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第7章 取り組み事例「ノンラベル」

第1節 事業所概要

(1)設立

2001年(平成13年)に現在のノンラベルの前身である「京都ひきこもりと不登校の家族会ノンラベル」が発足した。「援助者とともに」をスローガンに、学習と経験を積んだボランティアスタッフが月例家族会のグループワークを援助するなど、家族と援助者の会としてスタートした。

当会では、高機能の広汎性発達障害がある人の比率が高まり、2005年(平成17年)より年に2回の「アスペルガー援助者養成講座」に取り組みはじめた。また、同年にアスペルガー症候群の思春期・青年期・成人期の援助部門として「アスペ・ノンラベル」を創設した。その後、2007年(平成19年)より、従来の月例家族会を不登校・ひきこもり部門とアスペ・ノンラベルの2つに分けて継続開催することとなった23。なお、同年に、アスペ・ノンラベルは、日本発達障害ネットワーク(JDDネット)のエリア会員となる24

2008年(平成20年)、アスペルガー障害、特定不能の広汎性発達障害等の高機能の広汎性発達障害の成人と家族をサポートする特定非営利活動法人として認証を受け、「特定非営利活動法人ノンラベル」が成立した。2010年(平成22年)には京都府より指定障害福祉サービス事業所(自立訓練(生活訓練)通所型25、就労支援継続支援B型の多機能型)として指定を受けた。なお、2011年(平成23年)9月厚生労働省より「平成22年度発達障害者支援者実地研修事業『成人期支援研修』」の事業所として指定を受けている。

(2)設置・概要

調査対象の設置と概要を示すと以下のとおりである(図表7-1)。自立訓練(生活訓練)通所型と合わせて、就労継続支援B型も実施している。自立訓練(生活訓練)通所型で生活の基盤を確立してのち、就労支援に結び付けたいとの意図がある。ただし、現時点では発足間もないこともあり、自立訓練(生活訓練)通所型から就労まで結びついたケースはない。

図表7-1 設置・概要
法人名 特定非営利活動法人ノンラベル
事業所名 ノンラベル
所在地 京都府京都市南区久世川原町115番地
法人内関連事業所
  • 自立訓練(生活訓練)通所型・訪問型
  • 就労継続支援B型
  • 月例家族会 発達障害に関する研修・啓発・普及
  • 個別面談の実施
地域の関連社会資源 都道府県、市、利用者がくらす市町村、市・市発達障害者支援センター、京都府発達障害関連団体、障害福祉サービス事業所、社協、地域包括支援センター、精神科医療機関、高校、大学、高等技術専門校 など

(3)利用者と職員の状況

自立訓練(生活訓練)通所型事業の定員は10名であり、それに対応する職員は兼務も含めて7人である。法人全体で8名の職員がいる。

図表7-2 実施事業利用者の状況
実施事業 利用者定員 職員数
自立訓練(生活訓練)通所型 10名 法人全体で8人
常勤3人、非常勤3人
就労継続支援B型 10名

※利用者は発達障害者である。

(4)自立訓練(生活訓練)事業の位置づけ

利用者の在宅生活のためには人間関係の構築が重要であり、その支援を行う前提として、本人たちと職員との間に信頼関係を作ることが最も重要であるといえる。このような信頼関係を構築するために、当事業所では1年程度の年数が必要であると考えており、関係構築があって初めて具体的な支援につながっていくと考えている26

支援していく上での柱として、次の点があげられる(図表7-3)。

1点目はアスペルガー障害等高機能の広汎性発達障害の人が苦手とする「対人相互関係」に着目した「対人関係トレーニング」を基本に、「人慣れ」「場慣れ」「場面慣れ」を、安心・安全の場でゆっくりと体験しながら、日常生活及び社会的スキルの獲得を目指している。

また、初回面談27によって利用者の状態を把握し、「個別援助計画」をたて、入会後の個別相談支援によって「個別援助計画」に沿った具体的なサポートを柔軟にすすめる。

当法人登録の利用会員(親族が中心)に対し、月1回月例家族会の中で障害特性に関する学習とグループワークを実施している。また、必要な方には専門医の紹介を行っている。

また、利用会員以外についても発達障害に関する啓発活動を行っている。他に発達障害理解のための書籍28を発行している。

図表7-3 支援の柱
  • a 対人相互関係に着目した対人関係トレーニング
  • b 個別支援計画にもとづく支援
  • c アスペルガー障害等の自閉症スペクトラムの特性のある方への理解促進と専門医 の紹介

(5)支援の特徴

①利用者像

本事業所の利用者は比較的若い層の発達障害を有する方が中心である。はじめから発達障害と判明して、利用を始めるのではなく、当事業所に相談に来て、専門医の紹介を受け、それから利用を開始するといった場合もある。

当事業所が自立訓練(生活訓練)事業だけではなく、発達障害の理解促進のための活動も行っているため、そのような相談も多い。

②「居場所」を通じた支援

語りやゲーム、絵画、食事やおやつ、お茶等を通じて、集う喜び、等を通じて、雑談力を身につけるための「対人関係トレーニング」が実践されている。そのため、自立訓練(生活訓練)の実践の場に支援者が常駐しており、支援や見守りを行っている。

また、月2回2時間半程度、「アスペルガー障がい30歳以上の女性の居場所」にて、「自分のことを語る、同じ立場の人の話を聴く、『対話』で楽しく人間関係トレーニング」を実施している。

③家族と協力しながらの支援

個々人の状況に合わせて、また家族と協力しながら一緒になって要望、特性を把握して個別のサポートと集団的サポートを行っている。当事業所で実施している訓練として、たとえば、「クールダウンの訓練」があり、熱心に取り組みすぎ没頭して、家族が疲れきる前に、自ら息を抜くことを学ぶといったことも実践されている。このような支援も訓練の位置づけとなっている。

④利用会員制度

定款にもとづき、当法人の事業に賛同する方は正会員として、各種支援(月例家族会参加や個別相談支援、「居場所」など)を利用する方は正会員と併せて利用会員として、当法人に入会してもらうことを原則としている。また、一般の方向けの個別面談も有料で実施している。


23現在、不登校・ひきこもり部門は対象家族がないため開催していない。

24後に「特定非営利活動法人ノンラベル」に登録名称を変更

25自立訓練(生活訓練)訪問型による支援も行っている。

26このような理由から、当事業所では2年間(期間延長期間を含めて3年間)の利用期限では、在宅で生活をすることが難しいと考えている。

27初回は基本的に家族のみ

28田井みゆき(2009)「パスポートは特性理解:青年・成人期のアスペルガー障害・特定不能の広汎性発達障害」クリエイツかもがわ