愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所年報26号
No.2
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
平成9年度
4.生化学部
研究の概況
加藤兼房
平成9年度は、第三研究室研究助手の大橋佳代子ががんセンターへ異動し、後任として立松千鶴が着任した。第二研究室研究員の稲熊裕はカナダ国ラバル大学への派遣が終了し、6月末に帰国した。
第一研究室の概要:細胞が神経伝達物質やホルモンなどにより外から刺激を受けると、まず細胞膜に存在する受容体がその情報を受け、ついでその情報を三量体GTP結合蛋白質(G蛋白質)に伝える。G蛋白質はα、β、γの3種類のサブユニットによって構成されており、刺激が伝わるとGTPがαに結合し、ついでαとβγサブユニットに解離し、両者とも効果器とよばれる酵素やイオンチャネルなどを活性化する。G蛋白質の関与する機能は研究が進むにつれてますます多岐に渡ることが明らかになってきたが、これらの機能にαやβγがどのように使い分けられているのか、とくにβγについてはよくわかっていない。第一研究室ではβγの構造と機能、特にこれまでに少なくとも11種類見つかっているγの各分子種が機能とどのように連関しているかについて研究を進めている。当研究室で構造を明らかにしたγ12は多くの細胞や組織に分布しているγサブユニットであるが、細胞膜だけでなく細胞骨格のストレスファイバー上にも存在していることを昨年みいだした。本年度は、βγ12を繊維芽細胞に多量発現させると何が起こるかを調べると、ストレスファイバーが消え、細胞が 丸くなる傾向が観察された。βγ2ではこのような現象は見られないので、βγ12は細胞接着に関与しているのではないかと推測される。さらに詳しい解析によりγ12の機能解明が期待される。また、γ10、γ11はこれまで蛋白質として細胞や組織にその存在が示されていなかったが、今回、ウシ肺より両γを精製し、同定した。さらに、それらの分布も明らかにした。γサブユニットは1つの細胞内に複数の分子種が存在するので、主要なγのほうがより重要と考えられるが、よく用いられているイムノブロット法では主要なγを見つけるのは困難であった。そこで、今回αサブユニットに対する抗体による免疫沈降法でβγを一緒に沈降させ、そこに含まれるγサブユニットを蛋白染色で観察できる方法を開発した。
第二研究室の概要:生物は種々のストレスに曝されると、ストレス蛋白質と称される一群の蛋白質を細胞内に蓄積し、新たなストレスに対して耐性を持つようになる。このストレス応答機構は生命体が地球上に現れて、最初に獲得した自己防御機構と考えられている。ストレス蛋白質は非ストレス下の環境でも細胞内に存在し、新生蛋白質の折りたたみや移動、変性しかかった蛋白質の再折りたたみを助け、いわゆる「分子シャペロン」としての機能を営む。第二研究室ではストレス蛋白質の中、比較的低分子量(20-30kDa)のhsp27、αBクリスタリン、および当研究室で発見したp20について研究を進めている。これら3種類の蛋白質はそのアミノ酸配列に類似性が高い部分(αクリスタリンドメイン)をもち、もとは一つの蛋白質から進化してきたものと思われる。これら3種類のストレス蛋白質の合成がどのようにして促進されるのか?ストレス蛋白質はどのようにして細胞のストレス耐性をもたらしているのか?このような現象を臨床学に応用できないか?などについて研究を行っている。また、上記の3種類のストレス蛋白質は、他のストレス蛋白質と異なり、細胞がストレスを受けると直ちにリン酸化 される。しかし、リン酸化の生理的意義はよく分かっていない。平成9年度は、前年度に続き、αBクリスタリンのリン酸化について研究を進め、リン酸化される部位、どのようなストレスでリン酸化されるかなどを世界に先駆けて明らかにした。ラットを用いて痙攣発作後にストレス蛋白質が脳のどの部位でどのように応答するかなどを解析して、神経系におけるストレス応答の生理的、病理的意義を解明する研究も進められた。一方、低分子量ストレス蛋白質が進化的によく保存された蛋白質であることを利用して、総遺伝子量がヒトのおよそ10分の1のショウジョウバエをモデル動物として低分子量ストレス蛋白質と相互作用する蛋白質としてUBC9を同定した。
第三研究室の概要:細胞が死ぬプロセスには、懐死とアポトーシスの2通りがある。前者は主に物理的な力による強制的な死であるのに対して、後者は細胞に内在する遺伝的プログラムが作用する自発的な死と考えられる。第三研究室の滝澤は、ウイルス感染によるアポトーシス誘発機構をインフルエンザウイルスを用いて検討している。インフルエンザウイルスは、毎年広範囲に流行を繰り返し、社会的影響の極めて大きいウイルスであるが、その細胞障害作用は明らかではない。本年度も、インフルエンザウイルスのアポトーシス誘発に関与しているFas/Fasリガンド系発現増加のメカニズムを引き続き解析した。また、Fasの下流で作用しているプロテアーゼ(カスパーゼ)の解析も行った。一方、ウイルス感染によるFas誘導に関わっていると予想されるプロテインキナーゼ(PKR)が、過剰発現によりアポトーシスを誘導することが示されている。そこで、PKRのアポトーシスにおける役割をHTLV-1感染細胞を用いて解析した。フィレンシンは中間径フィラメントに属する、レンズに固有な細胞骨格タンパク質である。フィレンシンは、レンズ線維細胞の分化に呼応して発現するので、レンズの形成や透明 化に関与しており、その発現異常は白内障や小眼球症の原因となると思われる。今回フィレンシンの遺伝子プロモータを単離し、フィレンシンの発現制御機構について解析を行った。フィレンシン遺伝子の発現には、プロモータ領域の、Sp1とAP-2と呼ばれる二種類の転写因子の結合配列が関与していることが明らかになった。
今年度は以下に示す文部省科学研究費の援助を受けた:重点領域研究2件(分子シャペロン、加藤;神経細胞死制御、加藤)、基盤研究3件(B:浅野、C:滝澤、稲熊)。
G蛋白質γサブユニットγ10、γ11の同定と組織分布
森下理香、上田 浩、加藤兼房、浅野富子
哺乳類のG蛋白質γサブユニットは、cDNAクローニングによりこれまでに11種類のサブタイプが報告されている。これらのうちγ10とγ11はまだ蛋白質が同定されていないのでウシ肺よりこれらの単離を試みた。両γサブユニット検出のため、γ10とγ11のアミノ末端の配列に相当するペプチドを合成し、これを用いてそれぞれの抗体を作製した。抗γ10と反応するγは、膜標品のコール酸抽出液を調製後、DEAE-Sephacel、ゲルろ過、Heptylamine-Sepharose、Phenyl-5PWの各カラムクロマトグラフィー、さらに変性下で5PEカラムによる逆相HPLCを順次行って精製した。精製蛋白質のアミノ末端はブロックされていたためV8プロテアーゼで消化後、消化断片のアミノ酸配列を解析した。消化断片のアミノ酸配列はγ10のcDNAから予想されるアミノ酸配列と完全に一致したことから、精製蛋白質はγ10であることが判明した。一方、抗γ11と反応するγの精製は、DEAE-Sephacel、ゲルろ過、Heptylamine-Sepharose、Mono Qの順にカラムクロマトグラフィーを行い、さらに変性下で5C8と5C18カラムを用いた逆相HPLCにより行った。精製蛋白質の部分アミノ酸配列はγ11のcDNAから予想されるアミノ酸配列と完全に一致した。γ11のアミノ末端はメチオニンが除かれ未修飾のプロリンで始まっていることが明らかになった。またγ11は非変性下でもβから遊離した形で精製されることより、他のγと比べβとの結合が弱いと考えられる。
特異抗体を用いてγ10とγ11のラットにおける組織分布を調べると、両γは種々の組織に存在し、mRNAの解析結果と一致した。γ10はどの組織でも低濃度であったが、γ11は比較的高濃度存在し特に血小板と白血球に多かった。
G蛋白質αサブユニットに対する抗体による免疫沈降で共沈するγサブユニットの解析
浅野富子、上田 浩、森下理香、仙波りつ子1、加藤兼房
G蛋白質のγサブユニットは多くの種類の分子種が知られており、1つの細胞内にも複数の種類のγが存在している。したがって、細胞や組織の中では主要なγがより重要と考えられる。イムノブロット法は細胞や組織に発現しているγの種類を知るには良い方法であるが、標準として精製γサブユニット蛋白質がなければ、どのγが主要な分子種かを知ることができない。γサブユニットの全体像を知るためには、γと強く結合しているβサブユニットに対する抗体で免疫沈降を行えばよいと考えられるが、実際に試したいくつかのβに対する抗体では免疫沈降できなかった。そこで、G蛋白質のαサブユニットに対する抗体による免疫沈降でβγを伴う条件を検討したところ、界面活性剤を1%Triton X-100+0.5%コール酸にすると効率よくβγが共沈した。各種αサブユニットに対する抗体で共沈するγを比較すると、Gsα、Giα、Goα、Gqαいずれの抗体でも同じ種類のγが同じ比率で存在していることから、αとβγは抽出液中でランダムに入れ替わっているものと考えられる。従って、どのαの抗体を用いても抽出液中の全種類のγが沈降してくることが明らかになった。そこで、PC12、C6、Swiss3T3細胞の抽出液をGoαまたはGiαに対する抗体で免疫沈降し、沈降物を電気泳動後銀染色してγを観察し、イムノブロットによってそれらの同定をした。PC12細胞にはγ3以外に新規と考えられるγが存在した。一方、C6細胞には、γ2、γ5、γ10、γ12が、Swiss 3T3細胞にはγ5、γ10、γ12が銀染色で観察された。HL-60細胞を各種薬物で顆粒球様細胞に分化誘導すると、著しいγサブユニットの分子種の変化が見られた。未分化の細胞ではγ5しか発現していないが、分化に伴いγ2が出現し、特にレチノイン酸処理では大部分のγ5がγ2に置き換わることが判明した。
1周生期学部
G蛋白質βγサブユニット強発現による細胞の形態変化
上田 浩、森下理香、山内淳司1、伊東広1、上代淑人1、加藤兼房、浅野富子
G蛋白質は細胞膜上に存在し、受容体への刺激を細胞内エフェクター分子に伝達すると考えられてきた。昨年、我々はSwiss3T3細胞やC6グリオーマ細胞などの培養細胞で、γサブユニットの1つであるγ12が細胞膜だけではなく、細胞骨格のストレスファイバー上にも存在することを示し、G蛋白質の新たな機能を示唆した。またこのことは細胞接着斑付近に局在を示す他のサブタイプであるγ5とは異なっており、細胞内におけるγの局在の違いが、機能的差異を反映している可能性が考えられた。
そこで我々は、細胞内におけるγ12の役割およびγ12と他のγとの機能的差異を調べるため、培養細胞をもちい遺伝子導入実験を試みた。まずγ12のcDNAをPCRを用い調製し、そのcDNAをサイトメガロウイルスプロモーター領域をもつ発現ベクターに組み込み発現プラスミドを調製した。そしてG蛋白質の各サブユニットの発現プラスミドとともに、リポフェクション法を用い一過性にNIH 3T3細胞に共発現させた。各種γの抗体を用いた免疫細胞染色およびローダミンファロイジンによる蛍光染色を行い、遺伝子導入細胞の形態および細胞骨格系の変化を観察した。β1γ12を強発現した細胞ではストレスファイバー構造が見られず、また微分干渉観察すると、round-ingを起こしており、細胞接着が弱まっていると考えられる結果を得た。一方、β1γ2を同程度に強発現させた細胞では、そのような形態変化が見られる細胞は非常に少なかった。また、G蛋白質αサブユニットの1つであるGi2αをそれぞれのβγと共発現すると、β1γ2、β1γ12とも形態変化は認められなかったことから、βγが細胞の形態変化に関わっていることが強く示唆された。現在、このβ1γ12による細胞形態変化の詳しいメカニズムと生理的意義について検討中である。
1東京工業大・生命理工
αBクリスタリンのリン酸化活性の検出法
伊東秀記、亀井慶子1、稲熊 裕、加藤兼房
我々は、今までに、低分子量分子シャペロンであるαBクリスタリンもhsp27と同じように、種々のストレスによって、分子中のセリン残基が最高3カ所(19Ser,45Ser,59Ser)リン酸化されることが明らかにしてきた。また、それぞれのリン酸化セリンを含むヒトおよびウシ(ラット)αBクリスタリン配列のペプチド(p19S,p45S,p59S)を合成し、ウサギに免疫して抗血清を得て、抗原結合アフィニティーカラムを用いて特異抗体を調整した。得られた抗体はそれぞれのリン酸化部位を特異的に認識することがウェスタンブロット法で確認された。抗p45S抗体は特異性、親和性が高く免疫測定系を確立し、免疫組織染色にも利用できたが他の二種類の抗体はウェスタンプロット以外は利用できなかった。現在、新たな異なる配列のペプチドを合成し、免疫組織化学および免疫測定法にも応用できるp19Sおよびp59Sの抗体を作成中である。一方、αBクリスタリンをリン酸化する活性の検出が、通常の方法、すなわち、ストレス負荷細胞の抽出液に非リン酸化型の精製ウシαB2クリスタリンと[32P]ATP/Mg2+を加えてインキュベートしてもαB2クリスタ リンのリン酸化は検出できなかった。クリスタリンは水溶液中では500kDa以上の重合体を形成するが、この重合状態が細胞内の自然な状態のクリスタリンと精製したクリスタリンで異なり、試験管内で加えた精製クリスタリンのリン酸化部位にプロテインキナーゼがアクセスできないことが推測された。一方、αBクリスタリンをリジルエンドペプチダーゼで消化すると、N末端72アミノ酸残基よりなるペプチド(N-72K)、すなわち三カ所のリン酸化部位をもった、重合する性質を失ったペプチドが得られることを見つけた。このN-72Kを基質として、リン酸化活性を測定してみると、32PがN-72Kに取り込まれること、また三カ所のセリン残基がリン酸化されいることがウェスタンブロットで確かめられた。N末端10ペプチドで作成した抗体と、抗p45S抗体を用いて、セリン45のリン酸化されたN-72Kを2時間で高感度測定できる系も確立し、これらの方法を用いて、αBクリスタリンリン酸化酵素の精製と同定の研究が進行中である。
1共同研究科
αBクリスタリンリン酸化酵素
加藤兼房、伊東秀記、稲熊 裕、亀井慶子1、岩本郁子1
αBクリスタリンのリン酸化活性が、αBクリスタリンのN末端72ペプチド(N-72K)を基質として用いることにより検出できることが分かり、酵素反応生成物をtricine-SDS-PAGE後、それぞれのリン酸化部位を認識する抗体(抗19S、抗45S、および抗59S)を用いたウェスタンブロットにて、N-72K中のリン酸化セリンを検出して、それぞれの部位のリン酸化活性が測定できるようになった。一方、αBクリスタリンN末端抗体と抗p45S抗体を用いたセリン45のリン酸化を測定できるイムノアッセイ系も活性の精製に役だった。U373MG細胞に4mM H2O2と2.5nMカリキュリンA(プロテインフォスファターゼの阻害剤)を1時間暴露し、リン酸化活性を増加させた細胞のホモジェネート遠心上清をフィルターで濾過後、1mM ATP/10mM Mg2+を加えて30℃、10分間インキュベートすると45Sキナーゼ(S45-K)活性は2倍近くに増加する。これをDEAE-5PWカラムにかけ、食塩の濃度勾配で3カ所のセリンのリン酸化活性がほぼ同じ分画に溶出された。これらを活性のある部分を集め、濃縮後Superdex 200のゲル濾過カラムにかけると、セリン19キナーゼ(S19-K)活性とセリン59キナーゼ(S59K)活性は約60kDaの位置に、S45-K活性は約40kDaの位置に溶出された。S19-K活性は非常に不安定であった。再クロマトして得られたS45-K分画とS59-K分画、およびリコンビナントErklを用いて種々の蛋白質(αBクリスタリン、N-72K、αAクリスタリン、hsp27、ミエリン塩基性蛋白質)のリン酸化を[32P]ATPを使って調べると、S45-KとErklはN-72Kとミエリン塩基性蛋白質を特異的にリン酸化し、S59-KはN-72K以外にhsp27、αAクリスタリンのリジルエンドペプチダーゼ消化物およびミエリン塩基性蛋白質をリン酸化した。また、Erklによりリン酸化されるN-72Kはセリン45だけであった。以上の結果より、S45-Kはp42/44MAPKであり、S59-KはMAPKAPK-2であることが示唆された。なお、S19-Kに関しては不明である。
1共同研究科
細胞周期分裂期で促進されるαBクリスタリンのリン酸化(2)
加藤兼房、伊東秀記、亀井慶子1、河村則子1、佐賀信介2
我々は、U373 MG ヒトグリオーマ細胞中のαBクリスタリン分子のリン酸化部位(19Ser,45Ser,59Ser)を明らかにし、それぞれのリン酸化セリンを認識する特異抗体を作成した。三種類の抗体の中で、親和性が最も高く、他の蛋白質との交叉反応性もなく特異性の高い抗p45Sを用いてimmunofluorescence法にてU373MG細胞を染色すると、分裂期の細胞が選択的に強く染色されることを見つけた。HeLa-3S,Swiss 3T3,NIH 3T3,C6細胞などの細胞でも同様に普遍的に、分裂期の細胞が染色されることを見つけた。チミジンとノコダゾールを使って、分裂期細胞を集め、等電点電気泳動-ウェスタンブロット法により、生化学的にもリン酸化αBクリスタリンが分裂期に増量していることを、U373MG、3Y1、BRL3A細胞で確認した。また、αBクリスタリンC末端ペプチドで作成した抗体と抗p45S抗体を使った、セリン45のリン酸化されたαBクリスタリンの特異的免疫測定系を用いて、分裂期のHeLa細胞中でもセリン45のリン酸化されたαBクリスタリンが激増していることを確認した。一方、分裂期のU373MG細胞をSDS-PAGE後、三種類の抗体(抗19S、抗45Sおよび抗59S)でウェスタンブロットすると、セリン19とセリン45のリン酸化は激増しているのに対し、セリン59のリン酸化は逆に分裂細胞では低下していることが判明した。三カ所のセリンのリン酸化活性をαBクリスタリンのN末端72ペプチド(N-72K)を基質として用いて、リン酸化ペプチドを三種類の抗体によるウェスタンプロットで検出して、リン酸化活性を測定すると、予想通りS19-kinaseとS45-kinaseの活性は分裂期で高進しているのに対し、S59-kinaseの活性は低 下していた。このようにαBクリスタリンのリン酸化を触媒するプロテインキナーゼは二種類以上あり、それぞれのセリン残基に異なるプロテインキナーゼの関与が示唆された。しかし、細胞分裂期に認められるそれらの活性の変動がどのような生理的意義をもつのかは不明である。
1共同研究科、2愛知医大
カイニン酸痙攣誘導ラット脳におけるストレス蛋白質の発現
加藤兼房、仙波りつ子1、竹内郁夫2、伊東秀記、亀井慶子3
生後33日のSD系ラットに10mg/kgのカイニン酸を腹腔内投与して、痙攣が誘発されたラットについて0、24、48、72、96時間後および10日後の中枢神経系各部位のhsp27およびαBクリスタリンをイムノアッセイ法にて測定したところ、カイニン酸投与後48-96時間で極大値(1.5-2mg/mg protein)を示す30-50倍の顕著なhsp27の誘導が海馬と内嗅皮質で観察された。10日後でも数百ng/mg proteinの高いレベルであった。海馬におけるhsp27のmRNAレベルも顕著に増加していた。嗅球でも軽度のhsp27の誘導が認められたが、小脳では応答がなかった。4種類のカルシウム結合蛋白質(S100α,S100β,28-kDa calbindin-D,parvalbumin)濃度を同一検体で測定したところ、28-kDa calbindin-Dとparvalbuminが小脳では海馬の10倍以上存在し、これが小脳への障害を防いでいることが示唆された。なおCu/Zn SODおよびMn SODの濃度はカイニン酸誘導発作によって顕著な変動はなかった。αBクリスタリンも海馬と内嗅皮質で48時間後に数倍の濃度に上昇していたが、極大値でも50ng/mg protein以下の低濃度であった。一方hsp70とhsc70の応答を96時間後の海馬についてウェスタンブロット法で調べたところ、hsp70は明らかに増加していることが分かったが、濃度は低く、僅かに検出できる程度であった。hsc70のレベルは増加していなかった。96時間後の脳のhsp27の局在を知るために、抗hsp27抗体を用いて、ビブラトーム切片およびパラフィン切片を免疫組織化学的に染色すると、海馬、視床、梨状葉皮質、内嗅皮質、脳梁のグリア細胞およびニューロンが強く染色された。正常対照ラットでは、海馬錐体細胞など神経細胞が染色され、グリア細胞はほとんど染色されなかった。
