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第4回国連障害者の権利条約特別委員会

報告:「障害者の権利条約に関する第4回特別委員会を終えて」

川島聡

はじめに

 国連総会決議56/168(2001年12月)に基づき、障害者の権利条約に関する特別委員会(Ad Hoc Committee)が国連総会の下に設けられた。特別委員会は、これまでに第1回(2002年6~7月)、第2回(2003年6月)、第3回(2004年5~6月)と開催され、このたび第4回(2004年8月23日~9月3日)が開催された。また、第2回と第3回との会期間には作業部会(2004年1月)が開催され、前文と本文25条から成る「作業部会草案(テキスト)1 」が準備された。この草案を「たたき台」として、第3回特別委員会では条約草案の政府間交渉が開始されて、草案1~24条(3条を除く)、前文の一部、国際協力についての第1読(first reading)が行われた2

第4回特別委員会の第1週(8月23~27日)には、前文の一部、条約名称、条約構造、草案3条、25条についての第1読が行われ、これをもって草案の第1読はすべて終了した。また、この第1週には、第3回特別委員会報告付属書II「作業部会草案への政府修正提案集(コンピレーション)」3や、草案第1読の際になされた各種提案その他の提案に基づき、草案1~15条と24条第2案[国際協力]の再検討(review)も行われた。この再検討を踏まえて、第4回特別委員会の第2週(8月30日~9月3日)には、草案4条、5条、6条及び7条に関する非公式協議(informal consultation)が行われた。そして最終日(9月3日)には第4回特別委員会報告4が採択された。

以下において、(1)非公式協議(=非公式会合における協議)の概要、(2)草案4~7条の内容、(3)障害者団体の参加について述べることにより、第4回特別委員会の概要を簡単に紹介する。

1 非公式協議とは

条約交渉が開始された第3回特別委員会と第4回特別委員会第1週とでは公式本会合(formal plenary meeting)が持たれたが、冒頭で触れたとおり、第4回特別委員会第2週からは非公式協議が行われた。
ここでは非公式協議の概要について、第4回特別委員会報告付属書III「作業構成に関する特別委員会議長声明」(以下略して議長声明)5、同付属書IV「コーディネーターの第4回特別委員会報告」(以下略してコーディネーター報告)6を参照して紹介する。
非公式協議は、非公式本協議(main informal consultation)と非公式小協議(small informal consultation)とに実質上分けられ、「議長声明」に含まれたガイドラインの下で行われる。その概要は次のようなものである。

  1. 非公式協議はコーディネーターの指揮と裁量の下で行われる。
  2. オブザーバー(政府間機構、障害者団体その他のNGO、国内人権機関)には非公式協議の傍聴が要請される。
  3. コーディネーターは、条約交渉において困難な論点が生じた場合には、その論点に関する非公式小会合(smaller informal meetings)――における非公式小協議――を開催するようファシリテーターに要請することができる。
  4. 非公式小協議はこのガイドラインに基づき行われ、その作業成果はコーディネーターに報告される。
  5. 非公式本協議と非公式小協議とは並行して行われない。
  6. 非公開の会合(closed meetings)をある時点で開催するよう要請することができる。
  7. コーディネーターは非公式協議の交渉成果を特別委員会議長に2004年9月3日(第4回特別委員会の最終日)に報告する。

非公式協議のコーディネーターには、特別委員会議長の要請(8月24日)により、作業部会のコーディネーターとして実績を残したドン・マッケィ(ニュージーランド大使)が就任した。また、ファシリテーターは、第3回特別委員会の審議において条文毎に割り当てられた各国政府代表から成るが、草案1条と2条のファシリテーターは特別委員会議長が担う。

