愛知県グループホーム調査-施設運営団体に対するグループホーム設立意向調査-
愛知県精神薄弱者愛護協会
熊谷豊、林俊和
項目 | 内容 |
---|---|
発行年 | 1996年12月8日 |
転載元 | 発達障害と施設援助-愛知県知的障害児・者施設紀要-「じゆうがあるで、なかまがおるで、わたしの家だよ」第11号 pp.97-107(愛知県精神薄弱者愛護協会) |
愛知県下の知的障害の援助に関係している全施設134施設(児童通園施設は除く)に平成7年7月、郵送によるアンケート調査を実施しました。
114施設から回答がありました。(回収率85%)。
回収率の施設種別による内訳は以下の通りです。( )内は愛知県下の各種別毎の施設の総数です。
- 通所更生 87% 14施設(16)
- 通所授産 92% 58施設(63)
- 小規模授産 68% 11施設(16)
- 入所更生 100% 26施設(26)
- 入所授産 100% 1施設 (1)
- 通勤寮 100% 3施設(3)
- 福祉ホーム 33% 1施設 (3)
1. 現在あなたの施設ではグループホームを運営していますか
(1) グループホームを運営している。
グループホームを運営している施設は、114施設中22施設(19.3%)でした。
22施設を運営しているのは18法人で、合計33グループホームの運営をしています。
(2) グループホームは運営していないが、その前段階の生活訓練などを施設外で行っている。
114施設のうち13施設(11.4%)が生活訓練などを実施していました。
法人数では12法人で、その具体的な内容は以下の通りです。
- ナイトケア(期間:2泊3日 回数:年3回 場所:施設内)
- 宿泊訓練(期間:不明 回数:不明 場所:施設内または法人の持つグループホーム)
- 宿泊訓練(期間:不明 回数:年3回 場所:園の内外)
- 少人数による宿泊訓練(期間:不明 回数:月1回 場所:不明)
およびキャンプ(期間:2泊3日 回数:年1回 場所:不明) - 生活訓練旅行(期間:不明 回数:年4回 場所:不明)
- 宿泊訓練(期間:不明 回数:年数回 場所:アパートを借りて)
- 生活訓練(期間:1泊~2泊 回数:週1回 場所:アパートを借りて)
…全利用者が対象 - 生活体験実習(期間:不明 回数:年1回 場所:民家を借りて)
- グループ生活(期間:不明 回数:不明 場所:公団住宅と民家を借りて)
…アフターケアを週1回退所生が対象 - 社会見学を兼ねた宿泊訓練 (期間:不明 回数:年2回 場所:不明)
- これまでは公共施設を借りて生活実習を実施してきたが、8月下旬より3DKの借家にて実施する予定。
- 宿泊体験訓練と買い物実習。
- 10名の園生が職場実習(染色工場・ビニール加工会社・鉄工所など)。
(3)グループホームは運営していない。
114施設の内、79施設(69.3%)(53法人)が「グループホームを運営していない」と回答しています。
【グループホームの運営状況と運営施設種別内訳】
回答のあった施設のうち、「グループホームを運営している」と答えた施設は22施設あり、全施設の2割弱。ホーム数でみると33のグループホームが回答していることになります。
表1は、グループホームを運営していると回答した22カ所のバックアップ施設について、種別で分類したものです。
施設種別 | バックアップ施設数 |
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通所授産施設 | 11施設 (50.0%) |
入所更生施設 | 7施設 (31.8%) |
通勤寮 | 3施設 (13.6%) |
通所更生施設 | 1施設 (4.5%) |
通所授産と入所更生で全運営施設の8割以上を占めていますが、3つの通勤寮は合わせて10のグループホームを持っています。
表2には、1施設が運営しているグループホーム数を示しました。
運営ホーム数 | バックアップ施設数 |
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1ヶ所 | 17施設 (77.3%) |
2ヶ所 | 2施設 (9.1%) |
3ヶ所 | 1施設 (4.5%) |
4ヶ所 | 1施設 (4.5%) |
