での生活の様子観察を行い、再度本人の希望と症状をふまえて、最も適していると思われるプログラムを選定した個別支援計画を再作成
カンファレンス
  • 事業所内では、月1回は職員間で「支援会議」を行っている。
  • 特に、地域生活に向けて、レインボーネットで本人、家族、行政機関、病院、福祉サービス事業所によるケア会議を設けている。当事業所から、本人に関する情報提供、地域生活を実践する際の課題や支援方針について確認している。
モニタリング
  • モニタリングは3ヶ月に1回実施している。
  • 支援の現状と方針のすり合わせのために、本人と月2回面談を行っている。基本的には、普段の話し合いや観察(見守り)の中で情報収集をし、定期的な面談を実施している。
地域資源との接点
  • レインボーネットを中心とした連携を実施(レインボーネットを介し、すべての関係機関との連携が実現)
支援・訓練内容
  • 病状の安定と精神科医療との連携を主に支援を展開している。
  • 病状が不安定となることで、支援が中断、入院となることから、利用者の状況をきちんと観察(見守り)しつつ、服薬管理などの支援を行っている。
  • 病状が安定している状況を見て、日常生活自立、社会生活自立、就労自立の3つの観点からそれぞれ課題・目標を設定し、支援計画をたて、日々個別対.に重点をおきながら金銭管理や生活リズムに関する支援を実施している。
  • 宿泊型自立訓練利用者は、集団生活の各種当番等をこなすことにより生活スキルの向上を得ている。
  • 通所型自立訓練には次のようなプログラムがある。
    • a コーヒー作業(本格的なコーヒー製品の製造を訓練作業として行っている。)
    • b シーツリネン交換作業(外部の病院での4,5名の交代制グループ就労)
    • c SST(月2回、各1時間程度実施)
    • d 自治会(月1回、夜1時間程度。利用者役員による議事進行)
  • その他、近隣の地域活動支援センターのプログラムを積極的に利用(調理実習、趣味サークル、表現活動、SST、ピア活動)
地域生活開始に向けた支援
  • グループホームまたはケアホームへの移行が中心である。そのための体験利用等を実施
利用終了後のフォロー
  • レインボーネットの相談支援事業所に引き継ぐ。同ネットを通じて、情報が入ってくる。特に問題がなければ利用終了後は支援終了となる。
地域生活のための相談サポート
  • レインボーネットの相談支援事業所を中心に支援を行っている。

(2)まとめ

①レインボーネットを通じた支援

レインボーネットという地域全体で障害のある人の豊かな暮らしの実現を支援する仕組みの中で、病院や孤立した生活から、地域での生活へ移行する前の通過施設として、宿泊型と通所型の両方を組み合わせた「短期滞在型(通過型)自立訓練」の事業所として機能していきたいという方針で運営している。

利用中に、地域生活移行のための課題解決の対処方法を身につけるだけでなく、事業所が、地域移行後も課題が発生したときの相談相手となっていることが、自立訓練(生活訓練)宿泊型を経ないで直接地域に移行する場合に比べて地域生活を継続させるために有効である、との考えのもとに運営されている。

②自立訓練(生活訓練)事業

5ケースを振り返ると、支援する職員は利用者の病状をきちんと観察(見守り)し、必要な支援を本人との話し合いを通じて理解を求めながら実践しているといえる。本人が支援方針に納得しないと、日常生活が不安定になるためと考えられる。たとえば、服薬管理に関して、自己管理を原則としつつも、怠薬や誤薬などがあった場合には本人との話し合いの下、職員管理を行い、生活の安定を図っている。観察(見守り)にもとづく情報により、適切な支援を、優先順位をつけて実践しているといえる。

事業の課題としては、「2年間(最大3年間)の自立訓練期間」という縛りの中で、どのように次のステップにつないでいくかということがあげられる。2年間で社会生活力を身につけて地域へ移行するというのは、ハードルが高いという。レインボーネットによって、自立訓練(生活訓練)事業の後の地域の受け皿としてのグループホーム・ケアホームは他地域にくらべて整っているとはいうものの、地域での自立生活が十分にできるかは個人差もある。自立訓練を次々と修了していく利用者を、レインボーネットとうまく連携しながら、2年間で自立した生活に移行できるような支援体制をどのように構築していくか、期待されている。