非公式協議における審議はやや複雑で柔軟な形式で進められる。たとえば、草案1条〔目的〕と2条〔一般的原則〕の討議情況はかなり明確になっていたため、それらの条文内容の整理は非公式協議を経ることなく特別委員会議長に委ねられた(草案1条のファシリテーター案は国連ウェブサイトで既に公表されている7)。また、草案3条〔定義〕については、その審議状況が混迷しており、また他の条約起草過程の経験にも照らして、他の条文の審議を終えるまで脇に置かれることになった8

したがって、さしあたり非公式協議にかけられるのは、第4回特別委員会第1週で再検討を終えた草案1~15条及び24条第2案〔国際協力〕のうちの草案4条以降となった。そして第4回特別委員会第2週において、草案4~7条の非公式協議(非公式本協議と非公式小協議の双方を含む)が行われた9

これら4つの条文については、コーディネーターを中心とする非公式本協議の下で協議が行われるとともに、その協議成果を指針として、ファシリテーターを中心とする非公式小協議においても再度協議が行われた。以下において、草案4~7条の討議摘要を記した「コーディネーター報告」の内容を紹介する。

2 草案4~7条の討議摘要(コーディネーター報告)

(1) 草案4条(一般的義務)

 作業部会草案4条は、障害者の人権ないし権利を保障するための国家の一般的義務を定めもので、条約全体を通じて適用される総則的規定である。草案4条は、1項(a~f号)と2項から成る。草案4条については、8月31日午後にファシリテーター(アルゼンチン代表)から新たな条文案(暫定版)が配布されたので、これをまず訳出する。

「締約国は、この条約において認められる権利の実現のため、すべての適当な立法措置、行政措置その他の措置を講ずる。締約国は、経済的、社会的及び文化的権利に関しては、その漸進的実現という観点から自国における利用可能な手段の最大限の範囲内で、また、必要な場合には国際協力の枠内で、これらの措置を講ずる(注1、注2)。
締約国は、その管轄の下にある(注3)すべての個人に対し、障害を理由とするいかなる種類の差別もなしに、すべての人権及び基本的自由の完全な実現を確保することを約束する(注4)。
このため、締約国は次のことを約束する。
(a) 政府、国内及び地方の政策を再検討するための効果的な措置を講ずること、並びに、この条約と合致しないいかなる法令又は規則も改正し、廃止し又は無効にし、かつ、この条約と合致しない否定的な(注5)慣習又は慣行と闘うこと。

  • 注1)このパラグラフの配置については更なる審議を要する。
  • 注2)「締約国は、この権利(訳注:経済的社会的文化的権利)の即時的実施が可能な側面に関しては、即時的に実施することを約束する」との提案がなされたが、この提案については留保を表明した代表もいる 。(訳注: この原文にある、immediate implementationもgive immediate effect toも、(即時的)「実施」と訳した。)
  • 注3)「その管轄の下にある」という表現を用いるか否かは未解決の問題である。この文言が含まれる場合には、「又はそのコントロールの下にある」という文言が付されなければならないとの提案がなされた。
  • 注4)このセンテンスの内容は、第1条(訳注:条約の目的)の最終案に適合したものとなろう。この文言の代替案として、「この条約の目的を実現するため、締約国は次のことを約束する」という文言が提案された。
  • 注5)この修飾語その他の修飾語を用いるべきとの提案に対して、一部の代表は反対した。」

このファシリテーター案は8月31日段階のものであり、今後どのように修正されるかは定かではない。ただ、以下において紹介する「コーディネーター報告」の該当箇所を理解する際に参考になると思われる。「コーディネーター報告」は草案4条の討議概要につき、以下のように記している。

(1-1) 草案4条の配置

まず、条約構造上の問題として、草案4条、5条、7条の配置は、今後の検討に委ねることに一般的合意が得られた。

(1-2) 子どもの権利条約4条と漸進的実現義務

 草案4条が定める一般的義務については、上記のファシリテーター案(8月31日)にも見られるように、次の諸点に一般的合意が得られた。1.草案4条には、子どもの権利条約4条の書き振りを含めるが、その文言は後の作業のためにファシリテーター・グループが準備する。2.草案4条には、経済的、社会的及び文化的権利の漸進的実現という概念を含めるが、それは即時実施可能な義務を即時に実施する必要性とのバランスをとる。3.非差別(non-discrimination)は漸進的実現とならない。

