「高等教育機関における障害学生支援に関する全国協議会(仮称)」設立準備大会に参加して
埼玉県立坂戸西高等学校 井上 芳郎
はじめに
2013年10月25日に東京大学伊藤国際学術研究センターで開催された、表記大会に参加する機会を得た。この大会は主にこれまで障害学生の支援などに携わってきた11人の大学教員が「呼びかけ人」となり、全国各地42の国公立・私立大学が「発起校」となり、「呼びかけ人会」の主催により文部科学省の後援を得て、開催されることになったものである(呼びかけ人及び発起校名簿)。以下、当日のプログラムに沿って大会の概要を報告する。
プログラム
来賓挨拶
- 文部科学省高等教育局学生留学生課課長・渡辺正実(代読)
セッションI 全国協議会呼びかけ人会からの説明
- 高等教育での障害学生支援についての背景 静岡県立大学・石川准
- 全国協議会の設立準備の今後 筑波大学・竹田一則
- アメリカにおける障害学生支援関係者の全国組織 信州大学・高橋知音
セッションII 特別講演 アメリカの高等教育における障害学生支援の制度と実際
- Scott Lissner氏 全米高等教育と障害協会(Association on Higher Education and Disability, AHEAD)会長
セッションIII 今後の障害学生支援に関する意見交換
- 信州大学・高橋知音
- 東京大学・近藤武夫
ゲスト
- Ann Heelan(AHEAD Ireland / LlNK Project)
- Mary Quirke(AHEAD Ireland / LINK Project)
※ LINK Projectは、EU内の高等教育機関のネットワーク
AHEAD http://www.ahead.org/
LINK http://www.thelinknetwork.eu/
来賓挨拶
文部科学省高等教育局学生留学生課・渡辺正実課長からの以下のような趣旨のメッセージが、同課田端氏により代読された。
国としては障害者の権利に関する条約の発効を受け、その締結に向け国内法整備に取り組んできた。この9月27日に閣議決定された第三次障害者基本計画では、新たに「高等教育における障害学生の支援推進」が盛り込まれた。文科省では昨年12月に「障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)」を取りまとめ、大学等での合理的配慮、国、大学等、関係機関が取り組むべき短期、中・長期的課題について検討。本協議会のような大学間、関係者間のネットワークによる主体的取り組みについて、文科省としても歓迎している。
セッションI 全国協議会呼びかけ人会からの説明
1 高等教育での障害学生支援についての背景
静岡県立大学・石川准氏より国内外での障害学生支援を巡る諸情勢や、合理的配慮に関連し「配慮の平等性」の問題、そして障害のある学生を積極的に受け入れ、合理的配慮を提供することが大学など高等教育機関にとって、学問と教育を触発し発展させる絶好の機会であることなどを要旨とし、ご自身の学生時代の体験談も交え今回の協議会設立に向け「多様性を尊重しあう共生社会ヘ~高等教育と障害に関する全国協議会の設立準備によせて~」との表題で背景説明がなされた。
なお、石川准先生のご厚意によりスピーチ原稿全文を転載させていただいたので、詳細はそちらをご覧いただきたい(高等教育での障害学生支援支援についての背景)。
2 全国協議会の設立準備の今後
筑波大学・竹田一則氏より全国協議会の設立準備に至るこれまでの経緯と、今後の進め方についての説明があり、その後意見交換と質疑応答がなされた。なお、竹田氏は「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」の座長を務めた。
竹田一則:
この検討会での「一次とりまとめ」は、あくまでも現段階における国としての指針を整理したもの。参加した委員のなかから「障害学生支援についての現場での情報交換や共有の場が必要」という共通認識が生まれ、本協議会の準備会立ち上げへとつながった。文科省や日本学生支援機構(JASSO)の直接の関与はないが、あくまでも大学関係者の現場サイドでの情報蓄積と共有をするための自主的組織を目指す。
障害学生の支援に携わっている大学関係者が呼びかけ人となり、全国の大学に協議会設立の「呼びかけ文書」を送付し、その結果全国で44の国公立・私立大学から「発起校」として賛同を得た。全国協議会を正式に立ち上げるまでにはいろいろな想定がされるが、まず「呼びかけ人」や「発起校」の中からメンバーを募り準備委員会を立ち上げる。11月中旬には準備委員会の委員を決定したい。準備委員会では会の体制作りや約款案の作成、理事・役員の決定などを経て、来年度中までに正式発足と、第一回の全国大会の開催までこぎ着けたい。
