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I.障害者の現状


1.概況

・ 障害者は、高齢化の影響もあって年々増加し、現在、身体障害、精神薄弱又は精神障害を有する者を合計すると約500万人にのぼっている。
・ 障害は、人の生涯の中でいつでも生じうることであり、また、家族、友人など自らと関係のある人も含めて考えれぱ、誰にとっても身近なことであり、特別のことではない。
・ 障害者は、保護される対象として捉えられるべきではなく、「障害者の権利宣言」(昭和50年12月9目国連総会決議)に謳われているすぺての権利を享受すべき主体である。近年においては自らの能カを最大限発揮し、自らの意思と力で生活を築いていきたい、施設の中の生活から地域の中で障害のない者と同様に生活し、家族からも自立して社会へ積極的に参加したいという要求が強まっている。また、障害者は個人の尊厳にふさわしいサービスを保障される権利を有する一方で、社会の構成員としての役割を果たし、社会に貢献することも求められている。
・ 社会全体の意識も、「国連・障害者の十年」などの取組みにより、障害者が地域の中で共に生活することは自然なことであり、制度や建物の設備構造なども障害者に配慮したものにするという考え方に大きく変わりつつある。
・ しかしながら、障害者を取り巻く社会の仕組みなどは障害者にとって不利なものが多く、また、障害者を特別視する意識も依然見られ、今後ともこれらの改善が必要である。

2.身体障害者

①全体状況
・ 身体障害者は、平成3年実態調査等によれぱ、在宅者280.3万人、施設入所者14.5万人で合計約295万人であり、その内訳は、18歳未満の身体障害児が、9.2万人(在宅者8.1万人、施設入所者1.1万人)、18歳以上の身体障害者が285.6万人(在宅者272.2万人、施設入所者13.4万人)となっている。
・ 在宅者272.2万人について障害の種類別に見ると、視覚障害が35.3万人(13.O%)、聴覚・言語障害が35.8万人(13.2%)、肢体不自由が155.3万人(57.1%)、内部障害(心臓障害、じん臓障害、呼吸器障害、ぼうこう又は直腸障害、小腸障害)が45.8万人(168%)となっており、肢体不自由が半数以上を占めている。
②重度化・重複化の傾向
・ 在宅者のうち、1,2級の重度の障害者は、視覚障害が20.3万人(57.5%)、聴覚・言語障害が10.6万人(29.6%)、肢体不自由が54.0万人(34.8%)、内部障害が24.3万人(53.1%)となっており、視覚障害および内部障害が際だっているが、他の障害についても重度化の傾向がみられる。また、重複障害のある者は、12万人(4.4%)であるが、これについても増加傾向にあり、全体として重度・重複化の傾向が伺われる。
・ 身体障害者療護施設の入所者の10%、身体障害者通所授産施設利用者の23.2%が療育手帳を所持しているなど、身体障害と精神薄弱が重複している者が相当数見られる。
③高齢化の傾向
・ 在宅者を年齢階級別に見ると、65歳以上の者が48.8%であり、ほぼ半数が高齢者となっている。この傾向はさらに強くなっており、近年の状況は、65歳未満の障害者の数はほぼ一定であるものの、65歳以上の障害者の増加により障害者全体の数が増加している状態で、障害者の高齢化が伺われる。
・ また、障害の発生年齢を年齢階級別にみると、65歳以上の者を中心に中途障害者が増加する一方、O~3歳の乳幼児期の発生も27.8万人(10.2%)あり、比較的高い割合を占めている。
④障害の原困の変化
・ 障害原因としては、疾病を原因とするもの(58.3%)が事故(労働災害、交通事故等)によるもの(19.3%)を大きく上回っている。この傾向は、戦後変わっていない。疾病の原因については、感染症によるものの割合は低下し、心疾患、糖尿病、悪性腫瘍等による障害の増加が見られるなど、戦後の疾病構造の変化を反映している。