(1-3) 救済規定

草案4条本文に明記されず、その脚注18に含まれた論点である救済規定に関しては、草案4条か9条のいずれかに含めるべきとの提案も見られたが、この論点をファシリテーター・グループに委ねる前にいっそうの討議が必要とされた。

(1-4) 草案4条1項

草案4条1項については、ユニバーサルデザインや新たな技術等の研究・開発・促進等に関連する諸条文の要素(13条d号、19条2項e号、20条c号、21条f号)を、4条1項f号又は4条1項新g号にまとめ上げることに一般的合意が得られ、その文言の準備はファシリテーター・グループに委ねられた。

(1-5) 草案4条2項

草案4条2項については、障害者や障害者団体との協議等に関する諸条文の要素(5条2項d号、6条c号、18条c号、21条m号)を、4条2項にまとめ上げることに一般的合意があった。
もっとも、条約構造上の問題として、4条2項の配置は、条約の実施と監視に関する諸条文との関連において後に審議されることになった。また、家族その他の者との協議を4条に含めるという問題は解決されず、他の条文ないし前文の下で審議されることとされた。

(2) 草案5条(障害のある人に対する肯定的態度の促進)

 作業部会草案5条は、障害者の人権に関する意識の向上を定める条文であり、1項(a~c号)と2項(a~c号)から成る。「コーディネーター報告」によれば、5条1項と2項に関して次の点に一般的合意が得られた。

(2-1) 草案5条1項

草案5条1項a号については、作業部会草案に基づきつつも、「障害及び障害のある人についての社会全体の意識向上」の後に、「並びに障害のある人の権利の尊重の育成」という文言が追加されることになったが、それ以外にも各種提案がなされている。その整理は、ファシリテーター・グループ(シエラレオネ代表)に委ねられた。
草案5条1項b号は、「障害のある人に対する固定観念及び偏見との闘い」の前に、「あらゆる生活領域における」という文言を追加することとされた。
草案5条1項c号は、「この条約の全般的な目的と合致する方法により、障害のあるすべての人のケイパビリティ及び貢献についての意識を促進し、かつ、障害のある人が社会の構成員として他のすべての人と同一の権利及び自由を共有することを促進すること」という文言に修正された。もっとも、この文言のいっそうの改善が必要であることが認められ、後の審議のための整理がファシリテーター・グループに付託された。

(2-2) 草案5条2項

草案5条2項に関しては、草案5条1項と重複するところが多く、簡潔な文言にするか、あるいは削除することができるとされた。ただ、いずれの場合であっても、公衆啓発キャンペーン、すべての子どもの意識促進、教育制度の促進に言及することが重要であると指摘した政府代表がおり、この点については、簡素化された2項または1項で言及することとされた。この論点の整理は、ファシリテーター・グループに委ねられた。
草案5条2項c号(メディアによる障害のある人のイメージの改善)の内容については、もし2項を削除するのであれば、1項d号に含めることとされた。
トレーニング(訓練)に関する一般的な文言をファシリテーター・グループが準備することになった。ただし、この文言を5条に含めるべきか否かは今後の課題とされた。

(3) 草案6条(統計及びデータ収集)

 作業部会草案6条(統計及びデータ収集)は、柱書とa~f号とから成る。この条文を条約に含めるべきか否かについては、プライバシーや条約監視等の論点との関連において、作業部会草案の審議においても賛否が分かれていた。
「コーディネーター報告」によれば、第4回特別委員会では、次の点について一般的合意が得られた。まず、この条約には、統計とデータ収集に関する規定を盛り込み、その規定は草案25条(監視)に吸収されるのではなく、個別条文として位置づけられる。もっとも、この条文が条約のどこに配置されるかは未定である。そして、この条文は現在のところ次のように簡略化された。

