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ダウン症候群を持つ子どもにおける脚韻認識(rime awareness)障害

マーガレット・J・スノーリング, CHARLES HULME & ROBIN C. MERCER
Department of Psychology,ヨーク大学, Heslington, ヨーク(イギリス)

要旨

ダウン症候群(DS)の子どもと、読み能力を対応させた年少の健常児を対象として、読みと音韻操作能力を比較する3種類の研究を行った。研究1の、単語あるいは非語の読みには2群の間に差は認められなかった。しかし、ダウン症候群を持つ子どもは音節分解、脚韻(rhyme)抽出課題と音素抽出課題の成績が健常児に比較して明らかに劣っていた。これらの音節意識(syllable awareness)と音素意識(phoneme awareness)にみられた2群の差は、言語能力(BPVS, 語彙)の差に起因することが明らかとなった。そこで、語彙レベルを一致させた下位群を設けて比較したが、ダウン症候群では脚韻抽出になお重度の障害が認められた。ダウン症候群にみられた脚韻障害は脚韻判断課題の手続きを簡略化した研究2と3においても認められ、大部分のダウン症候群を持つ子どもがチャンスレベルの正答率であった。一方、3つの研究に共通して両群とも語頭音素(initial phoneme)抽出と頭韻判断(alliteration judgement)課題ではチャンスレベル以上の正答率であったが、語尾音素の同定課題はかなり低い成績であった。音韻能力と読み能力には両群ともに相関関係が認められた。ところが、健常群では文字―音対応能力は読み能力を予測するものであったが、ダウン症群では予測するものではなかった。以上のことより、ダウン症候群を持つ子どもは音素意識が不十分であることが示唆された。つまり、彼らは語頭音素は同定できても、音素が不変であることは理解できておらず恐らく健常群に比較して読みの際に音韻操作能力は利用していないと思われる。

キーワード 

ダウン症候群、文字能力、音素抽出、読み能力、押韻(rhyming)能力

はじめに

読みの学習における音韻操作能力の役割について、健常児を対象とした研究は広範囲に行われてきた。しかし、精神遅滞の子どもたちを対象としたものは、ダウン症候群を対象とした研究を除いて不足している。ダウン症候群を持つ子どもの読みに関する最初の研究(Butterfield 1961; Duffen 1976)に続いて、音声言語能力、IQ、読みの発達間にみられる関係の縦断研究(Lorenz, Sloper & Cunningham 1985; Carr 1995; Shepperdson 1994)が行われた。これらの研究すべてにおいて、音声言語能力の高い子どもは読み能力も高いことが報告されている(参照:Buckley& Wood 1983)。しかし、Sloper, Cunningham, Turner & Knussen(1990)によると、精神年齢を一致させたとき読み能力を最もよく予測するものは所属する学校の種類、性別、年齢であった。さらに、普通学級に統合されている子どもは中等度、重度精神遅滞を対象とした養護学級に通う子どもたちよりも学業成績が良かった。 

ダウン症候群の音韻操作能力をさらに詳細に調査した最初の研究の一つは、TAというイタリア人の8歳11ヶ月のダウン症候群の少年を対象とした症例研究(Cossu & Marshall, 1990)である。TAのPeabody Picture Vocabulary Testによる精神年齢は4歳6ヶ月、IQ57であった。単語の復唱は正常であったが、数詞の復唱は2数詞まででメモリースパン(記憶容量:memory span)が劣っていた。教師からは「クラスで最も読みが優れている」と考えられていた。実際、彼は語の長さやつづりと読みの関係の難易度を様々に変化させた単語、非語の読みで満点であった。それでも彼の音韻意識は劣っていた。Cossu & Marshall(1990:3)によると、脚韻と音素の一致は「彼には理解できなかった;TAはこの課題がまったく理解できず、でたらめな反応をするだけであった」。各単語に含まれる音の数だけ机をたたく音素分解課題と、各単語のはじめの2音を除いて発音するという音素削除課題では、3年生8-9歳相当の読み能力の子どもよりも低い成績であった。この結果より、Cossu & Marshallは音韻意識は読みを学習するための必要条件ではないと考え、これまでの仮説に対する異論を唱えた。次の研究において、Cossu,Rossini & Marshall(1993a)は11名のダウン症候群の子どもを対象として仮説を裏付ける結果を得た。ダウン症群の年齢は平均11歳4ヶ月で、健常群は読み能力を対応させた読みに問題のない年少児10名でその平均年齢は7歳3ヶ月であった。両群に単語・非語の読みに差はみられなかったが、音素合成(混交語:blending)、綴りを言う、音素数え、音素削除課題の成績が、ダウン症群は健常群より劣っていた。

Cossuら(1993a)の研究には大きな限界がある。第一に、これはイタリア語の読みを学習している子どもに関する報告であるという点に注意しなければならない。イタリア語は綴りと読みの関係がわかりやすく、関係がわかりにくい英語に比べて学習が容易であると言われている(Paulesu, Demonet, McCrory, Chanoine, Brunswick, Cappaら2001)。第二に、2群の認知能力に差がみられた。健常群の平均IQは111、精神年齢8歳であったが、ダウン症群は平均IQが44、精神年齢5歳であった。メタ言語課題がダウン症群の認知能力を超えていた可能性がある(Bertelson 1993; Byrne 1993; Morton & Frith 1993)。 

このような批判に関わらず、Evans(1994)はダウン症候群を持つ子どもは音韻意識課題が困難であると述べている。Evans(1994)はCossu, Rossii & Marshall(1993a)と同一の音韻意識課題を用いて平均年齢11歳3ヶ月のダウン症候群を持つ子ども6人に検査を行なった。3人は音節数を叩く課題、音素合成課題はある程度まで実施できたが、脚韻、頭韻の産生を要する課題と音素削除課題、分析課題ができた子どもはいなかった。2人は単語と非語の復唱はできたがメタ言語課題は下限点であり、残り1名は音韻課題をすべて拒否した。Evans(1994)によると、Cossuらが観察した結果と同様に、明らかな音韻意識の存在を示した子どもはいなかった。

Fowler(1995)は読み能力が幼稚園から12年生相当を示す17歳から25歳までのダウン症候群を持つ人を対象にした研究(Fowler, Doherty & Boyton 1995)から異なる結論を導きだしている。参加者は文字音読能力に基づいて、読みの前段階(2語以下の非語音読可)、読みの初期段階(3-10語の非語音読可)、読みの中期段階(11-29語の非語音読可)、読みの後期段階(30語以上の非語音読可)の4段階のグループに分けることができた。音読による下位グループ分けは単語の読みに関する成績だけではなく、文の理解能力とも関係していたという特徴があった。さらに、読みの段階は、理解語彙、言語理解そして認知能力の状態からも予測することができた。