【意見交換・質疑応答】
Q. 大学以外の関連機関、例えば大学入試センターなどの関与や参画の在り方は?
A. 障害学生支援と密接な関係のある機関については、今後会員資格の検討をするが、できる限り期待に添えるようにしたい。
Q. 石川先生の説明では「高等教育と障害に関する全国協議会」とにあるように、目的として障害学生支援に限定せず、大学に勤務する障害のある教職員の課題や、障害学生の将来の就職問題などにも広げていくべきではないか。
A. ごもっともな意見である。会の名称や目的もまだ仮のものであり、今後検討していきたい。
Q. 協議会設立・その後のスケジュールと差別解消法施行に向かうスケジュールとの関係をどう考えるか?文科省は今年度末を目途に、「第一次まとめ」についてのQ&Aを作成中。内閣府は今年度末を目途に差別解消法の基本方針を作成し閣議決定の予定。各省庁は差別解消法に係わる基本方針を踏まえ対応要領・指針を来年度1年かけ作成予定。その後1年の周知期間を経て施行予定。協議会としてどのようなガイドラインを作成するか不明だが、一定のスケジュール感が必要ではないか?
A. できるだけ早く検討していきたい。しかし急ぎすぎることなく、しっかりした組織作りのなかで進めていきたい。
Q. 四年制大学だけではなく、短期大学や高等専門学校への呼びかけも強めてほしい。高大連携が大切であると考えている。高校の先生方との協力関係も目指すべきでは?
A. ご指摘のような課題は重要であると認識。セルフアドボカシー(自己権利擁護)教育の問題、発達障害学生支援の課題などと絡め取り組みたい。
Q. 本協議会と日本学生支援機構(JASSO)などの取り組みとの重複部分があるのではないか。その調整や協議会としての目的の検討はどうしていくのか?
A. JASSOでは独立行政法人としての、あるいは国の施策の枠組みの中での取り組みとなる。本協議会では、JASSOなどとの連携はしつつ重複しないよう、このあとで紹介されるAHEADの活動など参考にしながら進めていきたい。
3 アメリカにおける障害学生支援関係者の全国組織
信州大学・高橋知音氏よりセッションII以降での予備知識として、アメリカにおける障害学生支援関係者の代表的な全国組織として、AHEADについての紹介がされた。高橋氏自身は心理学の専門で、発達障害のある人の支援を中心に研究してきた。アメリカでの支援の実態について知るため、AHEADの会員となって10年ほど。今回のLissner会長の講演では、会の活動内容そのものの説明は少ないとのことなので、以下に補足する。
Association on Higher Education and Disability(AHEAD)を直訳すれば、「高等教育と障害に関する協議会」となり、「学生支援」という表現は含まれていない。障害がある人の高等教育への参加を実現するため、障害のある学生へのサービスに関わる専門家、制度作りに関わる人、研究者などから構成される組織である。主たる活動は研修や情報交換であり、政府への施策提言もしている。例えば障害者権利条約への参加をアメリカ政府に対し求めている。障害学生の受け入れを大学に対して義務づける動きに呼応して、大学関係者を中心に情報交換の場として1977年に発足した。現在の会員数は2,600名以上であり、国外からの参加者もある。
年次大会のほかに各種ワークショップや支援室運営などに関するマネジメント講座や、大会に前後して各種カンファレンスが開催されるが外部講師によるものでなく、会員相互の実践発表や情報共有などが主であるようだ。その他会報や査読付きジャーナルの発行や、障害学生支援に係わるガイドライン作成、企業の協賛による支援機器に関するセミナーなど幅広い活動を行っている。