「締約国は、必要な場合には、この条約を実施するための政策を形成しかつ実施することを可能にするため、適当な情報を収集することを約束する。この情報を収集し維持する過程は、
(a) コンフィデンシャリティ及び障害のある人のプライバシーの尊重(データ保護に関する立法を含む。)を確保するための法的に確立されたセーフガードを遵守しなければならず、
(b) 人権及び基本的自由を保護するための国際的に受け入れられた規範を遵守しなければならない。」

草案6条は簡潔な文言とすべきであるとされ、その整理はファシリテーター・グループ(フィリピン代表)に委ねられた。この文言作成の指針としては、ランドマインサバイバーズ・ネットワークの提案に含まれている統計に関する国際基準と倫理原則の要素を含み、かつ、子どもの権利条約一般的意見5号に沿った簡潔な文言にすることで十分とされた。
また、草案6条に関しては、データ収集の重要性が一部の代表から提起されたため、新たに6条2項を設けて、6条1項に含まれていない論点を扱う簡潔な文言案を作成するよう、コーディネーターは2ヶ国の政府代表(メキシコ・イスラエル)に要請した。

(4) 草案7条(平等及び非差別)

 障害者の平等と非差別を全般的に扱う条文が作業部会草案7条である。この条文は、1項、2項(a~b号)、3~5項から成る。この条文についても、さまざまな提案が提起されたが、「コーディネーター報告」によれば、次のような合意が得られた。

(4-1) 草案7条1項

草案7条1項の文言は、次のテキスト(その脚注(a)を含む)とすることに一般的合意があり、その整理と準備はファシリテーター・グループ(リヒテンシュタイン)に付託された。

「締約国は、すべての人が法律の前及び下において平等であり、かつ、いかなる差別もなしに法律の平等な保護及び利益を受ける権利を有することを認める。締約国は、障害に基づく差別を禁止するものとし、また、障害のあるすべての人に対し、差別に対する平等のかつ効果的な保護を保障する。また、締約国は、いかなる差別も禁止するものとし、また、障害のある人に対し、他のいかなる理由による差別に対しても平等のかつ効果的な保護を保障する(注a)。」

ここに付された脚注(a)によれば、このテキストでは、作業部会草案における「他のいかなる理由」の前に列記された差別禁止事由(人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生、障害の原因若しくは種別、年齢又は他のあらゆる地位等の)は削除された。もっとも、一部の代表は、これらの列記事由は草案前文m号で言及されるべきであると提案した。また、この列記事由は現行人権諸条約の規定と一致すべきであるとの合意が得られた。
このテキストは3つの文からなるが、この内容を変えることなしに、第2文と第3文とを結合させることが有用であるか否かをファシリテーター・グループは検討することになる。

(4-2) 草案7条2項

草案7条2項はa号とb号とから成り、障害差別の定義を定めている。まず、草案7条2項a号は、女性差別撤廃条約1条の文言に基づき、次のテキスト(その2つの脚注(bとc)を含む)とすることに合意があった。

「(a)この条約の適用上、『障害を理由とする差別』とは、区別、排除又は制限(注b)であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野においても、他の人との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを害し又は無効にする効果又は目的を有するものをいう(注c)。

(注b)一部の代表は、ここに「又は合理的配慮の否定」という文言を含めることを望んだ。

(注c)一部の代表は、この定義において米州障害者差別撤廃条約に見られる側面を含めること、とりわけ、『現在であるか過去であるかを問わず、障害、障害の経歴、従前の障害から生じた状態又は障害の認知に基づくあらゆる区別、排除又は制限・・・』という文言を含めることを望んだ。」

次に、草案7条2項b号は、「(b)差別は、あらゆる形態の差別(直接的及び間接的な差別を含む)を含むものとする。」とすることに一般的合意があった。ただし、このb号とa号とを一つにまとめ上げるか否かに関しては、今後の課題とされた。

