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第4回国連障害者の権利条約特別委員会

報告:第4回特別委員会概要

長瀬修

第1日目(8月23日)

午前

1、開会(ガレゴス議長)

2、議題の採択 

3、作業日程

地域グループが協議中なので、決定は後回しとするという議長の説明があった。

(NGOの参加の形態をどうするかを議長団と地域グループで協議中という意味)

4、条約草案テキストの継続

前文、題名、構造の「第1読」を終了。「第3条」〔定義〕に関する第1読を開始。

昼休み

「EUブリーフィング」議長国であるオランダが代表するEUはNGOの参加を確保しようと努力しているが、反対している政府がある。第2週からNGOは傍聴できるが、発言はできないという妥協案があるが、EUは反対している。投票で決する場面もありえる。条約策定のスピードはあまり速すぎないように、来年の特別委員会開催は2回が適当。

「NGOコーカス運営委員会」

JDFから長瀬がアジア太平洋を代表する運営委員に就任し、出席。

午後

「第3条」〔定義〕の審議を継続し、第1読を終了した。 第25条〔モニタリング〕の第1読を終了した。審議は非常にスムースに進み、作業日程案では、第1条からの第2読は、木曜日午前からの予定だったが、既に明朝から1条からの審議を行う。作業日程に関しては議長団で協議中という説明があった。

第2日目(8月24日)

9:00 NGOコーカス全体会議

今後のNGOの参加に関する議論が行われた。

午前セッション

前日に続いて、第25条「モニタリング」第1読が行われた。NGOコーカスを代表してWBUのノルドストローム会長がNGOの継続的参加を要請する発言があった。

第25条の審議が終わり、全ての第1読が終了した11時10分に、議長が30分の予定で休憩を宣言し、第2読へのNGO参加に関する問題を議長団としての協議に入った。12時40分に再開され、議長から、先送りにされていた作業日程の議題に戻るという説明があった。議長からは、「第1週は二つの段階に分かれる。最初の1日半(24日午前まで)は公式の全体会議を行ってきた。残りの3日半はこれまでどおり、政府、NGO、人権委員会が参加し、発言を行う。第1条から第15条ならびに第24条第2次案〔国際協力〕の第2読を第1週で終了する。第2週は非公式協議(informalconsultation)を、同じく第4会議室で行い、逐条の審議(第3読)を第1条から第15条ならびに第24条第2次案に関して行う。非公式協議は、コーディネーター(議長からは具体的に氏名の公表はなかったが、作業部会で議長を務めたニュージーランドのドン・マッケイ大使が務める模様)ならびに逐条のファシリテーターが進行を行い、NGOも出席できる。複数の会合を同時進行することはない。NGOが出席できない「クローズド」の会合の可能性もある。逐条の審議の結果を最終日9月3日に全体会議で報告を受ける。第15条第2次案〔女性障害者)から第25条〔モニタリング〕までは第5回特別委員会で同じ形式で審議を行う。(*この決定により、第2週の審議にもNGOは出席は可能であることが明らかになったが、発言、文書の配布が可能かどうかは、実際に議長を務めるコーディネーター、ファシリテーターに委ねられるという玉虫色のものとなった)

2時 NGOコーカス運営委員会

今後の対応の検討

午後セッション

第1条〔目的〕第2読が終了し、ただちに議長の統合テキスト(コンソリデーションテキスト)が配布された。第2条〔一般的原則〕の第2読も終了し、議長からは明日(8月25日)に統合テキストの配布があるという説明があった。第4読〔一般的義務〕の第2読を開始。

第3日目(8月25日)

9時 NGOコーカス

ロビーイング戦略

コーカス提案の位置づけ(各NGOの個別の意見とコーカス提案の関係、整合性)

午前セッション(10時から1時)

第4条〔一般的義務〕の第2読継続・終了

第5条〔障害のある人に対する肯定的態度の促進〕の第2読開始・終了

    *EUは第3回特別委員会で行った第4条、第5条、第7条の統合案を撤回した。

第6条〔統計及びデータ〕の第2読開始

JDF・日本政府国連代表部「合理的配慮―教育と雇用」セミナー(1時15分から2時45分)