3.精神薄弱者

①全体状況
・ 精神薄弱者は、平成7年精神薄弱児(者)基礎調査によれぱ、在宅者29.7万人、施設入所者11.6万人、合計41.3万人となっている。
・ このうち、18歳未満の精神薄弱児は、9.6万人(在宅者8.5万人、施設入所者1.1万人)、18歳以上の精神薄弱者は、30.1万人(在宅者19.6万人、施設入所者は10.5万人)となっている。
②年齢構成の変化
・ また、平成2年精神薄弱児(者)福祉対策墓礎調査の結果と比較すると、総数では38.5万人から41.3万人と増加しているが、18歳未満の精神薄弱児は1.9万人の減となっており、逆に18歳以上の精神薄弱者は4・6万人の増となっている。この変化は、寿命の延ぴや少子化に由来するものと考えられる。
・ 在宅者の年齢構成比をみると、18歳未満が平成2年で35.2%であったものが平成7年には28.7%に、18歳以上39歳未満が37.5%から43・1%に、40歳以上が21.8%から22.6%(うち60歳以上が4・1%から4・6%)となっており、加齢による高齢化が進行している。
③重度化・重複化の傾向
・ 障害の程度を在宅者で見ると、平成7年基礎調査では、最重度が12.5%、重度30.7%、中度29.5%、軽度24.1%と最重度、重度の者が4割を超えている状況にあり、最重度・重度の在宅者に対する地域を基盤とした生活支援の必要性が高まっている。
・ さらに、自傷、他害等の行助障害を有する者、自閉症の者やてんかん等を併せ有する者が相当数見られ、これらの障害の特性に応じた施策の在り方が課題となっている。
・ また、在宅者のうち18.2%の5.4万人が身体障害者手帳を所持している(うち1,2級の者が63.9%)とともに、平成6年社会福祉施設等調査によれぱ、精神薄弱関係施設の入所者のうち身体障害者手帳を所持する者は、精神薄弱者更生施設(入所)で17.9%、精神薄弱者授産施設(入所)で9.9%となっており、精神薄弱と身体障害が重複している者が相当数存在する状況にある。
④障害の原因の変化
・精神薄弱の原因疾患としては、先天性疾患、周産期の呼吸障害及ぴ血管障害によるものが多く、かつて主たる原因疾患であった感染症は減少している。
また、新生児の救命率が医学の進歩に伴い改善されてきたが、中枢神経の障害を残し精神薄弱となる者もいる。


4精神障害者

①全体状況
・ 精神障害者は、平成5年患者調査によれぱ、入院患者33万人、在宅患者124万人、合計157万人となっている。
・ 疾病別分類では、老年期及ぴ初老期の器質性精神病7万人、精神分裂病45万人、そううつ病18万人、その他の精神病6万人、神経症44万人、アルコール依存3万人、その他の非精神病性精神障害9万人、てんかん25万人となっている。
②入院の長期化
・ わが国の精神障害者の平均在院日数は326日とアメリカ13日、ドイツ35日、イギリス217日に比ぺ非常に長いことが指摘されている。
・ また、平成8年日本精神病院協会総合調査によれぱ、入院期間1年未満が24.3%、1年以上5年未満が25.7%、5年以上10年未満が14.3%、10年以上が32.2%となっている。この比率は、昭和58年当時(1年未満24.O%、1年以上5年未満26.6%、5年以上10年未満15.7%、10年以上32.1%;厚生省精神衛生実態調査)とほぼ同様であり、この10年間に精神障害者の社会復帰が進んでいないことを示している。
③年齢構成の変化
・ 平成5年の調査で精神障害者の年齢構成比をみると、20歳未満14万人(9.O%)、20歳以上65歳未満113万人(72.O%)、65歳以上30万人(19.O%)となっている。
・ 平成元年の調査では、入院患者(34.6万人)のうち65歳以上の患者は7.2万人(21%)であったが、平成8年の調査では65歳以上の患者は9.5万人(28%)であり、入院患者の高齢化が進んでいることを示してる。
④その他
・ 平成8年の調査では、入院患者のうち精神分裂病患者は、3年以上の入院患者では73.O%、10年以上の入院患者では80.O%となっており、入院期間が長期化にするに従い精神分裂病の占める割合は高くなっている。
・ 精神保健福祉手帳所持者は、平成9年10月末現在9.3万人であり、精神障害についての偏見が依然強いこと、手帳制度創設後まだ間もないこと及ぴ手帳取得によって受けられる公共交通機関の運賃割引制度等の優遇措置が少ないことから少数に止まっている状況であるので、引き続き制度の理解を求め、また、各種優遇措置を充実することにより、普及を図っていく必要がある。
・ 精神障害者や精神疾患に対する差別や偏見は依然強く、精神科医療の早期受診や精神障害者の社会復帰を妨げる大きな原因となっている。
・ 利用できる精神障害者社会復帰施設の利用定員は、生活訓練施設1400人分、福祉ホーム600人分、授産施設2000人分、福祉工場60人分と未だ少なく、社会復帰の促進を図るためには、引き続き社会復帰施設の整備を図っていく必要がある。


主題:
今後の障害者保健福祉施策の在り方について(中間報告)

発行者:
身体障害者福祉審議会
中央児童福祉審議会障害福祉部会
公衆衛生審議会精神保健福祉部会
合同企画分科会

発行年月日:
平成9年12月9日

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