5ヶ所 | 1施設 (4.5%) |
複数のグループホームをバックアップしている施設は全部で5施設あります。その内、1ヶ所だけをバックアップしている施設が全体の約8割ありました。複数のグループホームをバックアップしている施設の中には、4ホームをバックアップしている施設が1カ所、5ホームをバックアップしている施設が1カ所(どちらも通勤寮)あり、この2カ所で全グループホーム数の約四分の一を占めています。
県下のグループホームの分布を見ると、グループホームの多くは名古屋市内にあります。
市内の中でも特定の法人が施設周辺の地域に複数のグループホームを持っている状況があり、愛知県全体でもグループホームの分布は特定の地域へ偏っているのが現状で、どの地域にもグループホームを、ということはこれからの課題となっています。
回答のあった33グループホームを利用制度別に見ると、国の制度によるもの18ヶ所(54.5%)、名古屋市の制度によるもの12ヶ所(36.4%)県の制度によるもの3ヶ所(9.1%)となっています。
図1は、グループホームの運営状況を施設種別に見たものです。
通所授産施設は施設数が多く、愛知県内のグループホームのバックアップ施設としては11施設(19.0%)で最も多くなっています。通所授産施設は生活訓練等の実施でも他種の施設よりも多く取り組んでいます。入所更生施設は全体の四分の一強がグループホームを運営していますが、施設外での生活訓練の実施は少なくなっています。通勤寮は県下の3施設ともグループホームを運営しています。
2.グループホームを作る計画がありますか
図2は、グループホームを作る計画についての結果を示しています。
それぞれの項目について記載されたコメント、または実施困難の理由は以下の通りです。
(1)具体的な計画がある。8施設(7.0%)
(内容)
- 平成9年頃作る予定。
(2) 現在具体化はしていないが、将来作りたいと思っている。62施設(53.4%)
(内容)
- 施設長として個人的には作ってみたいという気持ちはあるが、法人の意思ではない。
- 適切な物件があれば早速スタートさせたい。
(3) 作りたいが作るのは難しい。8施設(6.9%)
(理由)
- 県立の施設なのでグループホーム等を作る計画はない。
- 小規模作業所なので、バックアップ施設に該当しない。
- 財政面および運営面の問題がある。
- 対象者が4名いない。
- 管理人の確保、またそのバックアップ体制が今のところ作り得ない。
- 生活ホームには人件費補助がないため個人負担が多すぎる。
- 地域で就労場所がない。
(4)作るつもりはない。17施設(14.7 %)
(理由)
- 町からの委託運営であるため。
- 将来的には分からないが、現在市の方針としては計画がない。
- 現施設の建設は市であり(運営は社会福祉法人が行っているが)さらに拡大する計画は市側から聞いていない。
- 現在運営しているところの充実が先決。
- 同一法人ですでに運営している。
- 重度の方のみを入所させているので対応困難。
- 入所者に高齢、重度の方が多くグループホームの生活に適していない。
- 入所者の多くは高齢であり、今後健康面での観察・考慮が必要。
- 保護者が施設処遇を希望される方が多い。
- 今のところ通所者、保護者からの要望がない。
- 要望が具体化していない。
(5)その他 17施設(14.7%)
(内容)
- 親の会が作る計画があり、その応援をしている。
- 親の会が学習中。
- 保護者の一部より生活訓練を主体とするホーム設置の要望はあるが、法人としての対応は現時点では未定。
- 予定はあるが目途が立っていない。
- 将来構想について現在検討中であるが、重度化、高齢化の現状を勘案すると難しい。
- 地理的な条件、物件、職員等困難な問題がある。
- グループホーム制度自体が重度・最重度の入居者を対象にしていないので、当授産所が設置・運営していくには無理がある。
- 現在施設が定員一杯で、その次のステップとして認可施設または福祉ホームにという話があり、グループホームという話まで行っていない。
- グループホームの前に入所施設を考えている。
- 姉妹施設で計画されているが、当所としては入所者を考えている。
- 作る話は出ていないし、運営母体となるところがない。