前回、第3回特別委員会に引き続いて「合理的配慮」をテーマとしてセミナーを開催した。前回は、JDFが主催で、国連代表部とESCAPが協力という位置づけだったが、好評だったため、今回はJDFと国連代表部の共催という形をとった。ESCAPは今回不参加のため、外れた。

スピーカーは、ジェラルド・クイン(アイルランド国立大学教授、国際リハビリテーション協会委員)、バーバラ・マレイ(ILO平等問題マネージャー)、原口一博(衆議院議員、民主党『次の内閣』大臣)、石毛えい子(衆議院議員)

角茂樹(外務省国際社会協力部参事官)、司会は前回に引き続いて長瀬(JDF,東大)が務めた。

スピーカーからは1.非差別としての合理的配慮の重要性(クイン)、2.合理的配慮が既に国際的文書に盛り込まれてきた実績(クイン)、3.ポジティブアクションと合理的配慮の補完性(クイン)4.、合理的配慮と訴訟可能性(クイン)5.雇用主の合理的配慮の提供義務(マレイ)、6.失業率ではなく、雇用率の採用(原口)、7.インクルーシブな教育と合理的配慮(石毛)等が指摘された。

参加者からは、先住民障害者への配慮、精神障害と合理的配慮、オランダでの合理的配慮の「実効的」確保等に関する質問、コメントがあった。

 昼休みという忙しい時間にも関わらず、政府代表(米国、オランダ、カナダ、韓国、タイ等)、NGO(ランドマインサバイバーネットワーク等)、国内人権機関(インド、オーストラリア等)、約80名という多数の参加が得られた。とりわけ国会議員が4名参加(ほかに今野東衆議院議員、岡崎トミ子参議院議員)という点は各国にも例がなく、画期的で大変に注目された。内容面では、ILOですら合理的配慮と特別措置の関係が整理できていない点は明らかになったほか、ADAが障害者雇用の量の拡大に貢献してこなかったという米国の研究者の指摘は従来どおりだが、日本のみならず条約の方向性を考える上で、合理的配慮の提供という非差別だけでない雇用面の取り組みの必要性を改めて考えさせられた。なお、詳細なセミナーの記録は日報と共に配布される予定。

2時のNGOコーカス運営委員会はセミナー司会のために欠席(アジア太平洋代表はオーストラリア障害者協会会長が代理出席)

午後セッション(3時から6時)

第6条〔統計及びデータ〕の第2読継続、終了

第7条〔平等と非差別〕の第2読開始

第8条〔生命への権利〕第2読開始、終了

第8条の第2読が終了した5時半で議長団は、逐条担当のファシリテーター国の打ち合わせを行うと宣言し、散会した。

逐条のファシリテーター担当国は以下のとおり。

  • 1〔目的〕議長団
  • 2〔一般的原則〕議長団
  • 3〔定義〕なし
  • 4〔一般的義務〕アルゼンチン
  • 5〔障害のある人に対する肯定的態度の促進〕シエラレオーネ
  • 6 〔統計及びデータ〕フィリピン
  • 7 〔平等及び非差別〕リヒテンシュタイン
  • 8 〔生命に対する権利〕エクアドル
  • 9 〔法律の前における人としての平等の承認〕カナダ
  • 10 〔身体の自由及び安全〕トリニダードトバゴ
  • 11〔拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取り扱い若しくは刑罰からの自由〕スウェーデン
  • 12 〔暴力及び虐待からの自由〕チェコ
  • 13 〔表現及び意見の自由と、情報へのアクセス〕モロッコ
  • 14 〔プライバシー、住居及び家族の尊重〕南アフリカ
  • 15 〔地域社会における自立した生活及びインクルージョン〕
  • 24bis[国際協力]メキシコ

* 昨日、議長は第2条の統合テキストの本日配布を予告したが実現しなかった。

第4日目(8月26日)

