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第6回国連障害者の権利条約特別委員会

短報  2005年8月10日(水)

崔栄繁
DPI(障害者インターナショナル)日本会議

ロシア
WG案を支持する。障害のある人の完全参加実現にとって重要な条文。開かれた市場において、障害のある人の参加が保障されなければならない。パブリックセクターとプライベートセクターの概念検討を行いつつ、関連条項の若干の修正が必要。障害のある人を雇用する事業者には補償・補填が行われるべき。割り当て制度はパラaで述べられるべき。割当制度については、小企業などについて例外があることはを言及した上で、行われれるべき。リハビリテーションの課題は教育の問題とも絡んでくる。障害のある人に手当てを与えることよりも、障害のある人が労働市場に参入していくことが重要。各サブパラは書き込みすぎている感があるので、より簡素化すべき。

イスラエル
柱書は変更されるべき。パブリックセクターは障害のある人を雇用しなければならない。パラdで障害のある人の健康、労働環境、労働組合について述べるべき。割当制度についての言及は削除されるべき。障害者雇用にまつわる経済的インセンティブについて言及すべき。条文を簡素化し、より明確にすべき。 リビア:労働の権利は生命の権利と同様の価値を持つ。機会均等を図り、プライベートセクターでの障害者雇用を促進し、インセンティブを与えることが重要。障害のある人は雇用される能力があるならば、雇用されなければならない。女性に対しては、より積極的な施策が行われなければならない。shallという単語は国際法上義務的な意味を帯びている言葉なので、慎重に扱わなければならない。

ILO
decent workの問題は非常に重要。各種ILO条約との関連を意識しなければならない。団体交渉権など、障害のある人の労働の権利を認め、社会の一員・社会のパートナーとして障害のある人が生活できるような環境整備を進めなければならない。障害のある女性に対して、十分な配慮が払われなければならない。ILOは障害のある人の労働の権利が漸進的に実現することに懸念を抱いている。福祉工場の定義や用語の変更が必要。

国内人権機関
労働への権利については、あらゆるアプローチが採られ、今後も継続していかなければならない。障害のある人の労働において、積極的是正措置は重要。

国際障害コーカス
同一労働・同一賃金の原則が守られるべき。積極的是正措置の促進が必要。通常の労働基準が適用されない保護的就労・福祉工場における労働には反対する。障害のある人の自営や企業にも触れる必要がある。カナダ・オーストラリア案は権利ベースなので良い。

ラテンアメリカ障害者連合
decent workへのアクセスは重要。障害のある人の労働の権利については、まだまだ偏見が根強く残っている。就業年齢に達しいている障害のある人の75%は、仕事につけていない状態にある。単に労働の権利が認められるだけではなく、まずは、パブリックセクターで障害のある人が働けるような状況にならなければならない。

DPI
「啓発」の部分は削除すべき。障害をもつ女性に対する配慮が必要。。

オーストラリア障害連盟:
EU提案を支持する。機会における平等とともに労働の質における平等も確保されなければならない。障害のある人を隔離するような労働環境は、撤廃されていかなければならない。

議長
22条の議論で出てきた議論をまとめると以下のようになる。

  • 各国ともこの条約の重要性は認めているものの、「書き込みすぎ」の感が否めないという意見がでた。その一方で、具体列挙はきちんと行うべきとの意見も出た。
  • 労働環境は障害のある人すべてに開かれたものでなければならないという意見。
  • 障害のある女性に個別に言及すべきか否か議論が分かれた。
  • 権利ベースアプローチに広範な支持が得られた。
  • 条文構造の問題が指摘された。
  • パブリックセクターはプライベートセクターに見本を示すべきであるとの意見。
  • ILO条約、その他国際文書との整合性。
  • 自営業者と給与所得者とを分けて書くべきとの意見。
  • 割当雇用に対する懸念。
  • 合理的配慮の重要性とその課題。
  • 本条約の他項との関連。

●草案第24条「文化的な活動、レクリエーション、余暇およびスポーツへの参加」
(午前途中~午後5時半ごろ)

記録:崔栄繁(DPI日本会議)

24条は文化的な活動とレクリエーション・スポーツが一緒となっているため、2つに分割する案が第3回特別委員会から出されていた。他の条約や条項との重複が見られるとして、修正や削除を求める意見が多いところでもある。