- 名古屋市が運営主体なので当作業所の立場としてはコメントできない。
- 公立のため施設単独でグループホームを考えていくことはないが、市としては今秋、生活ホームを1ヶ所開設する。
- 施設設置については行政施策として計画していく。
- 当方はグループホームを支える職場として機能している(福祉的就労センター)。
※無解答 ‥‥4施設(3.4%)
※複数回答‥‥2施設
『具体的な計画がある』と『将来作りたいと思っている』を合わせると全体の約6割を占め、グループホームの建設・運営に前向きな姿勢を持っている施設のほうが多いようです。
その一方で、『作りたいが作るのは難しい』とグループホームの建設・運営に困難さを感じている施設が7%ありました。その理由としては、バックアップ体制が整わないなどのソフト面の不備、また人件費補助の要求などハード面での不備と、ソフト、ハードの両面から運営の困難さが述べられています。
「その他」の理由として「対象者が4名もいない」「地域に就労の場がない」などの意見もあがっています。“重度の人はグループホームで生活できない”“就労していないとグループホームで生活できない”というグループホームへの見方は、国の補助制度が実施されて以来、広まりました。しかし、今回の実態調査でわかるように、すでに多くの人々が障害が重度であっても、通所施設に行きながらグループホームで暮らしています。
現行の制度では、多くの問題が山積していますが、こうした問題を様々な方法でクリアーしながら取り組み続けているグループホームの実態が今回の調査で現れてきました。
「障害者プラン」や「障害者市町村計画」の策定に関していつも理念として言い続けられている、どのような障害の人も町でともに暮らす社会へ向かっていきたいと思います。
一方、『作るつもりはない』と回答した施設は15%ありました。その理由をみると、1)「保護者の要望がない」、2)「重度者・高齢者が多いので」、3)「公立施設で市や町の計画がないから」の3つに大別できるように思います。以下のそれぞれの理由について、今回の他の調査結果を考えつつ意見を述べたいと思います。
1) では、保護者の側からなかなか要望があがってこないということでした。たしかに、保護者の方々を対象とした調査でも、グループホームのこれからについての不安は述べられています。しかし、一方で、これまでの「施設に入れば安心」という親の気持ちとは違う、子どもたちの自立の姿、成長する姿についての多くのすばらしい親の体験も述べられています。
グループホームについては、私たち職員の側も、これまで実態がどうなのかわかりませんでした。私たちも、障害を持つ人々が地域で暮らすことの意味を考え、実態を知り、保護者の方と共によりよい生活を展開する努力をしたいと思います。
2) の重度者・高齢者が多い、問題は確かに困難な課題です。調査では、多くのグループホームがすでに、その人々を受け入れ、暮らしています。バックアップ施設の調査でも、今グループホームで生活している、重度の障害のある人々が「グループホームを継続できる」方向を示しました。「重度」ということで、ひとからげに考えるのではなく、知的障害が重度であってもグループホーム生活が十分できる現状に注目していただきたいと思います。
3) は、「公立施設で市や町の計画がないから」という理由でした。公立施設では、個人的見解が表現しにくいという制約があると思われます。しかし、公立、民間を問わず、障害を持つ人々を第一線で援助する仕事をしている職員として、ノーマリゼーションの理念が実現しつつある今、障害をもつ方々が私たちと同じ町で暮らせるように、という地域生活の方向へ積極的に関与していく必要があると思います。今後、公立施設の側からも、地域で暮らすこと、その住まいとしてのグループホームに対する積極的な取り組みを期待したいと思います。
【グループホームを作る計画と施設種別の内訳】
図3は、グループホームを作る計画があるか、どうかを施設種別で分類したものです。
図3. グループホームを作り計画があるか(施設種別内訳)
通所授産は約7割の施設が具体的な計画も含め将来グループホームを作りたいと思っています。また、通所更生も具体的な計画こそないものの7割強の施設がグループホームを作ることに前向きな考えを持っているようです。