9時 NGOコーカス

  • 先住民の問題

  • トピックワーキンググループの作業開始

  • 来週の非公式会合への対応(マッケイ大使とのコンタクト)

午前10時 午前セッション

第9条〔法律の前における人としての平等の承認〕

本条のファシリテーターであるカナダの修正提案を中心に議論が行われた。コスタリカからは、法的能力と司法へのアクセスそれぞれを別にすべきという提案が行われ、多くの国から支持があった。日本が提案を行った司法に関する物理面、コミュニケーションの障壁撤廃に関する(g)提案は、NGOコーカス提案でも第4項として採用されている。終了。

第10条〔身体の自由及び安全〕

開始、終了。

議長のアナウンス

今日の午後か、明日の午前に第1条から第15条、第24条第2次案の審議は終了する。昨日、逐条のファシリテーターとコーディネーター(ニュージーランドのドン・マッケイ大使)の会合があった。今後は、作業部会と同じ形態で作業を進める。逐条審議を全体会議で行う。作業部会草案とコンピレーションテキストに基づいて進める。その後、各ファシリテーターにゆだねられる。同時進行の会議は行われない。メインの非公式協議は「参加に制限のない」(open-ended)ものとする。小グループによる非公式協議の結果は、メインのインフォーマルに報告される。ファシリテーターの役割は非常に大きい。各国の柔軟性を期待する。

第11条〔拷問〕開始

午後2時 NGOコーカス運営委員会

NGOコーカス主催のコーカス条文案ブリーフィングを31日(火曜日)昼休みに開催予定

午後3時 午後セッション

第11条〔拷問〕継続、終了

第12条〔暴力及び虐待からの自由〕開始、終了

第13条〔表現の自由〕開始、継続

「事務局のアナウンス」。

明日の午前9時半から10時過ぎまで避難訓練が行われる。

そのため、明日は11時15分に開会する。

第5日目(8月27日)

11時半 午前セッション(国連本部の建物の避難訓練のため遅れて、開会)

第13条のNGOの発言があり、終了

第14条〔プライバシー、結婚、家族〕 

議長からのアナウンス「第24条第2次案」が終了した時点で、非公式協議は、第4条から審議を行う。

2時 NGOコーカス

昼休みのマッケイ大使との会合の報告(ノルドストローム)

非公式会合ではNGOは発言できないという決定がなされた。文書の配布は許可される可能性がある。今回の特別委員会で必ずしも15条までを終わらせるつもりはない。

コーカスとして、妥協できない点を明確にする必要。

午後3時 午後セッション

第14条継続、終了。

第15条〔地域社会における自立した生活とインクルージョン〕開始、終了。

第24条第2次案〔国際協力〕

 第3回特別委員会で、メキシコ、中国、ベトナムからそれぞれの条文案が提出されている。詳細なメキシコ提案よりも、枠組みとしては簡潔な中国提案に支持が集まった。ただ、枠組みとして中国案を支持する先進国でも、中国案(c)の「途上国への技術・経済援助」の明記には抵抗が強い。独立した国際協力に関する条文に関しては、EU、カナダ、ノルウェー、米国が反対を表明した。日本は新たな資金援助の仕組みには反対しているが、独立した条文自体には反対していない。

第6日(8月30日)

9時 コーカス会合

―武力紛争下の障害者に関する新たな条文提案(セーブザチルドレン)

問題は条文提案自体と、現在の条文案は予防中心となっており、コーカス提案には不適切という意見がある。

―31日(明日)のコーカス条文案説明セッション

(主要テーマ)自由の剥奪と強制的介入、支援付意思決定(サポーティッドデシジョン)、国際協力、一般的義務、非差別及び平等、手話の認知、点字の認知

―途上国のNGOの参加に関する中南米・ラテンアメリカからの提案

―新コーカス条文案のコーカスとしての承認(明日午前には承認する必要)

10時 午前セッション

マッケイ大使(ファシリテーター)