Fowlerの研究では、各参加者にモーラの数だけ机を叩くという音素意識課題、単語記憶容量と単語の穴埋め課題(下線部を補充しての呼称)も実施している。参加者は、成績が6歳かそれ以下であった音韻意識課題より単語、非語の読み(読み能力年齢は7歳9ヶ月から8歳5ヶ月)の成績の方が良好であり、先行研究の結果とも一致していた。しかし、全般的な認知能力を統計的に統制すると、音韻意識と読み能力の間に有意な関係があった。音素意識は単語意識の36%、非語の音読の49%の分散を説明した。さらに、Fowlerらは音素意識を獲得している成人で読みに困難を示す例はあったが、逆に音素意識を獲得していないのに読みの能力のある人は一人もいなかったと報告している。音素削除(例 manを[m]なしに言う)能力がなくて1年生レベルの読みの能力を獲得しているダウン症候群を持つ人はいなかった。Fowlerらはこの結果から音素意識は音-文字連合の必要条件ではあるが十分条件ではないと述べた。ダウン症候群を持つ子どもの音韻能力の発達は健常児と同じ程度ではないが、彼らに音韻能力が備わっていないと考えるのは間違いである。近年Cardoso-Martines & Frith(2001)によっても同様の結果が報告されている。彼らはダウン症候群を持つブラジル人を対象として研究を行ない、読み能力を対応させた対照群と同レベルの音素抽出能力をもっていることを明らかにした。しかし、彼らの研究においてもダウン症候群を持つ子どもたちは話しことばの音韻成分の操作に明らかな困難を認めた。

本研究の目的はダウン症候群を持つ子どもの音韻意識と読み能力の関係に関する研究をさらに拡大し、同等の読み能力を有する正常発達の子どもと比較することであった。特に我々は様々な大きさの音韻単位に関する意識を二つの群で比較することに関心を持っていた。音韻発達理論(Treiman & Zukowski 1981)によると、音節や韻(rime)といった大きな単位は単語の音素よりも年少児でも早期に理解することが可能となる(Gombert 1992; Liberman, Shankweiler, Fischer & Carter 1974; Treiman & Breaux 1982)。読みに関する領域にさらに議論をすすめ、Goswami & Bryant(1990)は、音素成分への意識は(少なくともある部分は)文字学習の結果であるが、話し言葉の頭韻に関する音韻意識は読み学習に先行して現れるという仮説を述べた。反対に、Evans & Seymour(1994)は音素意識は韻意識(rime awareness)より先に獲得されるという異なる獲得順を提唱している。Gombertのメタ言語発達の枠組み(1992)では、前言語学的(epilinguistic)発達は脚韻のような大きな単位への全体的な気付きから、より小さい単位への意識へと発達する。一方、読み書きを媒体とした場合音韻単位の意識は小さい単位(音素)から徐々に大きな単位へと移行すると示されている。同様に、Duncan, Seymour & Hill(1997)も読めるようになったばかりの頃は話し言葉の韻の単位よりも独立した音素のほうが容易に理解できることを明らかにした。

我々の研究仮説にいたる道筋は容易なものではなかった。読み能力のレベルを一致させた健常群を用いたが、これはダウン症候群を持つ子どもは健常群と同じレベルの韻意識(rime awareness)と音素意識を持つであろうと考えるからである。しかし、音韻意識課題に必要な認知能力(Byrne 1993参照)や、先行研究(Fowler 1995)の結果を考慮すると対照群としての妥当性に問題がある。読み書き障害の子どもは韻に関する課題では読み能力を対応させた健常群と同レベルの成績を修めたが、音素能力は障害されていたことを示すデータがある(Snowling, Goulandris & Defty, 1996; Swan & Goswami 1997)。ダウン症候群を持つ子どもが言語障害がある(Rondal 1993)とすると、韻意識ではなく音素意識に関する障害を持っている可能性があると思われる。

子どもの読み能力を包括的に検査するために、単語の読み検査、非語の読み検査と生活環境でみられる活字(environmental print)の認識検査を実施することにした。これらの検査は広い範囲をカバーし難しすぎたり、易しすぎたりしないように作成した。文字知識の検査も行った。音韻意識検査は音節、韻、音素の3つの言語学的レベルにおける数叩き課題を用いた。さらに、音韻意識が内在された童謡を用いた数叩き検査も行った。MacLean, Bryant & Bradley(1987)によると童謡に関する能力は音韻意識能力、および将来の読み能力と大きく関係しているという。音節分解は韻の抽出よりは容易であると考えられ、言い換えれば音素意識よりも容易であるといえる。この難易度の順序は健常児と同様にダウン症候群を持つ子どもにもあてはまると思われる。

本研究の参加者はYork地区の4つの小学校に所属しており、名簿からランダムに抽出した。またダウン症候群を持つ子どもや青年はEngland北部の通常学級と養護学校に在籍していた。ダウン症候群の参加者のうち7名は、North Yorkshireダウン症協会のニュースレターに掲載したボランティアの募集広告に応募してきたものであった。同様のニュースレターを普通学級と養護学校の校長宛にも研究プロジェクトへの参加を求めて郵送した。

研究1

方法

参加者
研究1の参加者はダウン症候群を持つ子ども29名と健常児31名であった。参加したダウン症候群を持つ子どものうち9名は普通学級に在籍しており32名は養護学校に在籍していた。ダウン症候群を持つ子どもの年齢は6歳11ヶ月から17歳6ヶ月(平均13歳2ヶ月)であった。健常児は4歳6ヶ月から6歳5ヶ月(平均5歳3ヶ月)であった。2群の読み能力は、単語の読み検査であるBritish Ability Scales Word Reading Test(Elliott 1983)の粗点を用いて対応させた。ダウン症群の読み能力年齢は5歳以下から12歳9ヶ月、健常群は5歳以下から9歳4ヶ月であった。ダウン症群と健常群はBritish Picture Vocabulary Scales(Dunnm Dunn, Whetton & Pintilie 1982)(検査者が発音した単語を4枚の絵カードの中から選ぶ単語理解検査)を用いて測定した言語発達年齢は異なっていた。ダウン症候群を持つ子どもの平均言語発達年齢は4歳1ヶ月(1;09-8;07)、健常群の平均言語発達年齢は5歳4ヶ月(3;03-8;11)であった。