セッションIIの講師であるLissner氏は ADA コーディネーターという、ADA=Americans with Disabilities Act(障害を持つアメリカ人法)が各大学で正しく履行されているか確認する役職に就いている。そしてセッションIIIではLissner氏に加え、アイルランドのAHEAD(アメリカとは別組織)や、EUの高等教育機関での障害学生支援ネットワークであるLINK Project(Learning Inclusively Network + Know-how)に参画されているお二人をゲストに迎え、ヨーロッパでの事例の紹介と、その後のディスカッションにも参加していただく予定。
セッションII 特別講演 アメリカの高等教育における障害学生支援の制度と実際
Scott Lissner氏 全米高等教育と障害協会(Association on Higher Education and Disability, AHEAD)会長
【講演者紹介】
講演者:Scott Lissner
全米高等教育と障害協会(Association on Higher Education and Disability, AHEAD)会長で、オハイオ州立大学でADAコーディネーターを務める。そのほかに建築物のバリアフリーや、障害者支援の制度に関する講義も担当している。
通訳:
高橋知音(信州大学)
【講演】
Scott Lissner:
まず最初にW.J.Brennan判事の次の言葉(1987年)を紹介する。「社会における障害や疾病に関する偏見は、実際の機能障害による困難以上に大きな障壁となっていると、連邦議会では認識している。」
1964年の「障壁解消法(Barrier Removal Act)」以前は、障害者への経済的支援やリハビリテーションで障害を克服していくという考え方が主流。その後リハビリテーション法504条(1973年制定・1977年施行)では、連邦政府による障害者への差別禁止を規定した。その後、民間企業での雇用関係や公共サービスへのアクセス等での差別を禁止したADA:Americans with Disabilities Act of 1990(障害を持つアメリカ人法)に受け継がれていく。2009年にはADAが改正(ADAAA)され対象となる「障害者」の範囲が拡大された。
ADAでの基本的考え方は「公民権」の保証ということであり、「差別解消」「機会均等の保証」「平等な扱いの保証」「自立促進」「社会的・物理的環境の改善」などが骨子となる。「合理的配慮」の考え方ははじめから含まれていたのではなく、まず宗教上の差別禁止から始まり、その後障害による差別禁止にも適用されていった。
合理的配慮の「配慮」とは、「規則・やり方・環境の変更」「道具・技術・サービス提供」などにより障害者の社会参加を可能にすること。そして「合理的」とはバランスを取るということ。障害者からの申告により、条件の本質的変更なしに、直ちに変更が可能で、運営上や財政上などの過度な負担とならないものとされる。
試験時間の延長という条件変更などが、いつでも合理的配慮と見なされるわけではない。問題となるのは「どのように主要な活動が制限を受けるのか」という点。例えば障害のある学生が読み書き困難で時間がかかるので、試験時間の延長や支援技術を使うことを認めるというのは合理的配慮。車椅子の学生がリフトのない建物の5階で授業を受ける場合、すぐ工事をするのは不可能であり合理的とはいえない。そのような場合は、授業の教室を1階に変更すれば済むのでこれは合理的配慮となる。
合理的配慮の決定プロセスについては、あくまでも学生と大学側相互の共同作業で進める。その際カウンセラーが支援者として助言をしていく。これは大学側や教員に対してもなされる。日本でも今後システムが作られていくと思うが、日本では欧米などでの先行例を参考として、良い事例や失敗に学びつつ、日本の文化伝統に根ざしたバランス感覚というものを重視して進めていくなら、良い結果が得られるのではないか。