以上の結果より、hsp27の顕著な発現誘導はカイニン酸誘導発作後に傷害された組織のグリア細胞で認められ、障害組織の修復に関与していることが推測された。
1周生期学部、2発生学部、3共同研究科
低分子量ストレス蛋白質p20の生理学的機能の検討:p20による血小板活性化の抑制
松野浩之1、小澤 修1、丹羽雅之1、植松俊彦1、伊東秀記、加藤兼房
近年、私共が新たに発見しそのアミノ酸配列を決定したp20(低分子量ストレス蛋白質)は血管壁及び循環血流中にも存在するがその生理学的機能についてはいまだ不明である。今回、私共はp20の生理学的意義と機能を検討する目的で循環血流中に主要な役割を持つ血小板に注目し、p20の血小板に対する影響をヒト及びハムスターの血小板を用いて検討した。血小板は多種多様なアゴニストに活性化されるが、p20はその主要因の一つであるトロンビン刺激による血小板凝集を著しく抑制した。また、血小板膜受容体GPIb/V/IXを介して凝集を引き起こすボトロセチン(蛇毒)刺激による凝集も用量依存的に抑制した。この結果は、近年注目されるshear stress誘導の血小板活性化に関与すると考えられているGPIb/V/IXを介しておこる血小板の粘着を抑制するものとして注目される。また、p20をハムスターに静脈内投与し、その後採血した血小板について同様な検討をした結果、p20は毒性の発現は無く血小板凝集の抑制効果を示した。以上の結果はp20が今までに知られていない生体内由来の新しい抗血小板物質として注目される。さらに、p20の重合体と解離体について同様な検討をした結果、解離体について血小板凝集の抑制作用が強く発現し、重合体ではほとんど見られないことを確認した。一つの仮説として重合体で血管壁に蓄積されるp20が循環中に解離体として放出され、活性体として機能する可能性があるものと考えられた。すなわち、p20は血小板凝集・粘着を抑制する機能をもつ新しい生体内物質であることが初めて示唆された。また、この結果は生体内における血管傷害による血栓形成や血管肥厚のメカニズムを解明する新たなてががりになるものと考えられた。現在、p20について組織からの放出機構の解明と血小板との相互作用部位の詳しい解明を目指している。
1岐阜大・医
低分子量ストレス蛋白質と相互作用する蛋白質の探索
稲熊 裕、Denis R. Joanisse1、 Robert M. Tanguay1
低分子量ストレス蛋白質(20-30 kDa)についてはinvitroにおいて熱に対する蛋白質の安定化作用があることが報告されており、分子シャペロン様の機能が予想されているが、具体的な基質などについては分かっていない。医学的には先天性異常疾患のアレキサンダー病、アルツハイマー病あるいは虚血脳で発現が亢進し、神経系における機能解明が待たれている。低分子量ストレス蛋白質は筋組織に多量に存在し、その意義はやはり不明である。そこで我々は低分子量ストレス蛋白質の細胞内における機能を追究するため、ショウジョウバエを材料としてTwo-hybrid法によって低分子量ストレス蛋白質が相互作用する蛋白質のスクリーニングを行った。これによってユビキチン結合酵素(UBC)のひとつであるUBC9がショウジョウバエのホモログとして新規に同定された。ユビキチン結合酵素はユビキチン・プロテアソームによる蛋白質分解系に関わる酵素で、ユビキチン活性化酵素で活性化されたユビキチンを基質となる蛋白質に結合する。また、UBC9は細胞周期、転写因子の活性化など生物学的に非常に重要な機能と結びついている。低分子量ストレス蛋白質とUbc9の蛋白質間相互作用はin vitroの免疫沈降によっても確認された。サザン・ブロット解析によって2コピー存在することが予想され、in situhybridizationによって染色体上21Dの位置で近接して存在することが確かめられた。また、我々の同定したショウジョウバエUBC9はubc9に遺伝子変異を導入した酵母の温度感受性株の成育を相補した。Ubc9は発生の全過程で発現していたが特に胚発生期に高い発現がみられた。また雄よりも雌に発現が高いことからこの蛋白質はmaternalに転移されると考えられた。一種類のgenomic cloneの単離にも成功した。
1Univ. Laval
インフルエンザウイルス感染によるFas、Fasリガンドの発現誘導機構の解析
滝澤剛則、立松千鶴、中西義信1
われわれは、これまでインフルエンザウイルス感染により、培養細胞にアポトーシス受容体であるFasが転写レベルで増加することを見いだし報告してきた。一方、Fasがアポトーシスを引き起こすには、リガンドによって活性化される必要がある。そこで、インフルエンザウイルス感染に伴って、Fasリガンドも増加するかどうか検討したところ、Fasとほぼ同じ時間経過で、Fasリガンドも増加することがわかった。その際、FasとFasリガンドの発現は、同一の細胞で増加してくることもわかった。また、Fasリガンドの効果を抑制することのできる抗Fasリガンド抗体によって、インフルエンザウイルスによるアポトーシスも抑制されることから、確かにウイルス感染によるアポトーシスに、Fas/Fasリガンド系が作用していることが明らかになった。われわれは、Fasの発現がウイルス感染のみならず、2本鎖RNA刺激によっても増加することを観察しているが、Fasリガンドは2本鎖RNA刺激によっては増加しなかったことから、FasリガンドはFasとは異なるメカニズムで増加するものと考えられた。詳細なメカニズムの解析は今後の課題である。
1金沢大・薬
HTLV-1 taxによる2本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の発現抑制
滝澤剛則、立松千鶴、中西義信1、藤井雅寛2
PKRは2本鎖RNA(dsRNA)により活性化されるキナーゼで、ウイルス感染細胞の蛋白合成抑制に関与することが知られている。最近、PKRの過剰発現によりアポトーシスが誘導されることが示されている。我々はこれまで、インフルエンザウイルスによるアポトーシス誘導に、PKRが関与する可能性を示してきた。一方、tax発現細胞がFasによるアポトーシスに抵抗性を示すことから、taxがPKRを抑制する可能性が考えられたため、tax発現細胞でのPKRを解析した。tax発現細胞として、HTLV-1持続感染細胞であるMT-2、HUT102北里、TL-Su、コントロールとしてJurkat、MOLT4、CCRF-CEM細胞を用いた。また、CdCl2によりtaxが誘導されるJPXT-1、変異taxが誘導されるJPXT-1/M細胞を用いた。その結果、MT-2、TL-Su細胞でPKRは量、活性ともに減少していた。特に、TL-Su細胞ではPKRはほとんど検出されなかった。分子量の若干小さいtaxが発現しているHUT102北里細胞では、PKRはコントロールとほとんど差がなかった。さらに、JPXT-1細胞でCd添加によりtaxを誘導すると、PKRの量、活性ともに減少したが、JPXT-1/Mではほとんど変化しなかった。PKRのmRNAの量は、tax発現の有無でほとんど変わら ず、PKRの安定性にも差はなかった。また、taxはPKRと免疫共沈せず、PKRの活性化にも影響しなかった。以上から、taxはPKRを転写後のレベルで抑制するが、直接作用の可能性は少ないと考えられた。tax発現によるPKR減少が、Fas抵抗性に関わっている可能性については、解析を進めている。
1金沢大・薬、2新潟大・医
インフルエンザウイルス感染によるシステインプロテアーゼ(カスパーゼ)の活性化
滝澤剛則、立松千鶴、中西義信1
アポトーシスのシグナル伝達に、システインプロテアーゼであるカスパーゼファミリーが重要な役割を果たしていることが明らかにされている。そこで、インフルエンザウイルス感染によるアポトーシスの際にも、カスパーゼが作用しているかどうかどうかを、主に阻害剤を用いて検討した。カスパーゼ阻害剤として、ペプチド阻害剤Z-VAD-fmk(カスパーゼ-8を含む広領域阻害)、Z-IETD-fmk(カスパーゼ-8阻害)Ac-DEVD-CHO(カスパーゼ-3阻害)、Ac-YVAD-CHO(カスパーゼ-1阻害)を用いた。その結果、Z-VAD-fmk、Z-IETD-fmkにより、ウイルスによるアポトーシスは効果的に抑制されることがわかった。しかしながら、Ac-DEVD-CHOは部分的な効果のみ、また、Ac-YVAD-CHOはほとんど効果が認められなかった。カスパーゼ-8は、アポトーシス受容体のほぼ直下で作用することから、最上位のカスパーゼを抑制することで、ウイルスの細胞障害を抑制できることが示唆された。このことは、カスパーゼ-8を阻害することが知られている、ウイルス由来因子であるcrmA、E8-FLIP遺伝子を細胞に導入することによって、アポトーシスが抑制されることからも裏付けられた。一方、感染細胞抽出液中のカスパー ゼ-3活性は増加していたことから、ウイルス感染はカスパーゼ-3非依存性の経路も活性化している可能性が示唆された。カスパーゼ-1は関与していないだろうと考えられた。実験に用いた阻害剤は、いずれもウイルスの複製を抑制しなかったことから、カスパーゼの活性化はウイルス複製より下流で起きているものと考えられた。
1金沢大・薬
レンズ線維細胞に特異な細胞骨格タンパク質フィレンシンの遺伝子発現機構の解析
正木茂夫
Elo(遺伝性小眼球症)マウスでは、眼球レンズ皮質深部と核質の大部分の線維細胞が生後1週間ないし10日で崩壊する。したがって成熟したEloマウスレンズは上皮細胞と、線維細胞のうちの未分化なものから構成されていると考えられるので、その構成成分を正常レンズと比較したところ、Eloマウスレンズではフィレンシンと呼ばれるタンパク質が欠損していた。フィレンシンはレンズ繊維細胞にのみ発現していること、また遺伝子解析の結果フィレンシンが細胞骨格中間径フィラメントタンパク質であること、さらにフィレンシンのないEloマウスは小眼球症/白内障を呈することから、フィレンシンはレンズ上皮細胞の分化と伸張(長さ100倍体積1000倍にも膨張する)、透明化や調節能など、レンズの機能形成に深く関わっていると予想されている。
フィレンシンの発現異常が小眼球症/白内障発症をもたらすことが示唆されるので、フィレンシン遺伝子プロモータ領域を単離し、その発現制御のメカニズムを解析した。フィレンシン遺伝子5′側上流域の約2.2kbのDNA断片と、ホタルルシフェラーゼ遺伝子をつないだ人工遺伝子を作製し、ニワトリレンズ細胞に導入したところ、レンズ細胞内にルシフェラーゼが合成されたので、この2.2kbの領域が遺伝子プロモータ活性を持つことが示された。次にこの2.2kbの領域を、様々な制限酵素で切断し、生じた断片にルシフェラーゼ遺伝子をつなぎ、同様にニワトリレンズ細胞に導入し、プロモータ活性を持つ最短の領域130bpを決定した。この領域には、S1マッピング法によって決定されたフィレンシンmRNAの翻訳開始点が含まれていた。この領域には、個体発生初期にレンズ発生をつかさどる転写調節因子であるSOX2、L-maf、およびSpl、AP-2などの結合配列が見られた。
ゲルシフトアッセイによりニワトリレンズ細胞核抽出液中の転写調節因子のうち、この領域に結合するものを検索したところ、Spl、AP-2の結合DNA配列に結合しているタンパク質因子の存在が確認された。SplおよびAP-2結合DNA配列に結合する転写調節因子としては、現在まで7種類のタンパク質が知られている。そのうちどの分子が実際にフィレンシン遺伝子の発現に関与しているのか、またこれらの因子はレンズ細胞以外の様々な組織に広く分布しているが、遺伝子プロモータにどのように働きかけてフィレンシンのレンズ組織特異的な発現をもたらすのか、またSOX2、L-mafの関与の有無について、今後明らかにする。
研究業績
著書・総説
著者 | 総説 |
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滝澤剛則 | インフルエンザウイルス感染によるアポトーシス誘導機構. ウイルス 47:69-76, 1997. |
滝澤剛則 | インフルエンザウイルスによるアポトーシス.日本胸部臨床 56: S28-S35, 1997. |
原著論文
原著者 | 総説 |
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Takeshita, M.1, Ueda, H., Shirabe, K.1, Higuchi, Y.1, Yoshida, S.1 (1Oita Med. Univ.) | Lack of promotion of colon carcinogenesis by high-oleic safflower oil. Cancer 79: 1487-1493, 1997. |
Ueda, H., Saga, S., Shinohara, H.1, Morishita, R.,Kato, K., Asano, T. (1Mie Univ.) | As.sociation of the γ12 subunit of G proteins with actin filaments. J. Cell Sci. 110: 1503-1511, 1997. |
Nomura, R.1, Inuo, C.1, Takahashi, Y.1, Asano, T.,Fujimoto, T1 (1Gunma Univ.) | Two-dimensional distribution of G12 a in the plasma membrane: a critical evaluation by immunocytochemistry. FEBS Lett. 415: 139-144, 1997. |
Saitoh, O.1, Kubo, Y.1, Miyatani, Y.1, Asano, T.,Nakata, H.1 (1Tokyo Metropol. Inst. Neurosci.) | RGS8 accelerates G-protein-mediated modulation of K+ currents. Nature 390: 525-529, 1997. |
Beall, A.C.1, Kato, K., Goldenring, J.R.1, Rusmussen,H.1, Brophy, C.M.1 (1Georgia Univ.) | Cyclic nucleotide-dependent vasorelaxation is associated with the phosphorylation of a small heat shock‐related protein. J. Biol. Chem. 272: 11283-11287,1997. |
Katoh-Semba, R., Takeuchi, I.K., Semba, R.1, Kato,K. (1Mie Univ.) | Distribution of brain-derived neurotrophic factor in rats and its changes with development in the brain. J. Neurochem. 69: 34-42, 1997. |
Ichihara, S.1, Koshikawa, T.2, Nakamura, S.2, Yatabe,Y.2, Kato, K. (1Nagoya Natl. Hosp., 2Aichi Cancer Center) | Epitherial hyperplasia of usual type expresses both S100-α and S100-β in a heterogeneous pattern but ductal carcinoma in situ can express only S100-α in a monotonous pattern. Histopathology 30: 533-541, 1997. |
Bidmon, H-J.1, Oermann, F.1, Schleicher, A.1, Kato,K., Kinscherf, R.2, Buchkremer-Ratzmann, I.1, Witte, O.W.1, Zilles, K.1 (1Heinrich-Heine Univ.,2Univ. Heidelberg.) | Copper-zink superoxide dismutase and isolectin B4 binding are markers for associative and transhemispheric diaschisis induced by focal ischemia in rat cortex. Neurosci. Lett. 228: 163-166, 1997. |
Takashi, M.1, Sakata, T.1, Kato, K. (1Nagoya Univ.) | Elevated concentrations of the small stress protein HSP27 in rat renal tumors. Urol. Res. 25: 173-177, 1997. |
Oguni, M.1, Setogawa, T.1, Shinohara, H.2, Kato, K.,Semba, R.2 (1Shimane Med. Univ., 2Mie Univ.) | Distribution of γ-aminobutyric acid (GABA) and the calcium-binding protein parvalbumin in rat retina during development. Acta Histochem. Cytochem. 30: 237-242, 1997. |
Kato, K., Ito, H., Okamoto, K. | Modulation of the arsenite-induced expression of stress proteins by reducing agents. Cell Stress & Chap. 2: 199-209,1997. |
Ito, H., Okamoto, K., Nakayama, H.1, Isobe, T.1, Kato, K. (1Tokyo Metropol. Univ.) | Phosphorylation of α B-crystallin in response to various types of stress. J. Biol. Chem. 272: 29934-29941, 1997. |
Kinscherf, R.1, Deigner, H-P.1, Usinger, C.1, Pill, J.1, Wagner, M.1, Kamencic, H.1, Hou, D.1, Chen,M.1, Schmiedt, W.1, Schrader,M.1, Kovacs,G.1, Kato, K., Metz, J.1(1Univ. Heidelberg) | Induction of mitochondrial manganese superoxide dismutase in macrophages by oxidized LDL: its relevance in atherosclerosis of humans and heritable hyperlipidemic rabbits. FASEB J. 11: 1317-1328, 1997. |