各条文に条文名をつけるかどうかは最後に検討する。他の条約に条文名はない。

―第4条〔一般的義務〕 本来は午前をメインのインフォーマルとして、午後をファシリテーターが開催し、小インフォーマルとする。ただし、マッケイ大使が明日の午前中は先約があるため、今日は午前と午後共に、メインのインフォーマルを行い、明日の午前、午後共に、ファシリテーターが開催する小インフォーマルとする。第1条、第2条は週の後半に小インフォーマルを開催する。小インフォーマルでの議論は、メインのインフォーマルに戻される。

4,5,7条の統合に関しては、7条の審議終了後に再度検討する。

第4条の審議全体非公式協議開始。

2時 NGOコーカス運営委員会

  • ラテンアメリカ・カリブ海の途上国のNGO参加向上に関する提案(情報交換、国連の任意拠出基金の活用、情報アクセス等)
  • コーカス提案の第4条5への家族の言及の追加に関する議論、家族への言及を支持しないという結論。

3時 午後セッション

  • 第4条2項(障害者、障害者組織との協議)、
  • 家族を含めるべきかどうかの議論、
  • 第4条全般に救済(脚注18)を含むべきかどうか。

第4条の全体非公式協議終了。

第7日(8月31日)

8時半 NGOコーカス

10時 非公式協議 第4条〔一般的義務〕アルゼンチンのファシリテーターによるまとめ作業開始

午後1時15分、 NGOコーカスによる政府へのブリーフィング

DPI世界議長のビーナス・イラガンが司会を務め、以下のテーマについてそれぞれのスピーカーがNGOコーカス提案をもとに説明を行った。

  • 「漸進的実施義務と救済」(第4条)(LSNキルステン)人権の不可分性
  • 「家族を第4条5項に含むかどうか」(WBUキキ)障害者自身の参画
  • 「非差別」差別の定義(EDFステファン)第7条
  • 「支援付決定」supported decision (IIロバート・マーティン)
  • 「自由の剥奪と強制的介入」 (WNUSPティナミンコウィッツ)
  • 手話の認知(WFD、マルク)

3時 午後セッション マッケイ大使がコーディネーター

  • ―第5条〔障害のある人に対する肯定的態度の促進〕の全体非公式協議
  • ―第6条〔統計とデータ〕全体非公式協議開始(マッケイ大使)

第8日(9月1日)

10時 午前セッション 第6条〔統計とデータ〕の全体非公式協議の継続

コーディネーターのマッケイ大使が議長。

第6条全体非公式協議終了。

第7条〔平等と非差別〕全体非公式協議開始

1時半 JDF・日本政府国連代表部共催セミナー「障害者の権利条約の各国・各地域でのインパクトの可能性」

兒玉明(日本障害フォーラム(JDF)代表・日身連会長)の開会挨拶により開始された。スピーカーはまず八代英太(衆議院議員、DPIアジア太平洋ブロック名誉議長)が、日本の障害者基本法改正による障害者差別禁止規定の追加、障害者の一層の政策決定過程への参画、日本での権利条約促進議員連盟の結成予定(今秋)について述べた。続いてステファン・トロメル(ヨーロッパ障害フォーラム(EDF)事務局長)からは、EU25カ国内での格差、差別禁止の取り組みの必要性の指摘があった。ジュディ・ヒューマン(世界銀行障害・開発問題顧問)からは多くの障害者が住んでいる途上国の問題に世銀としてどのように取り組んでいるかの説明があった。韓国政府代表団に加わり、積極的に発言しているイ(李)・イクソプ(韓国DPI、延世大学教授)からは韓国の国内での障害者のアイデンティティに基づく積極的な運動と、条約への取り組みの関連性の話があった。ニュージーランド政府代表の ジャン・スカウン(ニュージーランド障害問題局局長)からは、1993年制定の人権法、ニュージーランド障害戦略等に加えて、審議中のニュージーランド手話を公用語とする法案に関する説明があった。フロアからの質問は、ランドマインサバイバーネットワークのジャネット・ロードとタイの政府代表のモンティエン・ブンタンからあった。司会は長瀬(JDF、東京大学)が務めた。終了後、カナダの政府代表等、複数の参加者から企画への謝意を耳にした。

