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第4回国連障害者の権利条約特別委員会

書誌情報
項目 内容
仮訳 JDF(日本障害フォーラム)

コーディネーターによる障害者権利条約第4回特別委員会報告書 付録 4

I. 概要

  • 1. 8月24日、特別委員会議長は、条約草案に関する非公式協議のコーディネーターとしてドン・マッケイ大使(ニュージーランド)を迎えた。議長は非公式協議の開催に関する方法を要約した声明を読み上げた(付録III参照)。
  • 2. 非公式協議は8月30日から9月3日まで開かれ、第4、5、6及び7条の条文草案が検討された。
  • 3. 協議は条文草案に関するできるだけ多くの問題を解決することを目的として開かれた。ただし、ここで合意に達した場合でも、今回協議された条文草案を、今後各代表が再検討することができなくなるわけではないということが了承された。
  • 4. 協議が終わった段階での第4条から第7条までの条文草案は、国連Enableのウェブサイトで公表され、各代表が会期間に検討できるようにする。
  • 5. 条文草案の見出しに関する討議は、後日行うこととして延期され、見出しを最終的な文書に残すべきか、或いは単に協議を容易にするため作業上使用する見出しとするべきかについては、未解決のまま合意は得られなかった。
  • 6. 非公式協議の機運の高まりを保つために、コーディネーターは、第1条から第15条の条文草案に関する非公式協議を、次回の特別委員会でも引き続き行うことを提案した。

II. 草案第4条に関する議論の要約

  • 7. 第4条の条文草案について、以下の点に関し、一般的合意が得られた。
    • ・ 特別委員会は、第4条、第5条及び第7条の条文草案の配置について、各条文の相互関係を考慮しつつ、今後検討する。
    • ・ 第4条の条文草案には、子どもの権利条約第4条の文言を盛り込む。今後の作業のために必要な、各項の的確な文言の作成については、Gustavo Ainchil(アルゼンチン)を中心とした、この条文草案を担当するファシリテーター・グループに委ねられた。
    • ・ 第4条の条文草案には、経済的、社会的及び文化的な権利の漸進的実現という概念を盛り込む。ただしその一方では、即時実施可能な義務を直ちに実行する必要性があることも考慮し、両者のバランスをとる。
    • ・ 非差別は漸進的実現の対象とはならない。
  • 8. 更に、救済に関する規定を草案の第4条或いは第9条に入れる可能性についての実質的な討議が行われた。この件に関して支持を表明する者もいたが、この問題をファシリテーター・グループに委ねる前に、更なる議論が必要であるとされた。

第4条1項

  • 9. 第13条(d)号、第19条2項(e)号、第20条(c)号及び第21条(f)号の条文草案に盛り込まれている事柄を、第4条1項(f)号と1項新(g)号にまとめるべきであるという点で、一般的合意が得られた。ファシリテーター・グループはこの提案に従い、的確な文言の作成を委任された。

第4条2項

  • 10. 以下の点に関して、一般的合意が得られた。
    • ・ 第5条2項(d)号、第6条(c)号、第18条(c)号、第19条2項(g)号及び第21条(m)号はすべて第4条2項にまとめられる。
    • ・ 最終的な第4条2項の配置については、実施とモニタリングに関するその他の条文とともに、後日審議される。
    • ・ 家族及びその他の者との協議の問題は、第4条条文草案に含めるという形では解決することができないが、他の条文或いは前文に入れることを検討することはできる。

III. 草案第5条に関する議論の要約

  • 11. 第5条条文草案について、以下の点に関し、一般的合意が得られた。

第5条1項

  • 12. 第5条1項(a)号は、作業部会草案を反映した内容にする。ただし、「並びに障害のある人の権利の尊重の育成」という文言を、「障害及び障害のある人についての社会全体の意識向上」の後に加える。この文言については様々な表現が提案されたが、それらの整理は、Rowe大使(シエラレオネ)を中心とする、この条文草案を担当するファシリテーター・グループに委ねられた。
  • 13. 第5条1項(b)号は、作業部会草案を反映した内容にする。ただし、「あらゆる生活領域における」という文言を、「障害のある人に対する固定観念及び偏見との闘い」の前に付け加える。
  • 14. 第5条1項(c)号は、次のように修正する。
    「この条約の全般的な目的と合致する方法により、障害のあるすべての人のケイパビリティ及び貢献についての意識を促進し、かつ、障害のある人が社会の構成員として他のすべての人と同一の権利及び自由を共有することを促進すること。」

協議では、この項の内容を更に改善する必要があると確認され、今後の討議はファシリテーター・グループに委ねられた。

第5条2項

  • 15. 第5条2項は第5条1項の内容と重複する部分が多いので、簡潔な文言にするか或いは削除することができる。いずれの場合でも、一般の人々の意識向上を図るキャンペーンと、すべての子どもの意識向上及び教育制度の普及について言及することは重要であるとの考えを複数の代表が示し、これらの点を、簡素化された第5条2項、或いは第5条1項に残すべきであるとした。コーディネーターはこの問題をファシリテーター・グループに委ねた。
  • 16. 第5条2項を削除する場合、第5条2項(c)号の内容は残し、第5条1項に第5条1項(d)号として移す。
  • 17. コーディネーターは更に、訓練に関する一般的な文言を練るようファシリテーター・グループに求めた。ただしこの文言を含めるかどうか、またその最終的な配置について決定することは行わないとした。