(4-3) 草案7条3項

差別の例外規定を設ける草案7条3項については、誤解を招く危険性が高いため、削除することに一般的合意が得られるとともに、次の注を付すことについても合意が得られた。

「(注)一部の代表は、自由権規約一般的意見18号の文言、すなわち、『別異取扱における区別の基準が合理的かつ客観的な場合であって、かつ、その区別がこの条約の下で正当化される目的を達成するために行われる場合には、別異取扱は必ずしも全て差別となるわけではない。』を反映すべきであるとの見解を示した。」

(4-4) 草案7条4項

合理的配慮(合理的便宜)に関する規定を設ける草案7条4項については、作業部会草案脚注27を維持し、かつ、次のテキスト(その2つの脚注(dとe)を含む)を用いることに一般的合意が得られた。

「(注d)締約国は、合理的配慮が提供されることを確保するためのすべての適当な行動をとることを約束する。『合理的配慮』は、障害のある人に対し、すべての人権及び基本的自由を他の者との平等を基礎として確保するための、特定の事例で必要とされる場合における、不釣合いな負担(注e)を課さない必要かつ適当な変更及び調整と定義されるものとする(注f=作業部会草案注27)。

(注d)作業部会草案に反映された文言は削除されたが、一部の代表は更なる検討を望んだ。

(注e)一部の代表は、『不釣合いな負担(disproportionate burden)』という文言が問題を孕んでいることを指摘した。」

草案7条4項に規定されている合理的配慮の定義を、この7条に含めるか、あるいは定義一般を定めた草案3条に含めるかは、今後の審議に委ねることが確認された。

3 非公式協議への障害者団体の参加

障害者自身の主張が条約草案にどれだけ反映されるかが、この条約の正当性と妥当性を左右することになる。障害者の参加という観点から言えば、第4回特別委員会第2週から開始された「(公開の)非公式協議」は、オブザーバー(障害者団体その他のNGO、国連専門機関、国内人権機関等)の傍聴のみを許容している点で、「公式本会合(オブザーバーの傍聴と意見表明とを許容)」とは異なる。

当初はオブザーバーの傍聴さえ許さない「(非公開の)非公式協議」となる可能性もあったが、NGOの参加問題に関する政府間の妥協の結果として、オブザーバーの傍聴を許容する「(公開の)非公式協議」となった。もっとも、「議長声明」にあるように、この非公式協議は今後、障害者団体の傍聴さえ許さない「(非公開の)非公式協議」となる可能性があることに留意しなければならない。この点について、障害者団体は周到なロビー活動を引き続き行うことが必要となる。

非公式協議においては、むろん政府代表団の一員に障害者が加わることが重要となる。この点、第3回特別委員会がそうであるように、第4回特別委員会においても、日本政府代表団のアドヴァイザー(顧問)に東俊裕氏、同オブザーバーに金政玉氏が障害者団体からそれぞれ迎えられ、日本政府と障害者団体との意思疎通が着実に進展していることは評価して良い(なお第2回特別委員会においても東氏は日本政府代表団アドヴァイザーに迎えられ、作業部会においては金氏が日本政府代表オブザーバーとして参加した)。

日本との関連で付言すれば、第4特別委員会では「合理的配慮」(8月25日)と「諸国家・諸地域への条約の影響」(9月1日)とをテーマとする2度のサイドイベント(日本障害フォーラム準備会と国連日本政府代表部との共催)が開催され、第3回特別委員会のときに開催された「合理的配慮」をテーマとするサイドイベント(国連日本政府代表部及び国連アジア太平洋経済社会委員会の協力の下、日本障害フォーラム準備会の主催)と同様一定の評価を得た。また、これまでの特別委員会に見られなかった光景として、日本の国会議員(石毛えいこ、原口一博、岡崎トミ子、今野東(以上、民主党)、八代英太(自民党))が参加したことが挙げられよう。