3時 午後セッション

「ファシリテーター(シエラレオネ)による第5条の非公式協議」開始、終了

「ファシリテーター(フィリピン)による第6条の非公式協議」開始、未了

第9日(9月2日)

9時 NGOコーカス

  • ランドマインサバイバーネットワーク(LSN)(ジェリー・ホワイト代表)LSNとして日報は今後、作成しない。ロビーイングに資源を投入する。日報作りは他の組織が引き継ぐことを希望している。
  • ―キキ・ノルドストローム(世界盲人連合会長) 障害者の権利条約はLSNの条約ではない。
  • ―条約作成のスピードに関する議論 

10時 第7条の全体非公式協議の継続(マッケイ大使)

  • 八代英太代議士が日本政府代表として発言した。自己決定の重要性を強調し、強力な条約の早期策定を訴えた。また、日本国内の障害者基本法の改正、権利条約促進議員連盟の設立の動きについて報告があった。条約策定過程での障害者自身の参画の重要性を強く主張し、最後はNothing about us without us で締めくくると、政府代表の発言としては特別委員会では初めての拍手がわき起こった。
  • 1項開始、終了

2時 NGOコーカス運営委員会

条約策定のスピードに関する議論があり、「3年以内」という表現でとりあえずの合意。

3時 第7条の全体非公式協議継続(マッケイ大使)(未了)

2項開始、終了

3項開始、終了

第10日(9月3日)

9時 NGOコーカス 

障害先住民の問題

条約策定のスピード 「非常に近い将来」を支持するか。

10時 第7条全体非公式協議継続(マッケイ大使)

4項開始、終了

2時 NGOコーカス

  • ガレゴス大使出席 策定は来年9月を逃すと数年はかかる。
  • 次回特別委員会も開催の前日にコーカス会合開催決定
  • トピック作業グループの継続的活動
  • 次回特別委員会開催中のコーカス事務局提案(ハンディキャップインターナショナル) 

3時 特別委員会(公開会合)(ガレゴス大使)

マッケイ大使からコーディネーターレポートの報告

イタリア厚生次官の発言

国際障害コーカス 「条約策定の早期策定」、「障害者の条約過程への参画確保」要請

ランドマインサバイバーネットワーク 「条約の緊急策定」要請

議題6 第4回特別委員会の結論

議題7 第4回特別委員会報告の採択

勧告、次回特別委員会の2005年1月開催付属文書4、コーディネーター報告

* 4条から7条の条文案は国連のウェブサイトに掲載する。

* 次回特別委員会での第1条から第15条の非公式協議をコーディネーターは勧告する。

第4回特別委員会全体を通して

概要

第1週で前文、条約名、構造、定義、第25条〔モニタリング〕の第1読を終え、さらに第1条から第15条それに第24条第2次案〔国際協力〕の第2読を終了した。

第2週からは、作業部会での議長を務めたニュージーランドのドン・マッケイ大使がコーディネーターとして、逐条担当のファシリテーターと協力して、非公式協議が開始され、4条から7条4項までの全体協議が行われた。

マッケイ大使の手腕をしても、非公式協議に入ってからの審議の進みは遅々としている。特に文章のまとめ作業だけとされているファシリテーターが議長を務めるセッションでは、それ以前の議論の蒸し返しが多く、時間が浪費されていた。今後の審議では改善が期待される。

NGOの参画

第1週は従来どおり、NGOとしての発言が許可されていたが、第2週の非公式協議からは、出席だけ認められ、発言権は奪われた。NGOの出席を認めない「クローズド」の非公式協議も今後はありえる。

 第5回特別委員会以降で、第16条(第15条第2次案)からの第2読が行われれば、そこではNGOの発言権が確保されるはずであるが、第2読がほとんど意味がなかったため、第16条以降は第2読が行われない可能性もある。