一方、入所更生では「具体的計画あり」と「将来作りたい」を合わせても5割強に過ぎません。また「作るつもりなし」も四分の一ほどあり、通所施設とは対照的な結果が出ました。
今回の結果からは、入所の施設より通所の施設の方がグループホームの運営に前向きに取り組もうという考えを持っている施設が多いと言ってよさそうです。
【グループホームを作る計画とグループホームの運営状況別内訳】
図4は、グループホームを作る計画があるかを運営状況別に示しています。
今後県下のグループホームを増加させていくには、まだグループホームの運営をしていない施設が積極的に運営に取り組んでいく必要があるように思います。
運営状況別に見てみると、現在グループホームを運営していない施設の中の約半数が、具体的計画も含めて将来作りたいと思っているという結果が出ました。また、生活訓練を実施している施設の8割以上がグループホームを作りたいと思っています。
すでにグループホームを運営している施設も半数以上がさらに作りたいと答えています。
図4. グループホームを作る計画はあるか(運営状況別内訳)
3.グループホームについての要望など(自由記述)
53施設から、グループホーム制度を充実させるための要望がありました。自由記述の内容を、次の6つに分けました。意見の多かった順に列挙すると、
- 世話人に関すること(27記述)
- グループホームの建設・運営全般に関すること(17記述)
- 重度の人への対応など(10記述)
- バックアップ・ネットワークに関すること(7記述)
- 就労に関すること(6記述)
- その他( 6記述)
です。
特に、世話人の待遇等については半数以上の施設がその問題に触れ、関心の高さを示しています。ついで家賃や建設費、運営費の補助を望む声が多く見られました。
すでにグループホームを運営している施設と現在は運営していない施設との間で要望に何らかの違いが見られないかと比較検討しましたが、特筆すべき差異は見つかりませんでした。
現行制度の問題も含めハード、ソフトどちらの面にも多くの要望がみられました。
問題の指摘に加えて、現状の問題点を解決していこうという様々な提案(グループホームをタイプ別に分けそれに応じた運営費補助を行う、重度者のためのモデル事業、バックアップ施設の条件を緩和して制度を利用しやくする、etc)も見られています。こうした現場の貴重な声をグループホーム発展のためにどう生かしていくか、これからの課題です。
以下、6分類の具体的な内容を記載し、その後にそれぞれの簡単なコメントをつけます。
- 世話人に関すること
- 職員1名では運営困難。
- 近い将来処遇の格差が問題になってくるであろう。世話人の身分保障に十分配慮したい。
- 世話人の労働面での処遇向上を望む。奉仕的、献身的な部分に頼りすぎないほうがグループホームの質も向上するのではないか。
- 制度的に世話人の身分保障をバックアップ施設並みにする必要がある。
- 世話人をバックアップする体制がないと難しいのではないか。
- 世話人の給与が安い。せめて施設職員と同等、できれば24時間勤務体制と同様なので別に手当を支給すべき。
- 県制度によるグループホーム(生活ホーム)では民調対象になっておらず、世話人の身分保障が難しい。
- グループホームには土・日・祭日も対象者がいるため世話人が休むときはバックアップ施設である法人がカバーすることになっている。そのため世話人が休みをなかなか取れなかったり、休日などには法人の職員を毎回出勤させなければならないため職員処遇に問題が生じる。よって世話人の休日などにはパート、代替職員を加えることができるように補助金のアップが必要だと思う。
- 世話人の休日、休暇を確保するためにはどのような体制を取ればいいか、ボランティアの確保などオープンする前にしっかり地盤を作っておくべきだと思う。
- 複数職員配置のための人件費補助が必要。
- 産休・療休代替職員の保障。
- 福祉人材バンクなどでもっと積極的に世話人を斡旋してもらえたら…。
- 援助者の研修のシステム化(専門のコーディネーターの配置)。
特に県の制度においては世話人の身分保障が難しいという意見(県の制度は民調対象になっていない)は県制度利用のグループホームが少ないという事実からも見逃してはならない指摘でしょう。 - グループホームの建設・運営全般に関すること