Masaki, S., Quinlan, R.A1(1Univ. Dundee) | Gene structure and sequence comparisons of the eye lens specific protein, filensin, from rat and mouse : implications for protein classification and assembly. Gene 201: 11-20, 1997. |
Asano, T., Morishita, R., Ueda, H., Asano, M.1, Kato, K. (1Nagoya City Univ) | GTP-binding proteinγ 12 subunit phosphorylation by protein kinase C:Identification of the phosphorylation site and factors involved in cultured cells and rat tissues in vivo.Eur. J. Biochem. 251: 314-319, 1998. |
Oguni, M.1, Shinohara, H.2, Asano, T., Kato, K.,Setogawa, T.1(1Shimane Med. Univ., 2Mie Univ.) | Does light stimulus at eye opening of the developing rat influence retinal expression of GTP-binding protein (Go)? Ophthalmic Res. 30: 84-89, 1998. |
Shinohara, H.1, Asano, T., Kato, K., Kameshima, T.1, Semba, R.1 (1Mie Univ.) | Localization of a G protein Gi2 in the cilia of rat ependyma, oviduct and trachea. Eur. J. Neurosci. 10: 699-707, 1998. |
Bidmon, H-J.1, Kato, K., Schleicher, A.1, Witte, O.W.1, Zilles, K.Z.1 (1Heinrich-Heine Univ.) | Transient increase of manganese-superoxide dismutase in remote brain areas after focal photothrombotic cortical lesion. Stroke 29: 203-211, 1998. |
Joanisse, D.r.1, Inaguma, Y., Tanguay, R.M.1 (1Univ.Laval) | Cloning and developmental expression of a nuclear ubiquitin-conjugating enzyme (DmUbc9)that interacts with small heat shock proteins in Drosophila melanogaster. Biochem. Biophys. Res. Commun. 244: 102-109, 1998. |
学会発表
発表者 | 内容 |
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Ito, H., Okamoto, K., Kato, K. | Stimulation of the stress-induced synthesis of stress proteins by curcumin. International Congress of Stress (Budapest)1997.7.1. |
Kato, K., Ito, H., Okamoto, K. | Phosphorylation of α B crystallin is stimulated by various stress conditions. Workshop.”hsp27 Family: Function in Health and in Disease” International Congress of Stress(Budapest) 1997.7.2. |
Matsuda, T.1, Asano, T., Fukada, Y1. (1Univ. of Tokyo) | Characterization of the interaction between G protein β γ subunits and phosducin. International Congress of Biochemistry and Molecular Biology(San Francisco) 1997.8.25. |
滝澤剛則,立松千鶴,中西義信1(1金沢大) | インフルエンザウイルスによるシステインプロテアーゼの活性化.日本ウイルス学会(京都)1997.9.20. |
浅野富子,森下理香,上田 浩,加藤兼房 | リゾホスファチジン酸によるG蛋白質γ12サブユニットのリン酸化.日本生化学会(金沢)1997.9.24. |
冨士本一平1,滝澤剛則,大場義樹1,中西義信1(1金沢大) | インフルエンザウイルス感染細胞におけるFas依存性アポトーシス誘導.日本生化学会(金沢)1997.9.24. |
新開史子1,礒辺俊明1,板垣千春1,市村徹1,加藤兼房(1東京都立大) | 14-3-3タンパク質の標的結合部位に対する特異抗体の作成.日本生化学会(金沢)1997.9.25. |
景山 節1,平井啓久1,一瀬雅夫2,三木一正2,花井敦子,正木茂夫,米澤敏(1京都大霊長研,2東京大) | マウスカテプシンE遺伝子の構造と染色体局在.日本生化学会(金沢)1997.9.25. |
Takizawa, T., Tatematsu C., Nakanishi, Y.1(1Kanazawa Univ.) | Influenza virus infection activates apoptotic cystein protease CPP-32 (caspase-3). 10th International Conference on Negative Strand Viruses(Dublin, Irland) 1997.9.25. |
伊東秀記,岡本慶子,中山 洋1,礒辺俊明1,加藤兼房(1東京都立大) | αBクリスタリンのリン酸化.日本細胞生物学会(横浜)1997.9.30. |
加藤兼房,岡本慶子,伊東秀記,河村則子,佐賀信介1(1愛知医科大) | 細胞分裂期に特異的、普遍的に見られるαBクリスタリンのリン酸化. 日本細胞生物学会(横浜)1997.9.30. |
景山 節1,平井啓久1,一瀬雅夫2,三木一正2,花井敦子,正木茂夫,米澤敏(1京都大霊長研,2東京大) | マウスカテプシンE遺伝子の構造.日本動物学会(奈良)1997.10.3. |
Tanguay, R. M.1, Michaud,S.1, Joanisse, D. R.1,Inaguma, Y. (1Univ. Laval) | The small Hsps: Developmental expression and functions. Molecular Biology of Stress Response (Varnasi, India) 1997.10.14. |
上田 浩,森下理香,仙波りつ子,加藤兼房,浅野富子 | G蛋白質αサブユニットの免疫沈降に伴うγサブユニットの解析. 日本神経化学会(松山)1997.10.23. |
岡本慶子,伊東秀記,加藤兼房 | C6ラットグリオーマ細胞におけるジエチルマレイン酸によるストレス応答の促進. 日本神経化学会(松山)1997.10.23. |
加藤兼房,伊東秀記,岡本慶子 | ストレス蛋白質のストレス誘導はクルクミンによって促進される. 日本神経化学会(松山)1997.10.23. |
加藤兼房,仙波りつ子,竹内郁夫,伊東秀記,岡本慶子 | カイニン酸痙攣誘導ラット脳におけるストレス蛋白質の発現. 日本神経化学会(松山)1997.10.23. |
伊東秀記,岡本慶子,中山 洋1,礒辺俊明1,加藤兼房(1東京都立大) | αBクリスタリンのリン酸化.日本神経化学会(松山)1997.10.23. |
伊東秀記,岡本慶子,加藤兼房 | クルクミンによるストレス蛋白質のストレス誘導の促進.臨床ストレス研究会(東京)1997.11.15. |
Tanguay, R. M.1, Michaud, S.1, Joanisse, D.R.1,Inaguma, Y. (1Univ. Laval) | Small heat shock proteins: In search of functions during developmenta. 5th International Federation Teratology Soc. (Sydney,Australia) 1997.11.16. |
滝澤剛則,立松千鶴,中西義信1,神奈木真理2,藤井雅寛3 (1金沢大,2東京医歯大,3新潟大) | HTLV‐1taxによる2本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の発現抑制-Fas誘導アポトーシスに対する抵抗性との関連-.日本分子生物学会(京都)1997.12.16. |
冨士本一平1,松村美穂1,滝澤剛則,大場義樹1,中西義信1 (1金沢大) | インフルエンザウイルス感染におけるFas,Fasリガンドの発現誘導とアポトーシス.日本分子生物学会(京都)1997.12.16. |
正木茂夫,米澤 敏,蒲地雄介1,近藤寿人1 (1大阪大) | レンズフィレンシン遺伝子プロモータ領域の単離とその機能解析.日本分子生物学会(京都)1997.12.18. |
加藤兼房,岡本慶子,伊東秀記,河村則子,佐賀信介1(1愛知医大) | 低分子量ストレス蛋白質、αBクリスタリンの細胞分裂期におけるリン酸化.日本分子生物学会(京都)1997.12.19. |
伊東秀記,岡本慶子,岩本郁子,加藤兼房 | アニソマイシンによる低分子量ストレス蛋白質のストレス誘導の促進. 日本分子生物学会(京都)1997.12.19. |
Joanisse, D.R.1, 稲熊 裕,Tanguay, R.M.1 (1Univ.Laval) | ショウジョウバエ低分子量ストレス蛋白質と相互作用する蛋白質の検索. 日本分子生物学会(京都)1997.12.19. |
正木茂夫 | レンズフィレンシン遺伝子プロモータの単離とその機能解析.水晶体研究会(金沢)1998.1.17. |
Kato, K., Ito, H., Okamoto, K., Kawamura, N.,Saga, S1. (1Aichi Med. Univ.) | Enhancement of phosphorylation of αB crystallin in mitotic cells. International Conference on Dynamics and Regulation of the Stress Response (Kyoto) 1998.3.9. |
Inaguma, Y., Joanisse, D.R.1, Tanguay, R.M.1 (1Univ.Laval) | Interaction of small heat shock proteins with a ubiquitin-conjugating enzyme. International Conference on Dynamics and Regulation of the Stress Response (Kyoto) 1998.3.9. |
Ito, H., Katoh-Semba, R., Takeuchi, I.K., Okamoto,K., Kato, K. | Responses of small stress proteins,hsp27 and αB crystallin, in rat brains with kainic acid-induced seizure. International Conference on Dynamics and Regulation of the Stress Response(Kyoto) 1998.3.11. |
Matsuno, H.1, Kozawa, O.1, Niwa, M.1, Usui, A.2,Ito, H., Uematsu, T.1, Kato, K. (1Gifu Univ.,2Nagoya Univ.) | Heat shock-related protein, p20,is secreted from blood vessel walls after endothelial injury and functions intercellularly. International Conference on Dynamics and Regulation of the Stress Response (Kyoto) 1998.3.11. |
Tanguay, R. M.1, Joanisse, D.R.1, Inaguma, Y., Michaud, S.1, Marin, R.1 (1Univ. Laval) | Small heat shock proteins: In search of functions during development. International Conference on Dynamics and Regulation of the Stress Response (Kyoto) 1998.3.11. |
講演など
講演者 | 内容 |
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滝澤剛則,藤井雅寛1,中西義信2(1新潟大,2金沢大) | HTLV-1taxによる2本鎖RNA依存性プロテインキナーゼ(PKR)の発現抑制-Fas誘導アポトーシスに対する抵抗性との関連.アポトーシス研究会第6回研究集談会(東京)1997.8.21. |
加藤兼房 | 分子シャペロン、αBクリスタリンのリン酸化.文部省重点研究領域研究「分子シャペロンによる細胞機能制御」班会議(箱根)1997.11.27. |
滝澤剛則 | インフルエンザウイルスとアポトーシス.北海道大学大学院獣医学研究科平成9年度研究交流会(札幌)1997.12.4 |
加藤兼房,仙波りつ子,竹内郁夫,伊東秀記,岡本慶子 | カイニン酸誘導痙攣ラット脳におけるストレス蛋白質の誘導.文部省重点領域研究「神経細胞死とその防御の分子制御」班会議(東京)1997.12.11. |
その他の研究活動
海外活動
活動者 | 内容 |
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加藤兼房 | International Congress of Stressに出席、発表(ハンガリー)1997.6.29.~7.6. |
伊東秀記 | International Congress of Stressに出席、発表(ハンガリー)1997.6.29.~7.6. |
滝澤剛則 | 第10回国際マイナス鎖ウイルス学会に出席、発表(アイルランド)1997.9.21.~9.26. |
稲熊 裕 | ラバル大学にて低分子量ストレス蛋白質の機能に関する共同研究(カナダ)1995.6.26.~1997.6.25. |
教育活動
活動者 | 内容 |
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滝澤剛則 | 生化学(愛知医科大学)1997.5.1.~1998.3.31. |
滝澤剛則 | 生化学(愛知県立春日井看護専門学校)1997.4.1.~1998.3.31. |
5.生理学部
研究の概況
伊藤宗之
生理学部では第一研究室が神経伝達、第二研究室が筋肉病変、第三研究室が脳の情報処理を担当している。次ページ以降の各個人、各グループの個別研究紹介のなかには、心身障害の問題との関係が直截的で明白なものもあり、また一見して迂遠と見えるものもあるかも知れない。ただ全部員の胸中にいつもあるのは、いかにして自分たちの今までの研究背景と技術を生かして、障害を持つ人の役に立てるかである。障害の発生原因の問題の研究も大事である。マウス、ラット、ネコ、フェレットなどの実験動物なしには研究は進まない。この点でも県民の皆様のご理解と支持をいただきたい。
先ず第一研究室では浦本が運動神経から筋へのインパルス伝達の研究を行っている。ここでは神経筋接合部に作用する随意神経末端の化学物質(アセチルコリン)の動向を、電気ポテンシャルを記録することから推測する。ネオスチグミンので投与下でアセチルコリンの活性化が時間のスケールで何分というオーダーで記憶現象を示すと主張してきた。今年度は三連発の神経電気刺激を消息子として、これに反応する筋電図を記録して、さらに確証を得た。さらに種々の日令のラットで実験を行ない、筋肉に於ける短期記憶の発達学的検討を加えた。渡部と犬養らは中枢神経細胞の軸索突起が切られても、再生の可能性があることを、ネコの網膜を使ってここ数年来、明らかにしてきた。これには実験的には視神経を切断したあと、断端に末梢神経を自家移植し脳に向けて架橋すると良い。今回はフェレットを使って手術も行なった。しかし再生神経線維が機能するには、その末端でシナプスを形成し、網膜-中枢神経系が再構築されることが必要である。この証明の一助として神経の順行性連絡の確認法を種々試みた。また大阪大学との共同研究のなかで、末梢神経移植は軸索突起の再生を促すだけでなく生 存率をも高めることを、新しく作成した抗体で示し得た。犬養と渡部は視神経の終末の電子顕微鏡による研究も続けた。
第二研究室の戸塚と渡辺らは遺伝性難病の一つである筋ジストロフィー症のモデル実験動物として有名なdyマウス、mdxマウスの研究を行なってきた。これらの実験から、ヒトのDuchenne型筋ジストロフィー症の病因としていままでの通説とは異なる筋一骨不均衡説を唱え、直接的証拠を蓄積してきた。顕著な傍証としては、今年の本報の個別欄に詳しいが、数年前の厚生省白書の再解釈がある。筋重と身長の関係は発達の途上、四つの相と三つの変曲点の存在することを戸塚は指摘した。このうち二つ目の変曲点は近年になり、特異な遷移をとげたが、実にDuchenne型筋ジストロフィー症の病状の重大な変節点の移動と見事に一致していた。偶然ではありえない。一方、モデル動物について顕微鏡で筋線維の細胞像を日令を追って調べているが、中心核筋線維、筋線維径の大小について興味ある結果を得た。佐久間らは一部、形態学部の協力を得て、筋線維の発生・分化、損傷筋線維の修復の際に制御因子として働くMyf-5、Myf-6なるタンパク質を調べた。今回は特に損傷修復を起こさせたときの修復過程でのMyf-5、Myf-6の発現を免疫組織化学法とウェスタンブロット法により多次元解析した。損傷後4日か ら8日に修復筋線維の細胞膜に現われること、細胞質でも異常に径の小さい筋線維には出現することが分かった。また、これらの際に現われると推測されながら、実態が不明だったTGF-beta及びその受容体の動向、局在も同様の技術を駆使して証明した。