国際障害コーカス

JDFを含む障害NGOの協議体であるコーカスは引き続き、障害組織の交渉過程への発言権(再)確保に努めると共に、コーカスとしての条文案の起草作業を継続することを第4回特別委員会終了時に確認した。今度は重点事項として以下の項目を取り上げる合意が掲載されている。

  • 社会権の漸進的実施義務
  • 救済
  • 家族の役割
  • 差別の定義(合理的配慮)
  • 支援付決定
  • 自由の剥奪
  • 強制的介入
  • 手話の認知
  • 点字の認知

途上国のNGOの参加の重要性

非公式会合からは最悪の場合、NGOが出席すらも排除が危惧されていたが、出席は確保された。しかし、発言権は奪われてしまった。この経過でアフリカを中心とする一部の途上国からは、NGOといっても畢竟、北の別働隊ではないかという指摘があった。その意味で、途上国のNGOの参加を、国連の国連障害任意拠出基金を通じて支援することは重要である。JDFとしての働きかけによって、日本政府からは、本年度の拠出金の一部をこのために指定拠出(イヤーマーク)する決定が下されているのは評価できる。しかし、特別委員会では、同基金が空っぽであるという議長からの指摘があり、継続的な支援が必要とされている。

論点―家族の役割

従来の多くの論点に加えて特に第4条〔全般的義務〕2項での、障害者政策、立法措置の締約国の協議対象として、障害者、障害者を代表する組織に加えて、「家族」を加えるべきかどうかが、大きな論点となった。家族を盛り込むことを強く主張しているのは、インドとケニア等であり、抵抗しているのは日本、韓国、ニュージーランド等である。 

日本政府の発言の貢献

前回行った第9条〔法の前での人としての平等〕での司法へのアクセスの提案に加えて、前文での議論で、家族の役割への言及を求めたインドの発言に対して、「家族こそが障害者を抑圧してきた歴史」に触れて、反対を表明した他、やはり前文での重度、重複に関する条文案に関して、障害者の分断につながるため反対とした発言は評価できる。

 なお、政府代表団は、外務省、内閣府、法務省、文部科学省、NGO(JDFの東、金)から構成された。

 なお、日本政府代表として八代議員が発言を行い、自己決定、障害者自身の参画の必要性を強く訴え、異例の拍手が会議場に起こった。

JDF・国連代表部共催セミナー

第1週は「合理的配慮―教育と雇用」、第2週は「条約の各国・各地域でのインパクトの可能性」というテーマで計2回のセミナーをJDFと政府が共同主催(共催)という形で行った。第3回特別委員会で行った際、政府はあくまで協力という位置づけだった。

アイルランド国立大学のジェラルド・クイン教授、ILOのバーバラ・マレイマネージャー、世界銀行のジュディ・ヒューマン顧問など多くの著名なスピーカーの参加を得て、共に好評を得た。日本の国会議員団から、第1週は4名の民主党議員(原口一博、石毛えい子、今野東、岡崎トミ子)、第2週は1名の自民党議員(八代英太)の参加が得られた。

条約策定の見通し

第2週から非公式協議に入って5日間で4、5、6、7条が取り上げられたが、第4条に関しては、救済、第7条に関しては第5パラグラフ〔特別措置〕に関する全体非公式協議も終了していない状態である。

1月の第5回特別委員会では、継続して第15条までの非公式協議が継続されるものと思われるが、もし第5回で第15条まで終了できるかどうかも疑わしいペースである。

特別委員会のガレゴス議長は依然として、来年9月のミレニアムプラスファイヴの会合までの採択を目指すと公言しているが、仮に来年3回の委員会開催があったとしても、現実的にはほぼ無理な情勢である。第15条第2次案〔女性障害者〕以降の条文も、複数の条項の分割案を含め、議論が収束するには相当の時間が必要と思われる。

 来年、特別委員会の開催は2回か、3回かは現時点で未定である。既に開催の決まった1月(10日が有力とされている)のほか、3月・4月、8月・9月という声がある。