研究デザインと検査課題

音韻意識

音節分解
この課題では子どもに2音節語の10枚の絵カードを提示する。各試行では検査者が最初の1音節を発音し、子どもに残りの音節を発音させて単語を完成させる(Stuart & Coltheart 1988による)。課題のうち5問はどちらの音節も単語(例 cow-boy, snow-man)で残りの5問は単語ではない(例 spi-der, pic-ture)。子どもが課題を理解できるように検査の前に3問の練習課題を行った。得られた反応は2番目の音節が正確に産出された場合、最大2点が与えられた。音節の区切りにポーズを入れて単語を完成した場合は0.5点とした。
童謡の知識
検査者が童謡のはじめの部分を‘Hickory Dickory Dock’(マザーグースに収載されている歌の一節)と言い、子どもに‘the mouse ran up the clock’(「ねずみが時計を駆け上る」)という続きの部分を言わせる。次に検査者はまた別の童謡のはじめの部分を‘Jack and Jill’(「ジャックとジル」)と言い、子どもに次の‘ran up the hill’(「丘を駆け上る」)を言わせる。2つの童謡のそれぞれで2点になるのは2番目の部分が正確に言えた場合で、‘clock’‘hill’など一部が言えた場合は1点となる。つまり、2つの童謡の2番目の部分が正確に言えると4点となる。
脚韻抽出
子どもに3つの絵の中から目標となる絵と韻を踏んでいる絵を選ばせるという脚韻抽出課題(PAT; Muter, Hulme & Snowling 1997)を実施する。各試行では子どもに目標刺激(例 cat)と3つの選択肢(例 fish, gun, hat)を含む4枚の絵カードを提示し、各刺激絵を検査者が呼称する。その後、子どもに目標刺激と押韻している絵を選択させる。10試行の検査の前に子どもが課題を理解できるように、2問の練習課題を行なった。
音韻抽出
この検査では、子どもは始めの音素と終わりの音素を同定しなければならない。初めの10試行では検査者はそれぞれを呼称しながら3枚の絵カードを提示する。そして子どもに特定の音素で始まる単語はどれか答えさせる(例 /b/で始まるのはbikeですか、carですか、それともdeerですか?)。残り5試行も同様の手続きで行うが、今度は特定の音素で終わる単語を答えさせる(例 /s/で終わる単語はbusですか、carですか、それともwatchですか?)。正解以外の2つの選択肢の中の1つは正解と意味的に関連した妨害刺激を用いた。検査課題2セットの試行前にはそれぞれ2問の練習課題を設けた。

読み能力

文字の名前と音
以下の文字を用いて文字の名前と音に関する知識を検査した。a, b, c, d, e, f, g, k, l, m, n, o, p, r, t 子どもにプラスティックでできた小文字をランダムな順に提示し、まず文字の音を質問し、次に文字の名前を質問した。
生活環境で見られる活字
17種類の交通標識や買い物袋や商品についているラベル(例 TESCO, STOP, SMARTIES, COKE, THOMAS THE TANK ENGINE, GLADIATORS, BURGER KING, BUTTONS, STOP, CHILDREN, McDONALDS, KITKAT, CORN FLAKES, GIVE WAY, BOOTS, FLINTSTONES, FROSTIES, SAINSBURY’S)のカードを作成した。身の回りにある活字に関する知識を検査するために、子どもにそれぞれのカードにしめした「ロゴ」や単語を識別させた。
単語の読み
単語の読み検査であるBritish Ability Scales Test of Word Reading(Elliot 1983)を実施した。誤答は子どもが読んだ通りに記録し、正答数を用いて読み年齢を算出した。
非語の読み
難易度に差をつけた非語10語の読みを実施した(Snowling, Stothard & McLean 1996による)。非語ごとに別々のカードを作成した。そして子どもにここにあるのは私が作ったでたらめ言葉ですと提示した。最初に、5問の練習試行を行い、練習試行はCVC(子音‐母音‐子音)で構成された非語を用い、子どもが答えるために検査者の助けを得ることができた。もし子どもが非語ではなく実際の単語を答えた場合は、ここにあるのは検査者が作った実際には存在しない言葉であることをあらためて説明して再試行した。もし子どもが練習試行の5語のうち3語が不正解だった場合は検査終了とした。検査継続が可能であった子どもには新たな10語を提示し同様の指示を行うが、検査者によるヒントは与えなかった。刺激は3つのCVCC非語(例 mosp, kisp, hast)と3つのCCVC非語(例 prab, step, snid)、そして4つのCCVCC非語(例 drant, gromp, trolb, twesk)で構成した。

手続き

子どもに個別に面接し一連の検査を2回に分けて実施した。ダウン症群の子どものうち2名は、自宅で検査者によって検査を実施した。他のダウン症候群の子どもと健常群は全員、学校で検査を実施した。

結果

表1 ダウン症群と読み年齢を対応させた健常群の読み課題の成績(平均と標準偏差)
環境活字 単語の読み 非語の読み 文字-名前 文字-音
(最大=17) (最大=90) (最大=10) (最大=15) (最大=15)
ダウン症群 7.72(4.73) 15.83(20.93) 0.97(2.68) 3.93(5.16) 9.05(4.5)
健常群 8.32(4.87) 16.97(21.21) 1.94(3.24) 4.81(5.62) 10.45(4.97)


表2 ダウン症群と読み年齢を対応させた健常群の音韻意識課題の成績(平均と標準偏差)
音節分解 童謡 脚韻抽出 音素抽出
(最大=20) (最大=4) (最大=10) (最大=20)
ダウン症群 12.84(6.54) 2.10(1.63) 1.79(1.9) 9.41(4.01)
健常群 17.89(4.05) 2.52(1.65) 5.60(3.69) 12.10(3.64)

3種類の読み課題の成績を表1に示した。ダウン症群はすべての課題において健常群より劣る傾向がみられたが、これらの差は有意水準5%で有意なものではなかった[生活環境の活字、t(1, 58)=-0.48;単語の読み、t(1, 58)=-0.21;非語の読み、t(1, 58)=-0.97]。このように2群は読みの能力レベルの点では一致していた。さらに、2群の子どもは文字-名前[t(1, 58)=-0.63、有意差なし]および文字-音[t(1, 58)=-1.15、有意差なし]に関しても有意な差は認められなかった。

音韻意識課題の成績を表2に示した。ダウン症群は童謡の知識は健常群とかわらなかった[t(1, 58)=-0.97、有意差なし]が、音節分解[t(1, 58)=-3.62、P<0.001]と脚韻抽出[t(1, 58)=-4.66、P<0.001]、音素抽出[t(1, 58)=-2.72、P<0.01]は有意に劣っていた。ダウン症群では、脚韻抽出課題の成績がチャンスレベルを超えたもの(6/10; P<0.05)は29名中1名のみであった(健常群では31名中17名であった)。しかし、音素抽出課題で50%以上の正答率を示したのは29名中24名であった(健常群では31名中28名であった)。

一見すると、本実験の結果はCossuら(1993a)の結果と同じようにみえる。Cossuら(1993a)はイタリア語を話すダウン症候群を持つ子どもを対象として音素意識は読み年齢を対応させた対照群に比較して劣っていたと述べている。しかし、音節や音素意識にみられる2群の差は、課題理解に影響を及ぼす全般的な認知能力の差による可能性もある。