【質疑応答】
Q. 学内での「理解の乏しい教職員」の啓発や、さらに大学全体での理解をどのように広めていくとよいか?
A. もっとも効果的なのは、成功例について教員に体験談を語ってもらうこと。他大学の例でもよい。家族に障害学生をもつ教員からの体験談などを通じて理解を図る。障害を持つ人の中で、すでに社会で活躍されている方たちの事例紹介なども効果的だろう。
Q. 身体の障害ではなく、精神の障害を持つ学生への支援はどのようになっているのか?
A. アメリカの法律では障害が身体でも精神でも同様な考え方で扱われている。合理的配慮についてはそれぞれの具体的状況で変わってくるが、例えば別室受験や時間延長の措置は、学習障害やディスレクシア、注意欠陥多動障害(ADHD)に有効だが、「うつ病」の方にも有効であるとされる。
Q. 大学内での障害のある教職員の役割についてどう考えるか?AHEADの役職にあるメンバーで障害のある方の数はどうなっているか?学内の支援組織の構成などで、意図的に障害のある方の参画を促す必要性は?
A. ご本人の意思の問題もあるが、メンターとしてあるいはロールモデルとして活躍していただいている例がある。AHEADの中にも多くの障害をもつ会員がおり、AHEADの役職にあるメンバーのうち約半数は障害のある方たち。
セッションIII 今後の障害学生支援に関する意見交換
話題提供:
Scott Lissner(AHEAD)
Ann Heelan(AHEAD Ireland / LlNK Project)
Mary Quirke(AHEAD Ireland / LINK Project)
通訳:
高橋知音(信州大学)
近藤武夫(東京大学)
広瀬洋子(放送大学)
【話題提供】
近藤武夫:
アイルランドのAHEADはアメリカとは別団体であり、今年で創立25周年。お二人のゲストからヨーロッパでの取り組み事例の紹介と、先ほどのLissner氏の発表に対してのコメントをしていただく。
Ann Heelan:
Lissner氏の発表を伺って、アイルランドとアメリカでの取り組みはよく似ていると感じた。アイルランドでも合理的配慮の提供義務があり、このことで障害学生のインクルージョンを図っている。合理的配慮決定のプロセスについてもよく似た考えに基づいている。また、ユニバーサルデザインという考え方も重視されている。ユニバーサルデザインによって事前準備が整えられれば、障害学生への個別的な配慮は不要になる場合がある。
Mary Quirke:
私も先ほどのLissner氏の意見に同意する。5年前から私たちはヨーロッパ全体での障害学生支援を進めるためのネットワーク、LINK Project(Learning Inclusively Network + Know-how)を立ち上げた。アイルランド、ベルギー、ノルウェー、スウェーデン、スロベニアの団体などで構成。支援の主体や方法は各国で異なっているが、どの国でも共通しているのは障害学生のニーズをアセスメントする専門家がいることと、障害学生の高等教育へのアクセスについての法的な制度を持っていること。私たちは障害学生のさまざまな修学コースにおいての支援の在り方や、卒業後の就労移行プログラムなどについて情報共有をしている。また、ユニバーサルデザインについてはヨーロッパ全体で高い関心が持たれている。
Scott Lissner:
お二人のコメントで、私が話し尽くせなかった内容を補っていただいた。補足すると、AHEADでは大学以外の関連団体、例えば大学図書館の全国組織などと連携している。AHEADのメンバーの多くが障害学生支援室関係者だが、学内全体に情報を広め共有していくことも大切。
【質疑応答】
Q. 大学附属特別支援学校PTA関係者。大学以外の関係団体との連携の在り方の一つとして、地域とも結びつきのあるPTAなどとの連携の可能性もあるのではないか?日本の大学附属特別支援学校では知的障害の児童生徒が多いが、この関係でも事例があるか?
A.
Scott Lissner:
特に中等教育から高等教育への保護者の準備など円滑な移行について、ご指摘のような団体との連携は重要と思う。
Ann Heelan:
私は知的障害のある学生の支援団体にも関与している。障害の有無にかかわらず個々がどのような教育を選べるか、それができることが重要。欧米では知的障害のある学生が学べる特別なコースをもつ大学がある。知的障害の人の支援団体などと大学とが連携してプログラム開発している。
Q. ユニバーサルデザインと合理的配慮との関係について、ガイドラインのようなものはあるのか?
A.