第三研究室で実験心理学の橘と岡は動物行動テストでの学習向上を目指した。被検体の問題に対する理解度の違いのため、従来の画一的な方法では時間がかかり、学習が停滞してしまうのに遭遇した。被検体の理解のレベルに合わせ常に最適戦略を自動的に割り出せるような方法を開発して、いままでのexperimenter-center approachに対しsubject-center approachと呼んだ。岡と橘はラットにパソコンモニター上に呈示した図形に基づいて、水飲み学習をさせている。前述の問題に関わるいくつかの知見を得た。中西は岡崎生理研との共同実験で、ラットの大脳皮質ニューロンを胎児の時に取り出して、発達とともに神経突起が伸びる像を見ながら、任意の二個の神経細胞にパッチ電極を刺入し、膜電位が同期して頻回放電(バースト)するのを確認した。次いで小分子(neurobiotin)の細胞内注入でも隣接ニューロンヘのギャップ結合を介する連絡はなく、機械的に同期二細胞間の連絡を断つことで液性因子の関与も否定できた。シナプス連絡によるバースト放電であると結論した。同期ニューロンペアの実に40%で直接シナプス連絡が証明できた。名古屋市大との一緒の実験では、中西はニューロンの突起伸長、生存維持を促進する神経栄養因子の研究も行なった。伊藤は所内共同研究科職員と共に、脳発達の初期に障害を受けやすいニューロン種の群塊であるラット体性感覚野のバレル構造に関わる実験をした。これも神経系のネットワークが形成される際の障害機序解明を目指すものである。
幼若ラットに見られるインパルス伝達のリサイクル過程
浦本 勲
ウレタンで麻酔した成熟ラットの腓腹筋より、反復刺激に対する誘発筋電位を、いろいろな時点でネオスチグミンの存在下で導出し、その尖頭間振幅の経時的変化のパターンを調べた。その結果、インパルス伝達のリサイクル過程が、短期記憶的に調節されるらしいと考えられた。ネオスチグミン存在下での誘発筋電位は、1コ目の大きさは投与前と余り変わらず、2コ目にかなり抑圧され、その後ゆっくり回復した。しかし、その度合いは個体によってまちまちなため、短期記憶的な調節を示唆するには不十分であった。今回は幼若ラットを用い、回復のバラツキができるだけ小さくなるような、3コ(0.5Hz)1組の刺激を与える条件でこの命題を再検討した。図1は、18、19日齢のラット11匹からえた結果である。ネオスチグミンの投与後どの時点においても、1コ目の誘発筋電位の大きさは投与前のレベルであり、少なくとも先行刺激から1分後には十分回復している。2コ目の電位について見ると、投与後8分にはかなり抑圧され、中には殆どインパルス伝達がブロックされたものもあった。10分に再び3コの刺激を与えると、よく似た傾向が観察された。ところが、11分後の時点では、2コ目の電位は8、10分 の時点程抑圧されなかった。図から分かるように、2組の刺激間隔が1分と2分あるいはそれ以上の長さでは、非常に対照的なパターンが見られた。振幅だけではなく、筋電位の主成分に続く振れの出現状況にも、同様の現象が観察された。このように、刺激の開始の検出によってリサイクル過程が活性化され、1分前後の間その状態が保持されるようなモードで、インパルス伝達のリサイクル過程が調節されていると考えられる。
図1.誘発筋電位の主成分の尖頭間振幅。縦軸はmVで、横軸は投与後の時間(分)。ネオスチグミン投与前後のいろいろな時点で、3コ1組の刺激を与える。3コ目の電位の大きさは省略した。各点は、平均値±標準偏差。
哺乳動物の網膜投射系における順行性標識方法の検討
渡部眞三、犬養尚子
[目的]末梢神経移植による網膜-中枢神経系の再構築を証明するために、再生シナプスを順行性に標識して検出することが重要である。順行性の標識に一般的に使用されている薬品の有効性を検討した。
[方法]検討した標識薬品は、ニューロビオチン(NB)、小麦胚芽凝集素(WGA)とコレラトキシン・Bサブユニット(CTB)にビオチンあるいは西洋ワサビ過酸化酵素(HRP)を結合したものである。正常なラット、フェレット、ネコの一側の眼球に注入して3-6日後に動物を潅流固定し、脳の凍結切片を作成して、ビオチンと過酸化酵素を検出するための染色を行った。切片は光学顕微鏡で検索した。
[結果]ネコを用いた場合、過酸化酵素結合小麦胚芽凝集素(WGA-HRP)を眼球内に注入し、脳切片をテトラメチルベンディジンで反応した時に感度とコントラストが高かった。ラットとフェレットを用いた場合、ビオチン結合コレラトキシン(CTB-B)を注入し、脳切片を過酸化酵素結合ストレプトアビジンで処理し、コバルト-ニッケル増強法で反応した場合が、感度とコントラストが高いことがわかった。脳切片をテトラメチルベンディジンで反応した場合はバックグラウンドが高くなり、不適当であった。なお、眼球内への薬品注入を正確に制御できないため、順行性標識の程度に種間で差があるかどうかは不明である。
[結論]過酸化酵素結合小麦胚芽凝集素の反応のために固定した脳の形態はよく保持されており、電子顕微鏡資料に適していると結論される。またビオチン結合コレラトキシン染色のために固定した脳とその切片は、長期保存が可能なことから、光学顕微鏡資料に用いることにした。
本研究は、平成9年度科学技術振興費による目標達成型脳科学研究『網膜神経回路網・視神経の再生における制御因子に関する研究』、研究項目「末梢神経移植による網膜膝状体経路の再構築の研究」による。
電子顕微鏡による視神経終末の同定
犬養尚子 渡部眞三
[目的]哺乳動物において、本来再生しない中枢神経線維も末梢神経を移植することによって再生することが、明らかにされている。しかしながら神経線維が再生するだけでなく、さらに再生軸索終末が中枢神経との間にシナプスを再形成することを証明することも、重要である。再生した軸索終末を検出する方法を確立するために、正常なラットにおいて軸索終末を標識し、電子顕微鏡レベルで確定する実験を行った。
[方法]正常なラットの左眼球内に10%小麦胚芽凝集素-過酸化酵素(WGA-HRP)を3μL注入した。2日後に同ラットを潅流固定し、とりだした脳の上丘を50μmの厚さにビブラトームで薄切し、テトラメチルベンジジン(TMB)と反応させ、ジアミノベンジン(DAB)とコバルトで強化固定し、四酸化オスミウムで後固定した後、エポン樹脂に包埋した。約100nmの超薄切片を作成し、電子顕微鏡で観察した。
[結果]基質の明るいミトコンドリアと、球状のシナプス小包を含む終末に、HRP反応物質である電子密度の高い凝集塊が認められた、これらの終末が、網膜神経節細胞の軸索終末であることが明らかになった。さらにこの過酸化酵素陽性の終末は、浅上丘灰白層、および視神経線維層に特に見られた。
[結論]小麦胚芽凝集素-過酸化酵素による順行性標識法によって、軸索終末を電子顕微鏡レベルで同定することができた。さらに今回の標識方法を用いて、切断した視神経に末梢神経を移植することによって、再生した軸索終末と再形成されたシナプスを、検出することが可能であると結論された。現在、末梢神経で架橋手術したラットの上丘で、小麦胚芽凝集素-過酸化酵素に陽性の軸索終末の検索を行っている。
本研究は、平成9年度科学技術振興費による目標達成型脳科学研究『網膜神経回路網・視神経の再生における制御因子に関する研究』、研究項目「末梢神経移植による網膜膝状体経路の再構築の研究」による。
フェレットにおける末梢神経移植による網膜-膝状体架橋手術法の確立
渡部眞三、犬養尚子
[目的]膝状体視覚路は、われわれ霊長類では重要な感覚神経路で、形や色の識別情報を中枢へ伝達している。フェレットはネコと同程度に膝状体視覚路がよく発達しており、ネコと比較して小型で外側膝状体が脳室の表面に露出している、という利点を持つ。従来は主としてネコで移植手術を行ってきたが、今年度はフェレットにおいて末梢神経移植による網膜-膝状体視覚路の再構築を行うため、架橋手術方法の確立を行った。
[方法]移植神経中枢端を外側膝状体へ正しく挿入するために、2頭のフェレット脳から簡単な脳アトラスを作成し、外側膝状体の位置を脳定位固定装置で求めた。次に15例で網膜-膝状体架橋手術を行い、5頭のフェレットで140日後に移植神経の中枢端の位置を調べた。
[結果]1例において、移植神経の枝の断端が外側膝状体に接続されていることが確認できた。この結果から、フェレットでの末梢神経移植による網膜-膝状体架橋手術は可能であることがわかった。なおコレラトキシンによる順行性標識法よる、再生視神経のシナプス終末は光学顕微鏡のレベルでは検出できず、今後の課題となった。移植手術を行った残り10頭は、現在飼育中である。
[結論]フェレットを用いた網膜-膝状体架橋手術は、ネコ以上に成功する可能性が高いと考えられ、今後更に例数を増やして、再生視神経のシナプス終末を光学顕微鏡と電子顕微鏡で検索する予定である。さらにネコにおいても架橋手術方法の改良を行い、160日に達するまで飼育中である。
本研究は、平成9年度科学技術振興費による目標達成型脳科学研究『網膜神経回路網・視神経の再生における制御因子に関する研究』、研究項目「末梢神経移植による網膜膝状体経路の再構築の研究」による。
モノ・クローナル抗体C38によるフェレット網膜神経節細胞の標識
小阪 淳1、全 美子1、渡部眞三
脊椎動物の網膜において、神経節細胞の細胞体は最内層の神経節細胞層に局在する。しかし、神経節細胞層には神経節細胞以外にも異所性アマクリン細胞が局在し、両者の区別は容易ではない。従来より哺乳類の網膜神経節細胞のみを特異的に標識するマーカーはなかった。私達のグループが単離に成功したモノ・クローナル抗体C38は、ラット、ネコの網膜神経節細胞を伸展標本上で特異的に標識し、ネコでは網膜切片上でも網膜神経節細胞を特異的に同定できる抗体である。
本研究では、フェレットの網膜神経細胞に対して、C38抗体が特異的に網膜神経節細胞を標識できるかどうかを検討した。C38抗体に標識される細胞は、網膜中心部、網膜周辺部いずれの場所でも、予め逆行性に蛍光標識された網膜神経節細胞に90%以上一致した(表1)。また、C38陽性細胞の細胞体直径は網膜中心部で6μm~24μm、周辺部で6μm~30μmの範囲に分布していた。この細胞体直径の値はフェレットの網膜神経節細胞における従来の報告と一致する。C38抗体による染色で、フェレット網膜の伸展標本上でも、網膜神経節細胞を特異的に標識できることが明らかになった。
今回用いたフェレットは、我が国では実験動物として利用されることが少ないが、将来ネコの代換として生理学的解析、分子レベルでの研究に極めて重要な材料になると考えられている。C38抗体が、フェレットでも網膜神経節細胞の特異的マーカーとして活用できたことは、今後の中枢神経系、特に視覚系の発生と機能分化、軸索再生の研究を発展させるうえで極めて有益な知見である。
本研究は、文部省科学研究費の補助を受けた。
1大阪大・医
表1.正常フェレット網膜において、C38モノクローナル抗体で標識された網膜神経節細胞の密度と、逆行性標識法で標識された網膜神経節細胞の密度
- | 網膜中心部 | 網膜周辺部 |
---|---|---|
A. C38抗体で標識された細胞の密度(個/mm2) | 2254±86 | 328±55 |
B. 逆行性標識法で標識された細胞の密度(個/mm2) | 2373±105 | 303±18 |
A÷B(%) | 94 | 108 |
末梢神経移植によるフェレット網膜神経節細胞の軸索再生:再生細胞と生存細胞
全 美子1、小阪 淳1、渡部眞三
[目的]成熟哺乳類の網膜神経節細胞の軸索である視神経を切断すると、網膜神経節細胞の多くは逆行性変性に至る。しかしながら、視神経の切断端に末梢神経を移植すると、網膜神経節細胞はその軸索を移植片の中へ伸長する。さらに、移植した末梢神経は軸索再生を支持するだけでなく、網膜内に作用して、網膜神経節細胞に生存をも促進することが報告されている。フェレットを材料にして、網膜神経節細胞を特異的に標識するモノクローン抗体C38を用い、生存細胞を同定する方法に加えて、移植片への蛍光色素注入による軸索再生細胞の同定を併用し、生存細胞の数、分布、大きさについて解析した。
[方法]ネコ及びラットと同様の手術法で、成熟フェレットの坐骨神経を視神経断端に移植した。60日後に移植神経に蛍光色素のファーストブルーを注入して、再生神経節細胞を標識した。3日後に網膜を取りだし、モノクローン抗体C38で生存細胞を標識した。
[結果]網膜中心部では、軸索再生細胞に対して約4倍、網膜周辺部では約30倍の生存細胞が同定された(表1)。特に網膜周辺部では正常の約80%の細胞が生存していた。また、C38陽性として標識される生存細胞の細胞体直径のヒストグラムを作成すると、生存細胞の細胞体直径は6μm~22μmに分布するが、軸索再生している細胞はその分布の内でも、細胞体の大きな細胞群に片寄っていることが明らかになった。図が示すように、生存細胞と軸索再生細胞では、細胞直径に大きな違いがあった(図1)。
[結論]以上の結果より、予想をはるかに越える数の網膜神経節細胞が、末梢神経移植によって生き残っていることが明らかになった。この事実は、将来これらの細胞の軸索を移植片の中に誘導できれば、再生視神経数を飛躍的に増加させることが可能になり、本実験系の臨床応用に向けての展望が開けたと考えられる。
表1. 末梢神経移植によって生存している網膜神経節細胞の密度と、軸索を再生した細胞の密度
- | 網膜中心部 | 網膜周辺部 |
---|---|---|
A. 生存している全細胞の密度(個/mm2) | 414±122 | 252±135 |
B. 移植神経に軸索を再生した細胞の密度(個/mm2) | 106±38 | 8±4 |
B÷A(%) | 26 | 3 |
注: A. はC38抗体で染色された神経節細胞の密度、B. は移植神経に注入された色素によって、逆行性に標識された神経節細胞の密度。
図1.軸索を再生した神経節細胞と生存細胞の細胞体直径のヒストグラム
本研究は、平成9年度科学技術振興費による目標達成型脳科学研究『網膜神経回路網・視神経の再生における制御因子に関する研究』、研究項目「神経栄養因子及び関連遺伝子の導入による再生視神経投射の研究」による。
1大阪大・医
ネコ視神経切断後の網膜神経節細胞の数の減少と樹状突起と軸索の変化
渡部眞三、犬養尚子
[目的]網膜神経節細胞の軸索である視神経が切断されると、神経節細胞は逆行性に変性する。視神経切断後の、網膜神経節細胞の逆行性変性による脱落の時間経過、軸索と樹状突起形態の変化、および神経節細胞タイプによる軸索切断に対する感受性の違いを、形態学的手法で調べた。
[方法]両側の外側膝状体に、赤色の蛍光色素(DiI懸濁液)を注入して神経節細胞を逆行性に標識した。7日後に左視神経を完全に切断した。5日-15日後に左右の網膜をエイムス培地中で取り出した。チェンバー内で黄色の蛍光色素のルシファー・イエローを細胞内に注入し、樹状突起と軸索の形態を求めた。左右の網膜固定した後、中心野にある標識細胞を撮影し、写真プリント上で標識細胞を数えて密度を求めた。
[結果]中心野近傍での DiI標識神経節細胞の密度は視神経切断後5日目で45%-53%、14、15日目で13.5%-7.6%であった(図1)。減少曲線は、5日目ですでに緩やかな相に入っていることを示していた。生存神経節細胞のタイプの違いによる軸索変性に対する感受性の明瞭な違いは見いだせなかった。神経線維層において軸索様の突起が、すでに軸索切断後5日目に認められ、さらに樹状突起の脱落と考えられる像が、軸索切断後5日目に認められた。
[結論]視神経切断による、ネコ網膜神経節細胞の変性・死滅の時間経過は、ラットの場合と異なり、かなり早い時期に最初の急速変性相が終わる可能性が高い。軸索突起の新たな伸長と、樹状突起の変性・脱落は視神経切断後5日目ですでに始まっていた。視神経切断のシグナルがどのように伝達されるか、神経節細胞にどのような変化が生じるのか、さらに軸索と樹状突起の形態変化が何らかの因子によって抑制されるかどうか、が今後の課題である。
本研究は、文部省科学研究費の補助を受けた。
筋ジストロフィー症:相対身長成長の相分離
戸塚 武
筋ジストロフィー症(MD)の進行・悪化が成長と密接に関係していることは古くから気付かれている。例えば、既に100年以上も前に、Gowersサイン(登はん性起立)で有名なGowersは、身長の成長がMD症状の悪化をもたらすとはっきり記載している。しかし、その意味・機序については、不思議なことにあまり検討されず、未だに不明である。
MDは筋細胞が変性・脱落するために筋が萎縮する疾患だと考えられてきた。ところが、モデル動物のdyマウスに関する研究から、MDが筋の成長障害による疾患であり、成長する骨によって引き伸ばされるため筋に負担がかかり、筋病変・症状が悪化するのだろうと提唱してきた(筋成長障害説;一歩進めた筋-骨不均衡説)。Duchenne型MD(DMD)患者とdyマウスの病態は、筋病変だけでなく、発育につれて症状が進行する点もよく似ている:発症のタイミングも見かけ上一致する(骨あるいは身長の相対的急成長期の終り頃にあたる:昨年度の年報)。
身長成長は種々の機構が複雑に連携して起こる。主である骨成長はそれ自身複雑であるとともに、筋や内臓の成長とも密接に関連している。相対身長成長の相分離ができれば、成長機構の複雑な糸を解せるかもしれない。そこで健常男子について、身長を体重の3乗根で割った値(F)の発育との関係を調べた(資料:厚生省「国民の栄養調査報告書(1993)」)ところ、生後すぐから急速に増大し、7歳頃一旦ほぼ落着いた後、11歳頃以降再び増加に転じ、18歳頃以降少し減少する傾向があることが分かった。因みに、DMDの発症時期は5歳頃とされ、健常男子でF値が落着く直前にあたり、10-15歳頃はDMD症状が急速に悪化する時期である。
MD症状の進行・悪化と相対身長成長との関係を追究した報告はないようであるが、これは一つには、10歳頃の相対身長成長の相分離が気付かれていなかったためであろう。実際、相対身長成長の経年変化を調べた(資料:厚生省「国民栄養の現状」)ところ、10歳頃の相分離は、1970年頃までははっきりせず、1980年頃以降に見られる現象であることが分かった(逆説的だが10-15歳頃の成長相が遅くなった)。因みに、DMD患者の歩行不能になる年齢は、一般に10歳頃と言われてきたが、最近、11歳頃との記載が見られるようになった(1歳遅くなった?)。
本研究は、愛知県特定疾患研究協議会依託研究費の援助を受けた。
筋ジストロフィー症:筋成長の相分離
戸塚 武、渡辺貴美、佐久間邦弘、浦本 勲
筋ジストロフィー症(MD)のモデル動物であるdyマウスに関する研究から、MDの初期病態は筋の変性ではなく成長障害であることを明らかにしてきた(筋成長障害説)。筋の成長は多くの複雑な機構の上に成り立っていることから、筋成長の相分離ができれば筋成長機構、ひいてはMDの成因解明への糸口が得られるであろう。
dy筋病変に、筋成長の相分離が映しだされているかもしれない。今までに、dyマウスの発育に伴う筋病変の発現・変化を追いかけ、次のようなことを明らかにした:1.未熟な筋線維(多核の細胞体で糸のように長細い形をしている)が全身の筋でほぼ出来上がる10-14日齡頃、筋線維数は少なめであるけれど、筋線維の様子は(太さ分布も)見かけ上ほとんど正常である、2.その後、多くの筋線維は成長できず細いままに留まっているけれど、一部太めの筋線維は肥大成長する、3.その結果、発育につれて筋線維の径に大小不同が目立つようになる、4.最初はほとんどの筋線維で核は周辺部にあるが、発育につれて、中心核の頻度が増加する(周辺核も同時に持っている:正常筋線維の核は周辺部に局在する)、5.中心核、或いは横断面あたり多数の核を持つ筋線維は、その他の筋線維より肥大成長する。因みに、通説では、MD筋線維径の大小不同は、変性する運命にある肥大筋線維と、変性した筋線維に代わって一部再生してきた再生不全の未熟な細い筋線維が混在するためとされる。
本研究では、bupivacaine(局所麻酔剤)を注射することで作った実験的MDモデル(正常マウスとラット)の筋を調べた。注射後4日頃までの激しい損傷状態から筋線維は徐々に修復され(一時的に径の大小不同が出現した)、2-3週後にはほとんど回復し、太さも筋束もほぼ正常に戻った(修復中、修復後もほとんどの筋線維は中心核を持っていた)。ただ、処理後3週経っても筋線維径の大小不同が目立つ部分が一部に残存した(bupivacaineの影響を強く受けたと思われる)。同時に損傷を受けた筋線維の修復成長にバラツキがあり、一時的に或いは恒久的に径の大小不同が顕在化した。損傷のどのような質的・量的違いが筋線維の修復成長の違いとなるのかを究明することで、筋線維成長に関する複雑な機構を解く鍵が得られるものと期待される。