表3 ダウン症群と健常児のペアによる分析結果
ダウン症群 統制群 t値
BAS読み 17.40(19.6) 8.00(10.5) 1.54
(正答語数)
BPVS語彙 42.65(13.2) 43.18(12.6) -1.45
(素点)
環境活字 8.82(4.6) 6.35(3.8) 1.59
(最大=17)
文字‐名前 5.58(5.5) 2.88(4.6) 1.58
(最大=15)
文字‐音 9.53(5.3) 9.21(4.0) 0.18
(最大=15)
非語の読み 1.06(2.61) 0.88(2.2) 0.22
(最大=10)
童謡の知識 2.41(1.7) 1.94(1.74) 0.78
(最大=4)
音節分解 15.18(5.4) 18.03(2.6) -1.81,P=0.09
(最大=20)
音素同定 10.41(3.39) 11.06(4.3) -0.54
(最大=20)
脚韻抽出 2.00(2.1) 4.76(3.9) -2.32, P<0.05
(最大=10)

この可能性を明らかにするために、我々は言語発達年齢を対応させたペアを両群から選別して、下位グループをつくった。下位グループにおいて、各ペアはBritish Picture Vocabulary Scaleの粗点の差が4点以内とした。結果として17組のペアは測定された読み能力にはやはり差がみられなかった(表3)。ダウン症群は統制群と比較して日常生活で見かける活字と非語の読み、そして文字の読みに関する知識が若干優れていた。しかし、2群の差は有意なものではなかった。ダウン症群は文字の音に関しては統制群の成績と差はなかった。音韻課題になると、ダウン症候群を持つ子どもは童謡の知識が対照群よりわずかに優れていたが音節分解と音素同定課題の成績は劣っていた。しかし、有意差が認められたのは脚韻抽出課題のみであった。ダウン症群で脚韻抽出課題の成績がチャンスレベルを超えたものは17名中1名のみであったが、統制群では17名中8名であった。

読みと音韻意識の関係

表4 健常群(対角上側)およびダウン症群(対角線下側)の読みと音韻能力間の相関係数
読み 音韻意識 文字 語彙 年齢
BAS N-W ENV SYL PHO RHY NUR LN LS VOC AGE
BAS 0.91 0.84 0.38 0.51 0.40 0.37 0.84 0.52 0.59 0.79
N-W 0.86 0.83 0.32 0.47 0.41 0.35 0.82 0.44 0.57 0.75
ENV 0.83 0.64 0.39 0.45 0.30 0.40 0.84 0.51 0.65 0.78
SYL 0.48 0.41 0.43 0.29 0.41 0.13 0.40 0.50 0.45 0.37
PHO 0.51 0.46 0.57 0.35 0.41 0.22 0.59 0.75 0.52 0.45
RHY - - - - - 0.11 0.49 0.63 0.36 0.28
NUR 0.43 0.43 0.36 0.72 0.39 - 0.58 0.16 0.34 0.41
LN 0.60 0.57 0.63 0.45 0.56 - 0.42 0.57 0.52 0.73
LS 0.19 0.00 0.28 0.30 0.27 - 0.10 -0.19 0.53 0.53
VOC 0.61 0.68 0.65 0.48 0.56 - 0.44 0.79 0.06 0.50
AGE 0.21 0.29 0.33 0.24 0.49 - 0.34 0.60 -0.22 0.42

BAS: British Ability Scales Test of Word Reading(単語の読み検査)
N-W:非語、ENV:生活環境の活字
SYL:音節分解、PHO:音素同定、RHY:脚韻抽出、NUR:童謡
LN:文字‐名前、LS:文字‐音
VOC:語彙
AGE:年齢

表4に、ダウン症候群と健常群の、音韻に関する能力、文字についての知識、読みおよび語彙能力それぞれの相関関係を示した(脚韻についてはダウン症群が今回の検査では正答率が50%前後であったため、分析から除外した)。健常群は(対角上側相関係数)3種類の読みに関する課題間と文字-読み対応能力の間には高い相関関係が認められた。音素同定課題と音節分解課題には強い相関関係は認められなかったが、音素同定課題は脚韻抽出課題と読みの課題とは相関関係が認められ、文字-音対応に関する知識とは強い相関関係が認められた(r=0.75)。仮説とは異なり、童謡に関する知識は健常群では音韻意識とも文字-音対応に関する知識(r=0.16)とも相関関係は認められなかった。年齢、語彙レベル、読みに関連する能力との間には中程度から高い相関関係が認められた。年齢と語彙能力を統制しても、読みに関連する課題間の有意な相関は変わらず(0.48から0.79)、文字-名前に関する知識と読み(r=0.58)および音韻能力(0.37から0.46)もそれぞれ相関が認められた。文字-音対応に関する知識と音韻能力には依然として高い相関が認められたが、読書力を予測する指標ではなかった。

ダウン症群では(対角線下側相関係数)3種類の読みの課題と文字-名前対応に関する知識には高い相関が認められ、語彙レベルと読みに関連する能力は中程度から高い相関が認められた。音節分解と音素同定、読みには高い相関が認められた。文字-音対応に関する知識が他の変数と相関が認められなった点が健常群にみられた相関とは異なるパターンである。対照的にダウン症群では、童謡に関する知識は読み能力および音韻意識と高い相関が認められた。結局、健常群では年齢とともに読みの能力は向上するがダウン症群では年齢と読みの能力には関連が見出せないということである。年齢と語彙レベルを統制すると、ほとんどの相関関係は有意ではなくなってしまうが、単語の読みと非単語の読みおよび生活環境にある活字の読み、また文字-音対応に関する知識と生活環境にある活字の読みとの相関は認められた(r=0.56)。

考察

本研究の目的は、ダウン症候群を持つ子どもにおける音韻意識と読み能力の関係を明らかにすることであった。ダウン症候群を持つ子どもにおいては音韻意識と読み能力の間には相関関係があることが明らかとなった。しかし、ダウン症候群を持つ子どもの読み能力を予測する指標は健常児にみられるものとは幾分異なるものであることもわかった。ダウン症群では音韻能力が高い方が低い者よりは読書力が高い傾向はあったが、健常群と同レベルの文字-音対応に関する知識を持っていたにも関わらず、それは読み能力を予測する指標とはならなかった。ゆえに、ダウン症候群を持つ子どもは文字-音対応能力を読みでは別の方法で使用している(あるいは全く使用していない)と考えられる。さらに、健常群ではみられた文字-音および文字-名前対応能力と音韻意識の間に相関関係は認められなかった(参照 Caravolas, Hulme & Snowling 2001)。