おわりに

以上で述べたように、第4回特別委員会では、草案第1読を終えた後、草案1~15条と24条第2案の再検討を経て、さらに草案4~7条の非公式協議が行われた。本稿の最後に、本条約起草をめぐる課題について若干指摘しておきたい。
まず、条約作成の手続面に関して言えば、途上国の障害者の主張が条約審議に反映されづらいことはこれまでに再三指摘されているが、この問題は第4回特別委員会においても依然として解決されていない。また、先述したように第4回特別委員会で行われた「(公開の)非公式協議」が、障害者の傍聴を完全に排除する「(非公開の)非公式協議」となる可能性もある。

次に、条約の内容面に関して言えば、たとえば「合理的配慮」、「ポジティブ・アクション/アファーマティブ・アクション」、「特別措置(女性差別撤廃条約4条)等といった諸概念の明確化、さまざまな差別概念(直接差別、間接差別、合理的配慮の欠如等)の整理、障害者の家族や介助者の位置づけ、「障害のある特定集団(子どもや女性等)」の位置づけ、各種定義を定める草案3条の適否、条約監視(モニタリング)の仕組み等、未解決の問題は山積している。

2005年1月に第5回特別委員会が行われることは第4回特別委員会勧告で明示されることになった10。そこでは非公式協議が引き続き行われると思われるが、どのような展開が今後見られるかは予測できない。かかる状況にあっては、条約作成の勢いを落さないようにするとの政治的意思がまず求められる。また、各種障害者団体は引き続き結束して条約交渉に当事者の主張を反映させる戦略形成とロビー活動を展開すること、他方、各国政府は柔軟性をもって障害者の主張を条約交渉に反映させる姿勢を持ち続けることが、それぞれ一層肝要となる。

(本文注)

1. U.N.Doc.A/AC.265/2004/WG/1, 27 January 2004, Annex I. 作業部会草案(テキスト)の邦訳は、長瀬修・川島聡『障害者の権利条約―国連作業部会草案』(明石書店、2004年)。この邦訳は、「日本障害者リハビリテーション協会」ウェブサイト〈http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/〉において参照可能である。

2.第3回特別委員会の概要については、拙稿「障害者の権利条約に関する第3回特別委員会を終えて」アジア・太平洋人権情報センター『国際人権ひろば』56号(2004年7月)と、その参照資料等を参照〈http://www.hurights.or.jp/newsletter/J_NL/056/07.html〉。

3.U.N.Doc.A/AC.265/2004/5, 9 June 2004, Annex II.

4.U.N.Doc.A/59/360, 14 September 2004.

5.Ibid., Annex III.

6.Ibid., Annex IV.

7.草案1条ファシリテーター案は以下のとおりである。「この条約は、障害のある人のすべての人権及び基本的自由の完全な享有、障害のある人の尊厳並びに社会の平等な構成員としての参加を促進し、保護し及び確保することを目的とする」〈http://www.un.org/esa/socdev/enable/rights/ahc4facilitator.htm〉。

8.作業部会草案の各条文に付されている「見出し」に関して、それを残すべきか否か、残すとしたらどのように修正すべきか、といった論点は、非公式協議で原則的として取り扱わず、さしあたり今後の課題とされた。

9.コーディネーターは草案1~15条の非公式協議を第5回特別委員会でも継続するよう勧告した(「コーディネーター報告」参照)。また、「議長声明」によれば、草案15条第2案~25条も第5回特別委員会において非公式協議という形式で行われる予定である。

10.第5回特別委員会が実際に開催されたのは2005年1月24日から2月4日までである。

*(付記2005年2月14日)本原稿は、『(資料)JDF設立記念セミナー 障害者権利条約と私たちのこれからの活動』(日本障害フォーラム、2004年10月31日)に掲載された原稿に後日若干手を加えたものである。