本研究は、愛知県特定疾患研究協議会依託研究費の援助を受けた。
損傷後の筋修復時における筋分化制御因子(MyoD Family)の変化
佐久間邦弘、渡辺貴美、浦本勲、戸塚武、北島哲子1、佐野 護1
MyoD Family(MyoD、Myogenin、Myf-5、Myf-6)は、筋発生の段階で中胚葉前駆細胞→筋芽細胞(myoblast)→筋管細胞(myotube)→筋線維(myofiber)という一連の変化に重要な役割をする転写制御因子である。このような筋肉の分化の際だけではなく、成熟した筋が損傷を受けて修復する際にも重要な役割をすることがいくつかの研究で示唆されている。しかしながらその大部分の研究が、筋修復時のMyoDタンパクあるいはmRNAの変化についてのみ扱っており、Myf-5、Myf-6の関与についてはまったく検討されていない。筋発生時にMyoDをノックアウトしても、Myf-5がその働きを代償することで筋肉は通常どおり形成されることから、成熟した筋が修復する際にもMyf-5は重要な役割をする可能性が高い。本研究は免疫組織とウェスタンブロット法を用いて、損傷後の筋修復時におけるMyf-5とMyf-6の変化に着目して実験を行った。
10週齢のWistar系ラットを用い、前脛骨筋に塩酸ブピバカインを注入することで筋の損傷を促した。薬剤注入4日後に特にMyf-5の顕著な免疫活性の亢進がみられ、修復途中にある筋線維の細胞膜付近、異常に径の小さい筋線維(myotube?)の細胞質に免疫活性の亢進がみられた。また6日後の筋でも、Myf-5に加えてMyf-6の免疫活性が、融合途上にあると思われる筋線維の細胞膜と基底膜付近に観察された。一方MyoDの免疫活性は、広範に損傷を受けた部位に存在する単核の細胞(myoblast?)に顕著に観察されたが、Myf-5やMyf-6とは異なり、修復途中の筋線維の細胞膜付近に免疫活性は認められなかった。免疫組織での変化が最も顕著であったMyf-5について、ウェスタンブロットを行ったところ、やはり薬剤注入4、6、8日後のMyf-5タンパクの亢進が検出された。以上のことから、損傷後の筋の修復にはMyoDだけでなく、Myf-5やMyf-6も重要な役割をする可能性があることが示唆された。
1形態学部
代償性筋肥大および筋修復時におけるTGF-β、TGF-βR1、TGF-βR2の変化
佐久間邦弘、渡辺貴美、浦本 勲、戸塚 武、北島哲子1、佐野 護1
In vitroの実験において、TGF-βは衛星細胞(satellite cell)あるいは筋芽細胞(myoblast)の増殖や分化を調節することが知られているが、in vivoの筋肉におけるTGF-βおよびその受容体(TGF-βR1、TGF-βR2)の適応については、これまでほとんど報告されていない。本研究では筋肉の肥大および修復時におけるこれらのタンパクの変化について、免疫組織化学およびWestern blot法により検討した。12週齢のWistar系ラットを用い、ヒラメ筋、腓腹筋の摘除により足底筋に肥大を促したところ、刺激1日後から顕著なTGF-βの亢進がみられ、TGF-βR1およびTGF-βR2のdown-regulationも同時に観察された。代償性負荷によるTGF-βおよびその受容体の変化は、刺激2週間後の筋においても観察された。一方、前脛骨筋に局所麻酔剤である塩酸ブピバカインを注入して筋の損傷を誘発したところ、筋の肥大時と同様に顕著なTGF-βの亢進とTGF-βR1およびTGF-βR2のdown-regulationが観察された。しかしながらその変化の程度は筋肥大時と若干異なり、術後10日後にはほぼ完全にTGF-βは消失し、減少のみられたTGF-βR2も通常レベルへ戻った。以上のことから、代償性負荷による筋の肥大あるいは筋の修復にTGF-βが関与する可能性があることが示唆された。
1形態学部
筋ジストロフィー症dyマウス:dy筋における筋分化制御因子(MyoD Family)のタンパク発現の変化
渡辺貴美、佐久間邦弘、浦本 勲、戸塚 武
Duchenne型筋ジストロフィー症のモデル動物といわれるmdxマウスの筋では、筋分化制御因子(MyoD Family)のうちMyoDの発現が亢進するために、損傷後の筋の修復が通常どおり行なわれるのではないかと示唆されている。このMyoDをノックアウトしたマウスでは、損傷後の筋修復が通常どおり行なわれないことから、MyoD familyのなかでも特にMyoDは筋の修復に重要な働きをすると思われる。先天性筋ジストロフィー症のモデル動物であるdyマウスの筋肉では、損傷後の筋線維の修復が円滑に行われていない可能性がある。本研究では、MyoD Familyのタンパク発現の状態を、週齢の異なる正常マウスとdyマウスにおいて比較検討した。
腓腹筋、大腿直筋、横隔膜を用いたウェスタンブロットにより、生後2、4、6、7、10週齢のいずれにおいても正常マウスにはMyoDおよびMyogeninが検出された。一方dyマウスのMyoDおよびMyogeninのタンパク量は、いずれの週齢においても正常マウスより低値を示した。また腓腹筋、前脛骨筋に対する免疫組織染色によっても、MyoD、Myogeninがdyマウスで亢進している様子はみられなかった。一方、正常マウスの大腿直筋、横隔膜におけるMyf-6のタンパク量は、2週齢で最も高値を示し、その後減少した。これに対して、dyマウスの両筋におけるMyf-6量は4、6、7、10のいずれの週齢においても、正常マウスより明らかな亢進がみられた。また免疫組織染色によっても、Myf-6の免疫活性の亢進が7週齢の筋で最も顕著にみられ、萎縮した筋線維、細胞外の間隙部分、その間隙に存在する単核球で検出された。以上のことから、dyマウスの筋には、Myf-6タンパクの亢進がみられるものの、mdxマウスと異なりMyoDタンパクを筋の修復に動員できていない可能性が示唆された。
動物行動テストにおけるsubject-center approachの提案
橘 敏明、岡 博子
すべての被験体を同一条件下でテストするというのは従来のテストの原則である。ところで動物を用いた行動テストでしばしば経験する困難の1つは、一部の被験体が一定の固着した、あるいはでたらめの行動に終始することである。課題に取り組む行動を維持させるために強化子を時々与える手続きが必要である。ところが、被験体は与えられるそのわずかの強化子に満足して、そのような行動を続けるのである。課題で要求されていることを被験体が十分に理解できない場合に、こういう事態になることが多い。
この困難を避けるために予備的な訓練として課題をいくつかの段階に分け、易しい課題から次第に目的とする課題に近づけるという手続きがとられる。しかしこの手続きは同一条件下でのテストという原則と相容れない面がある。すべての被験体に対して同一日に同じ課題を実施できれば問題はない。しかし被験体には個体差があり、たいていの場合それができないからである。受けた予備的訓練の程度が異なれば、同一条件下でのテストの原則が崩れる。したがって予備的訓練も個体差を考えずに同一のもの与えることになる。
従来のテストのやり方では、実験者の決めた特定の課題に対する被験体の反応の正否を調べることになる。この方法の特徴は、課題は実験者が選ぶという点にあり、experimenter-center approachである。この場合、実験者の選んだ課題がすべての被験体に理解されているとは限らない。一部の被験体に固着行動等の問題が生じる。
一方、われわれの新しいやり方は、易しい段階から始めて、しだいに難しい段階にすすめていき、その段階ができないと易しい段階に戻すやり方で、それぞれの被験体がどの段階まで移動・到達できたかを調べる。この過程を手作業で実施することは不可能で、すべてをパソコンを用いて自動化している。この場合、取り組む課題の段階およびその移動を被験体が決めていることになる。つまりsubject-center approachである。
このsubject-center approachの利点は、各被験体が好みのペースでテストに取り組むことができるので、被験体には自然である。さらに、被験体が自らの理解に適合した課題を選ぶので、従来のテストのような固着行動が生じて、その被験体の測定に失敗するということを避けることができる。
パソコンが自由に使えなかった時代には動物行動テストの選択肢は、experimenter-center approachしかなかった。しかし、それに満足している時代は去った。同一条件下でのテストの実施という原則に縛られない、新しい方法を試みることが可能になったのである。
培養大脳皮質ニューロンにおける同調したバーストの機能解析
中西圭子、久木田文夫1
ラット大脳皮質ニューロンを長期培養すると、任意の2つのニューロンの膜電位活動が同調して周期的に頻回放電(burst)することが観察されるようになる。この同調のメカニズムとして、1)ギャップ結合、2)液性因子、3)シナプス結合などが考えられ、この各々について昨年度に引き続いてさらにその解析を行った。
1)ニューロン相互間のギャップ結合;ギャップ結合を通過しうるneurobiotinをニューロン(n=6)にパッチピペットを介して細胞内注入し隣接細胞への移行を調べたところ、隣接したニューロンおよびグリアのどちらにもneurobiotinの移行は認められなかった。また電気生理学的に電気的連絡は認められなかったことから、ニューロン相互間のギャップ結合が同調したバーストを引き起こしている可能性は少ないと考えられた。
2)液性因子;注射針で細胞間連絡を断ったニューロンペアでは、同調したburstは観察されず、各々のニューロンがそれぞれ独立してburstしていたことから、液性因子によってburstがおこっている可能性も否定的であると考えられた。
3)シナプス結合;同調してburstしている52ペアのニューロンのうち、20ペア(3ペアは両方向性、17ペアは一方向性)すなわち約40%で機能的なシナプス連絡が認められた。観察されたシナプス連絡の遅れは4.05±0.61msecで、そのヒストグラム解析から、synaptic delayは1.5-1.9msecと推測された。またニューロンペアのburstの遅れは5.87±0.47msecであり、synaptic delayよりも明らかに大きいことから、ニューロンの同調したburstは多シナプス性の要因でおこっていることが示唆された。
以上の結果から、培養大脳皮質ニューロンにおける同調したバーストはギャップ結合や液性因子よりも、シナプスネットワークの結果おこっていることが示唆された。今後この系を用いてさらに神経系のネットワーク形成およびその障害の機序を探求していく予定である。
1岡崎生理研・生体膜
神経系腫瘍細胞におけるグリオスタチンの増殖抑制機構の解析
中西圭子、和栗祐子1、藤田佳織2、加藤泰治2
グリオスタチン(GLS)/血小板由来内皮細胞増殖因子"(PD-ECGF)は,グリオーマ細胞の増殖を抑制する神経""栄養因子として,von Recklinghausen病の神経線維腫より精製された分子量約55000の蛋白である。そのアミノ酸配列から血小板由来内皮細胞増殖因子(PD-ECGF)と相同であり,血管内皮細胞の増殖促進、in vivoにおいて血管新生促進、ラット大脳皮質グリア細胞に対して増殖抑制,皮質ニューロンに対して神経突起伸長および生存維持などの生理活性をもつことがわかっている。また最近、PD-ECGFはチミジンホスホリラーゼ(dThdPase)と相同であり、血管内皮細胞の増殖促進作用はdThdPase活性によるものであると報告されている。そこで,GLSの中枢神経系における作用がdThdPase活性によるものかどうかを明らかにするために,リコンビナントグリオスタチン(rGLS)とdThdPase活性をもたない変異型グリオスタチン(R202S、L148R)を用いて1)グリア系腫瘍細胞および正常グリア細胞に対する増殖抑制作用,2)正常ニューロンに対する生存維持作用について比較検討した。
1)ラットグリオーマ(C6)細胞およびラット正常アストロサイトに対してrGLSは対照に比べ明らかな増殖抑制作用をもっていたが、変異型GLSにおいてもやや弱いながらも増殖抑制作用が観察された。
2)ラット大脳皮質ニューロンに対してはrGLSは生存維持作用が認められたが、変異型GLSにおいてもニューロンの生存維持作用はやや弱いながらも認められた。
これらの結果から、GLSの中枢神経系における作用がdThdPase活性のみによるものでなく、他の機序を介した相乗あるいは相加的な作用によるものであることが推測された。
本研究は愛知県がん研究振興会研究助成金の援助を受けた。
1名古屋市大・整形外科、2名古屋市大・分子医研・生体制御
視覚刺激を用いたNon-Matching-to-Sampleテストのラットによる検討
岡 博子、橘 敏明
Non-Matching-to-Sample(NMTS)とは、サンプル刺激を被験体に示した後、一対の選択刺激を示し、サンプルと同じ刺激でない方を選択すれば正反応とするテストである。これは短期記憶を調べるための有力な方法と考えられている。しかし、視覚刺激を用いた場合、ラットで確実にNMTSができることを示した研究はまだない。そこで我々は従来の方法に改良を加えて、この問題に挑戦した。
DA系ラットの雄5匹を用い、視覚刺激としてパソコンのモニター上に図形を示した。ラットには図形の表示位置の真下に設置したレバーを押すことを要求した。1回の正反応につき約0.028mlの水を与えた。1セッションは80試行で、1日2セッションを、約20時間の飲水制限下で実施した。
視覚刺激として2種類の図形を用いた。サンプル刺激は同じ図形を左右両方に、選択刺激は左右のどちらかを面積は等しいがサンプルとは違う図形に替えて示した。サンプル刺激と選択刺激を交互に示し、選択刺激を示した時に、サンプル刺激と違う図形が現われた側のレバーを押すと正反応とした。図形の表示時間は各々0.3秒であった。サンプル刺激と選択刺激の入れ替えの際に視覚残像が生じるが、課題の習得に応じてこの残像を次第に少なくするようにした。訓練を6週間続けたが、明らかに残像がない状況において、正反応が80%を超えるレベルには達しなかった。
そこで、違う系統のラット(Long-Evans)を用いて同様の実験を行なったが、成績はDAと同程度であった。このことから、ラットで視覚刺激を用いて短期記憶を調べるのは能率的でないという結論を得た。今後は位置の記憶を課題として、ラットのNMTSの方法の確立をめざす予定である。
小頭症ラット大脳皮質体性感覚野ニューロンの反応特性
伊藤宗之、川端優男1
[目的]大脳新皮質錐体ニューロンで感覚信号を受ける樹状突起は正常では、細胞体から放射状に出る数本の基底樹状突起とこれらに垂直に皮質表面に向かってまっすぐ延びる一本の尖頭樹状突起とからなる。これは表面の極く近くで初めて分岐する。しかし、実験的小頭症ラットの錐体ニューロンでは、尖頭樹状突起が細胞体から遠くないところで、分岐している異常を見つけた。分岐角度も100°に及ぶ。ニューロンの突起の発達の初期に分岐してしまうという意味をこめて、尖頭樹状突起の早期二分岐と呼んだ。細胞の形が機能を密接に左右する感覚受容器とは異なって、脳細胞ではむしろ入力線維の反応特性にのみ依存するとされてきた。最近、樹状突起にパルスが逆行的に分岐点まで伝わり得るとの説がある、脳細胞の形も反応に密接な関係を持つことになる。本実験ではこれらの異常な形態を示すニューロンの生理学的反応を調べた。
[方法]胎生17日に母体壁を通し200rのX線照射を受けたのち生まれ育ったラットをウレタン麻酔下で、頭部を固定し、大脳皮質体性感覚野を露出し、ひげ刺激に対する錐体ニューロンの反応を記録した。この細胞を染色し、切片上で樹状突起の分岐の有無、記録電極の痕跡から記録部位の推定を行なった。
[結果と考察]50個のニューロンは細胞体からの記録と判定され、反応潜時は平均15.1ミリ秒であり、このうち36個で尖頭樹状突起の早期二分岐を見た。15個のニューロンでは尖頭樹状突起から記録されたが、分岐より先からは一例の記録もなかった。潜時は19.5ミリ秒で細胞体より4.4ミリ秒遅れて逆行すること、二分岐で伝搬が止るものと判断された。
1共同研究科
ひげ刺激に対するバレルニューロンの反応
加藤美幸1、伊藤宗之
[目的]哺乳類の大脳皮質感覚領には皮質表面に垂直な円柱の並びが感覚単位としてのモデュールを構成し、各モデュールに数千のニューロンが含まれる。通常は可視できないが、ラットやマウスの髭の感覚領に限り、特に第4層に限って、水平切片に、円柱の断面の並びが見られ、バレルと呼ばれる。バレルは感覚の尖鋭化に重要な役割を演じるとされて久しいが、定量的な電気生理学の報告は多くない。昨年度、製作した髭の定量刺激と同時にニューロンパルスの計数を行なう自動刺激器で、バレル内外のニューロンの反応特性を調べた。
[方法]ウレタン麻酔のもと、色素を充填した、やや太めの硝子電極で長時間記録を狙った。ひげの変位は一試行2.56秒の台形波で、6種の立ち上がり速度(100-2.5mm/s)のそれぞれに4種の振幅(2-0.2mm)を組み合わせた。24試行を1セットとし、各ニューロン20セット以上の刺激を与えた。振幅の違いで反応強度が違うかどうか、速度の違いで反応強度が違うかどうかを分散分析のF値で判定しようとした。脳切片でバレルと記録部位の位置関係を検した。
[結果]70個のニューロンのうち、バレルに属するもの32個、バレルに属さないもの29個を得た。振幅依存度はバレル内ニューロンで高く(F値、5.27対2.13)、速度依存度はバレル外ニューロンで高かった(F値、2.76対3.20)。
[考察]バレル外ニューロンは錐体ニューロンと予想するに難くないが、バレル内の細胞はこのサイズの電極でのみ記録可能で、細胞内染色には太すぎるのでニューロン種が未だ不明である。バレルはわずかな刺激の大きさの弁別に必要であると結論できた。
1共同研究科
研究業績
著書・総説
著者 | 総説 |
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Watanabe, M., Sawai, H.1, Fukuda, Y.2 (1Okayama Pref. Univ., 2Osaka Univ.) | Survival of axotomized retinal ganglion cells in adult mammals. Clin. Neurosci. 4:233-239, 1997. |
Totsuka, T., Watanabe, K., Uramoto, I., Sakuma,K., Mizutani, T.1 (1Nagoya City Univ.) | Muscular dystrophy: Growth inhibition may alleviate the disease progress. SJDR 3:99-106, 1997. |
原著論文
原著者 | 総説 |
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Seto-Ohshima, A., Murashima, Y.1, Kawamura, N.,Aoi, T., Ito, M.(1Tokyo Inst. Psychiatry) | Facial nerve innervating pinnae muscles of the gerbil:Three-dimensional construction with respect to neighboring structures. Acta Histochem. Cytochem. 30: 653-660, 1997. |
Kawamura, N., Ito, M., Seto-Ohshima, A. | Postnatal development of the structure of the peripheral vestibular system of the gerbil. Acta Histochem. Cytochem. 31: 33-38, 1998. |