音素意識の発達に関する議論において、Byrne(1998)は音素同定と音素不変性の間にみられる特徴について述べている。両者共にアルファベットの規則の基礎として必要なものである。音素不変性は異なる音環境にある音素を一致させるために必要な概念である(例 ‘big’の始めの‘b’は‘cab’の終わりの‘b’と同じであることがわかる)が、音素同定は音素を同定する能力のことである。実験1の結果より、ダウン症候群を持つ子どもは音素意識のごく一部しか持っていないことが示唆された。文字-音対応能力は持っており話し言葉の中から音素を探し出すことはできる。しかし、もし音素不変性という概念を持っていないとすれば、文字-音対応能力と読み能力の間の相関が低いことが説明できるだろう。つまり、彼らは読む際に文字-音対応に関する知識を使っていない可能性があるということだ。

ダウン症候群においてみられた特徴的な障害が脚韻に関するものであったことは予期しないものであった。また、語彙と読み能力を統制すると2群に唯一みられた差は脚韻意識であった。これらの結果は健常児では脚韻課題が4歳にもなればできるようになることと対照的である(Lenel & Cantor 1981; Bryant & Bradley 1985; Muter, Hulme, Snowling & Taylor 1998)。

研究2

研究1で明らかとなった、ダウン症候群を持つ子どもは話し言葉における脚韻判断が音素の同定よりも困難であるということはこれまで言われてきた脚韻意識は音素意識より先に発達するという考えに反する驚くべき結果であった。読みの発達年齢から考えて当然できるだろうと考えられていた脚韻能力が障害されているという事実は予想しがたい結果であったため、我々は追試することとした。研究1で実施した脚韻抽出課題では、子どもは聴覚提示(絵とともに提示される)された単語の脚韻の開始部分を分解し、提示された3枚の絵カードの中から韻を踏んでいるカードを選択することが求められた。この課題はワーキングメモリーに対する負荷が大きいとも考えられる(参照 Byrne 1993)。

脚韻の認知に対する負荷を軽減するために、研究2では2つの単語に同じ韻が含まれているかどうかを子どもに判断させる異同弁別課題を実施した(Bishop & Robson 1989に従った)。研究1の脚韻抽出課題と同様に、課題の困難さが聞こえや聴覚処理過程の問題ではないということを確実にするために刺激提示方法は絵によることとした。音素抽出課題も行なった。今回は目標語とは異なる位置にある音素を抽出するように求めた場合、ダウン症群の子どもが健常群の子どもたちと同じような成績をおさめることができるかどうかを調査した。もしダウン症群の音素抽出能力が「単語のはじめの音を言いましょう」と強調する方法での教育によってつくられたものであれば、聴覚提示された単語の語頭音素の抽出は健常群と同様の成績をおさめるであろうが語尾音素の抽出の成績は低いと考えられる。

方法

参加者
研究1に参加したダウン症候群を持つ子どものうち23名(平均年齢13歳)と、健常児34名(平均年齢5歳4ヶ月)が本研究に参加した。ダウン症群(平均読書年齢:6歳3ヶ月)は健常群(平均読書年齢:5歳8ヶ月)よりわずかに読み能力が高かった[t(1,55)=-2.64, P<0.01]。BPVS による語彙能力では両群[相当年齢:ダウン症群4;02、健常群4;11、t(1,55)=1.92, P=0.059]に若干差が認められた。

研究デザインと検査課題

子どもは個別に面接し、脚韻判断と音素意識課題を行なった。2種類の音韻課題の提示順は順序効果がでないように参加者間でバランスをとるようにした。

音韻意識

脚韻判断
2種類の絵が描かれた66枚のカードを2つのセットに分けた。26枚の第一セットのうち、12枚は韻を踏んだ絵(例 fox-box, eight-gate)が描かれていた。残りの14枚は韻を踏んでいない絵であった。この第一セットに対して検査者は絵の名前を言い、子どもに2つの絵は韻を踏んでいるか、あるいは同じ音で終わるかどうかを尋ねた。検査の開始前に練習課題として4問を実施し子どもに課題ごとに正解、不正解を告げた、しかし検査課題ではフィードバックは行なわなかった。第二セットは40枚のカードで構成され19枚は韻を踏んだ絵が描かれていた。子どもにそれぞれの絵の名前を尋ね、韻を踏んでいるかどうかを答えさせた。第二セットでもフィードバックは行なわなかった。正解ごとに1点を与えた。
音素抽出
実験1で実施した音素抽出課題と同様の課題で、子どもに単語に埋め込まれた語頭音素と語尾音素を同定するように求めた。しかし、前回の検査効果を避けるために新しい刺激を用いた。始めの10試行では検査者は3枚の絵カードをそれぞれに描かれた絵の名前(例 bus, foot, car)を言いつつ提示した。次に子どもにどの絵が特定の音素(例 [k])で始まるかを尋ねた。残りの10試行では検査者は同様の手続きで絵カードを提示し、子どもに特定の音素(例 [d] cheese, bread, egg)で終わる絵はどれか同定させた。各検査の前には2問の練習課題を実施した。

結果と考察

表5 ダウン症群と読み年齢を対応させた健常群の音韻意識課題の成績(研究2)
音素 % 脚韻 %
語頭 語尾 聴覚提示あり 聴覚提示なし
ダウン症群 77.8(19.8) 56.5(28.4) 56.35(19.46) 51.74(15.29)
健常群 86.8(26.7) 73.2(3.19) 81.00(17.94) 74.78(15.84)

2種類の音韻意識課題の結果を表5に示した。研究1の結果と同様に、ダウン症群の脚韻判断課題の成績は健常群と比較して有意に劣っていた。これは検査者が絵の名前を聴覚提示した時も子ども自身が呼称した時にも同じ結果であった。対応のある分散分析により群[F(1,55)=28.31, P<0.001]と脚韻判断課題(聴覚提示あり対聴覚提示なし)[F(1,55)=21.34, P<0.001]には有意な主効果が認められたが、群と課題には認められなかった[F(1,55) <1]。さらに、一標本t検定によりダウン症群の脚韻判断課題の成績はチャンスレベルであることがわかった[t(1, 18)=0.95, 有意差なし]。一方、単語の音素抽出能力は2群に差はみられなかった [F(1, 55)=3.34, 有意差なし] が、音素の位置の主効果[F(1, 55)=50.76,P<0.001]から両群ともに語尾の音素抽出が語頭の音素抽出より困難であることがわかった。群と音素の位置の関係は有意なものではなかった[F(1, 55)=2.53, 有意差なし]が、ダウン症候群を持つ子どもは語尾音素の抽出課題において健常群よりも成績が劣る傾向がみられた。重要なことは、健常群では34人中27人が語尾の音素同定においてチャンスレベル以上の成績を修めたが、ダウン症候群でチャンスレベル以上の成績を修めたのは23人中9人であった。