Ann Heelan:
両者は重要な関係があると考えている。第一段階は、障害のある学生が通常の教室へインクルードされるようユニバーサルデザインされること。第二段階は、障害やニーズのある特定のグループに対しどのような支援が提供されるか。例えば読みの困難な学生への支援など。第三段階は特定の個人のニーズに対する支援。例えば特定の支援機器の提供など。第四段階は、さらに資金のかかるような特定の少数グループに対する支援。例えば手話通訳、重複障害への支援など。
Scott Lissner:
ユニバーサルデザインはいわば三角形の底辺の部分で、この部分が大きくなればそれより上の部分が担う合理的配慮の割合は減るとも捉えられる。ノースカロライナ州立大学やCAST(the Center for Applied Special Technology)には、関連する情報が提供されているので参照してほしい。
近藤武夫:
CASTで、Universal Design for Learning というガイドラインが策定され、ウェブでも公開されている。
CAST : Universal Design for Learning http://www.cast.org/udl/
Mary Quirke:
スウェーデンでは、授業や講義のやり方にユニバーサルデザインの導入を試みている事例がある。教育ツールとして、e-Booksの形でデジタル教科書を提供したり、オンラインで授業や講義の様子を動画や音声配信することで、例えばディスレクシアの生徒などでは、あたかも障害による困難が消えたように見えることもある。
Q. 障害学生への支援の基本は各大学の責任でということだが、政府などからの財政的支援はどのようになっているか?
A.
Scott Lissner:
アメリカでは大学の責務としての合理的配慮の内訳は、主に授業や試験での配慮や環境整備に関する手続き上の修正が全体の9割程度を占め、これらは比較的低コスト。残り1割が手話通訳者の費用のような高コストのもの。個別の障害学生への、例えば車椅子やパソコン利用の補助などは、州政府の責任でされている。
Mary Quirke:
ヨーロッパでの状況はアメリカとほぼ同様だが、日本政府へのメッセージとして、「財源を用意しないと前に進まない」ということと、「障害学生への支援は将来の大きな成果・収穫につながる」ということを伝えたい。
Ann Heelan:
ヨーロッパでも障害学生への支援にコストがかかるという認識はある。しかしボローニャ宣言では、「質の高い高等教育へのより広いアクセスの提供」がうたわれている。そして高等教育の充実による経済発展や、高等教育自体の多様性を追求することが課題となっている。
閉会
まとめと感想
日本学生支援機構(JASSO)の調査によると、2005年度から2010年度にかけ大学・短大に在籍する学生数はほぼ横ばいであるが、障害学生数は約2倍、その在籍率については0.16%から0.32%へと倍増している。これは各大学での受け入れ体制の改善によるものという見方がある一方、18歳人口の減少によるいわゆる「大学全入時代」の到来によるものという見方もある。
いずれにせよ欧米での障害学生在籍率と比較すると、EUとは一桁、アメリカとは実に二桁もの差が開いてしまっている。もちろん日本の調査では、特に「発達障害のある学生」の実態がつかみ切れていない可能性があり、大学側に正式に支援を申し出ていないケースも多いと推測される。しかし、全体として欧米と比較し明らかに取り組みが遅れていることは事実であり、今回の準備会の立ち上げと、今後の協議会発足、そして具体的な支援の広がりに大いに期待したいところである。
話題提供や質疑の中でも指摘されたことだが、法的に裏付けをされた公式な支援のための「制度設計」と、それを実効性あるものとさせる「財源」の確保、そしてコーディネートやアセスメント、具体的支援に従事する人材の育成、支援技術や情報保障の確保など、今後解決すべき課題は山積している。合理的配慮やユニバーサルデザインに関するガイドラインの策定なども、喫緊の課題だといえる。関係者による広範な議論により、是非とも高いレベルでの策定がされるよう願っている。幸いと言うべきか、日本は後発であるがゆえに、逆に欧米での貴重な経験に多くを学べるのであるから。