まず、一般的な点として、表現をより強くすべきであるという意見が各国より出されていた。例えば、イエメンから第1項の柱書きの「権利を“recognize(認める)”を“ensure(確保する)”」にすべきだとの意見が出され、いくつかの国が賛成した。

条文構成について、まず「文化」と「スポーツ・レクリエーション」の二つに分けるという問題について、EUやニュージーランド、ロシアなどが反対して、イエメンやチリ、セルビア・モンテネグロなどが賛成した。しかし、この問題については双方とも柔軟な立場をとっているようである。ニュージーランドからは施設にずっと入っていたロバート・マーチン氏(知的障害者、今回の会議に参加)が「ラグビーを知ることでニュージーランドの文化を知った」という言葉を引き合いに出してスポーツは文化の一部であり2つの条文に分ける必要はないという主張をしていた。

第1項について、柱書きについては社会権規約15条などを参考にすべきであるという意見が出され、(a)については、基準規則を引用している文言などについて、意見が提起された。(b)(c)(d)については、短くするか3つをまとめるという意見が多くの賛成を得た。しかし、1項にtourism(観光)を付け足すという意見が複数出され、特に反対はなかった。

第2項については、「国際法の規定を尊重する」という文言を入れるかということと、知的財産権についての議論が主であった。「国際法~」という文言については書き込む必要はないという意見がタイから出されたが、オーストラリアなどは反対した。また、知的財産権について、結果的に知的財産の使用を制限する動きが障害者に不利益に作用しているとして、知的財産権という文言を著作権などと範囲を狭めるべきであるという意見があった

ろう者に特別に言及している第3項は議論の多いところである。ほとんどの国の政府代表は「ろう者」のみに言及することに反対し、削除あるいは、障害者全般について指すものにするという意見であった。これに対して、国際障害コーカス(IDC)や世界ろう連盟、また、インドの国家人権委員会などから、強い調子でろう文化の固有性と手話に対する言及をもとめた。ニュージーランドからは障害者のアイデンティティに言及しそこで、「手話やろう文化を含む」という形で言及するという案が出され、ある程度の賛同を得た。また、ニュージーランドはここで特に自国のマオリ族を念頭に置き、民族マイノリティについても言及があればよいとの意見が出された。この3項についてマッケイ議長は、早急に削除しないほうが良い、という意見を出した。

第4項は削除すべきという意見もいくつか出された。また、(a)について中国からスポーツ活動の“主流(mainstream)”という言葉を削除すべきだという主張がされた。他にも障害者特有のスポーツを書き込むべきである、書き込むべきではないという意見が分かれた。

●草案第25条モニタリング
(議論に入る前のブリーフィング、午後5時半~6時)

記録:崔 栄繁(DPI日本会議)

本格的な議論に入る前に、国連人権高等弁務官事務所のケジア氏(発展の権利ブレンチ)より15分ほどのブリーフィングがされた。国連が抱えている人権条約の実施を調査する委員会(条約体)の問題点について、国連事務総長に対して報告をしたということで、各国政府代表やNGOの参考になるようにとの理由による。内容の要約は以下のとおり。

条約の履行に関して、人権条約のシステムについて国連事務総長に報告した。
今年6月21日に出したステイトメント(6月21日)はwebでも公開している。
その中で、条約の履行は重要であり、報告制度は成功的に行われており、重要な役割と基盤をなしてきた。
しかし今後は、利害関係者の参加を助けるために改革が必要で、そのためにより広い自由度の高いものにすべきである。
例えば、国内政策やプログラムを行うための調査を行う、公的場所での討議ができるようにする、人権委員会の最終勧告の中で反映されるようにするといったことが考えられる。
条約体のシステムが直面している問題は、国内での履行が十分でないことにも原因がある。
ガイドラインの設定や、中核文書のスリム化し効率的に動いて利害関係者が参画できるようにすべきである。
そのためには報告制度の簡素化や人権条約の普遍化が要求されている。2006年までコンセプトペーパーが作られる。
150の締約国から57の報告を集め締約国から提出してもらう。報告書の検討については、委員会は国内レベルの状況を知る必要があり、来年にコンサルテーションという新しい挑戦をする。高等弁務官事務所は権利を持つ人の見方である。(以上)