ダウン症候群を持つ子どもが健常群と比較して、読書力と語彙の理解能力にわずかではあるが差がみられたことを考慮して、第二セットの分析ではBASの単語の読みとBPVSによる語彙能力を共変量とする共分散分析を行なった。分析の結果は第一セットの結果を支持するもので脚韻課題では2群に有意な差がみられ[F(1, 53)=31.82, P<0.001]、音素課題では差はわずかであった[F(1, 53)=3.84, P=0.055]。

このように、研究2では脚韻課題を容易にしたにも関わらず、ダウン症候群を持つ子どもの大部分はなおチャンスレベル(23人中1人だけが最初の脚韻課題でチャンスレベルを超える成績を修め、2番目の課題では23人中2人のみであった)であり、読み障害のない健常群よりも劣っていた。健常群では34人中22人がチャンスレベルを超える成績であった。これらの結果は研究1で得られたダウン症候群を持つ子どもは脚韻能力に特有の障害があるという結果を支持するものであった。本研究のもうひとつの目的は単語の語頭音素と語尾音素の同定能力の差を明らかにすることである。我々は、語頭音素の抽出能力には2群の差がみられないが、語尾音素の抽出能力には2群に有意な差がみられ、ダウン症候群を持つ子どもでは明らかに成績が劣るであろうと考えた。

研究3

研究1と2の結果は、音韻意識の獲得においてダウン症候群を持つ子どもは健常児とは異なる発達パターンを示すことを示唆するもので、語頭の音素に関するものが脚韻能力に先行する結果であった。研究2の脚韻課題において健常児の1/3が60点から最高点の66点までの範囲の得点であったが、ダウン症候群を持つ子どもで上限に近い得点を示したものは1人もいなかった。これはダウン症候群を持つ子どもが話し言葉の韻の単位に気づいていないということを示唆している。しかし、議論の余地はあるが、脚韻判断課題に必要な能力と音素抽出課題に必要な能力には違いがあると思われる。ダウン症候群でみられた韻に関する能力の障害が、課題に必要な能力の違いからきているのかどうかを確かめるために、最終実験としてワーキングメモリーへの負荷が最小限となるように作成したテスト課題を使い韻に関する能力と音素に関する能力を比較した。文字に関する能力と音韻意識および読み能力の間連を調べるために、研究1と同様に、文字-音対応と文字-名前対応能力に関しても検査を実施した。

方法

参加者 本研究の参加者はダウン症候群を持つ子ども30名と健常児30名であった。参加者の中の何人かは以前の研究にも参加したものであった。ダウン症群の中の20名は研究1あるいは2に参加しており、健常群の子どものうち7名は研究2にも参加していた。ダウン症候群を持つ子どもの年齢は7歳10ヶ月から18歳6ヶ月(平均:13;04)、健常群は4歳11ヶ月から6歳5ヶ月(平均:5;08)であった。ダウン症群のWechsler Objective Reading Dimensions検査の単語の読み(WORD; Rust, Golombok & Trickey 1992)を用いて測定した平均読書年齢は6歳3ヶ月で、6歳以下から11歳3ヶ月までの幅がみられた。健常群は読書年齢が等しくなるように選択し、平均6歳(6歳以下から7歳9ヶ月)[t(1, 58)=1.20, 有意差なし]であった。2群はBPVSを用いて測定した語彙能力に差がみられ[t(1, 58)=-2.27, P<0.05]、ダウン症群の粗点は平均38.10点(標準偏差18.60)であったが健常群では47点(標準偏差10.60)であった。研究1、2と同様にダウン症群の読み能力は健常群と対応していたが語彙能力は劣っていた。

研究デザインと検査課題

子どもに個別に標準化された検査を実施し、文字に関する課題および2種類の音韻課題は実施順の影響がでないように配慮して行なった。

音韻意識

脚韻判断
脚韻判断課題の前に練習課題として韻を踏んだ単語(例 cat, pat, hat, rat)を読んできかせ、子どもに「これはみんな同じ音で終わるから似て聞こえるね」(すなわち、at)と教える。2種類の絵が描かれた4枚の練習カードを提示し子どもの答えにフィードバックを行なう。本実験で行なった脚韻課題は実験2で実施したものと同じもの(Bishop & Robson1989を基礎とした)であるが、前回の実験の影響が結果に出ないように単語は異なるものを使用した。2種類の絵が描かれた30枚のカードを使用した。そのうち15枚は韻を踏んだカード(例 swing, ring)であった。検査者は絵の名前を呼称し、それから子どもに2種類の絵は同じ音かどうかを尋ねた。誤答であってもフィードバックは行なわなかった。
頭韻判断
課題の前に、「同じ音で始まる」2つの単語をよくききなさいと子どもに言う。4枚の練習カードを実施し毎回正誤のフィードバックを行なった。頭韻判断課題は脚韻判断課題と同様の方法で実施した。2種類の絵が描かれた30枚のカードを使用し、15枚のカードには同じ音素で始まる語(例 cat, cow)の2種類の絵が描かれていた。検査者は絵の呼称を行い、その後子どもに2つの絵は同じ音で始まるかどうかを尋ねた。誤答であってもフィードバックは行なわなかった。

文字に関する知識

マグネットボードに20個のプラスティックでできた文字を1個ずつ提示した。そして子どもにそれぞれの文字の名前と音を尋ねた。刺激提示順はランダムとし正解1問につき1点を与えた。

結果

表6 ダウン症群と健常群の音韻意識課題の成績(実験3)
頭韻 脚韻
(最大=30) (最大=30)
ダウン症候群
平均(SD)
19.83*(5.59) 16.70(3.04)
健常群
平均(SD)
26.86*(3.37) 23.20*(4.91)

*チャンスレベルより有意に高い成績

ダウン症群と健常群の脚韻判断課題と頭韻判断課題の成績を表6に示した。分散分析の結果、課題の有意な主効果が明らかとなり[F(1, 58)=44.29, P<0.001]、頭韻判断は脚韻判断よりも容易であった。また、群の有意な主効果も明らかとなり[F(1, 58)=45.56, P<0.001]、ダウン症群の成績の方が劣っていた。課題と群の間の相互作用は有意なものではなかった[F(1, 58)= <1]。しかし、一標本t検定によりダウン症候群を持つ子どもの頭韻判断課題の成績はチャンスレベルよりは上[t(1, 29)=4.73, P<0.01]であったが、脚韻判断課題の成績はチャンスレベルであった[t(1, 29)=3.06, 有意差なし]。一方健常群は脚韻、頭韻両方の成績がどちらもチャンスレベルを上回っていた。個別に見ると、健常群の30人中28人が脚韻判断課題において、30人中24人が頭韻判断課題においていずれもチャンスレベルを大きく超える成績(30問中20問以上正解、P<0.05)を示したのにくらべ、ダウン症候群でチャンスレベルを超える成績をおさめたのは脚韻判断課題で30人中14人、頭韻判断課題ではわずかに30人中5人のみであった。

