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第6章 取り組み事例「KUINA」

第3節 考察

(1)ケースに見る支援の流れ

ここまで示した5ケースにもとづき、当事業所の支援フローを第1章の支援フレームに合わせて整理すると次のようになる。

図表6-6 本事業所の支援フロー
枠組み 内容
利用の契機
  • ほとんどが近隣医療機関からの紹介。地域移行支援事業などで退院を目指している方の相談が多い。
生活訓練 個別支援計画
  • 基本的には3ヶ月に1回の見直し。他、必要に応じて見直す。
カンファレンス
  • 1日に1回、過去24時間の生活の状況を把握している。
  • 1ヶ月に2回、顧問医を交えて、行っている。
モニタリング
  • 必要に応じて、最長3ヶ月毎、最短随時行っている。
地域資源との接点
  • 「KUINAだけでは、背負えない。」をモットーに、本人に関わる資源は、最大限に関わって頂き、情報の共有化を図れるように、積極的に会議を開催している。
支援・訓練内容
  • 利用期間中の標準的なフローはなく個別支援を行っている。
  • 訪問による支援と通所を組み合わせて支援を行っており、訪問による生活訓練を有効活用することで、いかに社会との接点をつなぐかが重要なポイントとなっている。そのため、利用者との信頼関係構築が優先課題の一つとなっている。
地域生活開始に向けた支援
  • KUINAに対して依頼があり、関わりを開始時点から、直ぐに「地域生活開始に向けた支援」を開始し、可能な限り本人の持っている力を活かせるような支援を心がけている。
利用終了後のフォロー
  • 生活訓練の利用後、多くの利用者は地域活動支援センターや生活介護で訪問を受けている。就労継続支援A型や就労移行支援のサービス利用に移行する方もいる。その他には、希望があり基準を満たしている方は、ACTを利用する場合もある。
地域生活のための相談サポート
  • いつでも(365日24時間で)、来所・訪問のどちらでも相談に対応出来る体制を整えている。

(2)まとめ

①当事業所の支援フレーム

当事業所は、自立支援法移行前の事業である援護寮時代からの流れで、病院の次に地域につなぐための施設として位置付けられており、地域定着するための準備・支援という位置づけで実践されている。当事業所の支援アプローチは次のようになる。

「自分のこれからの生活をイメージしていく場所として、特に何かプログラムなどを提供するというよりも、普通に生活している流れの中で学んでもらう」との考えにもとづいて支援が行われている。普段の生活を観察する(見守る)視点を重視し、生活の場を見ながら関係を作る訪問活動を重視し、本人の長所を生かす個別支援計画のもと、支援が行われている。

②信頼関係構築の重要性

本人と支援者との関係構築が最初に来る重要テーマであり、その関係構築のためには一定の期間が必要であるといえる。信頼関係構築がなければ、そもそも訪問しても門前払いとなり、通所にもつながらない。支援が必要なことにどうやって本人に気づいてもらうかということも重要な視点であるといえる。その上での支援となるため、2年間の期間ではどうしても足りないというのが実感である。地域生活開始当初などは1日数回の訪問が必要であり、現状の生活訓練では訪問日数が月14回の上限では、足りないということは否めない。