- ハードウェアの確保(公営住宅の解放、基礎年金の増額など)。
- 公的住居の利用をしやすくしてほしい。
- 借家の家賃などの運営費補助を強く望む。
- 年金が少ない間、家賃の補助をしてほしい。
- 住宅改造費の補助。
- 土地購入や建物の建設に国・県・市の補助制度を要望する。
- 家族とは異なる共同生活のためプライバシーの守られる理想的な建物を考えているが、一戸建ての借家ではどうも間に合わないようだ。
- 補助金の充実。
- 入所施設では一人当たり300万円の公費がある。グループホームもこれに準ずる公費を得たい。よりよい暮らしを安価にあげるのはどうかと思う。
- 比較的年齢の若い入所者(平均22.5歳)であるが、親たちはレスパイトケアやショートステイを中心としたグループホームを期待している(新しい制度としてできるよう期待している)。
- 十分な運営の条件整備の後に作り運営することが望ましい。
- グループホームを『A型』とか『B型』とか、そのホームの持つ性格を明らかにしてそれに対応する運営費の補助を。
- 現行制度では自治体の援助なしでの建設・運営は難しい。自治体の単独援助でなしに運営が可能になるような制度を確立してほしい。
- 重度の人への対応など
- 生活ホームは重い障害を持つ人のための地域生活援助としてもっと利用しやすいよう条件整備を考えてもらいたい(障害の状況によって世話人を増員する。人件費補助をグループホームと同等にしてもらう)。
- 重度・重複の人が利用できるような制度の充実(世話人の増員、宿直体制の強化、医師、看護婦の設置など)。
- グループホーム居住者の障害程度に合わせた世話人の人数配置をすべきである。
- 現行の制度では中軽度の人達のためのグループホームといったところだが、今後最低でも2名程度の常勤職員を配置することができれば、重度の方のためのグループホームが増設されていくことも可能だと思う。
- 作業所に通所している障害の重い人々を受け入れている。職員1名では援助が困難でアルバイト、ボランティアの力に頼っているのが現状。職員配置を増やせば重度の人も安心して暮らせるようになると思う。
- グループホームにも『重度加算制度』を。就労している軽度の人を対象にしているグループホームと、重度の人が利用しているグループホームとでは違いが大きすぎる(注:平成8年度よりグループホームにも重度加算がつくことになりました)。
- 通所施設付属のグループホームにして職員を増員し、施設職員が当直体制でグループホームの世話人をするなど新しい方法を考え、重度の人でも利用しやすいグループホームにできないものか。
- 利用者の制約の緩和。
- 重い障害の方々の『グループホームモデル事業』。
- バックアップ施設と地域のネットワークに関すること
- バックアップ施設以外からの支援システムが充実すること。
- グループホームに関わるボランティア組織のネットワーク化。
- 地域の専門機関(福祉事務所・社会福祉協議会・保健所・医療機関)や専門家とのネットワーク作りによる全面的な生活ケアの保障。
- 市区町村での社会福祉協議会を中心にコミュニティケアの実現(モニター制度)。
- グループホームをバックアップ施設の管理下に置くのでは展望が見えない(施設利用者がグループホームに移行するという限られたものになりやすい)。複数設置の段階で『地域生活支援センター』的なセクションを設け、施設利用者だけでなく在宅者の利用について積極的に支える機能を発揮するよう方向づけることが求められる。
- グループホーム制度を利用するためには現状では認可施設(法人)がバックアップ施設となることが前提となるが、生活する場という点ではもう少し緩やかな規制の制度となることが望ましいと思う(親の会、町、社協、小規模施設であっても、一定の要件を満たしていればグループホームを運営できる、etc…)。
- 通所施設でバックアップをすると職員の支援体制に厳しいものがある。同一法人で複数のグループホームを運営する場合、例えば2つのグループホームに3名の職員を配置できるようにしたら休暇や研修、出張の保障がもっとしやすくなると思う。
- 就労に関すること
- グループホームがあっても就職先がないと本来の意味が半減してしまうので、就職先である一般事業所の確保も同時に必要と思われる。