読書力と語彙能力を統制して共分散分析を行なった。この分析結果によっても群[F(1, 56)=75.32, P<0.001] と課題[F(1, 56)=42.77, P<0.001]に有意な主効果がみられたが、相互作用には有意なものはみられなかった[F(1, 56)<1]。このように健常群はダウン症群よりも有意に成績が優れており、両群ともに頭韻判断課題の方が脚韻判断課題よりも有意に成績が優れていることがわかった。

子どもが答えた文字-名前対応の平均個数は健常群では6.43個(標準偏差6.86)であったがダウン症群では8.30個(標準偏差8.22)であった。この違いは有意なものではなかった[t(1, 58)<1]。しかし文字-音対応に関する知識には2群に有意な差がみられた[t(1, 58)=-2.71, P<0.01]。ダウン症候群を持つ子どもの平均得点は13.60(標準偏差6.04)であったが、健常群では17.00(標準偏差3.23)であった。

表7 ダウン症群(対角線下側)および健常群(対角線上側)における 読み、語彙、音韻意識および年齢間の相関係数
読み 語彙 頭韻 脚韻 文字-名前 文字-音
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
(1) 0.54 0.52 0.54 0.77 0.63
(2) 0.76 0.21 0.31 0.60 0.25
(3) 0.77 0.67 0.67 0.51 0.62
(4) - - - 0.55 0.49
(5) 0.62 0.74 0.61 0.59 0.52
(6) 0.29 -0.04 0.21 0.10 -0.24

課題間の相関係数を表7に示した。健常群を表の対角線より上の部分に示し、ダウン症群は下の部分に示した。健常群では文字-名前対応と文字-音対応、読み能力と韻と音素意識の間に高い相関が認められた。語彙能力は文字-名前対応能力および年齢と相関関係が認められた。ダウン症群では、読み能力と文字-名前対応能力、音素意識との間に高い相関が認められた。語彙能力との相関は健常群よりは比較的高いものであった。しかし、研究1と同じように文字-音対応に関する能力と読み能力との関係は弱く、文字-名前対応能力との間には負の相関がみられた。

今回の実験の結果は研究1で明らかになった相関関係を支持するものであった。すなわち、ダウン症候群を持つ子どもでは文字-音対応に関する能力は読み能力とも語彙能力とも音韻意識の検査結果とも関係が認められない。また文字-音対応に関する能力と文字-名前対応に関する能力は相関関係が認められなかったが、文字-名前対応に関する能力はその他のすべての変数との間に高い相関関係が認められた。

考察

研究3の結果よりダウン症群は健常群と同様に2つの単語が同じ音素で始まるかどうかの判断は脚韻が同じかどうかの判断よりは容易であることがわかった。この結果は、一般にいわれている正常発達では韻の単位の方が音素の単位よりも早く理解できるようになるという説(Goswami & Bryant 1990; Treiman & Zukowski 1991)に反するものである。しかし、健常児において音素意識は脚韻意識に先行することを発見したSeymour & Evans(1994)の結果とは一致するものであった(参照 Duncanら、1997)。議論はあるが、本研究に参加した両群の子どもは読みはじめの方略として脚韻よりも単語の始めの音へ焦点をあてがちな文字習得の段階にあると考えられる。つまり、両群ともに語頭の音素が非常に目立つ単位として意識されることは確かである。しかし、我々が得た最も驚くべき結果は、ダウン症候群を持つ子どもは脚韻課題ではチャンスレベルの成績であったにも拘わらず頭韻判断課題ではチャンスレベルを上回る成績をあげたことである。この結果は、先行する2つの実験結果を支持するもので、同じレベルの読み能力の健常児と比較してダウン症候群を持つ子どもには特異的な脚韻に関する障害があることを指摘するものである。ダウン症候群を持つ子どもにみられる特異的な脚韻認識障害について適切な解釈をするには、さらに研究が必要である。しかし、健常児と比較したときダウン症候群を持つ子どもの音韻システムには何らかの基本的な相違があることを伺わせる。

にもかかわらず、音韻意識が優れているダウン症候群を持つ子どもでは読みの能力も優れている傾向が認められた。しかし、ここで再度述べておくが、ダウン症候群を持つ子どもでは文字-音対応に関する能力は読みの能力を予測する指標とはならない。また、ダウン症候群を持つ子どもは健常児と同じくらいに文字の読みを知っていたにも拘わらず、文字の音は少ししか知らなかった(研究1の結果とは対照的に)。文字-音対応に関する能力の差は、子どもが受けている教育システムの違いが一つの要因になっているかもしれない。ゆえに、この論文における各実験間の標本の相違はこの違いを考慮して判断しなければならない。

全体考察

Cossuら(1993a)の結果とは異なり、本研究で行なった実験ではFowler(1995)の結果と同様に、ダウン症候群を持つ子どもも音韻意識課題を行なうことが可能であった。全体としてはダウン症候群を持つ子どもの音韻能力は読み能力を予測する指標になるという結果が得られた。この結果は、Cossuら(Cossu & Marshall 1990; Cossuら 1993a, b; Cossu 1999)による音韻意識は読みの学習の前提条件として必要条件ではないという仮説とは異なる。しかし、我々の研究でも程度はダウン症候群を持つ子どもの読みと音韻意識の発達は健常児とは質的に異なる過程をたどるということが明らかとなった。第一にダウン症候群を持つ子どもは、少なくとも単一の語頭子音群を形成する語頭に位置する音節では頭韻を指摘することができるにも拘わらず(参照;Gombert 2002; Cardoso Martins, Michalick & Pollo 2002)、聴覚提示された単語について脚韻判断することが特異的に困難であることがわかった。次に、文字―音対応に関する能力はダウン症候群においては読み能力を予測する指標にはならないということがわかった。

ダウン症候群にみられる「脚韻認識障害」という結果は、ダウン症候群を持つ子どもは健常児で観察される音韻意識の獲得(Treiman & Zukowski 1991)とは異なる順で獲得していることを示唆する重要なものである。実験1の脚韻抽出課題の実行には同一音素抽出課題の実行よりも高い能力が必要であるという議論が当然予測されるが、我々は実験2で難易度を下げた課題においても同一の結果を得た。さらに実験3において脚韻判断課題と頭韻課題の実行に必要な能力が等しくなるように留意した。ダウン症候群を持つ子どもは3つの実験すべてにおいて脚韻判断課題の成績がチャンスレベルであった。

