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第6章 取り組み事例「KUINA」

第1節 事業所概要

(1)設立

2004年(平成16年)に社会福祉法人を設立。それまで医療法人が運営していた援護寮と地域生活支援センターを独立運営とした。2006年(平成18年)4月に「障害者自立支援法」が施行され、同年10月から、「地域生活支援センター」が「地域活動支援センター」として、活動する。2007年(平成19年)4月から、「生活訓練施設(援護寮)」も障害者自立支援法での新体制に移行し、施設入所支援事業所となり、新しく完成した通所施設「障害福祉サービス事業所」と合わせて、「障害者支援施設」として活動を開始した。

(2)設置・概要

調査対象の設置と概要を示すと以下のとおりである(図表6-1)。自立訓練(生活訓練)通所型と合わせて訪問型支援も実践している。あわせて、利用者の重症度によっては、生活介護サービスとのすみ分けを行っている。

図表6-1 設置・概要
法人名 社会福祉法人町にくらす会
事業所名 KUINA
所在地 茨城県ひたちなか市長砂字横道宿後1561-4
法人内関連事業所
  • 地域活動支援センターⅠ型 障害者就業・生活支援センター
  • 施設入所支援 生活介護 自立訓練(生活訓練)通所型
  • 就労移行支援 就労継続支援A型 短期入所事業
地域の関連社会資源
  • 精神科病院:なし 精神科標榜診療所:3か所
  • 知的障害者入所更生施設:1か所、施設入所支援:1か所
  • 短期入所事業:2か所、地域活動支援センターⅠ型:2か所
  • 相談支援事業所:5か所、生活介護:2か所
  • 自立訓練(生活訓練):4か所、就労移行支援:5か所
  • 就労継続支援A型1か所、就労継続支援B型:5か所
  • 共同生活介護:1か所、共同生活援助:2か所
  • 居宅介護:8か所、重度訪問介護:8か所、児童デイサービス8か所

(3)利用者と職員の状況

自立訓練(生活訓練)通所型事業の定員は10名であり、それに対応する職員は兼務、非常勤も含めて5名となっている。その内訳はサービス管理責任者兼務常勤1名、生活支援員専任常勤1名・専任非常勤3名、訪問支援員兼務常勤1名である。

なお、法人全体では54名の職員がいる。

図表6-2 実施事業利用者の状況
実施事業 利用者定員
地域活動支援センターⅠ型
障害者就業・生活支援センター
施設入所支援 30名
生活介護 24名
自立訓練(生活訓練)通所型 10名
就労移行支援 12名
就労継続支援A型 10名
就労継続支援B型 10名
短期入所事業 男女各1名

※今回の調査対象となる生活訓練(通所型)の利用者は全員精神障害者である。

(4)自立訓練(生活訓練)事業の位置づけ

通所による支援と訪問による支援を組み合わせて地域生活の安定を目標として、支援を実施している。地域生活の安定とはすなわち、規則正しい排泄、バランスの取れた食事、睡眠のリズム、服薬管理などが安定することをさし、これらを中心に支援(トレーニング、支援者による調整)を行い、対象者の生活課題をアセスメントしながら支援を行う。

就労継続支援A型や就労移行支援のプログラムと相互乗り入れして実施しており、利用者の多くが生活訓練の利用後は就労継続支援A型や就労移行支援により就労すること、または、再入院と言う最悪の状況にならない様に、それを未然に防いだり、入院に至らない様に可能な限り生活伴走を行うことを目指していけるような仕組みとなっている。

(5)支援の特徴

①普段の生活の中で生活を安定させる(支援コンセプト)

当事業所は精神科病院に入院している患者が地域で安定した生活を送るために、必要なスキルや生活イメージを持てるようにするための事業所を想定している。長期入院ののち退院して、ここで生活訓練を行い、地域生活を安定させ、希望があれば就労支援につなげていく。自分のこれからの生活をイメージしていく場所として、特に何かプログラムなどを提供するというよりも、普通に生活している流れの中で学んでもらうことを支援理念としている。

②ACT21の実践

今回の調査対象である自立訓練(生活訓練)事業ではないが、この法人では、ACT(Assertive Community Treatment:包括的地域生活支援、以下ACT)を実施している。ACT は重い精神障害を抱えることで頻回入院や長期入院を余儀なくされている人々が病院以外の地域で暮らしていけるように開発されたケースマネジメントの最も集中的で包括的な支援プログラムである。その特徴は、援助者が利用者の生活する場に出向く訪問の形でほとんどのサービスが提供されることである。ACTを実施するためには細かな利用基準22(図表6-3)があり、その中のひとつとして利用対象者は、長期入院者や頻回入院者、長期のひきこもりなど地域社会で孤立状態にある重い精神障害を持つ人々としている。


21ACT(Assertive Community Treatment;包括型地域生活支援)とは主に重症の精神障害者に対して、地域生活が送れるよう、他職種によるチームで包括的な支援を行うプログラムのことである。

22図表6-3 一般的なACT利用者の利用基準

22図表6-3 一般的なACT利用者の利用基準
項目 内容
年齢 18歳から65歳まで
疾患 統合失調症・双極性感情障害・重症うつ病を主診断としてもつ
除外診断:主診断が発達障害・知的障害(IQ50以下)
日常生活機能 独力では日常生活・安全管理・危機回避などや社会生活が営めない状態が6ヶ月以上続いている。
精神科医療との関係
  • 1年に2回以上の入院または年100日以上の入院
  • 地域や家庭でのトラブルがあり、地域生活の継続が困難な事例を含む。
  • 1年以上の長期入院者で心理社会的要件から退院が困難になっている者
  • 家族等が通院中であるが本人は1年以上の長期のひきこもり
  • 地域で発症が疑われ、1年以上の長期にわたる未受診事例
GAF(機能の全体的評定尺度) 過去1年間継続して50点以下に該当