Ito, M., Seto-Ohshima, A. | Site of cortical utricular representation with special reference to the somatosensory barrel field in the gerbil. Ann. Otol. Rhinol. Laryngol. 107: 411-415, 1998. |
Uramoto, I., Miyamoto, K.1, Watanabe, K., Totsuka,T. (1Natl. Inst. Minamata Disease) | Recycling of acetylcholine following impulse transmission in rat muscle revealed in the presence of neostigmine. Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 25: 44-49, 1998. |
Ito, N.1, Shirahata, A.1, Yagi, T.1,Matsushima, T.1, Kawase, K.2, Watanabe, M.,Uchikawa, Y.1 (1Nagoya Univ., 2Gifu Univ.) | Development of artificial retina using cultured neural cells and photoelectric device: a study on electric current with membrane model. Proceedings of The 4th International Conference on Neural Information Processing. pp.124-127, 1997. |
Totsuka, T., Watanabe, K., Uramoto, I., Sakuma,K., Mizutani, T.1 (1Nagoya City Univ.) | Muscular dystrophy: Centronucleation may reflect a compensatory activation of defective myonuclei. J. Biomed. Sci. 5:54-61, 1998. |
Sakuma, K., Watanabe, M., Totsuka, T., Uramoto.I., Sano,M., Sakamoto, K.1 (1Yokohama City Univ.) | Differential adaptations of insulin-like growth factor‐I, basic fibroblast growth factor, and leukemia inhibitory factor in the plantaris muscle of rats by mechanical overloading: an immunohistochemical study. Acta Neuropathol. 95: 123-130, 1998. |
Tachibana, T., Narita, H.1, Ogawa, T.2, Tanimura,T.3 (1Smithkline Beecham Seiyaku K.K., 2Teikoku Hormone Mfg., Co., Ltd., 3Kinki Univ.) | Using postnatal age to determine test dates leads to misinterpretations when treatments alter gestation length: Results from a collaborative behavioral teratology study in Japan. Neurotoxicol. Teratol. 20: 421-429, 1998. |
Nakanishi, K., Zhang, F.1, Baxter, D.A.1, Eskin,A.2, Byrne, J.H.1 (1Univ. Texas, 2Univ. Houston) | Role of Ca2+/CaM dependent protein kinase 2 in modulation of sensorimotor synapses in Aplysia. J.Neurophysiol. 78: 409-416, 1997. |
Takahashi, M.1, Yamada, T.2, Nakanishi, K., Fujita, K.3, Nakajima, K.3, Nobusawa, E.3, Yamamoto,T.1, Kato, T.3, Okada, H.3 (1Choju Medical Inst., 2Chiba Univ., 3Nagoya City Univ.) | Influenza A virus infection of primary cultured cells from rat fetal brain. Parkinsonism & Related Disorders 3: 97-102, 1997. |
その他の印刷物
著者 | 総説 |
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浦本 勲 | ポパーリアンのつぶやき:インパルス伝達のリサイクル過程は、短期記憶的に調節されるか?日本生理誌 59:456-460, 1997. |
戸塚 武,渡辺貴美,佐久間邦弘,浦本 勲 | 筋ジストロフィー症DMD患者とdyマウスの発症のタイミングは一致する.愛知県特定疾患研究協議会,平成8年度研究報告書 124-125, 1997. |
学会発表
発表者 | 内容 |
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渡部眞三,犬養尚子,1福田 淳(1大阪大) | 軸索を切断された網膜神経節細胞の末梢神経架橋による長期生存.神経組織の成長・再生・移植研究会(京都)1997.6.5. |
戸塚 武,渡辺貴美,浦本 勲 | 筋ジストロフィー症DMD患者とdyマウスの発症のタイミングは一致する.Medical Genetic研究会(東京)1997.7.5. |
橘 敏明 | BT共同研究-メタ分析・パワー分析によるまとめ.日本先天異常学会(京都)1997.7.16. |
伊藤宗之,加藤美幸 | 定量的髭刺激に対するラット体性感覚野ニューロンの反応.日本神経科学会(仙台)1997.7.16. |
中西圭子,久木田文夫1(1岡崎生理研) | 培養大脳皮質ニューロン間の同期したburstの解析.日本神経科学会(仙台)1997.7.16. |
渡部眞三,1福田 淳(1大阪大) | 移植末梢神経の架橋によるネコ網膜-膝状体路の再構築.日本神権科学学会(仙台)1997.7.18. |
佐久間邦弘,戸塚 武 | 代償性筋肥大によるbFGF,IGF‐I,LIFのタンパク発現の変化.日本体力医学会(大阪)1997.9.22. |
Mase, M.1, Yamada, K.1, Fujita, K.1, Nakanishi, K., Kato, T.1(1Nagoya City Univ.) | Effect of NitricOxide on Functional Synaptic Formation in Neuron‐Glia Co-culture of Rat Cortex. The 5th International Meeting on Biology of NO(Kyoto)1997.9.5. |
大島章子,青井隆行,河村則子,伊藤宗之,村島善也1(1東京都精神研) | スナネズミの発作好発系統と抵抗系統について.日本動物学会(奈良)1997.10.3. |
戸塚 武,渡辺貴美,佐久間邦弘,浦本 勲:筋ジストロフィー症の病態の見直し | 中心核筋線維はむしろ太い.日本疾患モデル学会(豊中)1997.10.18. |
佐久間邦弘,渡辺貴美,浦本 勲,戸塚 武 | 筋ジストロフィー症dyマウス:発育期のdy筋におけるHGF,bFGF,LIFのタンパク発現の変化.日本疾患モデル学会(豊中)1997.10.18. |
八木 透1,伊藤信泰1,白幡篤志1,松島俊也1,川瀬和秀2,渡部眞三,内川嘉樹1(1名古屋大,2岐阜大) | 体内埋め込み型人工網膜の開発(第2報).第13回ヒューマン・インタフェース・シンポジウム(大阪)1997.10.23. |
戸塚 武,渡辺貴美,浦本 勲,佐久間邦弘 | 筋ジストロフィー症dyマウス:骨成長依存性筋成長障害と代償性筋線維成長.中部日本生理学会(岡崎)1997.10.23. |
佐久間邦弘,渡辺貴美,浦本 勲,戸塚 武 | 筋ジストロフィー症dyマウス:dy筋における筋分化制御因子(MyoD Family)のタンパク発現の変化.中部日本生理学会(岡崎)1997.10.23. |
中西圭子,久木田文夫1(1岡崎生理研) | 培養ニューロン間の同期したバーストの解析.中部日本生理学会(岡崎)1997.10.24. |
Ito, N.1, Shirahata, A.1, Yagi, T.,1 Matsushima, T.1, Kawase, K.2, Watanabe, M., Uchikawa, Y.1 (1Nagoya Univ., 2Gifu Univ.) | Development of artificial retina using cultured neural cells and photoelectric device: a study on electric current with membrane model. The 4th International Conference on Neural Information Processing (ICONIP 1997) (Duniden, New Zealand) 1997.11.26. |
Watanabe, M. | Retinal ganglion cells surviving axotomy in adult cats. The 20th Taniguchi Foundation International Symposia on Visual Science (Ohtsu)1997.11.28. |
戸塚 武,渡辺貴美,佐久間邦弘,浦本 勲 | 筋ジストロフィー症と骨成長依存性筋成長障害.Auxology(成長学)研究会(東京)1997.11.29. |
渡部眞三 | ネコ網膜神経節細胞の軸索切断後の生存と軸索再生.科学技術振興調整費による目標達成型脳科学研究『網膜神経回路網・視神経の再生における制御因子に関する研究』リエゾン会議(つくば)1998.2.4. |
戸塚 武 | 筋細胞核は機械的刺激を感知する.運動生化学研究会フォーラム「運動とは何か」(東京)1998.2.14. |
戸塚 武 | 筋細胞の肥大成長は核に依存する.運動生化学研究会フォーラム「運動とは何か」(東京)1998.2.14. |
戸塚 武 | 筋細胞の損傷は肥大のための必要条件.運動生化学研究会フォーラム「運動とは何か」(東京)1998.2.14. |
戸塚 武 | 筋細胞は無数の穴の開いた風船のようなもの.運動生化学研究会フォーラム「運動とは何か」(東京)1998.2.14. |
戸塚 武 | 筋細胞は機械的刺激をどのようにして化学的反応に換えるのか.運動生化学研究会フォーラム「運動とは何か」(東京)1998.2.14. |
戸塚 武 | 筋ジストロフィー症筋病変は、揺れ動く筋の構造と機能を映す.科学技術振興事業団・JST異分野研究者交流フォーラム「快か不快か:生命現象のとらえ方」(松代)1998.2.28. |
浦本 勲,渡辺貴美,戸塚 武 | インパルス伝達のリサイクル過程は短期記憶的に調節される.日本生理学会(金沢)1998.3.27. |
全 美子1,小阪 淳1,渡部眞三,福田淳1(1大阪大) | 末梢神経移植による網膜神経節細胞の生存促進と軸索再生.日本生理学会(金沢)1998.3.27. |
渡部眞三,犬養尚子 | 視神経切断後のネコ網膜神経節細胞の変性.日本生理学会(金沢)1998.3.27. |
戸塚 武,渡辺貴美,浦本 勲,佐久間邦弘 | 筋ジストロフィー症マウスと正常ウズラ:成長に伴う中心核の増加.日本生理学会(金沢)1998.3.27. |
佐久間邦弘,渡辺貴美,浦本 勲,戸塚 武 | 筋損傷後の修復過程における筋分化制御因子(MyoD Family)の変化.日本生理学会(金沢)1998.3.27. |
講演など
講演者 | 内容 |
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戸塚 武,渡辺貴美,佐久間邦弘,浦本 勲 | :筋ジストロフィー症は筋成長障害:逆説-成長する筋線維の核.文部省「生体運動」合同班会議(豊中)1998.1.7. |
その他の研究活動
専門誌編集委員
著者 | 内容 |
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戸塚 武 | Saudi Journal of Disability and Rehabilitation の編集委員. |
教育活動
著者 | 内容 |
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伊藤宗之 | 生理学(愛知県立総合看護専門学校)1997.4.1.~1998.3.31. |
伊藤宗之 | 生理学(愛知県立春日井看護専門学校)1997.4.1.~1998.3.31. |
伊藤宗之 | 生理学(大阪大学医学部)1997.4.1.~1998.3.31. |
渡部眞三 | 生理学(大阪大学医学部)1997.4.1.~1998.3.31. |
橘 敏明 | 統計学(愛知県立春日井看護専門学校)1997.4.1.~1998.3.31. |
6.形態学部
研究の概況
岸川正大
当部門では、先天異常を含めて発達障害の成因と予防に関する研究を、主として形態学的あるいは病理学的観点からの研究方法を軸に、分子生物学、遺伝子ターゲッティング、生化学、細胞生物学、電気生理学、行動学などの多種多様な手法を併用しての研究を行っている。先天異常や発達障害のなかでも特に中枢神経系および末梢神経系の異常に着目して、実験動物あるいは培養細胞を用いた研究を進めている。一方、コロニー中央病院やこばと学園などの個々の症例についても、病理組織学的診断や病理解剖を担当し、人の脳・神経系の発達障害、消化管の先天異常、全身諸臓器の多発奇形など臨床病理学的研究も平行して行っている。
第一研究室の概況:正常で機能的な神経系を形成する為には正確な神経回路形成が重要である。谷口らは、この神経回路形成過程に重要な働きをしていると考えられているコラプシン-1(collapsin-1)に着目し、ジーンターゲッティング法を用いてこの遺伝子を破壊したノックアウトマウスの作製に成功した。そのマウスを用いて、生体内の神経回路形成過程におけるcollapsin-1の機能を解析している。その結果、collapsin-1は神経回路形成過程において非常に重要な働きをしていることが明らかにされた。慶野は第三研究室の佐藤、柏井らと共にS-S結合形成を促進する酵素PDIファミリー蛋白のひとつであるERp72のペプチド結合能を、昨年に引き続き調べる為に、さらにdeletion部を大きくしたdeletion mutant cDNAを発現ベクターに組み込み、E.coliで発現させる系を作成した。岸川、慶野らは老化促進モデルマウス(SAMP1TA/Ngs、SAMR1TA//Ngs)を用いて、神経伝達部の発達障害と加齢による変化との関連性などについて、マウスの行動学的検討と、形態学的変化さらには分子生物学的手法を用いて研究を進めている。 第二研究室の概況:佐野、北島は、神経成長因子(NGF)に代表されるニューロトロフィンの神経細胞に対するはたらき、特に神経突起の伸展誘導のメカニズムについて、研究を行ってきた。今年度より、ニューロトロフィンが神経細胞の生存維持にはたらく作用に重点をおいて研究を進めている。幼鶏、感覚神経節の神経細胞の培養において、各ニューロトロフィンは、それぞれ特定の神経細胞の生存や神経突起の再生に不可欠である。新規抗生物質ラディシコールがこのニューロトロフィンの作用を強力に促進する事実を見出した。未だメカニズムは不明だが、類似した効果を示す物質についてこれまでに報告がなく、詳しい研究の進展が望まれる。ニューロトロフィンの作用は、これまでTrkと呼ばれる受容体を介した作用メカニズムの研究が進んでいる。もう1つの受容体p75の役割は 、最近、神経細胞死(アポトーシス)を制御するとの仮説世有力となった。本研究グループの樹立したNGF感受性の顕著なPC12D細胞を用いて、遺伝子導入などの手段による、Trk、p75の神経細胞死にかかわる分子機構についても研究を進めている。大島らは、ヒトのてんかんにみられる年齢依存性の発作形成のモデルとして遺伝性てんかんモデル動物スナネズミの発作好発系統を確立し、発作の形成過程を行動の観察、電気生理学的手法による脳活動の測定、病理学的あるいは生化学的検討などにより調べてきた。本年度は幼若時の前庭刺激で耳介の動きが誘発される現象が発作形成の早期過程である、という考えを基に続けてきたその経路の検討を続けると同時に、発作形成期の脳波測定に適用する基礎として、成獣を用いたテレメータによる無拘束状態での脳波測定を試み、この方法が心理的ストレスも発作誘因となっていくスナネズミの脳波測定に有効な手段であることを見出した。発作好発系統成獣の大脳半質は刺激に対し特徴的な脳波を示すことを見出したが、今後は発作形成期での脳波を調べ、既に報告したてんかん関連蛋白P70と類似した蛋白の発作形成期の局在の変化、ラットと異なる抑制系の発 達などとの関係を検討し、結果を東京都精神研から譲り受けた発作抵抗系統と比較する予定である。
第三研究室の概況:長浜らは、VIP類似の神経ペプチドで、VIPよりも強力な弛緩作用を有するPituitary adenylate cyclase activating peptide(PACAP)を含有する神経要素のラット消化管壁内における分布様式を光顕的および電顕的に行った。筋層間神経叢では単一の長い軸索様突起と短い複数の突起を持つDogiel type 1のPACAP陽性神経細胞が多く、粘膜下神経叢では複数の長い軸索様突起を持つが短い突起をほとんどわずかしか持たないDogiel type 2のPACAP陽性神経細胞が多かった。筋層内のPACAP陽性神経線維は、その多くが筋層間神経叢ganglia内のPACAP陽性の神経細胞から由来しており、内輪筋および外縦筋に分布していた。特に回腸の内輪筋内側のdeep muscular plexus内では非常に密に分布していた。これらの筋層内に分布する神経線維の末梢側にはvaricosityの形成が著明であった。この所見はPACAPニューロンがmotor neuronとして機能することを示唆した。筋層間神経叢では消化管の口-肛門の長軸方向に走行する多数のPACAP陽性神経線維が認められ、より肛門側へ向かうものが特に目立ち、PACAPニューロンが消化管蠕動運動の方向性に大きく関与している事が示唆された。また筋層間神経叢と粘膜下神経叢のganglia内ではPACAP陽性の神経終末がPACAP陽性あるいは非PACAP陽性神経細胞の細胞体あるいは突起と多数のシナプス形成をしているのが認められた。これはPACAPニューロンがinterneruonとして機能する事を示唆した。佐藤、柏井、慶野らは細胞内における蛋白質の高次構造形成に重要な働きをする分子シャペロンや蛋白質のS-S結合形成を促進するPDIファミリー蛋白質について研究を進めている。PDIファミリー蛋白質であるPD1、ERp61、ERp72の基質に対する作用の違いについて解析を進めている過程で、インスリンペプチドへの結合能が異なることが解った。PDIファミリー蛋白質であるERp61、ERp72が分子シャペロンとして機能しているかを解析する目的で、ペプチド結合領域の同定を行う研究を続けている。報告されているPDIのペプチド結合領域を元に、カルボキシ末端からの一連のdeletion mutantを作成した。それを用いてインスリンペプチド結合能を調べたところ、146アミノ酸残基を欠失させてもインスリンペプチドへの結合活性は完全に消失しなかったが、逆にペプチド結合活性が上昇する領域が見つかり、インスリンペプチドの解離を調節している領域があるのではないかと考えている。その他に、トリプシン阻害剤(BPTI)のrefolding系を再現性よく構築することが出来た。現在、BPTIのrefoldingに与えるPDIファミリー蛋白質の影響を解析しているところである。