このパターンを説明するものとしてひとつの可能性を述べれば、話し言葉の類似性をどの程度感受できるかということばで説明できるかもしれない。Byrneらは全体としての語の類似性は子どもが音韻意識課題を実施する際に影響を及ぼす可能性があると指摘している。例えば、Byrne & Fielding-Barnley(1993)はSingh & Woods(1971)やSingh, Woods & Becker(1972)の音素類似度を用いて2条件の韻判断課題を作成した。まず、目標音素と正答と誤答をそれぞれ全体的に類似するようにした(例 beak, bowl, dig)。次に、類似していない状況で子どもに目標音素と韻が一致する単語、一致しない単語(例 beak, bowl, shed)の間の関係を抽出させた。その結果、子どもの得点は、類似していない刺激の方が全体的に類似した刺激よりも有意に高かった。さらに、各刺激の全体的な類似度とその刺激に対して正解であった子どもの人数の関係をみると、段階が高い(類似性が低い)ほど正解であった子どもの数が多かった。このように、全体的な類似性は子どもの音素の同定課題の成績に影響を与えるものである。

この全体的な類似性の作用として重要なのは、多くの課題(本研究で使用したものも含めて)が「本来の」子どもの音韻意識能力を過大に評価する可能性があるということである。しかし、この点に関して本研究の結果は逆のものであった。我々の研究ではダウン症候群を持つ子どもは語頭の音素が等しい単語間の類似性を判断する能力に比較して脚韻判断能力が選択的に劣っているということが明らかとなった。単語の全体的な類似性という点から考えると、語頭の音素課題(一つの音素が同じ)よりは脚韻判断課題(二つの音素が同じ)の方が容易であるはずだ。これには少なくともふたつの可能性が考えられる。一つには、ダウン症候群を持つ子どもが実際に健常児と比較して単語間の音の全体的な類似性に対する感度が劣っていることが考えられる。しかしこれは可能性としては考えにくい。二つ目の可能性はダウン症候群を持つ子どもが語尾よりも語頭の音への感受性が選択的に優れているということである。この二つの可能性に関する研究を行うことは、ダウン症候群を持つ子どもと健常児の音韻能力の違いを明らかにするために今後の重要な課題となる。

ダウン症候群において、文字-音対応の能力が読み能力および音韻能力とは関係しないという結果もまた予想外のものであった。重要なことは、ダウン症候群をもつ子どもが読み能力相応の文字-音対応に関する能力を発達させていることである。因に、実験1では健常群と同レベル、実験3ではわずかに劣る程度であった。読み習得において文字-音対応に関する能力を有効に活用するためには、Byrne(1998)は音素の同定と音素不変性という概念も必要であると述べている。例えば、単語の最後の音素はしばしば無声化する。もし子どもがこのことに気付かないと文字-音対応能力を用いて一文字づつ音になおしていくことが困難になると考えられる。ダウン症候群を持つ子どもが語尾の音素を同定できないという事実は音韻一致が理解できていないことを示唆しており、これにより単語の読みにおいて文字-音知識が利用できないと考えられる。そのかわり、彼らは一つ一つの分節を音になおしていると思われるがワ―キングメモリーの不足(Hulme & MacKenzie 1990)により全部を統合して発音することが困難(Torgesen, Rashotte, Greenstein, Houck & Portes 1987)であったり、構音障害のために単語の読みができないのかもしれない。

以上に示した、文字-音対応能力と読みの関係が乏しいことの理由として考えられることは一見もっともらしくみえるが、文字-名前対応能力との有意な相関が認められないことを考慮していない。さらに、文字-名前対応能力と読み能力との関係はダウン症候群を持つ子どもでも健常児でも変わらない。最近のCaravolas, Hulme & Snowing(印刷中)の研究では、文字-音対応能力は綴りの能力を予測する指標となるが、文字-名前対応能力は読み始めの能力を予測する指標とはなるが、綴り能力を予測する指標とはならないことが明らかとなった。この結果は、文字-音対応能力は単語を綴る手法の発達に重要であるが、文字-名前対応能力は子どもがいかにうまく学習するか、また文字と音あるいは意味との関係をいかに多く単語ごとにマッピングするかという指標であることを示す。ここで同様の論議がまた考えられる。文字-名前対応能力はダウン症候群を持つ子どもの読みの指標である、というのは基本的には視覚的シンボルとその名前の結びつきを学ぶ能力をはかるものともなるからである。しかし、ダウン症候群を持つ子どもはこの能力と文字-音対応能力を結び付けることがないようで、文字-音対応能力は独立して発達することが明らかとなった。我々の研究に参加したダウン症候群を持つ子どもの中の数人が、どんな単語も綴ることができるのに文字-音対応能力を用いることができずアルファベットの原則を十分には理解していなかったことは興味深い。

要約すると、我々の研究で明らかになったことは音韻に関する能力は健常児(参照Cardoso-Martins & Frith 2001)と同様にダウン症候群においても読みの発達と関連している。しかし、ダウン症候群と健常児では音韻発達パターンが異なり、読み習得の方法も両者は質的に異なっていることがわかった。これはダウン症候群を持つ子どもは音素意識が完全ではないことを示している。つまり、語頭の音素は同定できるが、音素の不変性は理解していない。非語の読み能力に示されているように、文字-音連合規則をある程度用いることはできるが、健常群と比較してダウン症候群は読みの際に音韻能力にはあまり頼っていないようだということも明らかとなった。

しかし、我々の得た結論は決して完全なものではない。我々の研究結果は他の研究者(Cardoso-Martins ら 2002, Gombert 2002)によっても支持されてはいるが、ダウン症候群には脚韻認識障害があると断定するにはなお多くの方法論的問題が残されている。さらに、ダウン症候群に特有の文字-音対応能力と読みの間に関係がみられないことの原因は明らかになっておらず、特にこの結果は個人差、例えば記憶の問題や構音の問題などによるものか、彼らが受けた教育の違いによるものなのかということは明らかになっていない。本研究参加者のほとんどは養護学校に在学しており、可能性として普通学級での統合教育を受けているダウン症候群を持つある子どもは健常児と同様の読み書きに関する「ごく普通の教育」を受けているため本研究とは異なる結果がえられるかもしれない。今後の研究として、音韻、読みおよび読みに関連するスキルとの因果関係を明らかにすることを目指さなければならない。その際、刺激材料、例えば語の全体的な類似性を統制するなどに十分留意すべきである。因果関係を明らかにするには指導効果の研究が最も良い。指導効果の研究は、ダウン症候群特有の音韻意識の発達や、文字-音対応能力と読み能力に関係がないといった本研究知見を確認する有効な方法となるであろう。

謝辞

本研究に参加してくれた子どもたちと保護者の皆様および学校関係者の皆様に感謝申し上げます。また北ヨーク州ダウン症候群協会のご協力に心からの感謝を申し上げます。

1.脚韻課題の成績が相関関係の比較に含まれていないのは、この課題で50%前後以上の正答率であったダウン症候群を持つ子どもがほんの数人であったためであることを改めて述べておく。

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Address for correspondence: Professor Margaret J. Snowling, Department of Psychology, The University of York, Heslington, York YO1O 5DD, UK

E-mail:mjsl9@york.ac.uk