IV. 草案第6条に関する議論の要約

  • 18. 第6条条文草案について、以下の点に関し、一般的合意が得られた。
    • ・ この問題に関する規定を条約の中に設ける。
    • ・ モニタリングに関する第25条の条文草案とは別の条文を設け、第25条とは一緒にしない。
    • ・ 同条文は条約の実施及びモニタリング(できればこれらの問題に関する章を設ける)に関する部分に入れる。最終的な配置は決定されなかったが、この条文を条約の最初の部分に残したいという意見を表明する代表もいた。
    • ・ 同条文の文言は以下のように簡素化された。「締約国は、必要な場合には、この条約を実施するための政策を形成しかつ実施することを可能にするため、適当な情報を収集することを約束する。この情報を収集し維持する過程は、
    • (a) コンフィデンシャリティ及び障害のある人のプライバシーの尊重(データ保護に関する立法を含む)を確保するための法的に確立されたセーフガードを遵守しなければならず、
    • (b)人権及び基本的自由を保護するための国際的に受け入れられた規範を遵守しなければならない。」
  • ・ ランドマイン・サバイバーズ・ネットワークによって提案された、統計に関する国際基準と倫理原則の遵守という概念は、特にその要素はリストアップされていないが、条文に盛り込まれる。この際、規定的になりすぎず目的を説明している、子どもの権利条約一般的意見5号のような簡潔な文言を使えば十分である。これについては、Leslie Gatan(フィリピン)を中心としたファシリテーター・グループに委ねられた。
  • ・ 一部の政府代表が、データを利用することの重要性を提起した。条文の内容がバランスを欠くことのないように、コーディネーターは2カ国の政府代表に対し、新に第6条2項を設け、第6条1項で扱っていない問題を盛り込んだ、より簡潔な文言を作成するよう要請した。

V. 草案第7条に関する議論の要約

第7条1項

  • 19. 第7条1項の内容と脚注の追加に関して一般的合意が得られた。またこの条文草案の作成に関してはStefan Barriga(リヒテンシュタイン)を中心とするファシリテーター・グループに委ねることについても一般的合意が得られた。
  • 20. 同条文の文言は以下のようにすることで一般的合意が得られた。
    「締約国は、すべての人が法律の前及び下において平等であり、かつ、いかなる差別もなしに法律の平等な保護及び利益を受ける権利を有することを認める。締約国は、障害に基づく差別を禁止するものとし、また、障害のあるすべての人に対し、差別に対する平等のかつ効果的な保護を保障する。また、締約国は、いかなる差別も禁止するものとし、また、障害のある人に対し、他のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を保障する(注a)。」
  • 21. 第7条1項の第2文及び第3文を、内容を変えずに一つにまとめることが有用であるかどうか、ファシリテーター・グループが検討することになった。

第7条2項(a)号

  • 22. 以下の文言とすることで、一般的合意が得られた。この文言は、女性差別撤廃条約第1条の最後の部分を借用している。(2つの脚注をつけることについても合意が得られた。)
    「(a)この条約の適用上、『障害を理由とする差別』とは、区別、排除又は制限(注b)であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、他の人との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう(注c)。」

第7条2項(b)号

  • 23. 以下の文言とすることで一般的合意が得られた。「(b)差別は、あらゆる形態の差別(直接的及び間接的な差別を含む)を含むものとする。」
  • 24. 第7条2項(a)号及び(b)号を一つにまとめるか否かについては、今後の課題として残された。

第7条3項

  • 25. 現在の第7条3項は誤解を招く危険性が高いため削除し、草案第7条に脚注を加えるということで一般的合意が得られた。
  • 26. 脚注の文言は次のようにすることで合意が得られた。
    「脚注:一部の代表は、自由権規約委員会一般的意見18号の文言、すなわち『別異取扱における区別の基準が合理的かつ客観的な場合であって、かつ、その区別がこの条約の下で正当化される目的を達成するために行われる場合には、別異取扱は必ずしも全て差別となるわけではない。』を反映すべきであるとの見解を示した。」

第7条4項

  • 27. 第7条4項及びその新な2つの脚注のたたき台として、以下の文言を使用すること、及び作業部会草案の脚注27を残すということで一般的合意が得られた。また、合理的配慮の定義を、第7条と条約草案の定義を扱う部分とのどちらに配置するかについては、更に検討し、議論をすすめる必要があることが確認された。合意が得られた文言は、以下の通りである。
    「(注d)締約国は、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な行動をとることを約束する。『合理的配慮』は、障害のある人に対し、すべての人権及び基本的自由を他の者との平等を基礎として享有し或いは行使することを確保するための、特定の事例で必要とされる場合における、不釣合いな負担(注e)を課さない必要かつ適当な変更及び調整と定義されるものとする(注f)。」

脚注:
:A/59/150

  • a:作業部会草案で挙げられている「他の理由による差別」のリストは削除された。一部の代表は、このリストを前文の内容に盛り込むことを望んだ。特に、前文(m)号が同様な問題を扱っている。リストは現行の人権条約の規定と一致する内容でなければならないという点で合意が得られた。
  • b:一部の代表は、ここに「又は合理的配慮の否定」という文言を含めることを望んだ。
  • c:一部の代表は、この定義において米州障害者差別撤廃条約に見られる側面を含めること、とりわけ、『現在であるか過去であるかを問わず、障害、障害の経歴、従前の障害から生じた状態又は障害の認知に基づくあらゆる区別、排除又は制限・・・』という文言を含めることを望んだ。
  • d:冒頭に入れるよう提案されていた文言と、作業部会草案中の同条文冒頭部分の文言は削除されたが、一部の代表は更なる検討を望んだ。
  • e:一部の代表は、『不釣合いな負担と』いう文言に憂慮を示した。
  • f:A/AC.265/2004/WG.1の脚注27がここに入る。

原文へのリンク:http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc4reporte.htm