- 障害者雇用の促進。
- グループホーム生活の前提として一定の経済力=就労が必要とされているが、なかなか職場が見つからなかったり続かなかったりすることが多いように思われる。ある程度の賃金を保障した福祉的就労(福祉工場など)の場を国を挙げてもっと力を入れてほしい。
- 現在生活ホームを作る予定がある。就職を条件にされると施設に籍がなくなるため、本人、保護者共に消極的になりがちなところがある。生活ホームならば籍をおいたまま入居できるという利点がある。
しかし、グループホームで生活するのに就労は絶対条件とは言えない、という意識の変革が我々には必要かもしれません。というのは、そうした就労の問題を上手にクリアーして、就労していなくてもグループホームで生活を続けられるよう取り組んでいるグループホームも存在しているからです。厳しい現状の中でもノーマライゼーションの理念を実現するために、精一杯取り組んでいるグループホームもあるという事実を、我々は謙虚に受け止めていきたいものです。と同時に、就労の問題は重度者、高齢者の問題とも関連してきますので、現行制度の見直しも含めて広い視野で検討していく必要があるのではないでしょうか。 - その他
- グループホーム制度自体は必要であり今後ますます増えていくものと思われるが、施設からグループホームに移る場合に、前者における生活の仕方や常識と後者におけるごく一般の生活とかけ離れている面もあり、施設においてごく普通の生活能力を身につけさせることが施設側としては大切なことだと思う。
- グループホームにすべてを任せるのでなくグループホームという形態の長所・短所両面を十分に点検しそのうえで近い将来整備する計画である。
- 現時点では資金調達が難しく、保護者との親密さも欠けているため、もう少し年数がかかる。
- 知的障害を持っている人が社会参加する場合、社会の受け皿としてどのようなものが用意できるかで社会参加の可能性も変わってくると思われる。グループホームなどが地域社会に多数あれば入所型施設から地域社会に出て生活できる人が増えるものと思われる。
- 親亡き後は入所施設か病院という考え方が一般的。親がいるうちは親が面倒を見て当たり前、作業所という受け皿があれば十分という行政と、「この子は私が見なければ」と肩身の狭い思いでいる親。両者が認識を変えていかなければ(特に親が中心になって声を上げていかなければ)遠いおとぎ話のようなのが現状。親からは「世話になっているのに…」となかなか要望、要求が上がってこない。
- 問題点として、ア.働く場所の確保、イ.通勤方法、ウ.グループホーム候補者の人間関係、があげられる。開所して1年も経っていないので現在は生活の充実で手一杯だ。
内容的には色々な意見があったが、中でも「親からグループホームの要望・要求が出てきにくい」という記述は、『グループホームを作るつもりはない』と答えた施設の理由の中にもみられるだけに見過ごせない問題だと思われます。その背景には、グループホーム制度自体がまだ新しく、制度も実態も十分に理解されていないということが考えられます。また、知識を持ってみえる保護者の方でも、制度自体にまだ不備な点が多いために親亡き後の問題、老後の問題に関する不安がぬぐいきれないということもあるかもしれません。
制度の充実も含めたハード面の整備も早急の課題ですが、当面、施設側としては「障害者本人にとっての自立とは何か?、幸せとはなにか?」という視点で、保護者サイドと十分な話し合いを持ち、誤解を取り除き少しでも不安を軽減できるよう、地道に信頼関係を築いていく努力をしていくことも求められるてくるのではないでしょうか。
文献情報
著者:熊谷豊、林俊和
題目:愛知県グループホーム調査-施設運営団体に対するグループホーム設立意向調査-
雑誌名:発達障害と施設援助-愛知県知的障害児・者施設紀要-「じゆうがあるで、なかまがおるで、わたしの家だよ」第11号 pp.97-107(愛知県精神薄弱者愛護協会)
発行年:1996年12月8日
文献に関する問い合わせ先:
愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所
社会福祉学部
春日井市神屋町713-8
TEL:0568-88-0811(内線3507-9)