平成10年1月1日付けで岸川正大が形態学部・部長として長崎大学医学部(原爆後障害医療研究施設資料収集保存部生体材料保存室・助教授)より着任した。
末梢神経系の神経回路形成過程におけるコラプシンの機能解析
谷口雅彦、藤澤 肇1、八木 健2
機能的な神経回路を形成するためには、神経軸索の正確な標的への投射が必須である。この正確な軸索投射においては、軸索先端の成長円錐が重要な役割をしている。ニワトリDRGにおける成長円錐伸展抑制分子としてcollapsin-1が同定された。現在までにcollapsin-1は神経培養系の実験及びin situ hybridizationの解析により、成長円錐の抑制性ガイド分子であることが示唆されている。しかし、生体内で実際にcollapsin-1がどの神経回路形成過程に関わっているかについてはわかっていなかった。そこで我々は、collapsin-1欠損マウスを作製することにより、生体内でのcollapsin-1の神経回路形成過程での役割を明らかにすることを目的とした。
collapsin-1欠損マウスは成長して交配可能である。また、体が野生型と比べて小さい。collapsin-1は軸索のガイド分子と考えられているので、collapsin-1欠損マウス胚を抗ニューロフィラメント抗体で染色した。その結果、collapsin-1欠損マウスの10.5日胚では、脳神経において、三叉(5)・顔面(7)・舌咽(9)・迷走(10)・副神経(11)の走行に異常が認められたが、動眼神経(3)では認められなかった。このことより、collapsin-1は実際に生体内で抑制性のガイド分子であり、また選択性があることが分かった。12.5日胚では、顔面の三叉神経の走行の乱れが観察され、目のレンズにまで神経軸索が入り込んでいた。また、collapsin-1は軟骨に発現しており、欠損マウスでは軟骨に向かって脊髄神経が伸びていることより、以前から知られている軟骨に神経が向かわない現象が、collapsin-1によるものであることが明らかとなった。また最近、藤澤研究室とともにneuropilin欠損マウスとcollapsin-1欠損マウスの神経走行異常が良く似ていることに注目し、collapsin-1の機能的なレセプターがneuropilinであることを明らかにした。これらの結果より、collapsin-1とneuropilinによる末梢 神経初期発生での軸索投射が正確に起こるという分子メカニズムの存在が明らかとなった。
1名古屋大・理、2岡崎生理研・高次神経
ニューロトロフィンによる培養知覚神経節細胞の生存維持および神経突起の再生作用を賦活する新規抗生物質ラディシコール
佐野 護、北島哲子、中西圭子1、吉田 稔2
ニワトリ胚脊椎後根神経節(DRG)の神経細胞は、NGF、BDNF、NT-3、それぞれに反応して、神経突起の再生が見られると同時に、これらニューロトロフィン(NT)が生存維持に不可欠である。各神経細胞固有のTrk受容体の存在を示す報告が知られる。ラディシコールは、Kwonら東大農学部のグループにより、カビ代謝物から得たチロシン燐酸化酵素阻害作用を示す抗生物質として報告されたが、1953年防カビ作用、トランキライザー作用のある毒性の低い物質としてDelmotteらにより既に報告されていた。我々は、NTのシグナル伝達の阻害を予想して、ラディシコール(10 ng/ml)をDRGの培養系に添加したところ、単独ではほとんど効果がないが、NGF、BDNF、NT-3、などと同時添加すると、神経節からの突起の再生を促進し、数、長さともに増加した。また、神経節より細胞が周囲へ移動する現象は、ラディシコール添加により抑制された。6-8日胚、各神経節で類似した結果が見られた。分離した神経細胞の培養においても、ラディシコール添加により、NGF、BDNF、NT-3による神経突起伸展を数倍増加させた。NTの種類を問わず、10から20ng/mlで、最大の促進が得られた。NT非存在下では、24時間後には、ほとんどの神経細胞が死に、崩壊が見られる。NGFを添加すると2-3割の細胞が、またNT-3、BDNFの添加では、1割弱の細胞の生存が認められるが、10 ng/mlのラディシコールを共存させると、72時間後でさえ、いずれも50%以上の細胞の生存が認められた。ニワトリ交感神経節の神経細胞に対しても同様の作用が認められた。このようにNTの作用を促進して、神経突起の再生や細胞生存維持効果を表す物質は、他に報告が無い。dbcAMP、bFGFなどには、DRG神経細胞に対して類似の効果は認められなかった。ラディシコールのin vitroにおけるP60v-srcチロシンキナーゼの阻害活性は、IC50が100 ng/mlと報告されており、NT作用賦活効果は1オーダー低い事から、どのようなメカニズムに基づくのか、今後の課題としたい。
1生理学部、2東京大・農
本研究は、文部省重点領域研究「神経細胞死制御」および基盤研究C(代表者、佐野)の援助を受けた。
抑制型変異ras遺伝子を導入したPC12D細胞の神経成長因子(NGF)感受性とNGFによる神経細胞生存維持作用
北島哲子、佐野 護
神経成長因子(NGF)が神経細胞に作用する過程は、NGF受容体のチロシンリン酸化を介して、Rasタンパク、PLCγ、PI-3-Kなどの活性化を誘導し、広範な細胞機能の制御が行われることが知られている。PC12D細胞に抑制型rasを導入した2株(A14、C2-43)を作成した。これらの細胞は、デキサメサゾン処理するとプロモーター処理の時間に依存して抑制型Rasタンパクの増加が確認された。あらかじめデキサメサゾン処理すると24時間後にNGF刺激を与えても全く突起誘導が起こらない。しかしdbcAMPによる神経突起誘導は、影響を受けなかった。したがって、NGFシグナルによる神経突起の伸展にはRasタンパクの活性化を経なければならないことが示された。一方、PC12細胞を無血清培地で培養すると細胞死が起こるが、NGFを培地に添加すると、細胞死は起こらない。A14、C2-43細胞でも同様のNGFによる細胞死抑制が確認されたが、Rasシグナルを抑制しても影響を受けなかった。つまり、NGFによる細胞死抑制に、Rasシグナルは必ずしも主要な役割を果たしていないと結論づけられた。NGFによる細胞死抑制には、PI-3-Kが関わる可能性を示す報告があるが、PI-3-Kの阻害剤ウオルトマンニンを添加するこ とによりNGFの細胞死抑制作用を除去出来なかった。最近、神経細胞死には、NGFの低親和性受容体p75が致死因子として介在する可能性が新たに注目されている。そこで、p75に結合するNGFの部分ペプチド(CATDIKGKEC)を作成した。血清除去の培地で250μMまでその添加効果を検討したが、その神経細胞死抑制効果は確認出来なかった。しかし、神経細胞死にp75受容体のかかわることを示す報告が増加しており、そのメカニズムを明らかにする目的から、p75遺伝子を多量に発現するPC12D細胞の作成を現在進めている。
本研究は、文部省重点領域研究「神経細胞死制御」および基盤研究C(代表者、佐野)の援助を受けた。
てんかんの遺伝性モデル動物スナネズミの形態学的検討
河村則子1、大島章子
てんかんの遺伝性モデル動物であるスナネズミの発作は年齢依存性を示す。その発作形成過程を調べる目的で、我々は発作好発系統(MGS/Idr)を確立した。この系統では発作形成初期に床替えの刺激で耳介のリズミカルな後方への動きが誘発されるが、その過程がその後の発作発展につながると考えられること、一方、比較のため東京都精神研、村島博士から恵与をうけ導入した発作抵抗系統の個体ではこの動きはみられないことを見出した。
両系統の差が何によるのかを検討する目的で両系統の顔面神経の走行を調べた。耳介の動きが誘発された生後50日から60日の発作好発系統の個体および同日齢の発作抵抗系統の個体を用いた。ネンブタール麻酔後、灌流固定し、その頭部をぎ酸で脱灰した。連続パラフィン切片を作成し、KB法で染色、顔面神経の走行を追うと、後部耳介筋へ入る顔面神経は、両系統の個体とも脳幹から出て側方に伸び、膝神経節で側後方へ向きを変え、耳介の後で頭蓋骨を出て更に腹側に向きを変え、その下行途中で後耳介筋へ向かう側枝をだした。後耳介筋内を上行する神経も両系統で同様に認められた。したがって、両系統の耳介の動きに関する差は、少なくとも抵抗系統の後耳介筋に顔面神経が認められないといった解剖学的な差によるものではないことがわかった。
一方、脳幹から膝神経節までの領域での顔面神経と前庭神経について、連続切片像からコンピューターソフト(VoxBlast)による三次元構築を行うと、両者の三次元的関係は好発系統の方がより密接であった。生後30日齢の個体でも同様の傾向が認められた。耳介の動きが、床替え時の主たる刺激である前庭刺激によって最終的には顔面神経が活動することによると考えるとこの結果は興味深いが、この意味は今後の課題である。
コンピュータによる三次元構築にはイメージアンドメジャーメント社の協力を得た。本研究は文部省科学研究費(No.07640917)の援助を得た。
1共同研究科
スナネズミの大脳皮質の電気生理学的性質
大島章子、加藤美幸1、伊藤宗之2
我々が確立した発作好発系統スナネズミでは幼若期に床替えの刺激により耳介のリズミカルな後方への動きが誘発され、その後発作が発展していく。好発系統で床替え時の主たる刺激である前庭刺激に反応する大脳皮質(前庭皮質)部位を麻酔下に電気刺激すると、類似した耳介の動きが誘発された。また成獣のこの領域に慢性電極を埋め込みテレメータを用い非麻酔下、無拘束状態で脳波を測定すると、耳介の動きを誘発する刺激を加えた時の耳介の動きの際に鋭波がみられた。一方、電気刺激実験から求めた顔面の運動野を電気刺激して誘発される耳介の動きは、用いた条件下では前庭皮質領域の刺激によるものより弱く、刺激強度を上げても大きい動きは誘発されなかった。またその領域を切除しても前庭皮質領域の電気刺激により誘発される耳介の後方への大きい動きは残った。現在発作形成への前庭皮質領域と運動野との関係を、発作抵抗系統との比較を含め検討中である。
この前庭皮質は体性感覚領内にあるが、発作好発系統成獣の前庭皮質を含む領域に慢性電極を埋め込み、テレメータで非麻酔下、無拘束状態での脳波を記録すると体性感狂刺激に対し特徴的な反応を示した。発作好発系統の成獣ではある種の体性感覚刺激も発作誘因となるが、同様の刺激では発作抵抗系統の個体は発作をおこさない。スナネズミの体性感覚領の興奮性を探る目的で、求心性刺激に対する表面誘発電位を記録した。ウレタン麻酔下で脳定位装置に頭部を固定し、硬膜を除去したのち、当該部から針電極で単極誘導した。感覚毛の機械刺激ではラットなどの二相性陽性一陰性波とは明らかに異なって、一般にスナネズミでは単相性陽性波のみであった。しかし皮下電気刺激を行うと、スナネズミのなかでも発作好発系統と抵抗系統の差異を検出し得た。すなわち、抵抗系統の誘発電位はよりラットのそれに近づき、二相性陽性一陰性波を現した。一方、好発系統では依然陽性波のみであった。両系統間にみられるこの差が皮質層間の興奮伝播の差か、抑制機構の発達の差か検討中である。
テレメータによる脳波測定には株式会社ユニメックの協力を得た。
本研究は文部省科学研究費(No.07640917)の援助を得た。
1共同研究科、2生理学部
消化管壁内神経叢内のPACAP含有ニューロンの形態学的解析
長浜真人、続木雅子1、望月 徹2、桑原厚和2
VIP類似の神経ペプチドであるPituitary adenylate cyclase activating peptide(PACAP)は、その機能について詳細は未だ明らかではないが、神経細胞内に存在し、平滑筋に対してはVIPよりも強力な弛緩作用があることが知られている。ラットの十二指腸以下の全消化管における、PACAPを含有する消化管壁内神経叢内の神経成分について免疫組織学的染色を用いた光顕的および電顕的検索を行った。PACAP陽性の神経細胞体および神経線維は検索した全ての範囲で認められた。PACAP陽性の神経細胞体は筋層間神経叢、粘膜下神経叢に認められた。PACAP陽性の神経線維は筋層間・粘膜下神経叢、内輪・外縦筋層内、粘膜下組織に認められた。筋層間神経叢では単一の長い軸索様突起と短い複数の突起を持つ Dogiel type1のPACAP陽性神経細胞が多く、粘膜下神経叢では複数の長い軸索様突起を持つが短い突起をほとんどわずかしか持たないDogiel type2のPACAP陽性神経細胞が多かった。筋層内のPACAP陽性神経線維は、その多くが筋層間神経叢ganglia内のPACAP陽性の神経細胞から由来しており、検索した全範囲で内輪筋および外縦筋に分布していた。特に回腸の内輪筋内側のdeep muscular plexus内では非常に密に分布していた。これらの筋層内に分布する神経線維の末梢側にはvaricosity の形成が著明であった。この所見はPACAPニューロンがmotor neuronとして機能することを示唆した。筋層間神経叢では消化管の口-肛門の長軸方向に走行する多数のPACAP陽性神経線維が認められ、特により肛門側へ向かうものが目立ち、PACAPニューロンが消化管蠕動運動の方向性に大きく関与している事が示唆された。また筋層間神経叢と粘膜下神経叢のganglia内ではPACAP陽性神経線維のvaricosityがPACAP陽性あるいは非PACAP陽性神経細胞体に近接し、電顕的にはPACAP陽性の神経終末がPACAP陽性あるいは非PACAP陽性神経細胞の細胞体あるいは突起と多数のシナプス形成をしているのが認められた。これはPACAPニューロンがinter neuronとして機能する事を示唆した。
1共同研究科、2静岡県立大
PDIファミリー蛋白質ERp72のペプチド結合領域の解析
慶野裕美、柏井明子、佐藤 衛、佐賀信介1
細胞内における蛋白質の高次構造形成には分子シャペロンと共に、共有結合の形成に関わるfolding酵素が重要である。我々は小胞体内で蛋白質のS-S結合形成に働くfolding酵素であるPDI、ERp61、ERp72について研究を進めている。以前に、これらの酵素の組織分布を比べたところ、同一の組織に観られるが、それらの発現量が大きく異なることを報告してきた。例えば、膵臓ランゲルバンス島β細胞におけるPDIの発現量は、膵外分泌腺細胞に比べきわめて低いが、逆にERp61はβ細胞でより多く発現していることが判った。
次にこれらの酵素を用いてインスリンのA、B鎖の解離促進反応を調べたところ、ERp61とERp72はPDIの約1/5の解離促進活性を持っていることが判った。また、PDIとERp72は解離したインスリンペプチドに結合していたが、ERp61は結合していないことが判った。そこで我々はすでに報告されているPDIのペプチド結合領域を元に、ERp72のペプチド結合領域の同定を試みた。遺伝子工学的にERp72をカルボキシ末端(C末端)から53、80、114、150アミノ酸残基を欠失させた変異体を作成し、大腸菌で発現させ、精製後インスリン結合アッセイを行った。現在までにこれらの変異体を用いて得られた結果をまとめると、1)C末端から150アミノ酸残基まで欠失させたが、ペプチド結合能の消失は確認できていない。2)逆に、150アミノ酸残基を欠失させた変異体のペプチド結合能は、114アミノ酸残基より短い欠失変異体よりも強くなっている。この結果より、ペプチド結合領域はさらにC末端側にあると思われるが、C末端側の114から150アミノ酸残基の間にペプチドの解離を調節する領域があるのではないかと考えている。さらにC末端を欠失させた変異体を作成し、ペプチド結合能を解析しているところであり、ま た、114から150アミノ酸残基の間に本当に解離を調節する領域が存在するのかについて解析しようしている。
1愛知医大・第二病理
ウシ膵臓トリプシンインヒビター(BPTI)の還元型から活性型への転換における小胞体局在PDIファミリー蛋白質の役割
佐藤 衛、柏井明子、慶野裕美、佐賀信介1
新規に合成された蛋白質は、二次および三次構造の形成ならびに共有結合の形成などにより会合体をつくり、機能しうる構造に変わる。分子シャペロンやfolding酵素と呼ばれる一群の蛋白質は、この過程の介添え役をおこなうことが徐々に明らかになってきた。我々は、この過程に関わる蛋白質で蛋白質のS-S結合形成に働くprotein disulfide isomerase(PDI)のファミリー蛋白質(PDI、ERp72、ERp61など)について研究を進めている。PDIファミリー蛋白質は、それぞれ二ないし三個のチオレドキシン様領域を持っているが、それぞれの蛋白質の機能的な違いについてはほとんど明らかにされていない。
我々は、これらPDIファミリー蛋白質が、発現量こそ異なるものの、同一の細胞内で発現していることに、機能的な分担があるのではないかと考え、解析している。我々は、三種類のPDIファミリー蛋白質がどのような作用の違いが見られるかを解析するため、三組のS-S結合を持つトリプシンインヒビター(BPTI)を利用して解析することにした。今までのBPTIの研究から、どのチオール基とどのチオール基がS-S結合を形成するかについては詳細に解析されている。我々は、BPTIのS-S結合形成を追跡できるシステムを利用し、PDIファミリーがBPTIのfoldingに与える影響を解析した。ラット肝臓より精製したPDI、ERp61、ERp72を用いてBPTIのfoldingに与える影響を解析した。我々は、BPTIのfolding解析システムを再構築することに成功し、BPTIのfoldingを再現性よく追跡することができるようになった。精製したPDIを用いてBPTIのfolding反応を調べたところ、PDIが無いときに比べ反応が促進されていることが確認できた。さらにERp61とERp72の影響を調べたところ、PDIと同様にBPTIのfolding反応を促進することが解った。しかし、PDIと比較してみるとfoldingの過程でいくつか異なる性質が観られた 。反応に加えた完全還元型から、種々の過程を経て成熟型への移行は、PDIの促進作用が最も強く、ERp61とERp72は同程度に促進していた。しかし、完全還元型から最初にS-S結合を導入する初期の過程では、逆にERp61とERp72はPDIに比べ促進作用が強いことが解った。さらに、中間産物N'(Cys14とCys38、Cys30とCys51に二組のS-S結合を持つ)から成熟型への移行は、PDIが最も促進作用が強いが、ERp72も同様に促進することが別の中間体N*(Cys14とCys38、Cys5とCys55に二組のS-S結合を持つ)への変換を促進できないと思われる結果を得た。現在、このN*を用いて解析を進めているところである。
1愛知医大・第二病理
研究業績
著書・総説
著者 | 総説 |
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谷口雅彦,八木 健1(1岡崎生理研) | Semaphorin 3「ノックアウトマウス・データブック」.Molecular Medicine 臨時増刊号,黒川清,笹月健彦(監修),中山書店,pp.455-456,1997. |
谷口雅彦 | 末梢神経系の神経回路形成にはセマフォリン 3/Dが必須である-ジーンターゲティングによる解明-.細胞工学,秀潤社,17(3):328-329,1998. |
Sano, M. | Nerve growth factor-responsive, transcription-independent outgrowth of neurites in a clonal variant of PC12 cells (PC12D). Current Topics in Neurochemistry 1: 27-40, 1997. |
原著論文
原著者 | 総説 |
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Kishikawa, K., Sakae, M.1 (1Nagasaki Univ.) | Herbal medicine and the study of aging in senescence accelerated mice (SAMP1TA/Ngs). Exp. Gerontol. 32: 229-242, 1997. |
Kishikawa, M., Sakae, M.1, Sato, H.1 (1Nagasaki Univ.) | The effect of herbal products on learing disturbance in senescence accelerated mice. Indian J. Pharmacol. 29: s350-s358, 1997. |
岸川正大,陶 祖萢1(1中国衛生部) | 高放射線地域(中国陽江地区)における老人性痴呆の疫学調査.老年期痴呆研究会誌 10: 31-33,1997. |
Higami, Y.1, Shimokawa, I.1, Kishikawa, M., Okimoto, T.1, Ohtani, H.1, Tomita, M.1, Tsujino, A.1, Ikeda, T.1 (1Nagasaki Univ.) | Malignant peripheral nerve sheath tumors developing multifocally in the central nervous system in a patient with neurofibromatosis type 2. Clin. Neuropathol. 17:115-120, 1998. |
Orihara, Y. I.1, Kishikawa, M., Ono, K.1(1Nagasaki Univ.) | The fates of the callosal neurons in neocortex after bisection of the corpus callosum, using the technique of retrograde neuronal labeling with two fluorescent dyes. Brain Res. 778: 393-396, 1997. |
Taniguchi, M., Yuasa, S.1, Fujisawa, H.2, Naruse, I.3, Saga, S.4, Mishina, M.5, Yagi, T.5 (1Chiba Univ., 2Nagoya Univ., 3Kyoto Univ., 4Aichi Med. Univ., 5Natl. Inst. Physiol. Sci.) | Disruption of semaphorin 3/D gene causes severe abnormality in peripheral nerve projection. Neuron 19: 519-530,1997. |
Kitsukawa, T.1, Shimizu, M.1, Sanbo, M.2, Hirata, T.1, Taniguchi, M., Bekku, Y.1, Yagi, T.2, Fujisawa, H.1(1Nagoya Univ., 2Natl. Inst. Physiol. Sci.) | Neuropilin-Semaphorin 3/D-mediated chemorepulsive signals play a crucial role in peripheral nerve projection in mice. Neuron 19: 995-1005, 1997. |
Taniguchi, M., Sanbo. M.1, Watanabe, S.1, Naruse,I.2, Mishina, M.1, Yagi, T.1 (1Natl. Inst. Physiol. Sci., 2Kyoto Univ.) | Efficient production of Cre‐mediated site-directed recombinants throught the"utilization of the puromycin resistance gene, pac: a transient gene-integration marker for ES cells.Nucleic Acids Res. 26: 679-680, 1998. |
Sano, M., Kitajima, S. | Activation of mitogen‐activated protein kinases is not required for the extension of neurites from PC12D cells triggered by nerve growth factor. Brain Res. 785: 299-308,1998. |
Sakuma, K., Watanabe, K., Totsuka, T., Uramoto, I., Sano, M., Sakamoto, K.1 (1Yokohama City Univ.) | Differentiated adaptations of insulin-like growth factor-1, basic fibroblast growth factor, and leukemia inhibitory factor in the plantalis muscle of rats by mechanical overloading:an immunohistochemical study. Acta Neuropathol. 95:123-130, 1998. |
Yoshida, K.1, Seto-Ohshima, A., Sinohara, H.1(1Kinki Univ.) | Sequencing of cDNA encoding serum albumin and its extrahepatic synthesis in the Mongolian gerbil, Meriones unguiculatus. DNA Res. 4: 351-354, 1997. |
Seto-Ohshima, A., Murashima, Y.1, Kawamura, N., Aoi, T., Ito, M. (1Tokyo Inst. Pshychiatry) | Facial nerve innervating pinnae muscles of the gerbil: Three-dimensional construction with respect to neighboring structures. Acta Histochem. Cytochem. 30: 653-660, 1997. |
Kawamura, N., Ito, M., Seto-Ohshima, A. | Postntal development of the structure of the peripheral vestibular system of the gerbil. Acta Histochem. Cytochem. 31: 33-38, 1998. |
Ito, M., Seto-Ohshima, A. | Site of cortical utricular representation with special reference to the somatosensory barrel field in the gerbil. Ann. Otol. Rhinol. Laryngol. 107: 411-415, 1998. |
Noguchi, T.1, Chin, K.1, Ohi, M.1, Kita, H.1, Otsuka, N.1, Tsuboi, T.1, Satoh, M., Nakai, A.1, Kuno, K.1, Nagata, K.1 (1Kyoto Univ.) | Heat shock protein 72 level decreases during sleep in patients with obstructive sleep apnea syndrome. Am. J. Respir. Crit. Care Med. 155: 1316-1322, 1997. |
その他の印刷物
著者 | 総説 |
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仲宗根朝紀1,君野孝二1,山下秀樹1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 肺葉間リンパ節転移を繰り返す原発巣不明癌の一例.日呼吸器外会誌11:85-89,1997. |
仲宗根朝紀1,君野孝二1,中崎隆行1,山下秀樹1,武冨勝郎1,飛永晃二1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | ムチン産生とER陽性を示した乳腺原発扁平上皮癌の1例.日臨床外会誌58:102-105,1997. |
中崎隆行1,飛永晃二1,武冨勝郎1,君野孝二1,仲宗根朝紀1,山下秀樹1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 膵悪性リンパ腫の1例.日臨床外科会誌58:448-452,1997. |
君野孝二1,仲宗根朝紀1,中崎隆行1,山下秀樹1,武冨勝郎1,飛永晃二1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 食道原発悪性黒色腫の1例.日臨床外科会誌58:373-377,1997. |
岸川正大 | 脳機能障害に対する漢方薬の効能-老化促進モデルマウス(SAMP1TA/Ngs)による検討.JAMA日本語版18(Suppl.4):24-25,1997 |
垣本 滋1,星野継二郎1,中島正洋2,岸川正大(1健保諌早総合病院,2長崎大) | 巨大セミノーマの1例.西日泌尿59:329-331,1997. |
林 哲朗1,西村俊満1,今泉利信1,松崎純宏2,岸川正大(1健保諌早総合病院,2長崎大) | 悪性ミュラー管混合腫瘍の一症例.日臨細胞九州会誌28:83-86,1997. |
Kishikawa M., Hayashida K.1, Kondo H.1, Kawaguchi S.1, Iseki M.1, Sato H.1(1Nagasaki Univ.) | Developmental retardation of synaptic transmission in model mouse. Takashima. S. (ed.) Proc. Japanese and Canadian International Workshop, pp.39-46, 1997. |
君野孝二1,仲宗根朝紀1,山下秀樹1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 胸部CTでcystic and solid patternを示した肺大細胞癌の一例.日呼吸器外会誌11: 642-646,1997. |
中崎隆行1,飛永晃二1,武冨勝郎1,君野孝二1,仲宗根朝紀1,山下秀樹1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 嚢胞液中のCEAが極めて高値を示した虫垂粘液嚢腫の1例.日臨床外会誌58:1294-1297,1997. |
中崎隆行1,飛永晃二1,武冨勝郎1,君野孝二1,仲宗根朝紀1,山下秀樹1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 小腸原発の髄外性形質細胞腫の1例.日臨床外会誌58:1550-1553,1997. |
中崎隆行1,飛永晃二1,武冨勝郎1,君野孝二1,仲宗根朝紀1,山下秀樹1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 大腸粘液癌の臨床病理学的検討.日臨床外会誌58:1975-1979,1997. |
星野継二郎1,垣本 滋1,松崎純宏2,岸川正大(1健保諌早総合病院,2長崎大) | カテコラミン高値を示した後腹膜神経鞘腫の1例.西日泌尿59:816-818,1997. |
垣本 滋1,星野継二郎1,松尾学1,岸川正大(1健保諌早総合病院) | 精索脂肪肉腫の1例.西日泌尿60: 49-51,1998. |
学会発表
発表者 | 内容 |
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谷口雅彦,湯浅茂樹1,成瀬一郎2,佐賀信介3,三品昌美4,八木健4(1千葉大,2京都大,3愛知医大,4岡崎生理研) | マウス神経回路形成におけるcollapsin-1分子機能の解析.日本発生生物学会(つくば)1997.5.27. |
成瀬一郎1,石切山敏2,慶野裕美,山田裕一(1京都大,2千葉県こども病院) | 遺伝性多指症/無嗅脳症マウス(Pdn/Pdn)とヒトGreig cephalopolysyndactyly syndromeは相同疾患.日本発生生物学会(つくば)1997.5.29. |
山中 勗1,早川知恵美1,新見教弘1,長屋昌宏1,北山巌生1,長浜真人,孫田信一,片平智行2,鈴置洋三2(1中央病院,2国立名古屋病院) | 多発奇形を持ち新生児期に死亡した不均衡型転座例での診断と遺伝相談における問題.日本臨床遺伝学会(奈良)1997.5.29. |
成瀬一郎1,石切山敏2,慶野裕美,山田裕一(1京都大,2千葉県こども病院) | 遺伝性多指症/無嗅脳症マウス(Pdn/Pdn)はヒトGCPS(Greig cephalopolysyndactyly syndrome)の相同疾患マウス.日本先天異常学会(京都)1997.7.14. |
谷口雅彦,湯浅茂樹1,成瀬一郎2,佐賀信介3,三品昌美4,八木健4(1千葉大,2京都大,3愛知医大,4岡崎生理研) | 神経回路形成におけるcollapsin-1の機能解析.日本神経科学会(仙台)1997.7.16. |
大島章子,唐沢延幸1,永津郁子1,小野塚実2(1藤田保衛大,2岐阜大) | スナネズミ脳のP70様蛋白.日本神経科学会(仙台)1997.7.16. |
佐野 護,北島哲子 | NGFによる神経突起誘導にMAPキナーゼ活性化は必須でない.日本生化学会(金沢)1997.9.23. |
細川暢子1,佐藤 衛,Kuhn,K.2,永田和宏1(1京都大, 2Max-Plank-Institute) | HSP47はプロコラーゲンの分泌速度を調節する.日本生化学会(金沢)1997.9.23. |
福井成行1,佐野 護(1京都産業大) | PC12細胞とその変異株(PC12D)細胞のポリラクトサミン鎖含有糖タンパク質.日本生化学会(金沢)1997.9.24. |
大島章子,青井隆行,河村則子,伊藤宗之,村島善也1(1東京都精神研) | スナネズミの発作好発系統と抵抗系統について.日本動物学会(奈良)1997.10.3. |
大島章子,河村則子 | スナネズミの顔面神経.日本組織細胞化学会(東京)1997.10.16. |
佐野 護,北島哲子 | PC12D細胞では、NGFによる神経突起誘導にMAPキナーゼ活性化は必須でない.日本神経化学会(松山)1997.10.22. |
Taniguchi, M., Yuasa, S.1, Seto-Ohshima, A., Mishina, M.2, Yagi, T.2 (1Chiba Univ., 2Natl. Inst. Physiol.Sci.) | Role of collapsin-1 in axonal guidance. Society for Neuroscience (New Orleans, USA) 1997.10.27. |
Naruse, I.1, Ishikiriyama, S.2, Keino, H., Yamada, Y. (1Kyoto Univ., 2Chiba Children's Hosp.) | Pdn/Pdn (genetic polydactyly/arhinencephaly mouse) is a homolog of Greig cephalopoly syndactyly syndrome. International Federation of Teratology Society (IFTS)(Sydney, Australia) 1997.11.18. |
谷口雅彦,藤澤 肇1,湯浅茂樹2,三品昌美3,八木健3(1名古屋大,2千葉大,3岡崎生理研) | 神経回路形成におけるcollapsin-1の役割.日本分子生物学会(京都)1997.12.18. |
Hosokawa, N.1, Satoh, M., Kuhn, K.2, Nagata, K.1(1Kyoto Univ., 2Max-Plank-Institute fur Biochemie, Germany) | HSP47, a collagen-specific molecular chaperone regulates the modification and secretion of procollagen. The International Conference on Dynamics and Regulation of the Stress Response.(Kyoto) 1998.3.9. |
中澤綾美1,梁 燕1,城倉浩平1,佐野護,臼田信光1(1信州大) | 発達過程ラット網膜におけるカルモデュリンの免疫組織化学.日本解剖学会(大阪)1998.3.31. |
講演など
講演者 | 内容 |
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佐野 護 | ニューロトロフィンによる神経細胞生存維持作用と低親和性受容体p75の細胞致死因子仮説.文部省重点領域研究「神経細胞死制御」(浜松)1997.7.8. |
佐野 護 | 神経成長因子(NGF)によるPC12D細胞からの神経突起誘導とMAPキナーゼカスケード.旭化成,生命科学研究所フロンティア21セミナー(富士)1997.9.30. |
佐野 護 | ニューロトロフィンによる培養交感神経細胞の生存維持作用を賦活する新規抗生物質ラディシコール.文部省重点領域研究「神経細胞死制御」(東京)1997.12.12. |
谷口雅彦,八木 健1(1岡崎生理研) | 神経回路形成におけるコラプシンの機能.文部省科学研究費重点領域研究「神経可塑性の分子機構」公開シンポジウム神経の発生・回路形成と可塑性(東京)1998.1.9. |
教育活動
活動者 | 内容 |
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長浜真人 | 解剖学(愛知県春日井看護専門学校)1997.4.1.~9.30. |
主題:
愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所年報 第26号 平成9年度 No.2
30頁~59頁
発行者:
愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所
発行年月:
1998年9月
文献に関する問い合わせ先:
愛知県心身障害者コロニー 発達障害研究所
〒480-0392
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